顕微鏡とプレパラートを使うときの注意点とは?

顕微鏡

生物の観察器具で、いちばん広く使われているのは顕微鏡です。

生物の学問は、顕微鏡のおかげで著しく進歩しました。
いまでは、生物の研究には、なくてはならないものです。

顕微鏡には、いろいろな種類がありますが、私たちがふつうに使っている顕微鏡は下から光をあてて上からのぞく生物顕微鏡です。

この顕微鏡のほか、限外顕微鏡・実体顕微鏡・偏光顕微鏡・位相差顕微鏡などがあり、また、30万倍にも拡大できる電子顕微鏡もあります。

生物顕微鏡は、レンズの組み合わせで、50~1500倍くらいまで倍率をいろいろとかえることができます。

私たちの勉強で使うのは、ふつう、600くらいまでで充分です。


顕微竸の使いかた

まず、どれほどの大きさに拡大して観察するかによって接眼レンズと対物レンズの倍率を決めなければなりません。

たとえば、50倍にするときは5倍の接眼レンズと10倍の対物レンズを使えば
5×10=50 で、50倍になります。

つぎに、上からのぞきながら反射鏡を動かして、いちばん明るくなるようにします。
観察するものは、プレパラートにして、ちょうどステージの穴の上にくるようにのせます。

こうして、ハンドルをまわして焦点があうようにすればよいのです。
明るすぎるときは、しぼりを動かして調節します。

顕微竸を使うときの注意

①レンズは大切なところですから、傷をつけたり手を触れたりしてはいけません。
使うまえと、使ったあとに、ガーゼでかるくふくようにします。

②観察するとき、はじめは、なるべく低い倍率の対物レンズを使い必要なところだけ、高い倍率の対物レンズにとりかえて観察します。

③高い倍率で観察するときは、焦点をあわせるのにまず、対物レンズがプレパラートにすれすれになるまでさげておき上からのぞきながら、静かに鏡筒を上げて、焦点を合わせるようにします。

いきなり、焦点を合わせようとすると、レンズをプレパラートにぶつけてしまいます。

④しぼりは、いちばん見やすい明るさにします。
明るさがちょうどよくないと、見えるはずのものでも、見えないことがあります。

⑤顕微鏡をのぞくときは目を疲れさせないように気をつけます。
それには、目の焦点を、遠くを見るときと同じようにしておき両眼を開けたままのぞくようにしておきます。

こうすると、左の目でのぞきながら右の目で写生ができるので便利です。



プレパラート

ふつうの顕微鏡は、反射鏡から反射された光が調べようとするものを、透き通してきたところを見るのです。
ですから、観察するものは、光を通しやすいように、なるべくうすくしなければなりません。

切片

タマネギの表皮やムラサキツユクサのおしべの毛などのように、うすいものや細かいものは、そのまま見ることができます。

しかし、厚いものはうすく切ります。これを切片と言います。

切片の厚さは、種類にもよりますが、だいたい20ミクロン(50分の1ミリ)以下ならよく見えます。

切片をつくるには、そのための器械もありますが、手でつくることもできます。
手でつくるには、観察しようとするものをニワトコやヤマブキの髄を干してつくったピスにはさみ、かみそりの刃などでピスといっしょに、できるだけうすく切ります。

プレパラート

切りとった切片は、スライドグラスの上にのせ水を1滴たらして、その上からカバーグラスをかぶせます。

このとき、スライドグラスとカバーグラスのあいだに空気の泡が入ると顕微鏡でのぞいたときに、何かほかのものと間違えやすいのです。

こうしてできたものをプレパラートと言いますが、これは長く保存することができないので、一時プレパラートとも言います。

永久プレパラート

長く保存できるようにつくったものを永久プレパラートと言います。

これは、観察しようとするものを薬品で殺して染色剤で染め、くさらないようにして、カバーグラスをバルサムでとめてあります。

ふつう使われている染色剤には酢酸カーミン(赤)・メチレンブルー(青)・ヨウ素液(紫)などがあります。




動物の組織とは?植物の組織とは?器官と器官系とは?

