炭化水素の種類と性質とは? わかりやすく解説!

石油や天然ガスの成分は、そのほとんどが炭化水素です。
いろいろな炭化水素は炭素原子のむすびつき方によって、種類も性質も違います。


炭化水素の種類

天然のもの、人工のものすべてをあわせて炭化水素を分類するとつぎのようになります。

天然ガスの成分になる炭化水素は、ほとんどパラフィン系炭化水素ですが石油の成分としては、パラフィン系・ナフテン系のほかに芳香族もふくまれます。

鎖式炭化水素と環式炭化水素の大きな違いは、鎖式炭化水素分子の炭素原子がくさりのようにつながっているのにたいして、環式炭化水素の分子は炭素原子側のようにつながっていることです。

パラフィン系炭化水素

パラフィン系炭化水素の分子は、水素原子の数が炭素原子の数の2倍より2個多い割合でつくられています。

たとえば、メタン分子は炭素1原子と水素4原子からエタン分子は炭素2原子と水素6原子からできています。

パラフィン系炭化水素のうち、分子にふくまれる炭素原子の少ないものは気体やや多くなると液体、炭素原子の数が15以上になると固体になります。

また、パラフィン系炭化水素は、水にはまったく溶けずアルコールには少し溶けるものと、よく溶けるものとがあります。

ほかの物質と化合しにくいのが特徴です。

炭素原子数が四で、しかも分子式が同じでありながら構造式の違うブタンとイソブタンがあります。

このように分子式が同じで構造式が違うものを異性体とよびます。

異性体は、炭素原子が四個以上のパラフィン系炭化水素には必ずあり分子の構造が違うために性質も違ってきます。

たとえば、正オクタンとイソオクタンは異性体ですがガソリンの成分としては、はるかにイソオクタンのほうがすぐれています。

オレフィン系炭化水素

モノオレフィン系炭化水素の分子は、炭素原子が同じ数のパラフィン系炭化水素分子とくらべると、水素原子が2個少ないのが特徴です。

たとえばモノオレフィソ系のエチレンの水素の数はパラフィン系のエタンより2個少なくなっています。

これは、分子中の炭素原子の結合の手が一か所、2本でむすびあっているためにおこることでこのようなむすびつき方を、二重結合といいます。

モノオレフィン系炭化水素のおもなものはエチレン・プロピレン・ブチレンなどです。

モノオレフィン系炭化水素は、水には溶けませんがアルコールには溶けます。
また、二重結合をもっているので、その部分が他の物質とむすびつきやすく付加反応や重合反応をおこしやすいのです。

ジオレフィン系炭化水素は、分子内に二重結合を2つもっていて性質はモノオレフィン系炭化水素によくにています。



アセチレン系炭化水素

アセチレン系炭化水素はオレフィン系炭化水素にくらべると分子内の水素原子の数が、さらに2個少なくなっています。

たとえば、炭素原子2個のアセチレン系炭化水素アセチレンは三重結合をもっていて、その構造式はH-C≡C-Hです。
水素原子の数がエチレンよりも少ないのはこのためです。

この三重結合は二重結合よりさらに不安定なのでアセチレンは他の物質と反応して化合物をつくりやすい性質があります。

ナフテン系炭化水素

ナフテン系炭化水素は、炭素原子数が同じである場合には分子式はモノオレフィン系炭化水素と同じですが、構造式が違います。

ナフテン系炭化水素には二重結合がなく、炭素原子が輪のようにつながっています。

性質は安定で、パラフィン系に似ています。

芳香族炭化水素

芳香族炭化水素は、ベンゼン核をもっているのが特徴です。
ベンゼン核は、左にしめしたように炭素原子6個が輪のようにつながり、1つおきに二重結合をもったものです。

この二重結合は、オレフィン系と違って、非常に安定です。

多環式芳香族炭化水素は、ベンゼン核が1個(単環式)ではなく2個以上あるものをいいます。



天然ガスの種類・成分・用途とは? わかりやすく解説!

天然ガスとは、天然に地中からでるガスのことです。

広い意味では、二酸化炭素のような燃えないガスや二酸化硫黄・硫化水素のようなガスも天然ガスにふくまれますがふつうは、メタンのような、燃える炭化水素が主成分になっているガスのことを天然ガスといっています。


