獣の行動
獣の仲間は、いろいろな動物のなかで、もっともよく発達した脳をもっています。
ことに、大脳とよばれる脳の一部分がよく発達しており複雑なことがらを学ぶことができます。
獣の仲間では、本能的な行動のほか学習によってえられた行動が加わることが多くなり、また、サルの仲間のように、知恵のある行動をするようになります。
怒ったり、喜んだりする感情をあらわす行動もできるようになります。
ネズミの学習
ダイコクネズミは、非常に入り組んだ迷路の中でも、はやく、正確な道を見つけ出します。
ヘンプトンの迷路と呼ばれる迷路を用いたとき正しい道を2日間で9回の試験を繰り返しただけで見つけました。
正しい道を見つけたネズミをめくらにしても出口をあやまりなく見つけました。
また、音が聞こえないようにしても、においを嗅ぐことができないようにしても、また、口のまわりのひげを切ってものに触れたことがわからないようにしても出口を見つけることができました。
これらの実験から、ネズミは筋肉によるかんで出口を見つけたと考えられます。
また、長い道と短い道との2つをつくっておいてどちらを通ってえさのある場所にいくかを実験してみると何十回かおこなったあとには、いつも短い道を選ぶようになります。
イヌの学習
ソ連のパブロフが、イヌを使つておこなった条件反射の実験は有名です。
つば(だ液)は、もともとは食物が口の中に入って、そこの味覚器を刺激してはじめて、分泌されるものです。
イヌの前に食物を出すと、イヌはつばを出します。
いま、えさをあたえるときに、必ずベルをたらすようにします。
これを何回も繰り返していると、しまいにはイヌはえさをださなくても、ベルの音を聞いただけで、つばを出すようになります。
イヌは、条件づけによって、学習をしたわけです。
イヌは、臭覚が非常によく発達していて、たとえば棒とかステッキについている個人の体臭を嗅ぎわけることができます。
警察犬は、イヌのこの能力を利用して犯人のにおいを追うように訓練したものです。
私たちは、イヌにいろいろの言葉で命令しイヌがその通りに動くことをよく見かけます。
しかし、これはイヌにその言葉を理解させて行動させているのではなく、言葉をただの信号として用いて、イヌを訓練した結果です。
たとえば、「来い」といってイヌを叩き「行け」といってイヌにえさをあたえて訓練すると、しまいにはイヌは「来い」といえば逃げ「行け」といえば近づいてくるようになります。
サルの行動
サルは、獣のなかで最も人に近い動物です。視覚はすぐれていて、人とよく似ています。
聴覚もすぐれていて人より小さい音をよく聞きわけます。
しかし、臭覚の発達は悪く、たとえば隠されている果物のある場所を、においで知ることはできないといわれます。
テナガザル・オランウータン・ゴリラ・チンパンジーなどの類人猿の仲間は、よく発達した人の脳に近いつくりの脳をもち行動も非常に複雑で手足を器用に用いて、いろいろのことをすることができます。
これまでの動物ではあまり見ることのできなかった知能をはたらかせた行動もいろいろします。
たとえば、道具を使い、組み合わせることのできるものもいます。
類人猿の知能を人にあてはめると、だいたい生後10~12か月の幼児にあたります。
また、人に似た感情を顔に出すようにもなります。
チンパンジーの知能
チンパンジーが、好んで食べるバナナを高い所にぶら下げておきます。
チンパンジーは、人をつれてきてそれをとろうとしたり人のかたの上にのぼってそれをとろうとします。
しかし、うまくいかないといろいろ考えます。
空の箱の上にのってとろうとしますが、1つでは低すぎます。
そのうち2つめをその箱の上に重ね、それでもとどかないと3つめを重ねてついにバナナを手にいれます。
また、おりの前にリンゴをおきチンパンジーからは遠くて手がとどかないようにしておきます。
おりの中には大小2本の棒を入れておきます。
棒は、細いほうを太いほうに差し込むと長くすることができるようになっています。
チンパンジーは、はじめ1本の棒でリンゴを近よせようとしますが、うまくいきません。
そのうち2本の棒をつなぎあわせて長くし、これでうまくリンゴを近よせます。
このとき、棒はリンゴをとるという目的を果たす道具として使われたことになります。