動物の組織

上皮組織

体の外表面や、体こう・消化管・血管などの内表面をおおっている組織で単層上皮と多層上皮とにわけられます。

また、表面にクチクラをもつものほ乳類の気管や卵管の上皮のように、せん毛をもつものなどもあります。

特別なはたらきをする感覚上皮では、感覚細胞という細胞の集まりがあって外からの刺激を受け入れ、末梢神経を通じて中枢神経に伝えます。

分泌機能をおこなうようになった腺には、汗腺やだ腋腺のように管を通して分泌物を出す外分泌腺と甲状腺や副じんなどのように管をもたないで腺に接する血液やリンパ内に分泌物を送り出す内分泌腺とがあります。


結合組織

ほかの組織または器官のあいだを満たして、それらを結合し、あるいはそれらを支える組織です。

たくさんの基本細胞と、そのあいだをつめる細胞間物質からなり、つぎのようにわけられます。

こう質性結合組織

細胞間物質がにかわ質からなり、どの部分ち同じようなつくりになっていますが線維をふくんでいるものは、線維性結合組織と言います。

線維性結合組織で組織の細胞が脂肪の粒をふくむものは脂肪組織、色素をふくむものは色素組織と言います。

軟骨組織

もとになっている細胞は軟骨組織で、細胞間物質は弾力性のある軟骨質でできています。

骨組織

もとになっている細胞は骨細胞質でできています。

骨質はカルシウムをふくんでいますから軟骨ほど弾力性はありませんが硬くて体を支えるのに適しています。

なお、これらの組織のほか、血液も1種の結合組織と考えられています。

筋組織

筋細胞は、細長くて筋線維とも言います。
筋線維内の原形質は収縮性と弾力性がある筋原線維からなっており、おもにアクトミオシンというたんぱく質からできています。

筋組織は、横じまの模様がある横紋筋と滑らかな平滑筋にわけられます。
横紋筋は、自分の思い通りに動かせる随意筋で、おもに骨格筋となってします。
平滑筋は、自分の思い通りには動かせない不随筋で、おもに内臓筋となっています。

ただし、心臓をつくっている心筋は例外で横紋筋で不随意筋です。

神経組織

神経細胞は、刺激を感じて、これをほかの細胞に伝えるはたらきをもち、そのために突起があります。

長い突起を神経突起(神経線維)と言い、そのほかのものを樹状突起と言います。

神経突起は、基部と末端部とをのぞく大部分は、髄鞘と呼ばれるさやでおおわれ、その外面はさらに神経しょうと呼ばれるうすい膜でつつまれています。

ただ、脊椎動物の自律神経の一部は、髄鞘がありません。

この神経突起は、たくさん集まって束となり、この束は結合組織によってむすびつけられて、神経系を形づくっています。

神経細胞は、はたらきのうえで神経の単位となっているため神経単位(ニューロン)と呼ばれることがあります。



植物の組織

分裂組織

さかんに分裂を続けている細胞の集まりで、根・茎の生長点や形成層とよばれる特別な部分に見られます。

分裂組織の細胞はまだ分化していないので形はどれも同じで原形質にとみ、細胞のあいだに隙間は見られません。

永久組織

分裂組織から生じたもので、細胞は分裂して増えるはたらきを失っています。
植物の体の大部分をしめ、つぎの組織系をつくっています。

表皮系 表皮を包んでいて、ふつう、一層の細胞からできています。
表皮細胞の形は、植物の種類やその部分によって異なり根毛や、気孔をつくっている孔辺細胞のように特別の形をしたものもあります。

通道組織系

道管・仮道管・師管など、管状の細胞が主となっていて、維管束とも言われています。
道管と仮道管は、根から吸収された水分や養分がのぼっていく通路、師管は葉でつくられた有機養分の通路です。

基本組織系

植物の体をつくる永久組織のうちで、表皮系・通道組織系以外の組織です。

基本組織系にはいろいろありますが、もっともふつうのものは柔組織です。
ほかに茎や根の皮層・髄・放射組織、葉のさく状組織や海綿状組織などもあります。

その他

細胞膜の一部が厚くなった厚角組織、細胞膜全部が厚くなった厚膜組織、両はしがとがった細長い厚膜線維があり、これらをあわせて機械組織と言います。

器官と器官系

動物の器官にはいろいろありますが、同じようなはたらきをする器官が集まり、お互いに助け合うようにまとまったものを器官系と言います。

たとえば、口・食道・胃・腸などは、すべて消化に関係して、消化器官系をつくっています。

同じように、循環器官系・呼吸器官系・排出器官系・運動器官系・感覚器官系・生殖器官系などがあります。

植物の器官は、動物の器官にくらべるとずっとかんたんで栄養器官として根・茎・葉があり、生殖器官系として花があります。




単細胞生物と多細胞生物とは?群体とは? わかりやすく解説!