天然ガスの種類

天然ガスには、油田ガス・炭田ガス・共水性天然ガス・構造性天然ガスなどの種類があります。

油田ガスは、原油といっしょに油層の中にたまっているもの炭田ガスは、石炭の層に溶けこんだり、吸いつけられたりしているものです。

また、共水性天然ガスは海水の10分の1くらいの濃さの塩水に溶けて地層にふくまれているものです。

構造性天然ガスは、これらのガスと違って天然ガスだけが地層の中にふくまれているものです。

これらの天然ガスをとりだすためには石油をくみだす油井と同じようなガス井をほって吹きださせたりポンプでくみだしたりして集めます。

天然ガスの成分

天然ガスの成分は石油と同じように、いろいろな種類の炭化水素です。
しかし、石油の主成分が、ふつうの温度では液体になるような大きな分子の炭化水素であるのにたいし天然ガスの主成分は、ふつうの温度では気体になるような、小さな分子の炭化水素です。

天然ガスには、炭素原子1つの炭化水素メタンだけしかふくまないものとメタンのほかに、エタン・プロパン・ブタンなどをふくむものとがあります。

メタンだけの天然ガスを乾性ガスといいプロパンやブタンをふくむものを湿性ガスといいます。
これは、プロパンやブタンは、冷やしたり、圧力をかけたりすると液体になるからです。

日本の天然ガスは、秋田県や新潟県の油田からでる油田ガスが湿性であるほかは
ほとんどすべて乾性ガスです。
とくに新潟県・千葉県では、共水性の乾性ガスが、非常に多くとれています。

世界の天然ガス生産高の、65パーセン卜をしめるアメリカ合衆国では油田からでる、湿性の油田ガスが、そのほとんどをしめています。



乾性ガス

天然ガスの成分は、炭化水素ですから、燃料として利用されます。
ところが、メタンは、プロパンやブタンと違って、非常に液体になりにくいのでパイプでひいて使ったり、高い圧力に耐えるボンベにつめて運びそれからとりだして使ったりしています。

たとえば、アメリカ合衆国や西ドイツでは天然ガスのとれる地域から都市までパイプをひいて天然ガスを都市ガスとして使う方法を、以前からおこなっています。

日本でも、新潟県の天然ガスをパイプで東京におくりほかのガスにまぜて東京付近の家庭に供給することになり1963年11月から、はじめられています。

このほかメタンはホルムアルデヒド・アセチレンなどの原料として使われこれらの薬品からたくさんの化学製品がつくられています。

湿性ガス

湿性ガスにふくまれる、プロパンやブタンは、たやすく液化されるので液化石油ガスと同じように利用されています。

かんたんに液化しないメタンやエタンなどは、乾性ガスのメタンと同じように利用されます。



コールタール・コークス・人造石油とは? わかりやすく解説!

コールタール

コールタールは、黒色でねばり気のある油状のもので、特有の臭気があります。
水よりも少し重く、比重は1.1~1.2℃ぐらいです。

コールタールは、むかしは木材の腐るのをふせぐ塗料、鉄のさびどめの塗料などとして一部分が利用されるだけで大部分はあまって、始末の悪いものとして捨てられていました。

しかし、蒸留して細かく分ける(分留)と貴重な化学薬品がとれることがわかってきて、コールタール工業が発達しました。

ところが、最近になって石油化学工業が非常に発展してきてこれまでコールタールからつくられていた化学薬品のほとんどを石油からもつくるようになりました。

コールタールは、化学薬品の原料としては石油よりも不経済なのでますます石油が利用されるようになりました。

しかし、世界中にある石油の量は石炭ほど多くありません。
ですから、たくさんある石炭を原料とする石炭化学工業もやがてさかんになるでしょう。


コークス

製鉄用コークスは強粘結炭をおもな原料とする硬いコークスで鉄鉱石や石灰石とともに溶鉱炉に入れられ銑鉄をつくるのに使われます。

それで、製鉄業の発展とともに、生産量は増えています。
コークスはこのほか、力ーバイドや水性ガスの製造に使われたり燃料として利用されたりします。

ガス化

石炭を発生炉ガス・水性ガスなどにかえることをガス化といいます。

発生炉ガス

発生炉ガスは、耐火レンガ製の発生炉の中に石炭またはコークスを入れて赤熱し、水蒸気をまぜた空気をおくってつくります。

発生炉ガスのおもな成分は一酸化炭素と窒素で、発熱量はわりあいに低く1立方メートルあたり1000~1700カロリーぐらいで、工業用燃料として使われます。

水性ガス

水性ガスは水素と一酸化炭素がおもな成分で窒素は少ししかふくまれていません。
高温に熱した石炭やコークスに水蒸気をとおすか粉炭に水蒸気と酸素を同時におくりこんでつくります。

しかし、水性ガスは、石炭を原料とするだけでなく石油や天然ガスを原料としてもつくられるようになりました。

しかも、そのほうが経済的なのでコークスや石炭を原料にすることは非常に少なくなりました。



人造石油

第二次世界大戦中に、ドイツや日本など石油資源の少ない国では石炭から石油をつくりだすことが考えられました。

そして非常な努力の結果つくりだされたのが人造石油です。
しかし、人造石油の値段は天然石油よりはるかに高いので戦争が終わると製造が中止されました。

人造石油をつくるには、3つの方法があります。
その1は石油直接液化法といわれるもので、細かく砕いた石炭を重油とまぜこれに触媒と水素をくわえて高温・高圧で反応させて、石油をつくります。

