三力のつりあいとは?力の合成・分解とは?平行四辺形の法則とは?

三力のつりあい

1つの物体に、3つの力がはたらいていて物体が動かないでいることがあります。

このときには、3つの力の大ききと向きのあいだに特別な関係が成り立っています。


三力のつりあいの実験

机の上に大きな白い紙をしいてその上で、つぎのような実験をしてみましょう。

同じばねばかりを、3つ用意します。
その先にひもをつけて、3本のひものはしを結びあわせます。

つぎに、3つのばねばかりを、それぞれ勝手な方向に引っ張ってひもがピンと張り、ひもやひもの結び目が動かなくなったときに3つのばねばかりの目もりを読みます。

このとき、3本のひもの位置と結び目の位置を正確に紙の上にうつしとります。
白紙にうつしとった図について、つぎのような作図をします。

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ひもの結び目をO、3本のひもの方向を、それぞれOX・OY・OZと書きます。

つぎに、先に読みとった、ばねばかりの目もりの読みの数に比例するような長さを、OX・OY・OZ上にOからはかって印をつけ、これらをOA・OB・OCとします。

すると、この3つの矢印、OA・OB・OCはそれぞればねばかりで引っ張った、3つの力をあらわしています。

つぎに、OAとOBを隣り合った二辺とする平行四辺形をつくります。
その対角線を引いて、これをODとします。

このODと、前に書いたOCとをくらべてみるとOCとODは一直線上にあって、長さが等しくなっています。

また、OBとOCを二辺とする平行四辺形をつくって対角線を引き、それとOAをくらべてみると、やはり長さが等しく一直線になっていることがわかります。

OCとOAについてやってみても同じような関係があります。

これらのことから、つりあっている3つの力のあいだには必ず次のような関係がなりたっていることがわかります。

「つりあっている3つの力のうち、2つの力でつくった平行四辺形の対角線は残りの1つの力と一直線になっていて、その向きは反対で大きさは等しい」

力の合成

まえの実験で、OCとODとは、一直線になっていて向きが反対で等しい大きさの力ですから、つりあうのは当然です。

しかし、実際にはたらいているのはODではなくて、OAとOBです。
ですから、OAとOBの2つの力のはたらきはODの力のはたらきと全く等しいことがわかります。

このように、2つの力のはたらきと全く等しいはたらきをもっている力を、合力と言います。

ODの力は、OAとOBの力の合力です。
また、合力をもとめることを力を合成すると言います。



平行四辺形の法則

同一の点にはたらいている2つの力、PとQを合成してその合力Rをもとめるには、まえの実験のようにPとQをあらわす矢印を二辺として平行四辺形をつくりその対角線Rを書けば、その欠印Rが合力になります。

このようなやり方を、平行四辺形の法則と言います。

2つの力PとQが、同じ直線上にないかぎり必ず平行四辺形をつくれますから合力をもとめることができます。

PとQが一直線になっているときは、平行四辺形をつくれないのでつぎのようにして、合力をもとめます。

PとQが同じ向きのときは、PとQの大きさの和に等しい長さの矢印を同じ直線上に、同じ向きに書くと、それが合力になります。

また、PとQが反対向きなら、PとQの大きさの差に等しい長さの矢印を、同じ直線上に、大きいほうの側に書くと、それが合力になります。

もし、PとQが等しい大きさならばその差はゼロになりますから、矢印は書けません。
このことを「合力はゼロである」とか「合力がゼロになる」と言います。

つりあっている二力の合力は、ゼロになっています。

3つの力、A、B、Cの合力は平行四辺形の法則を二度繰り返して使うともとめられます。

それには、まず、AとBの合力を平行四辺形の法則を使ってもとめてDとします。

続いて、DとCとの合力を同じようにしてもとめて、Rとします。
すると、Rが、A、B、Cの合力になります。
BとCを先に合成しても同じです。

前の実験のように、つりあっている三力のときは、合力がゼロになります。

力の分解

1つの力Rを、この力と同じはたらきをする二力、PとQとにおけることを力を分解すると言います。

そして、P、Qを、力Rの分力と言います。

力の分解は、力の合成と逆になっていますから平行四辺形の法則が成り立っているように、わければよいのです。

それには、つぎのようにします。

力Rをあらわす欠印が、対角線になっているような平行四辺形をつくると、その対角線をはさむ二辺が、分力PとQになります。
しかし、このような平行四辺形は、いく通りでも書けますから分力P、Qの組みは無数にもとめられます。

