葉のつくりとは? 表皮・気孔・水孔とは? わかりやすく解説!

葉のつくり

葉は、でんぷんなどの養分をつくったり、呼吸をしたり体の水分を調節したりするなど、大切なはたらきをしています。

また、このほかに、形をかえてさまざまなはたらきをしています。

このようなはたらきをする葉は、どんな形やつくりをしているでしょうか。

葉は、葉身・葉柄・たく葉(そえ葉)の3つの部分からできています。
たとえば、サクラの葉をとってみると平たい葉のおもな部分が葉身で葉の柄のところが葉柄です。

そして、たく葉というのは葉柄の根もとにある小さな2枚の葉のことです。

たく葉は、たいていのものにありますが、これをもっていない植物や、あってもはやく落ちるので目立たないものもたくさんあります。


表皮

葉を横切りにしてみると、葉のいちばん外側に、うすい表皮があるのがわかります。
この表皮に囲まれた中の部分を葉肉と言います。

表皮は、一層の細胞からなり外側の細胞膜は、内側のよりも厚くなっています。

この表皮の外側が、カシやシイなどの葉のように、とくに硬くなったものをクチクラ(角皮)と言います。

また、この細胞膜にろうがふくまれているとツバキの葉のように、硬くて、つやのある葉になります。

この表皮の細胞には、葉緑体はふくまれていません。

気孔

たいていの植物では、葉の裏側の表皮のところどころに気孔という穴があいています。

これは、呼吸や光合成のとき、酸素や二酸化炭素を出し入れしたり体の水分を水蒸気として外に出すところです。

この気孔の入り口には孔辺細胞という特別な形の、2つの細胞があります。
この孔辺細胞は、ふつうの表皮の細胞とは違って葉緑体をふくんでいます。

孔辺細胞は、水分が多くなってふくらむと、2つの細胞が外側に曲がり気孔を広げ、水蒸気が外に出やすいようになります。

水分が少なくなると、もとにもどって気孔を閉じ水蒸気が外にでないようになります。

このような気孔のはたらきによって葉の中の水分を調節することができるのです。

水孔

夏の朝などに、イネやタケなどの葉のふちに水玉がついていることがあります。
これは、葉のふちにある水孔という穴から出た水です。

水孔は、気孔に似た形をしていますが葉身のふちにあって、葉脈のはしに口をあけています。
そして、気孔とは違って口を開閉することはできません。

植物が、生活に必要な養分や水分を、根から吸収して茎の先端まで上げるためには葉から水を蒸散させなければならないのですが気孔が閉じているときには、気孔から水を蒸散させることができません。

こんなときは、葉脈を通して、水孔から液体のままで押し出すのです。

葉の内部

葉の内部を見ると上のほうに縦に細長い細胞がぎっしりつまっています。

下のほうになるにつれ、いろいろな形の細胞が網のめのようにつながり、隙間が多くなっていて、気孔を通して外の空気に通じています。

葉の内部の細胞は、みな葉緑体をもっていて、光合成をしています。
葉が緑色に見えるのは、この葉緑体のためです。

葉のすじ

葉のすじ(葉脈)は養分や水分の通り道で茎の維管束につながっています。

イネ・ササ・チゴユリのように、このすじが平行しているものを平行脈と言い、これは単子葉柆物の特徴の1つになっています。
バショウ・ショウガなどのように横の方向に平行しているものもあります。

また、すじが網のめのようになっているものを網状脈と言いキク・サクラ・ヒイラギなどに見られます。

葉ならび

葉が、茎につく様子を、葉ならび(葉序)と言います。

茎のふしに、葉が1枚ずつついているものを互生(アサガオ・ドクダミ・サクラ・テッポウユリなど)2枚ずつ向きあってついているものを対生(ハコベ・ナデシコなど)3枚以上の葉が、1つのふしについているものを輪生(ヤエムグラ・ツリガネノウ・クロモなど)と言います。



葉の形

葉は、植物の種類によってさまざまな形をしていますがふつうは1本の葉柄に1枚の葉(葉身)がついており、これを単葉と言います。

また、葉身いいくつかの小さな葉(小葉)にわかれているものを複葉と言います。

複葉でも、バラやサンショウのように、葉柄が羽根のように枝を出し、これに小葉がついているものを羽状複葉と言います。

アケビやトチノキのように葉柄の先に小葉がたくさんついて手のひらのようになったものは掌状複葉と言います。

また、葉のへりには、滑らかなものと、いろいろな形の切れ込みのあるものとがあります。

葉身の形も、マツのような針形、エンドウのような長円形、シュウカイドウのような心臓形、ニセアカシアなどのようなたまご形、スミレのようなさじ形など、さまざまなものがあります。

葉のかわったもの

葉には、特別なはたらきをするために姿をかえてしまったものがあります。
エンドウのまきひげ、サボテンのとげ、タケノコの皮などは、みな葉のかわったものです。

また、モウセンゴケ・タヌキモ・ムジナモ・ウツボカズラなどの食虫植物の葉は、小さな虫をとらえるために特別な形になり捕虫葉と言われています。

珍しい葉

食虫植物のウッボカズラの葉(捕虫葉)は、先がふくろになっています。
そして、その底に液体があって、中に入った虫は、この液体で溶かされ、養分にされてしまいます。

また、イシコロマツバギクは南アフリカの強い日光が直射する乾燥地にはえますが葉が水をたくわえてまるくなり表面が茶色で、まわりの小石と区別できないくらい、よく似ています。

ウェルウィッチアも、アフリカの砂漠にはえていて2枚のベルトのような葉をだしますが、この葉は年々生長して長さ2メートルくらいにまで伸び、100年以上も生きています。




茎の形とは?芽・節・つるとは? わかりやすく解説!