その2は石油合成法といわれるもので石炭をガス化して水素と二酸化炭素にかえ触媒といっしょに200℃、1~50気圧ぐらいで反応させて石油をつくります。

その3は、石炭の低温乾留でできる低温タールに水素をくわえ高温・高圧にして石油にします。

これらの方法は人造石油の製造に使われるだけでなくいろいろな化学薬品の製造にも利用されますが現在では石油から製造するほうが安くできるので、この方法は実用化されていません。

しかし何十年か後に、石油の生産量が減ったり採油に手数がかかったりして石油の値段が高くなったときに石油よりはるかにたくさんある石炭を原料とするこれらの方法がもういちど見なおされるでしょう。



石炭の用途とは? 石炭ガスとは? わかりやすく解説!

石炭は、石油とともに古くから燃料として使われてきました。
現在は、電力や石油・天然ガスなどの利用がさかんになってきたために燃料としての石炭の重要性は少なくなりました。

しかし、石炭は、燃料としてだけでなく石油・天然ガスとともに、化学工業の原料として、現在でも使われています。


石炭の乾留

石炭を細かく砕いて試験管に入れ、ガラス管のついた栓をした装置をつくりガスバーナーで熱します。

はじめは無色の気体がでますが、しばらくして黄色い煙がではじめます。
この煙に火をつけると勢いよく燃えます。

さらに熱し続けると、煙の色が黄色からうすい紫色にかわります。
この煙もよく燃えます。さらに熱し続けて煙のでが悪くなったらバーナーの火を消します。

試験管を観察すると、底に黒灰色の硬いかたまりが残り試験管の入口には黒くてねばり気のある液状の物がたまっています。

このとき、はじめにでてきた無色の気体は水蒸気や二酸化炭素です。
黄色い煙はタールの蒸気をふくんだ石炭ガス、うす紫色の煙は水素をたくさんふくむ石炭ガスです。

また、試験管に残った固体はコークス、液体はタールです。

このように石炭を蒸し焼きにすることを石炭の乾留といいます。
石炭を乾留すると、石炭ガスを発生して、コークスとタールができます。

石炭の乾留は、温度が300℃ぐらいからはじまります。
分解の進み方は温度が上がるにつれて激しくなり500℃ぐらいでガスやタールがもっともよく発生し、600℃になるとタールはでつくしてしまいます。

しかし、コークスの中には、まだガスになる成分が分解せずに残っているので600℃以上に温度が上がっても、ガスはでます。
そして1000℃ぐらいで、ガスはほとんどでつくしてしまいます。

乾留のうち、600℃ぐらいで乾留するのを低温乾留といい1000℃ぐらいで乾留するのを高温乾留といいます。

高温乾留は古くからおこなわれている重要な方法で現在でも、都市ガスエ業・コールタールエ業・製鉄業などでさかんに使われています。

高温乾留では、弱粘結炭か強粘結炭を原料とします。
高温乾留でできるガスは、石炭ガスまたはコークス炉ガスとよばれます。

タールはコールクールとよばれ、低温乾留の場合よりとれる量は少ないのですが高温のために成分の炭化水素が変化して、ベンゼン系炭化水素を多くふくんでいます。

乾留をおこなうには、ふつう、耐火レンガでつくった容器の中に石炭を入れ外側から熱します。高温乾留を、大規模におこなう装置としてはコークス炉が使われています。



石炭ガス

石炭ガスの成分は、水素40~50パーセント、メタン30~40パーセント、一酸化炭素7~10パーセント、重炭化水素(エタンやエチレン)3~7パーセントでそのほか二酸化炭素や窒素・酸素なども、少しですがふくまれています。

現在、製鉄会社では、石炭ガスを平炉・コークス炉などの燃料として使っています。
また都市ガスエ業では、石炭ガスを都市ガスの主成分として利用しています。

むかしは、都市ガスとして石炭ガスをそのまま使っていましたが最近では、石炭ガスのほかに、発生炉ガス・増熱水性ガス・油ガス・LPガス(液化石油ガス)・天然ガスなども利用されるようになりました。

そのため、都市ガスの成分としては、石炭ガスの割合は減ってきましたがそれでも40パーセント以上をしめています。

石炭ガスは水素を多くふくむので、合成化学工業の原料として利用されます。
最近では、製鉄工場であまった石炭ガスを原料として利用する化学工業がいくつもできました。



モバイルバージョンを終了