そこで、分力の1つの大きさと向きを決めておくか2つの分力の向きを、それぞれ決めておかなければなりません。

すると、決まった1組みの分力がわかります。

互いに直角になっている、2つの分力に分解するには図③のように、矢印Rの先から直線OX、OY上に垂線をおろしてそのあしをA、Bとします。

すると、欠印OAとOBが、もとめる分力、P、Qになります。

なぜならRは、PとQでつくる平行四辺形(この場合は長方形)の対角線になっているからです。




二力のつりあいとは?張力と重力、偶力とは?

力のつりあい

棒押しや、綱引きのときに見られるように、押したり引いたりして物体に力がはたらいているのに物体がじっと止まっていて動かないことがあります。

また、机の上に置かれた本は地球がその中心に引いているのに動かないでいます。

このように、力がはたらいているのに物体が動かないでいるとき、物体はつりあいの状態にあると言います。

よく調べてみると、ただ1つの力が物体にはたらいていてその物体が動かないでいることはありません。

力がはたらいているのに、物体が動かないときには必ず2つ、またはそれ以上の力がはたらいています。

そして、それらの力のあいだに特別な関係が成り立っているときにかぎります。

このようなとき、力はつりあっています。


ニカの引っ張り合い

綱引きで、一方の人の引く力が相手の引く力より大きいと綱が動いて勝負が決まります。
しかし、両方の人の出す力が等しいときには、綱は動きません。

ばねばかりを使って、つりあっている二力の関係を、調べてみましょう。

図のように机の上に2つのばねばかりを向かい合わせておいて両方の先をひもで結びます。

つぎに、ばねばかりを両方に引いてひもがピンとはって動かないとき、はかりの目もりを読みとります。

このとき、2つのはかりの目もりのよみは、等しくなっています。
また、ばねばかりとひもは、一直線上にならんでいます。

このことから、ひもを両方に引いている2つの力は大きさが等しく、向きが反対で同じ直線上にはたらいていることがわかります。

つぎに、ばねばかりをもって強く引いてみてもひもを長くしたり短くしたりしてみても両方のばねばかりの目もりの読みは等しくなっていて2つのばねばかりは、同じ直線上にならんでいます。

また、ひものかわりに厚紙に2つの穴を開けてそれにばねばかりの先をひっかけて実験しても同じになります。

これらの実験から

「1つの物体に、引っ張り合う2つの力がはたらいていて、物体が動かないでいるときには、この2つの力は大きさが等しくて向きが反対で同じ直線上にはたらいている」

という関係が成り立っていることがわかります。

張力と重力

ひもでつるした重りが、動かないでいるときその重りにはたらいている力のつりあいを、考えてみましょう。

重りには、地球が下向きに引いている力(重力)がはたらいていますがこの力だけが重りにはたらいているのなら、重りは下に落ちていくはずです。

しかし、重りは止まっているのですから、重力と等しい大きさで上向きの力が同じ直線上にはたらいていなければなりません。

この力は、ひもが重りを上向きに引いている力でこのような力を、ひもの張力と言います。
したがって、重りには張力と重力の2つの力がはたらいていてつりあっているのです。