茎の形

茎は、芽・花・葉などをつけて、上へ上へと伸びていきます。
茎を手にとってみると、これらのものが、みな規則正しくついていることがわかります。

茎は、1本だけで枝わかれのしないものもありますが、たいていの植物は枝わかれしています。

枝は、わき芽が伸びたものですが長く伸びた長枝と、あまり長くならない短枝とがあります。

マツやイチョウなどの枝は、毎年、規則正しく伸びていくので前の年の葉や枝のあとを調べれば1年間に伸びた枝の長さがわかります。


茎や葉・花のもとになるものをふくむものを芽と言います。
芽には、茎の先につく頂芽と、わきにつくわき芽とがあります。

そして、これらの芽の・うち、やがて花になるものを花芽、葉になるものを葉芽と言います。

また、頂芽とわき芽をふくめて定芽、茎の先や葉のわきにできる芽以外のものを不定芽とわけることもあります。

多年生の草や木は、冬を越すために芽をりん片でつつみますが、このような芽を冬芽と言います。
草などで、その年にでて冬を越さない芽は、夏芽と言います。

茎や枝が伸びるのは、芽の中に生長点というところがあって、ここでどんどん細胞か増えるからです。

ふし

風で倒されたムギなどの茎が、いく日か経つと起き上がっているのを見ることがあります。

イネ・ムギ・タケなどの単子葉植物の茎には、ところどころにふしがあります。

ふしのところは、少し太くなって、ここに葉がついています。

ふしのすぐ上には、細胞の増えるところがあるので茎が横倒しになるとここの細胞かさかんに増え、茎は、ふしのところから、起き上がることができるのです。

このように、ふしのところで細胞が増えるのは、単子葉植物の特徴です。

しかし、双子葉植物や裸子植物でも葉が茎についているところを、ふしと言います。

スギやヒノキの板などを見ると円形のふしがあります。
このふしは、幹からわかれた枝のあとです。

木のふしのところをたて切りにしてみると幹から枝のわかれる様子が、よくわかります。

草と木

草は、地上の茎が細くて、やわらかく、だいたい1年ぐらいしか生きていません。

種から芽を出して、しばらく生長すると、もう、それからは枯れるまで、あまり姿がかわりません。

イネ・ムギ・タケなどの茎は、中に穴があいていて、ところどころにふしがあり、枯れるまで太さがかわらないので、とくに、かんと言います。

木には、マツ・スギ・サクラなどのように幹が太くて高くなる高木とツツジやアジサイのように、幹のもとから、たくさんの枝を出した丈の低い低木とがあります。

つる

木や草には、つるを伸ばすものがありますが、つるといっても形はさまざまです。

つるには、まきひげ・付着根・とげなどで、ほかのものにまきつくよじのぼり茎(ブドウやツタなど)や直接、ほかのものにまきつく、まきつき茎(アサガオやヤマノイモなど)などがあります。

また、茎から出た枝が、地面をはって、ところどころで根や葉をだす走茎(オランダイチゴやヘビイチゴなど)もあります。

つるがまきつくものでも、アサガオのように左まきのものと、フジのように、右まきのものとがあります。

上から見てつるの先が時計の針と同じ方向に進むものが右まきで、これと反対のものが左まきです。

また、なかには、左右どちらにもまきつくものがあります。



茎のかわったもの

茎を大きくわけると、地上茎と地下茎になります。
地上に出て枝や葉を伸ばし、花を咲かせるのが地上茎です。

地下茎は地中に埋まっていて水分や養分をたくわえたり仲間を増やしたりする役目をします。

茎のなかには、特別のはたらきをするために、いろいろと形のかわったものがあります。

根茎

地下茎が横にはって、たくさんの根を出すもの。(タケ・ハス・スギナなど)

槐茎

地下茎に養分がたくわえられて、まるいかたまりのようになっているもの。(ジャガイモ・クワイなど)

りん茎

茎が小さくなって、葉に養分がたくわえられているもの。(タマネギ・ユリ・チューリップなど)

吸ばん

茎がほかのものに吸いついて、体を支えるはたらきをしているもの。(ツタ)

まきひげ

茎が、ほかのものにまきつく役目をしているもの。
(ヘチマ・ブドウなど)エンドウのまきひげは茎ではなく葉のかわったものです。

むかご

葉のわきの茎の一部に、養分がたくわえられてたまになったもの。(ヤマノイモ・オニユリなど)

とげ

枝があまり伸びないで先が針のようにとがったもの。(カラタチ・サイカチなど)

葉状茎

茎がひらたくなって葉のように見えるもの。(ナギイカダ・カニサボテンなど)

多肉茎

茎が水分をたくわえるように、厚くなっているもの。(サボテン)






茎のつくりとは? 茎と根の違いとは? 年輪・仮道管・樹脂道とは?

