力のつりあい
棒押しや、綱引きのときに見られるように、押したり引いたりして物体に力がはたらいているのに物体がじっと止まっていて動かないことがあります。
また、机の上に置かれた本は地球がその中心に引いているのに動かないでいます。
このように、力がはたらいているのに物体が動かないでいるとき、物体はつりあいの状態にあると言います。
よく調べてみると、ただ1つの力が物体にはたらいていてその物体が動かないでいることはありません。
力がはたらいているのに、物体が動かないときには必ず2つ、またはそれ以上の力がはたらいています。
そして、それらの力のあいだに特別な関係が成り立っているときにかぎります。
このようなとき、力はつりあっています。
ニカの引っ張り合い
綱引きで、一方の人の引く力が相手の引く力より大きいと綱が動いて勝負が決まります。
しかし、両方の人の出す力が等しいときには、綱は動きません。
ばねばかりを使って、つりあっている二力の関係を、調べてみましょう。
図のように机の上に2つのばねばかりを向かい合わせておいて両方の先をひもで結びます。
つぎに、ばねばかりを両方に引いてひもがピンとはって動かないとき、はかりの目もりを読みとります。
このとき、2つのはかりの目もりのよみは、等しくなっています。
また、ばねばかりとひもは、一直線上にならんでいます。
このことから、ひもを両方に引いている2つの力は大きさが等しく、向きが反対で同じ直線上にはたらいていることがわかります。
つぎに、ばねばかりをもって強く引いてみてもひもを長くしたり短くしたりしてみても両方のばねばかりの目もりの読みは等しくなっていて2つのばねばかりは、同じ直線上にならんでいます。
また、ひものかわりに厚紙に2つの穴を開けてそれにばねばかりの先をひっかけて実験しても同じになります。
これらの実験から
「1つの物体に、引っ張り合う2つの力がはたらいていて、物体が動かないでいるときには、この2つの力は大きさが等しくて向きが反対で同じ直線上にはたらいている」
という関係が成り立っていることがわかります。
張力と重力
ひもでつるした重りが、動かないでいるときその重りにはたらいている力のつりあいを、考えてみましょう。
重りには、地球が下向きに引いている力(重力)がはたらいていますがこの力だけが重りにはたらいているのなら、重りは下に落ちていくはずです。
しかし、重りは止まっているのですから、重力と等しい大きさで上向きの力が同じ直線上にはたらいていなければなりません。
この力は、ひもが重りを上向きに引いている力でこのような力を、ひもの張力と言います。
したがって、重りには張力と重力の2つの力がはたらいていてつりあっているのです。
ひもは、張力の方向に止まっていて、張力と重力は一直線になっていますから、ひもの方向で地球の中心の方向(鉛直方向)を知ることができます。
重りを重くすると、それにつれて、ひもの張力も大きくなります。
しかし、ひもは、ある大きさ以上の張力には耐えられないので重りがあまり重くなると切れてしまいます。
二力の押し合い
棒押しのとき、棒を両はしで押している2つの力が大きさが等しく、一直線上で押し合っているときは棒はどちらへも動きません。
このような二力の押し合いのときも、くわしく実験してみると二力の引っ張り合いのときと同じような関係が成り立っています。
つまり「1つの物体に押し合う2つの力がはたらいているときにはこの2つの力は大きさが等しくて、向きが反対で同じ直線上にはたらいている」ということです。
偶力
物体にはたらいている2つの力が、向きが反対で大きさが等しくても同じ直線上ではなくてはなれた2つの平行な直線上にはたらいている場合には物体はまわりだします。
このような2つの力を、偶力と言います。
重力と面の抗力
机の上に置いた本は地球の重力によって、下向きの力を受けています。
しかし、本は動かないでいるのですから重力とつりあう力がはたらいていなければなりません。
この力は、机の面が、本を上向きに押している力でこの力のことを面の抗力と言います。
本が動かないでいるのは、重力と面の抗力とが大きさが等しく、同じ直線上に押し合っているからです。
それでは、なぜ机の面は、本を上向きに押すのでしょうか。
下の図を見てください。
本は重力に引かれて下に落ちていこうとし、机の面を下向きに押しています。
この力の反作用として、机の面が、重力と同じ大きさの力で本を上向きに、押し返しているのです。
本が机を押している力は机にはたらいている力で机の抗力は本にはたらいている力です。
ですから、この2つの力は本にはたらいてつりあっている二力ではありません。
本のつりあいの力は、本が受けている力だけを考えるのですから重力と面の抗力とだけのつりあいを考えるのです。