ひもは、張力の方向に止まっていて、張力と重力は一直線になっていますから、ひもの方向で地球の中心の方向(鉛直方向)を知ることができます。

重りを重くすると、それにつれて、ひもの張力も大きくなります。

しかし、ひもは、ある大きさ以上の張力には耐えられないので重りがあまり重くなると切れてしまいます。



二力の押し合い

棒押しのとき、棒を両はしで押している2つの力が大きさが等しく、一直線上で押し合っているときは棒はどちらへも動きません。

このような二力の押し合いのときも、くわしく実験してみると二力の引っ張り合いのときと同じような関係が成り立っています。

つまり「1つの物体に押し合う2つの力がはたらいているときにはこの2つの力は大きさが等しくて、向きが反対で同じ直線上にはたらいている」ということです。

偶力

物体にはたらいている2つの力が、向きが反対で大きさが等しくても同じ直線上ではなくてはなれた2つの平行な直線上にはたらいている場合には物体はまわりだします。

このような2つの力を、偶力と言います。

重力と面の抗力

机の上に置いた本は地球の重力によって、下向きの力を受けています。

しかし、本は動かないでいるのですから重力とつりあう力がはたらいていなければなりません。

この力は、机の面が、本を上向きに押している力でこの力のことを面の抗力と言います。
本が動かないでいるのは、重力と面の抗力とが大きさが等しく、同じ直線上に押し合っているからです。

それでは、なぜ机の面は、本を上向きに押すのでしょうか。

下の図を見てください。

本は重力に引かれて下に落ちていこうとし、机の面を下向きに押しています。
この力の反作用として、机の面が、重力と同じ大きさの力で本を上向きに、押し返しているのです。

本が机を押している力は机にはたらいている力で机の抗力は本にはたらいている力です。

ですから、この2つの力は本にはたらいてつりあっている二力ではありません。

本のつりあいの力は、本が受けている力だけを考えるのですから重力と面の抗力とだけのつりあいを考えるのです。




作用と反作用とは?抗力・撃力とは? わかりやすく解説!

作用と反作用

手で壁を押すと、手が壁から押し返されるのがわかります。

また、夏、静かな水面でボートから飛び込むとボートは飛び込んだ方向と反対の向きに進みます。


このように、力は必ず2つの物体のあいだで、同時に伝わります。
2つの力A、Bのうち、一方を作用と言い、他方を反作用と言います。
どちらを作用といっても、反作用と言ってもよいのです。

ニュートンは「作用と反作用とは、一直線上にあって向きが反対でその大きさは全く等しい」ことを発見しました。

これが、作用反作用の法則と呼ばれるもので力が物体と物体とのあいだを伝わるしくみをしめした大切な法則です。

1つの物体だけで、自分が、自分に力をはたらかせることはできません。
自分に力をはたらかせるには、自分以外の物に力をはたらかせてその反作用として自分が受ける力を利用するのです。

人が地面を歩けるのは足で地面を蹴るとその反作用として、地面が足を押し返してくれるからです。

また、口ケットが飛ぶことができるのは燃料を燃やしてつくった気体をうしろに噴き出して、その反作用を利用しているからです。

ボートに乗っている人が船首を力いっぱい押してもボートは動きませんがオールを用いるとオールが水に力をおよぼしその反作用として、水がオールを前方へ押すことになります。

ボートが前進するのは、この力のためです。

力は、手と壁のように、2つの物体が直接触れあっている場合にも磁石の力や電気の力、万有引力などのように2つの物体がはなれている場合にも伝わります。

そして、作用反作用の法則は、いずれの場合にも、成り立っています。

ここで注意しておきたいことは、作用反作用の法則と二力のつりあいとは根本的に違うもので2つの物体がお互いにおよぼしあう力が作用反作用であり1つの物体に、2つの力がはたらくのが二力のつりあいです。



抗力

物体が1つの面と接しているとき物体がその重さで面を押す力の反作用として、その力と反対の向きで大きさの等しい力が物体を押し返しています。

この力を抗力と言います。

左の図のように面が水平面の場合と斜面の場合では物体がその面とつりあっている状態は、それぞれ違います。

物体が水平面上で静止しているとき抗力は、物体の重さの力とつりあっています。

しかし、面の一方を上げていくと、ある点までは静止していますがやがて物体は、その面にそって滑り落ちます。

物体が斜面上で滑り落ちないときは2つの力、すなわち、斜面に垂直にはたらく垂直抗力と斜面に平行にはたらく摩擦力との合力と物体の重さの力とがつりあっているからです。

物体が斜面を滑り落ちるときは物体の重さの力のほうが合力よりも大きくなるからです。

撃力

2つの物体が、ごく短い時間だけふれあい、すぐにはなれる場合ふれあっている間に、互いに押し合う力を撃力と言います。

2つの物の衝突が、この例です。
金槌で、釘を打ち込むとき、バットでボールを打つとき車と車とがぶつかるときなどにはたらく力が撃力です。

撃力は、物体が重いときほどまた、衝突する前の速さが大きいときほど、大きくなります。
電車にトラックが衝突したときなどは、非常に大きな力がはたらくので固い鉄の車体が、あめのように曲がったりします。