茎のつくり

草などの茎を切ると、切り口から、汁が出てきます。
この汁は、根から吸いとった水分や養分と、葉でつくられた。

養分をふくんだ水分などです。

茎は、これらのものが体のいろいろなところに運ばれるときの、通り道になるのです。

このような、大切な役目をする茎は、どんなつくりになっているか、くわしく調べてみましょう。


表皮・皮層・中心柱

サクラ・タンポポ・マメなどの双子葉植物やマツ・イチョウなどの裸子植物では、茎の表面に表皮という一層の細胞があります。

そして、その中に皮層と言う、やわらかい細胞でできた部分があります。
また、皮層の内側には中心柱という部分があります。

これらのつくりは、根と同じです。

木部・師部・形成層

中心柱のいちばん外側には、内皮と言う一層の細胞の層があり、その内部には、木部と師部とがあります。
それらのならびかたは、植物の種類によってさまざまです。

木部には、道管という、横のしきりのない管があって、根から吸いあげた水分や養分が、ここを通ります。

師部には、師管という網めのようなしきりが、ところどころについた管があります。

師管は、葉でつくられた養分を通す役目をしています。
これらのつくりも、根にあるものと同じです。

しかし、茎にある、木部と師部とのならびかたは、むかいあっていることもあり、木部のまわりを師部がとりまいていることもあり、植物の種類によって、さまざまですが、いずれも根とは、違ったならびかたをしています。

木部と師部とのあいだには根と同じように形成層と呼ぶ一層の細胞の層があります。

この細胞が分裂して木部の細胞や師部の細胞が増え茎はしだいに太くなっていくのです。

これらの木部・師部・形成層でひとかたまりになっているところを維管束と言います。

茎と根の違い

茎と根は、ひとつながりになっているので、どこまでが根で、どこから茎なのか、はっきり言うことは、難しいのです。

しかし、大きくわけて、つぎのように区別することができます。

① 茎には葉がつきますが、根には葉がありません。
② 茎と根とでは、道管や師管のならびかたが違っています。



単子葉植物の茎

イネ・ムギ・タケなどの単子葉植物の茎は内側に木部、外側に師部がありますが、そのあいだには形成層がありません。

双子葉植物や裸子植物では形成層で細胞が分裂して増えていくので茎が太くなっていきます。

しかし、形成層のない単子葉植物では茎は、はじめから、ほとんど太さがかわりません。

たとえば、タケノコは、どんどん伸びますが若いうちでも伸びきってしまってからでも太さは、ほとんど同じです。

木の幹

木の幹では、形成層が、さかんに細胞をつくって、だんだん太くなっていきます。

ところが、表皮は、細胞分裂をしてふとることができないので、やがて破れてしまいます。

また、そのころになると表皮のすぐ下にコルク形成層ができるので表皮ははがれ落ちてしまいます。

コルク形成層は細胞分裂をすることができ外側にコルク層という硬い層をつくって幹を保護し幹が太くなると、それにつれて、たくさんの細胞をつくります。

この形成層より外の部分を、樹皮と言います。
木が年をとって、しだいに樹皮が厚くなると幹が呼吸しやすいように、ところどころに、皮目という穴があきます。

サクラの幹などには、この皮目がよく見られます。
木の幹から、樹皮をはぎとった部分は、材と言います。

材の中心は心材または赤身と言い、濃い色がついていて硬くなり、死んだ細胞からできています。

そのまわりの、色のうすいところは辺材または白太と言い、やわらかい生きた細胞でできています。

根から吸いあげられた水分や養分は、この辺材の道管を通って、上にのぼっていきます。

仮道管・樹脂道

ふつうの木の材にある細胞は、おもに道管です。

しかし、マツやスギなどの裸子植物では道管がないかわりに仮道管という管があります。

仮道管は、道管と同じようなはたらきをします。
中に上下のしきりがあり、横に平たい穴で上下の細胞がつながっています。
仮道管も、死んだ細胞です。

また、マツやウイキョウなどの幹や枝には、たくさんの枝わかれした管が通っています。

この管は樹脂道と呼ばれ、中に樹脂をたくわえています。
ですから、このような木の幹や枝に傷をつけると、樹脂が出てきます。

年輪

サクラ・マツ・スギなどの木になる植物では形成層の細胞の増えかたが、とくにさかんです。

そして、春から夏にかけては細胞膜のうすい大形の道管ができ夏から秋にかけては細胞膜の厚い小形の道管ができます。

しかし冬は気温が低いために、体のほかの部分と同じように形成層も、はたらきが衰えてしまいます。

このために、新しい道管は、ほとんどつくられません。

春から夏にかけてできた部分を春材、夏の終わりから秋にかけてできた部分を秋材と言います。

幹を輪切りにしてみると、濃い色をした筋が見られますが、この筋のところが秋材です。

年輪というのは、1年間にできた、春材と秋材の輪のことです。

秋材のすじは、1年に1本ずつできるので、このすじを数えれば、その木の年令がわかります。

熱帯地方では、四季の区別がないために、年輪はできません。

しかし、雨の多い雨期と雨の少ない乾期との区別があるために、この2つの気候の違いによって、年輪に似たものができることもあります。




根のつくりとは? 表皮・皮層・中心柱とは? わかりやすく解説!

根のつくり

種をまくと、芽がでるまえに、まず、根がでます。
この根は、植物の体を支え、土の中から大切な養分を水といっしょに吸いとって、体のいろいろなところにおくります。

このように大切なはたらきをする根は、どんなつくりになっているのか調べてみましょう。


表皮・皮層・中心柱

根のいちばん外側には表皮とよばれる一層の細胞があって根をつつんでいます。

表皮の内側には、やわらかい細胞が、ぎっしりつまっていて、これを皮層と言います。
さらに皮層の内側には、中心柱という部分があります。

中心柱は、内皮とよばれる一層の細胞で、外側がつつまれています。

植物によっては中心柱のまん中に、ずいというやわらかい細胞の集まりをもつものもあります。

木部・師部

中心柱には木部という部分と師部(または師管部)という部分があります。
木部は、木質部とも言われています。

この木部と師部は、互い違いにならんで輪のように中心をとりまいています。

木などの根のように、年ごとに太くなる根では木部は内側に師部は外側にうつり、ずいを中心にして木部と師部がむかいあった形で放射状にならんでいます。

木部は、おもに道管(細長い細胞が管のようにつらなったもの)からできています。

この細胞は死んでいる細胞で中身はなくなって細胞膜だけが残ったものです。

そして、この細胞膜にはいくつもの穴があいていて水などが通りやすいようになっています。

また、道管と道管とのあいだには繊維や、やわらかい生きた細胞があります。

マツ・スギなどの裸子植物では、道管はありませんが道管と同じようなはたらきをする仮道管というものがあります。
仮道管も、管のように細長い細胞かつらなってできたものです。