単細胞生物

単細胞生物では、すべてのはたらきが1個の細胞によって営まれています。

そのために、たとえばアメーバやゾウリムシには、食物を取り入れて消化する食胞や細胞内でいらなくなったものを排出する収縮胞などがあります。

また、ゾウリムシにはせん毛が、ミドリムシにはべん毛があって、運動に役立っています。
ミドリムシには、光を感じる眼点もあります。

食胞・収縮胞・せん毛・べん毛・眼点などのようなものを細胞器官と言いますが複雑なつくりをもつ多細胞生物の器官とは区別しています。


群体

単細胞生物は、細胞分裂によって増えますが、分裂によって生じたたくさんの個体が、はなれないで群体(細胞群体)をつくって生活するものがあります。

たとえば、べん毛をもつ単細胞のゴニウムやパンドリナは1個の個体が4回分裂して16個の個体となり、そのままはなれないで群体をつくっています。

群体をつくる個体のあいだには、栄養に関係する個体と生殖に関係する個体というように、そのはたらきに分化がみられる、クダクラゲのようなものもあります。

多細胞生物

多細胞生物は、細胞分裂によって生じたたくさんの細胞からできています。

アオミドロやコンブなどは、同じ形の細胞でできているだけですが体のつくりが複雑な生物では、体の部分によって、細胞の形やはたらきが違っています。

形もはたらきも同じ細胞が集まっているのが組織で組織がいくつか集まって1つのまとまったはたらきをする、器官をつくりあげています。

生物の体は、複雑になればなるほど、組織や器官が複雑にむすびついていますし動物と植物とでは組織や器官のつくりもはたらきも違っています。




細胞分裂とは? 体細胞分裂・減数分裂・無糸分裂とは?

細胞分裂

生物の体は、これをつくる1つ1つの細胞が大きくなるばかりでなく、その数も増えて成長します。
細胞の数が増えるのは、さきにあったものが2つにわかれるからでこのことを細胞分裂と言います。

細胞が分裂するには、まず、核が2つにわかれます。これを核分裂と言います。

それから細胞質がわかれます。これは細胞質分裂と言います。
この場合、もとの細胞を母細胞、分裂してできた2個の細胞を嬢細胞と言います。

多くの生物では、核分裂は、おもに有糸分裂(関節分裂)というかたちでおこなわれますが、そのほかに、特別なものとして無糸分裂(直接分裂)があります。

なお、有糸分裂には、体細胞分裂と減数分裂とがあり、いずれの場合も、複雑な道筋をたどります。


体細胞分裂

体の細胞が増えるときにおこなわれる細胞分裂で動物では肺の組織や成長の終わった成体の骨ずいや皮膚などで植物では、根・茎の生長点や形成層などでさかんにおこなわれています。

分裂がはじまるまえの細胞は、核がとくに大きく、核の中には染色糸がみられます。このような状態の核を静止核、または休止核と言います。

体細胞分裂の道すじは、ふつうつぎの4つの時期にわけることができます。

①前期

染色糸は、ある決まった数の染色体となります。
そして、それぞれの染色体は縦に裂けて、やがて、核膜や仁は見えなくなります。

この染色体は、有糸分裂のときにあらわれるものでその数と形とは生物の種類によって決まっています。

②中期

染色体は、細胞の赤道面(細胞にも地球のように極とか赤道とか呼ばれる部分がある)に、ほぼ放射状にならびます。

このとき、両極と赤道面とのあいだに、ぼうすい体があらわれます。
ぼうすい体は、ぼうすい糸と呼ばれる糸のようなもので、できています。



③後期

縦に裂けていた染色体は、2つにわかれてそれぞれの極に移動します。
したがって、極に集まる染色体の数は、最初の数と同じになります。

④終期

ふたたび核膜や仁があらわれ染色体が染色糸になり、ここに2個の嬢核ができます。

そのころ、細胞の赤道面のあたりに細胞のしきりがしだいにあらわれて、細胞質分裂がはじまります。

やがて、細胞質が2つにわかれ、完全な2個の嬢細胞がつくられます。

減数分裂

卵や花粉・精子など、生殖と関係のある細胞が増えるときに見られる細胞分裂です。
嬢細胞の染色体の数が、母細胞の染色体の数の半分に減ることから、減数分裂と呼ばれます。

無糸分裂

無糸分裂は、ハツカネズミのけん細胞、ヒトの軟骨細胞、ムラサキツユクサの茎の節間細胞などに見られます。
そのほか、古くなった細胞や、病気になった細胞に起こると言われています。

無糸分裂の場合、有糸分裂に見られるような、ぼうすい体や染色体があらわれません。
核がくびれて、引きちぎられるようにして2つにわかれるのです。

そして、できた2つの核の中身は同じではなく、大きさも違うことがあります。




細胞のつくりとは?細胞の形と大きさとは? わかりやすく解説!

