濃い酸のはたらきとは? 王水とは? わかりやすく解説!

濃い酸のはたらき

うすい酸のはたらきを調べたときと同じようにして濃硫酸や濃塩酸のはたらきを調べてみましょう。 


濃硫酸と濃塩酸は、どちらも取扱いには、充分注意しましょう。

亜鉛・鉄・スズ・銅を濃い酸に入れた場合いの結果をまとめるとつぎのようになります。

① 亜鉛・鉄・スズは、水素を発生して濃塩酸に溶けます。
スズは、濃硫酸にほとんど溶けません。

② 銅は、濃塩酸には溶けませんが、濃硫酸にはゆっくり溶けます。
亜鉛・鉄も溶けます。

このとき発生する気体には、刺激臭があります。
それは、この気体に二酸化硫黄がふくまれているからです。

濃硫酸との反応は、温度が低いとはっきりしませんが加熱するとよくわかります。

いっぽう、銅は、濃塩酸には溶けませんが濃硫酸には、二酸化硫黄を発生して溶けます。

濃塩酸の場合の反応は、希塩酸のときとまったく同じですが、濃硫酸の場合に、反応のしかたが少し違います。

まえに述べたように、硫酸は強い酸化力をもっています。
その性質は希硫酸ではあまりあらわれませんが濃硫酸では強くあらわれてきます。

たとえば、銅を濃硫酸に入れると銅の表面はすぐに酸化されて、図の①式のように酸化第二銅になります。

このとき、硫酸自身も変化して、二酸化硫黄を発生します。

こうしてできた酸化第二銅は、すぐに酸が電離してできている水素イオンと作用して、②式のように第二銅イオンとなって水に溶けます。

硝酸も.硫酸と同じように、非常に酸化力が強いのでもともと酸に溶けない銅や銀などの金属を酸化銅や酸化銀などの酸化物にかえて溶かしてしまう性質をもっています。


王水

銅や銀は、濃硝酸を使って酸化物にして溶かすことができますが金や白金は、硝酸の酸化力では酸化することができません。

ところが、濃硝酸と濃塩酸を1対3の割合でまぜた液を使うと金や白金も溶かすことができます。

この混合液を王水といいます。
王水の中には、硝酸と塩酸が化合して塩化ニトロシルという、非常に酸化力の強い化合物ができこれが、金や白金を塩化物にかえるはたらきをしてこの塩化物が塩酸に溶けるのです。

金属酸化物への酸のはたらき

濃い酸のはたらきで調べたように、イオン化傾向が小さくてそのままでは酸に溶けない金属でも、酸化剤で酸化物にかえると溶けるようになります。

つまり、金属の酸化物は、金属そのものよりも水素イオンと反応しやすいわけです。

この金属の酸化物と酸の反応について、もう少しくわしく調べてみましょう。

酸化第二銅に硫酸が作用する場合を考えてみます。
酸化第二銅は.硫酸が電離してできた水素イオンと反応して、上の①式のように、第二銅イオンになります。

硫酸は完全に電離して、水素イオンと硫酸水素イオンになりさらに硫酸水素イオンの一部は水素イオンと硫酸イオンとに電離しています。

酸化第二銅と硫酸との反応をまとめると②式のようにあらわすことができます。

この溶液をに詰めると、銅イオンと硫酸イオンとがむすびついて、硫酸銅の結晶ができます。

酸化第二銅は、塩基ではありませんが、この変化は酸と塩基の中和反応によくにています。

それで、中和反応でできる物質を塩というように硫酸銅を銅の硫酸塩といいます。

このように、金属の酸化物を酸に溶かすと金属とその酸の塩ができます。



酸化剤とは? 酸化のはたらきをする物質とは?

酸化剤

酸化のはたらきをする物質、すなわち他の物質に酸素を与えたり他の物質から水素原子、または電子を奪うことができる物質のことを酸化剤といいます。

過マンガン酸の塩、クロム酸の塩、硝酸および硝酸塩ハロゲン、金属の塩、酸素および酸素をふくむ酸類・酸化物など非常に多くのものが酸化剤としてのはたらきをもっています。

いくつかの代表的な酸化剤のはたらきについて調べてみましょう。


オゾン

特別のにおいがあるうすい青色をした気体で酸素ガスの中で放電を行わせせるとできます。

オゾンは普通の酸素とは違って酸素原子3個からできているので分解しやすくそのときにでる酸素原子が強い酸化のはたらきをするのです。

例えば、ヨウ化カリウムKI溶液にオゾンを入れるとヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素を遊離します。

このような強い酸化作用を利用して繊維などを漂白することもできます。

過酸化水素

無色・透明な液体で30パーセントぐらいの水溶液として売られています。

家庭でよく傷口の消毒などに使われるオキシドールは過酸化水素の3パーセントぐらいの水溶液です。

過酸化水素はオゾンと同じように分解するとき、酸素を発生し、水になります。




過マンガン酸カリウム

黒紫色の棒状の結晶で水に溶かすと美しい紫色になります。
200℃に熱すると、酸素を発生します。

また酸・塩基いずれの水溶液でも反応の仕方は少し違いますが酸化作用をしめします。

過マンガン酸カリウムの水溶液は有機物にあうと有機物を酸化し過マンガン酸カリウム自身は還元されて色が消えます。

この反応を利用して、水の中に有機物がふくまれているかいないかを調べることもできます。

硝酸類

銀は空気中の酸素では酸化されませんが硝酸にあうと、酸化されて硝酸銀になります。

それに、硝酸が酸化力の強い酸素をだし、それが銀にはたらいて銀の酸化物をつくり

さらに、銀の酸化物と硝酸が反応して硝酸銀ができるのです。
黒色火薬は硝酸カリウム・木炭・イオウの混合物ですが空気がなくても激しく燃えて爆発します。

これは硝酸カリウムが強力な酸化剤として作用するからです。

王水

金・白金はさびないし、酸にも溶けない金属ですが濃塩酸と濃硝酸の混合溶液には塩化金または塩化白金となって溶けます。

この混合溶液は王水とよばれます。
強い酸化作用をもっていて、金属の王様といわれる金や白金をも溶かしてしまうところからつけられた名前です。



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