師部は、師管という細長い細胞と、やわらかいふつうの細胞と、繊維とがまじってできたものです。

師管の上下のしきりの膜は師板とよばれ、ふるいのようにたくさんの穴がおいていて養分が通りやすくなっています。

植物によっては左右の壁にも穴があいていて師板になってしまったものもあります。
師管は、道管や仮道管と違って、生きている細胞です。

形成層

木の根のように、年ごとに太くなっていくものでは木部と師部とのあいだに、形成層という一層の細胞があります。

この細胞は、さかんに分裂して、内側に道管などの木部の細胞をつくり、外側に師管などの師部の細胞をつくっていきます。

こうして、根は、しだいに太っていくのです。

根のかたち

根のいちばん先には、根冠という部分があり帽子のように根の先を保護しています。
根冠のすぐ上には、生長点という部分かあります。

生長点の細胞は、さかんに分裂して先のほうに伸びていくので根はしだいに長くなります。

また、根の先近くには、細い毛がたくさんはえています。
この毛は根毛とよばれ、ここから地中の水分や養分を吸いとっています。



根のいろいろ

種の中の胚のうち、根になる部分を幼根と言います。
幼根が育つと、主根という太い根になります。
主根からは、横のほうへ側根という枝根がでます。

イネ・ムギのような植物では、主根が発達しないかわりに側根がたくさん出て、ひげ根とよばれています。

このように、胚の幼根からできる根を定根と言います。

よく生長した茎や葉などからも根が出てくることがありますが、これを不定根と言います。
さし葉やさし木によって出てくる根も不定根と見られています。

かわった根

根のおもなはたらきは、地中の水分や養分をとることと植物の体を、しっかり支えることです。

このほか、根には、つぎのようなはたらきをするものがあります。

塊根

地中に埋まっていて、養分をたくわえるための根で貯蔵根とも言います。
サツマイモ・ダリア・シャクヤクなどは、塊根をもっています。

気根

地上にある茎、ときには葉などからでる不定根や地中の根がとくに地上に伸びてきた根のことで、つぎのようなものがあります。

①吸水根

幹から垂れ下がって、空気中の水分を吸う根でセッコウ・タコノキ・アダンなどに見られます。

タコノキ・アダンなどでは、吸水根が地中にまでとどき、幹を支えるはたらきもしているので支柱根とも言います。

②付着根

キヅタ・テイカカズラのようにつるになる植物では、ほかのものにくっつくために、茎のところから根をだします。

このような根を付着根と言います。

③寄生根

ほかの植物の幹や根に入りこんで、それから養分を吸いとるための根です。
ヤドリギ・ネナシカズラなどの寄生植物の根は、寄生根です。

④呼吸根

マングローブ・ミズキンバイ・ラクウショウなどの水生植物では根を空気中に出して呼吸します。

このような根を呼吸根と言います。

水中根

ウキクサやヒンジモのように水に浮かぶ植物では体のつりあいを保つために、水中に長レ根を伸ばしています。

このような根を水中根と言います。




実の種類とは? 種のつくリとは? 種と実の違いとは?

実のいろいろ

植物の実は、種類によっていろいろな形をしています。

これを、実のできかたやふくまれている水分の多少から、つぎのようにわけることができます。


単果・複合果・集合果

実は、そのできかたから見て、3つにわけられます。

モモ・リンゴ・ブドウなどのように1つの花から1つの実ができるものを、単果と言います。

キイチゴやキツネノボタン・ダイコンソウなどは1つの花からたくさんの実ができますが、これを複合果と言います。

パイナップル・クワ・イチジクなどのように、たくさんの花が集まって1つの実ができるものは集合果と言います。

液果と乾果

実は、ふくまれている水分によって液果と乾果にわけることができます。
モモ・リンゴ・ミカンなどのように肉が厚く、水分の多い実が液果です。

また、イネ・ムギ・マメ類のように熟すと乾いて水分の少なくなるものを、乾果と言います。

果物はたいてい液果で、穀類はみな乾果です。

おもしろい実

イチジクの食べるところは花たくで、とくに、いちじく果というふくろになっています。
この中には、め花とお花が別々になってついています。
ですからイチジクの食べるところは、実とも花とも言えるのです。

クリのいがは、総包と言われるつつみで中にあるクリの実の硬い皮は、子房がかわったものです。

この皮より内側の部分が種にあたり、中には、子葉と若い芽があります。
また、実の先のとがったところは、花柱のあとです。

トウモロコシの種は、子房が熟したもので、実にあたります。
中には胚珠からかわったでんぷん質の胚乳と芽があり、これが種にあたります。

種と実の違い

まえにも説明したように、種は、胚珠がかわってできたものであり、実は、子房やそのほかの花の部分がかわってできたものです。

ですから、もとのものがなんであるかを調べれば種と実の区別がわかるわけです。

種(種子)