撃力のときにも、作用反作用の法則が成り立っています。
2つの物体が、互いに受ける力は、反対向きで、等しい大きさです。

かなづちで釘を打つ場合、釘の受ける力とかなづちの受ける力とは同じ大きさです。

石で貝殻を叩くと、貝殻は、粉々に潰れます。
この場合も、貝殻が受ける力と、石が受ける力は同じ大きさです。
ただ、貝殻のほうがもろいので、潰れてしまうのです。

力の大きさが違っているのではありませんから。
間違えないようにしましょう。




力の三要素とは?力の大きさの単位と表し方とは?

力のあらわし方

私たちは、山でブルドーザーが大きな木を押し倒し岩を砕いている風景や港でクレーンが重い荷物を軽々と持ち上げて船に積み込んでいる風景を見かけます。

ブルドーザーやクレーンが私たち人間よりもより大きな力をもっていることを私たちはよく知っています。

ところが、私たちは、この力を直接に目で見ることはできません。
ただ、筋肉の感じや、物体の動く様子で知るだけです。

そこで、自然の現象や機械のはたらきを調べるには力について正しく知ることが必要です。


力の三要素

物体に力がはたらくと、いろいろの変化が起きますがその力のはたらきは力の大きさ、力のはたらく向き、力のはたらく点(作用点)の3つのことがらで決まります。

この3つを、力の三要素と言います。

力を考えるときには、いつも三要素をはっきりさせることが大切です。
つまり、物体のどこに、どれほどの大きさでどちらの向きに力がはたらいているか、ということを考えるのです。

力の大きさ

私たちは、筋肉の感じで、強い力、弱い力、大きい力、小さい力というような区別はできます。

しかし、ある力が、ほかの力の何倍であるかをくわしく知ることはできません。

また、同じ荷物でも、はじめは軽く感じますが疲れてくると重く感じます。
そこで、ばねばかりを使って力の強さを正確にあらわす方法が考えられます。

ばねばかりの一方のはしをとめておいて、他のはしをある強さの力でひっぱると、ばねは、ある長さだけ伸びてとまります。

この場合、力が強いほど、ばねの伸び方は大きくなります。
そこで、ばねの伸びた長さをくらべて、ある力がほかの力の何倍であるかを知ることができます。

したがって、ある力を標準にして、その力の大きさを1と決めておけばほかのすべての力は、その大きさを数であらわすことができます。



力の大きさの単位

1グラムの分銅の重さ、つまり、この分銅を地球がひいている力(重力)を1グラム重の力、またはかんたんに、1グラムの力と言います。

これが、力の大きさの単位です。

このほか、ダインやニュートンなどという単位も使います。

1グラム重=980ダイン
1ニュートン=100000ダイン

力の向き

ある力が、物体にはたらいているといってもどの向きにはたらいているのか、押しているのか引いているのかをはっきりさせなければなりません。

このことを。力の向きと言います。
また、力の向きに引いた直線のことを、作用線と呼びます。

力の作用点

同じ向きの、同じ大きさの力であっても物体のどこにはたらくかによって、物体にあたえる影響は違います。

そこで力が物体にはたらく点を、はっきりさせておく必要があります。

力のはたらいているところを、作用点と言います。
たとえば、ドアのとってに手をかけてドアを開けるときにはドアのとってが、力の作用点になっています。

力を図であらわす方法

力を図に書いてあらわすには、矢印を使います。
矢印を使うと、力の三要素を、はっきりとあらわすことができます。

この場合、矢印の根もとが力の作用点を矢印の長さが力の大きさを矢印の向きが力の向きを、あらわすようにします。

矢印を書くとき、とくに気をつけなければならないことは力の作用点に矢印の先がこないようにすることです。




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