シャシ
自動車の骨組みのうち、いちばんもとになっているのはフレームとよばれる鋼材の枠組みです。
これは、自動車にとって、人間の背骨にあたるほど大切なものです。
このフレームにエンジンや動力を伝えるいろいろな装置、車輪などをとりつけたものを、シャシと言います。
シャシにボデーをつければ、自動車ができあがります。
最近の乗用車ではフレームとボディーをいっしょにしてフレームを用いない
フレームレスボディー(モノコックボディー)を使う自動車も多くなってきています。
エンジン
自動車には、軽くて小さく、しかも、力の強いガソリンエンジンのほか
軽油を燃料とするディーゼルエンジンがおもに使われます。
ふつうは、これらのエンジンを自動車の前部におき後輪をまわす仕掛けが多く取り入れられています。
しかし、土木建設、農耕作業用や軍用自動車などには後輪とともに前輪もまわして走る、全輪駆動車もあります。
エンジンを冷やす方法には空冷式と水冷式とがありますが自動車のエンジンには水冷式がおもに使われています。
空冷式は、しくみがかんたんで軽いのでおもに二輪車や小型の自動車に使われています。
自動車のエンジンの形にはまっすぐにならべた直列配置型、V字形にならべたV型、水平に向かいあわせてならべた水平対向型があります。
また近頃では、ふつうのエンジンのようにピストンの往復運動をクラック軸に伝え、これによって回転力を取り出すのではなく回転するロータ(ピストン)から直接に回転力を取り出すようにしたロータリーエンジンも使われるようになりました。
自動車がゆれないしくみ
自動車のフレームと車軸とのあいだには、ばねやショックアブゾーバという油の入った円筒が取り付けてあります。
これらは、自動車が走っているときに受ける衝撃や、振動を弱めるためのものです。
このほか、最近の自動車には独立けんがという車輪の取り付け方をしたものがあります。
これは、車輪が穴に落ちたり、石に乗り上げたりしたときその車輪だけが上下して、自動車全体があまり揺れないようにした仕組みです。
独立けんがは、前輪だけに取り付けたものと乗り心地をよくするために、前後の車輪に取り付けたものとがあります。
自動車のばねには鋼鉄を使った重ね板ばねやつるまき(コイル)ばね、ねじり棒(トーションバー)などが使われています。
このほか、ゴムの袋の中に空気をつめて空気の弾力を利用した空気ばねなどがあります。
空気ばねを使うと鋼鉄のばねよりも衝撃や細かい振動が伝わりにくいので、乗り心地がたいへんよくなります。
最近では、ばねにショックアブソーバを使った自動車が多くなりました。
ショックアブソーバを使うと振動をはやく沈めるはたらきが加わるので乗り心地がよくなるとともに、安全に走れます。
前輪の取り付け
前輪の取り付け方には自動車が楽に走れるように、いろいろの工夫がしてあります。
キャンバ
自動車を前から見ると、前輪はまっすぐ立っていないで少し外側に傾いています。
この傾き具合(角度)をキャンバと言います。
これは、かじをとるときに、タイヤが地面に接する点と車輪の軸が首をふって向きをかえる中心とを近づけかじとりハンドルの動きを軽くするためです。
トーイン
左右の車輪に、それぞれキャンバをつけて、上のほうを外側に傾けておくと左右の車輪は、それぞれ外側の方向に回転して進もうとします。
これを正しい進行方向に向け直すために上から前輪を見たとき両側の車輪の先のほうを、少しつぼませて、せまくしてあります。
このつぼみ具合をトーインと言います。
キャスタ
自動車を横から見ると、前輪を車軸に止めているキングピンは地面に対して直角ではなく、少し傾いています。
この傾きを、キャスタと言います。
これによって、前輪はいつも進行方向に向きやすくなり、かじとりハンドルが安定します。
これらの前輪の取り付け方を、前輪の整列とよんでいます。
かじとリ装置
かじとり装置は、運転する人が、自動車の進む方向を自由にかえられる仕掛けです。
ふつうは、輪になったハンドルをまわして前輪を動かし、進む方向をかえます。
ハンドルを進もうとする方向にまわすとハンドル軸がまわり、その先にあるウォームがまわります。
ウォームは、セクタギヤとかみあってしてその軸につながる腕を、押したり引いたりします。
この動きは、ドラックリング(引き棒)から前輪の軸につながる腕に伝わって、車輪の向きをかえます。
また、この動きは、タイロアドによって反対側の前輪を動かす腕にも伝えられます。
このため、左右の前輪は同じように操られます。
これらの仕掛けは、動きが重かったり、振動を起こして不安定となったり、外れたり、折れたりすることがなく、高速で走ったり、悪い道路を走ったりしても、正確で楽に運転できるように工夫してつくられています。
なお、エンジンのまわる力の一部を利用して、かじとりハンドルを軽く確実にまわせる、パワーステアリングという装置もあります。
ブレーキ装置
自動車の速さは、アクセルペダルで加減されますが、自動車を停止させたり坂を下りるときや、惰力で走るときの速度を落としたりするにはブレーキを使います。
自動車の車輪の内側にはブレーキをかけるための鉄の車(ブレーキドラム)があります。
これに、ブレーキシューを押し付けると、その摩擦によってブレーキがかかります。
ブレーキシューには、石綿をゴムや合成樹脂で固めたもの(ライニング)がはってあり、大きな摩擦がはたらくようにしてあります。
このようなブレーキをドラムブレーキと言います。
また、ブレーキドラムのかわりに、円板(ディスク)を使ったものもありディスクブレーキと呼ばれています。
ディスクブレーキはブレーキの利きが安定していて安全に運転することができます。
最近、スポーツカーなどで、さかんに使われるようになりました。
ブレーキの性能は、時速50キロで走っているとき急ブレーキをかけてその停止距離が22メートル以下、時速35キロのとき14メートル以下時速20キロのとき5メートル以下と、規則によって決められています。
すぐれた自動車は、手入れが完全なら、この半分くらいの距離でも停止できます。
ブレーキをはたらかせる仕組みには、足ブレーキでは油の圧力を利用するオイルブレーキがおもに使われています。
このブレーキは、油を送る管が破れると全車輪のブレーキが利かなくなる恐れがあります。
また、坂道の途中で駐車させておくときには、足ブレーキを使うことができません。
そこで、推進軸を機械的に締め付けたりブレーキドラムを外側から締め付けたりする駐車ブレーキが設けられています。
これには、手ではたらかせるものと、足ではたらかせるものとがあります。
ブレーキには、このほか、てこを利用した機微ブレーキ、圧縮空気を利用した空気ブレーキ、エンジンの吸入力を利用した真空ブレーキなどがあります。