花の咲く植物は、ほとんどのものが種をつくります。
そして、シダやコケのように花の咲かない植物は、種をつくりません。

それで、花の咲く植物のことを種子植物とも言います。



種のつくリ

めしべに花粉がつき、子房の中の胚珠で受精がおこなわれると胚珠は生長して種になります。

種は、外側に種皮とよばれる皮をかぶっています。
この種皮は、胚珠の皮(種皮)がかわったもので種皮の内部には、ふつう胚乳と胚があります。

胚は、子葉・胚軸・幼根・幼芽の4つの部分からなり種が芽を出すと若い植物になります。

胚乳は、発芽した若い小さな植物が、ひとりで養分がとれるようになるまで、植物の養分になります。

このように、種の内部が胚と胚乳とからできているものを有胚乳種子と言います。
イネ・カキ・トウモロコシなどの種は有胚乳種子です。

しかし、リンゴ・クリ・マメ類などの種では胚乳の養分が子葉の中にふくまれています。
そのため、子葉がたいへん大きく、あつくなったものもあります。

このような種を無胚乳種子と言います。

子葉の数は、植物によっていろいろ違います。
アサガオ・サクラ・マメ類・ツバキなどでは子葉が2枚あるので双子葉植物と言います。

イネ・ムギなどの種は子葉が1枚なので、単子葉植物と言います。
裸子植物の子葉の数は種類によってまちまちで2枚から10枚あるものもあります。

アカマツなどは、6枚から8枚もあります。

種のいろいろ

ふつうの種は、硬い丈夫な種皮が外側をつつみ、内部を保護しています。
しかし、ナンキンマメ・モモ・ウメなどのように果皮や果皮の一部が硬く丈夫になっているものでは種皮がたいへんうすくなっています。

種の大きさは、植物の種類によってさまざまで大きな植物に大きな種ができ小さな植物に小さな種ができるとはかぎりません。

マツ・スギなどの種は、その木にくらべてたいへん小さくソラマメなどの種は、育った植物にくらべて、たいへん大きなものです。

ランの種は、1ミリにも足りない小さなもので1かぶのランに、何十万とつきます。

また、ヤシの種はたいへん大きなもので大きな実の中に直径10センチもある種が1つ入っています。

種にふくまれる養分

種は、実と同じように、いろいろな養分をふくんでいますが、そのおもなものは、でんぷん・たんぱく質・脂肪・ビタミンなどです。

イネ・ムギなどの種は、でんぷんを多くふくんでいますしダイズなどのマメ類は、たんぱく質や脂肪を多くふくんでいるので食用にされています。

また、アブラナやゴマの種のように脂肪がたくさんあるために油をしぼるものもあります。

ヤシの種も脂肪が多く、しぼった油からはマーガリンや石鹸・シャンプー・ろうそくなどがつくられます。




実のつくりとは? 果皮と種とは? 実の養分とは?

実(果実)は、花のいろいろな部分がかわったものです。

花が咲いて、めしべに花粉がつき、受精すると子房や花たく(花の台)やがくは実にかわり、胚珠は種にかわります。


ウメ・モモ・キュウリ・カボチヤ・スイカ・ナス・トマト・カキ・ブドウなどの実やエソドウ・アズキ・ダイズなどのマメのさやは子房がかわったものです。
この子房が実になったものを真果と言います。

しかし、リンゴ・ナシなどの実は、花たくがかわったものです。
そして、実の中の種をつつんでいる硬い部分が子房のかわったものです。

イチゴの実も花たくがかわったものです。
表面にある粒は子房のかわったもので、種の先についている短い毛は、めしべのなごりです。

ザクロの実は、め花のがくがかわったものです。

このように、子房以外のものが大きくなって実になったものを偽果と言います。

しかし、ふつうは真果と偽果をいっしょにして、実と言っています。

果皮と種

ふつうの実は、実の中心にある種と種をつつんでいる果皮とからできています。

果皮とは、実の皮や肉のことです。
ブドウやカキの食べるところは、肉が厚くなった果皮です。
果皮は、ふつう外果皮・中果皮・内果皮の3つにわけられます。

カキの実では、いちばん外側のふつうに皮といわれているところが外果皮で、その内側の、肉が厚くて水分を多くふくんでいる部分が中果皮、さらにその内側の、やわらかい部分が内果皮です。

種は、内果皮の中に埋もれているわけです。

ウメやモモの実では、内果皮が硬い皮になって、種をつつんでいます。
これはふつう、心または核と言われています。

ミカンの実では、いちばん外側の皮が外果果皮、皮の内側の綿のようなものが中果皮、ふくろの皮が内果皮です。

ふくろの中の食べるところは、子房の中にあった毛がかわって養分をたくわえているものです。



実の色

実の色は若いときはたいてい緑色をしています。
これは、実の皮や肉の表面に近いところに葉と同じようにクロロフィル(葉緑素)がふくまれているからです。

しかし、実が熟すと、ここにいろいろな色素ができるので、さまざまな色にかわっていきます。

実の色のもとになるのは花と同じように、おもにアントシアンとカロチノイドという色素の仲間です。

リンゴやブドウ・クワなどの実の、赤・紫の色は、たいていアントシアンの色です。

アントシアンにはいろいろな色がありますが、その色がみないっしょになると、ヤツデの実などのように黒くなります。

また、カキやミカン・トマト・カラシ・セイヨウカボチヤなどの実の黄や赤の色は、カロチノイドの仲間の色です。

カロチノイドの仲間は、たいてい黄色かだいだい色ですがトマトやトウガラシでは、実が熟すとカロチノイドのなかの1つのカロチンという赤黄色の色素が、たくさん集まって赤くなるのです。

実の養分

実は、いろいろな養分をふくんでいるので人や動物の食物や、いろいろな品物の原料になります。

実の味は種類によってさまざまです。甘い味はおもに糖分の味です。
酸味は有機酸(すの仲間)の味です。

有機酸は、リンゴ・ミカンなどの果物に、とくに多くふくまれています。

実には、このほかたんぱく質やビタミン類などが多くふくまれています。
果物には、とくにビタミンCが多くトマトの実にはビタミンAが多くふくまれ、栄養価の高い、よい食物です。




花の色・香り・蜜・形の種類と性質とは? わかりやすく解説!