細胞

生物には、体が1つの細胞からなる単細胞生物とたくさんの細胞からなる多細胞生物とがあります。

しかし、多細胞生物でも、受精卵の時代にはただ1つの細胞ですから細胞が生物の体のもっとも大事な生活単位となっています。

細胞は生命をもっていて成長や生殖をして子孫を増やすこともできます。
多細胞生物の体は、このような細胞が集まって組織をつくり違った組織が集まって器官をつくり、その器官のはたらきによって生命現象が営まれています。

1665年、イギリスのフックはコルクの切片を顕微鏡で見てハチの巣のような小さい部屋からできていることを発見し、これを細胞と名づけました。

フックが見たものは、中身のなくなった死んだ細胞膜でしたがその後、細胞膜に包まれている中身のほうが重要であることがわかり細胞の意味も今日のようにかわりました。


細胞の形と大きさ

細胞の形は、卵や花粉のように、1つの細胞がはなれているときは球状であることが多く若い細胞がぎっしりつまっているときは、たいてい正多面体に近い形をしています。

しかし、細胞が成長すると、いろいろな形にかわっていきます。
細胞の大きさもいろいろです。

ふつうは顕微鏡でないと見られないくらいの大きさですが大きなものでは、ダチョウの卵のように直径が9センチもあるものもあり動物の神経細胞の神経突起のように、長さが1メートルぐらいのものもあります。

小さいほうでは、バクテリアに1ミクロン以下というものもあります。

原形質

細胞のつくりは、図の通りです。

細胞の中で生きているのは、原形質の部分だけで、これは核と細胞質にわけられます。

また、原形質のいちばん外側の部分は原形質の固まったうすい膜となっていて原形質膜と呼ばれます。

核は、ふつう球形または楕円体で、それぞれの細胞に1個ずつあります。
核を薬品である状態のままにし、塩基性の色素(カーミン・メチレソブルーなど)で染めて顕微鏡で見ると網のめのようなものが見えてきます。

これは染色糸と呼ばれます。

また、核の中には仁と呼ばれる小さな粒があります。
染色糸ち仁以外の部分は、透明な核液で満たされ、核膜によって細胞質と区切られています。

細胞質

卵の白身のようにどろどろとした半流動体のもので、その中にはいろいろな粒があります。

すなわち、動・植物いずれの細胞にもある短いひも状や棒状のミトコンドリア、それよりも小さいミクロゾーム、動物細胞にふくまれている中心体・ゴルジ体、植物細胞にふくまれている色素体などがあります。

色素体には、葉緑体・有色体・白色体の3種があります。
葉緑体は、緑色のクロロフィル(葉緑素)、だいだい色をした少量のカロチン、黄色のキサントフィル(葉黄素)をふくんでいて緑色をしており光合成に大切な役割りを果たしています。

有色体は、ヒマワリやそのほかの黄色い花、ミカン・トマト・カキなどの果実、二ンジンの根などの色のもとになるものでカロチン・キサントフィルそのほかのカロチノイド色素をふくんでいます。

白色体は、特別な色素をふくまないもので貯蔵でんぷんをつくるはたらきに関係しています。

なお、単細胞生物にみられる擬足・べん毛・食胞・収縮胞などの細胞器官は細胞質がとくにかわってできたものです。

原形質流動

ムラサキツユクサのおしべの毛やアメーバなどを顕微鏡で見ると原形質は流れるように動いており、これを原形質流動と言います。

アメーバや白血球は、この原形質流動によって体を移動させます。
しかし、原形質流動のしくみには、まだわからないところがあります。



後形質

細胞には原形質のほかに細胞膜・液胞などのように原形質によってつくりだされたもので生活作用を営んでいないものがあります。

これは後形質と呼ばれ、おもに植物細胞にみられます。

細胞膜は、高等植物では、おもにセルロースでできています。

植物の若い細胞は、原形質で満ちていますが成長するにつれて細胞質中に液胞ができ、これがしだいに大きくなります。

成長した細胞では、液胞が細胞の大部分をしめ原形質は細胞膜の内側にうすい層となっています。

液胞の中には細胞液があって、糖類・アミノ酸・有機酸・無機塩類などの養分が溶けており、また、しゅう酸カルシウムなどのような、いらない物質もふくまれています。

花びらや葉などの液胞には、しばしばアントシアンなどの色素がふくまれています。
この色素は、赤・紫・青などの花の色や、紅葉の色のもとになっています。

動物細胞では、細胞膜はなく、また液胞は少なくて、はっきりわかりません。

植物細胞の中には、でんぷんの粒、脂肪の粒、しゅう酸カルシウムの結晶などがふくまれています。

動物細胞の中には、油てき・グリコーゲンなどの粒がふくまれています。

異形質

中心体・生毛体・せん毛・べん毛・眼点・神経原線維・きん原線維などは原形質が変化してできたものです。

これらは、後形質に対して、異形質と呼ばれています。




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