花の形のいろいろ

花の形は、植物によっていろいろと違っていますが、これを大きくわけると、整形花冠と不整形花冠の2つになります。

整形花冠というのはウメ・サクラ・アサガオ・キキョウなどのような花です。
これらは、花を+の線でわけてみると縦線の左右も横線の上下も同じ形です。

これに対して不整形花冠というのはエンドウやキンギョソウなどのような形の花で縦線の左右は同じでも横線の上下の形が違います。


お花・め花

ふつうの花は、1つの花の中に、めしべとおしべがあるものです。
こういう花を両性花と言います。

ところが、ウリやカボチャでは1つのかぶに、おしべだけしかないお花とめしべだけしかないめ花とが別々に咲くものがあります。

こういう花は単性花と言い、お花もめ花も、みな不完全花です。
なお、こういう花のつきかたをするかぶを、雌雄同株と言います。

また。スイバ・カナムグラ・ホウレンソウ・イチョウ・ソテツなどでは、お花とめ花が、それぞれ別のかぶにつきます。

お花がつくかぶをおかぶ、め花のつくかぶをめかぶと言います。
このような花のつきかたをするものを、雌雄異株と言います。

大きな花、小さな花

世界でいちばん大きな花は熱帯地方の木に寄生する、ラフレシアの花です。
この植物は、直径が1メートルもある、大きな花を咲かせます。

また、いちばん小さな花を咲かせるのは、ウキクサの仲間です。
アオウキクサは、田や池の水面に浮いていますが裏側に直径1ミリほどの花を咲かせます。

ウキクサの仲間のなかでも、ミジンコウキクサは、もっと小さな花を咲かせます。



花の色

花には、さまざまな、美しい色があります。
これは、花びらの細胞の中に色素という色のついたものが、あるからです。

しかし白い花は、白い色素があるわけではありません。
花びらの細胞のあいだに、たくさんの空気があるので白く見えるのです。
これは、滝の水が、白く見えるのと、同じわけです。

青・紫・赤などの色をした花はアントシアンという色素をふくんでいます。
このアントシアンは、アルカリ性のところでは青、中性のところでは紫、酸性のところでは赤になる性質をもっています。

黄色の花にはカロチノイドという色素が、花びらの細胞の中にあります。
カロチノイドは、花だけでなく、植物の体のいろいろなところに、ふくまれています。

たとえばニンジンの根のだいだい色は、このカロチノイドによるのです。

花の香り

花の香りは、花にふくまれている精油または芳香油と呼ばれるもののにおいです。

スミレ・バラ・オレンジ・レモンなどからは、それぞれの精油を取り出して、香料をつくる材料にしています。

花の蜜

蜜は花びらの内側にある、蜜腺という小さなふくろからでます。

蜜は、花にとって大切な役目をしています。
虫が蜜をとりに花の中に入りこむと、虫の体に花粉がつきます。
このように蜜は、虫に花粉を運んでもらう、呼びえになるのです。

私たちが、食用にするはち蜜はミツバチが花から集めて、たくわえたものです。

サクラには、葉の付け根に近いところに蜜腺があって、ここから密を出しますが、これは、どういうはたらきをするものか、まだわかっていません。




花のつくりとは?おしべ・めしべ・花粉とは? わかりやすく解説!

花のつくリ

日本は、花の種類の多い国です。
春から夏にかけて咲く花は私たちの身のまわりのものだけでも数えきれないほどです。

そして、花の形もさまざまで植物の種類をみわけるときの目印になります。

しかし、そのもとになる形を調べてみると、たいてい、いちばん外側にがく(うてな)があり、その内側に花びら、さらにその中に、おしべとめしべがあります。

がく・花びら・おしべ・めしべなどのついている部分は、花たく(花の台)と言います。

その形には、さらのような円板形のものや、お椀形のものもあります。

花たくには、また、サクラ・タンポポ・ユリなどのように、花くび(枝から花を支えている部分)が長くなって花こうというものになっているものがあります。

このほか、モクレン・クリなどのように、花くびのないものもあります。


がくと花びら

おしべやめしべは、種をつくるために植物にとってなくてはならないものです。

また、花のそのほかの部分は、めしべやおしべをまもったり虫を呼んで花粉をめしべにつける仲立ちの役をしたりします。

がくは、ふつうは緑色で葉緑体をふくんでいます。
なかには、ユリやチューリップのように、がくと花びらが同じ色や形をしているものもあります。

アヤメのように、花びらとがくとの区別がつかない花もあります。

このような花は花びらにあたるものと、がくにあたるものをいっしょにして、花がいと言います。

また、花びらとがくとをいっしょにして花被と言い1つの花の花びら全体を花冠と言うこともあります。

完全花と不完全花

ナスやエンドウのように、がく・花びら・おしべ・めしべなどがそろっている花を完全花と言い、このうちどれかが欠けている花を不完全花と言います。

オオケタデの花は、花びらがなくドクダミやヤナギの花は、がくも花びらもありません。
これらは、みな不完全花です。

合弁花と離弁花

サクラ・バラ・アブラナなどのように花びらが1枚ずつはなれているものを離弁花、または離弁花冠と言います。

また、キク・キュウリ・キキョウ・アサガオ・ツツジなどのように花びらがひと続きになっているものを合弁花あるいは合弁花冠と言っています。



おしべ・めしべ・花粉

おしべは、花粉の入っているやく(花粉ぶくろ)と、これを支える柄の花糸とからできています。

花糸は、サクラのように1本ずつはなれているのがふつうですが。ツバキ・ムクゲなどは、花糸のもとが全部いっしょになっています。

また、エンドウでは1本だけ別になっていますし、アブラナなどでは、6本のおしべのうち4本は長くなっています。

タンポポやキクなどでは、やくが全部くっついています。

やくの中では、花粉がつくられます。花粉の表面には突起があり、ざらざらしていて、めしべにつきやすいようになっています。

ツツジなどでは、花粉に細い糸がついていて、めしべにねばりつきます。
花粉は、風に吹かれたり、昆虫や鳥の体について、めしべに運ばれます。

めしべは、花の中心にあって、その先の部分を柱頭、根もとの部分を子房、その中間の部分を花柱と言います。

子房の中には、胚珠があります。

胚珠は、その中の卵細胞と花粉管の中の精核とが受精すると生長して種となります。

ですから、イネやクルミのように種が1つしかできないものは、胚珠が1つです。
キュウリやヘチマのように、種のたくさんできるものは子房の中にたくさんの胚珠があります。

子房は、受精したのち、大きくなって果実になります。

子房の位置は、植物によって、さまざまです。
たとえば、ナスとキュウリをくらべてみるとナスではへた(がくのあと)が実のもとにありますがキュウリではへたが実の先にあります。

ナス型のものは、花のときに子房ががくの上にあるので子房上位と言い、
いちばんふつうにあるものです。

また、キュウリ型のものは、子房ががくの下にあるので子房下位と言い、高等な植物のキク・ウリ・キキョウなどがその例です。

チダケサシ・シモツケソウ・アマチャなどは子房の中ほどにがくがあるので、子房中位ですが、このようなものはあまり多くありません。

花のつきかた

花が茎についている様子を花序と言います。
花序は、つぎのように大きく2つにわけることができます。

いくつかの花が、ユリのように茎の先から下にむかって咲いていくものは有限花序と言われ、これと反対にフジのように下から上のほうにだんだん咲いていくものは、無限花序と言われます。

有限花序は、ふつう集散花序と言われ、これには単頂花序(チューリップ)・多出集散花序(ミズキ)き散花序(ハコベ)・巻散花序(キュウリグサ)互散花序(ハンニチバナ)などがあります。

また、無限花序には、穂状花序(オオバコ)・総状花序(アブラナ)散房花序(オミナエシ)・散形花序(サクラソウ)頭状花序(タンポポ)などがあります。




獣の行動とは? ネズミ・犬の学習、チンパンジーの知能とは?

獣の行動

獣の仲間は、いろいろな動物のなかで、もっともよく発達した脳をもっています。

ことに、大脳とよばれる脳の一部分がよく発達しており複雑なことがらを学ぶことができます。

獣の仲間では、本能的な行動のほか学習によってえられた行動が加わることが多くなり、また、サルの仲間のように、知恵のある行動をするようになります。

怒ったり、喜んだりする感情をあらわす行動もできるようになります。


ネズミの学習

ダイコクネズミは、非常に入り組んだ迷路の中でも、はやく、正確な道を見つけ出します。

ヘンプトンの迷路と呼ばれる迷路を用いたとき正しい道を2日間で9回の試験を繰り返しただけで見つけました。

正しい道を見つけたネズミをめくらにしても出口をあやまりなく見つけました。

また、音が聞こえないようにしても、においを嗅ぐことができないようにしても、また、口のまわりのひげを切ってものに触れたことがわからないようにしても出口を見つけることができました。

これらの実験から、ネズミは筋肉によるかんで出口を見つけたと考えられます。

また、長い道と短い道との2つをつくっておいてどちらを通ってえさのある場所にいくかを実験してみると何十回かおこなったあとには、いつも短い道を選ぶようになります。

イヌの学習

ソ連のパブロフが、イヌを使つておこなった条件反射の実験は有名です。
つば(だ液)は、もともとは食物が口の中に入って、そこの味覚器を刺激してはじめて、分泌されるものです。

イヌの前に食物を出すと、イヌはつばを出します。
いま、えさをあたえるときに、必ずベルをたらすようにします。

これを何回も繰り返していると、しまいにはイヌはえさをださなくても、ベルの音を聞いただけで、つばを出すようになります。

イヌは、条件づけによって、学習をしたわけです。

イヌは、臭覚が非常によく発達していて、たとえば棒とかステッキについている個人の体臭を嗅ぎわけることができます。

警察犬は、イヌのこの能力を利用して犯人のにおいを追うように訓練したものです。

私たちは、イヌにいろいろの言葉で命令しイヌがその通りに動くことをよく見かけます。

しかし、これはイヌにその言葉を理解させて行動させているのではなく、言葉をただの信号として用いて、イヌを訓練した結果です。

たとえば、「来い」といってイヌを叩き「行け」といってイヌにえさをあたえて訓練すると、しまいにはイヌは「来い」といえば逃げ「行け」といえば近づいてくるようになります。



サルの行動

サルは、獣のなかで最も人に近い動物です。視覚はすぐれていて、人とよく似ています。
聴覚もすぐれていて人より小さい音をよく聞きわけます。

しかし、臭覚の発達は悪く、たとえば隠されている果物のある場所を、においで知ることはできないといわれます。

テナガザル・オランウータン・ゴリラ・チンパンジーなどの類人猿の仲間は、よく発達した人の脳に近いつくりの脳をもち行動も非常に複雑で手足を器用に用いて、いろいろのことをすることができます。

これまでの動物ではあまり見ることのできなかった知能をはたらかせた行動もいろいろします。
たとえば、道具を使い、組み合わせることのできるものもいます。

類人猿の知能を人にあてはめると、だいたい生後10~12か月の幼児にあたります。
また、人に似た感情を顔に出すようにもなります。

チンパンジーの知能

チンパンジーが、好んで食べるバナナを高い所にぶら下げておきます。
チンパンジーは、人をつれてきてそれをとろうとしたり人のかたの上にのぼってそれをとろうとします。

しかし、うまくいかないといろいろ考えます。
空の箱の上にのってとろうとしますが、1つでは低すぎます。

そのうち2つめをその箱の上に重ね、それでもとどかないと3つめを重ねてついにバナナを手にいれます。

また、おりの前にリンゴをおきチンパンジーからは遠くて手がとどかないようにしておきます。
おりの中には大小2本の棒を入れておきます。

棒は、細いほうを太いほうに差し込むと長くすることができるようになっています。

チンパンジーは、はじめ1本の棒でリンゴを近よせようとしますが、うまくいきません。

そのうち2本の棒をつなぎあわせて長くし、これでうまくリンゴを近よせます。

このとき、棒はリンゴをとるという目的を果たす道具として使われたことになります。




鳥の飛び方とは?伝書鳩の行動とは?雛の行動とは?

鳥の飛びかた

たいていの鳥は、翼を広げてよく飛ぶことができます。
そしてその飛びかたには、二種類あります。


1つは、翼を広げて空中を滑るように飛ぶ方法でタカ・トビ・カモメなどに見られます。

これは、グライダーが滑空するのと同じ原理で気流にうまくのっているのです。

鳥は、翼の形や向きをかえて、ほとんど水平に滑空しますし、また、上昇気流に入って、そのままで高いところにのぼっていくこともできます。

もう1つの飛びかたは、翼を上下に羽ばたいて空気を打ちながら飛ぶ方法です。

図のように、まず、体の上方にあげた翼を水平になるまで強く打ちおろします。

それから水平になった翼を水平のまま前方にむけ、ひじの部分だけを体の上方にあげます。

つぎに、翼の先のほうを激しくうしろ上の方向に打ち上げて翼を体の上方にまっすぐにたてます。

これらの動作をたえず繰り返して上昇する力や前進する力をつくりだすのです。

伝書鳩の行動

連絡用に使う伝書鳩は、まず、ハ卜を飼っている小屋から近いところではなし、ハ卜がかえってきたらえさをやるようにして、そのうちだんだんと遠いところからはなして訓練します。

ハ卜が、自分の住んでいる小屋のあたりの様子を見分けていることは霧や雲の中では、小屋に帰れないことからもわかります。

ラジオ放送局の近くではハ卜は道に迷ってしまうということを言っている人もありハ卜は地球の磁場を応用したり、短波を利用したりして巣にかえるのだろうと考える人もあります。



ひなの行動

ひなは、たまごの中にいるときから、たまごの外からの刺激に反応します。

殻を破るまえにピイピイと鳴きますが、1ぴきが鳴きはじめると隣りのたまごの中でも、いっしょに鳴きはじめます。

このとき、ひなはたまごの中で活発に動いています。

外で大きな音を立てると、たまごの中のひなは急に鳴くのをやめて動かなくなります。
もうすでに、身をまもる反応ができているのです。

たまごからでると、このときはもう、くちばしの中に入ったものを飲み込む運動や敵から身をまもる行動や、歩いたり走ったりする運動ができます。

小さいものを見ると、それをつついて食べる反応もあらわれてきます。

ひなは、最初穀物の粒、木のかけら、細かいごみ、自分の足の指など手あたりしだいについばみます。

はじめのうちは上手くいきませんが、何回も繰り返しているうちに食べられるえさを間違いなくとれるようになります。

親鳥が嫌って食べない毛のはえたガの幼虫をひなは捕まえて食べようとしますが、すぐに吐き出し足でくちばしをふくような行動をします。

そして、ふたたびこの毛のはえた虫を食べようとはしなくなります。

また、食べられるチョウの幼虫のそばを歩いていても、すぐには食べようとしません。

ほかのひなが、この幼虫をついばんで食べてしまうのを見てから食べるようになります。

このようにして、ひなは試行錯誤やものまねによる学習によって食べられるものと食べられないものとをだんだんと区別できるようになっていきます。

ひなは、頭の上を横ぎるいろいろなものに対し身をかがめて体を隠すような行動をとります。

木の葉でも、鳥の姿でも、どんなものに対しても最初は身をかがめますが、そのうちなれてきて害をあたえないものであることがわかると、身をかがめなくなります。




カエルの行動とは?カエルの学習とは? わかりやすく解説!

カエルの行動

カエルは、うしろ足がよく発達しているので、蹴る力が強く体の大きさにくらべて、たいへん遠くまで飛ぶことができます。

遠くまで飛ぶために、45度ぐらいの角度に飛び上がります。

カエルは、かなり発達した耳によって音を聞きます。
いま、1ぴきのカエルを脅かして、水に飛びこませます。

そのカエルが水に飛びこんで、ピシャッと音を立てると、ほかのカエルもつぎつぎと、すばやく水に飛びこみます。

最初に飛びこんだカエルとほかのカエルを、お互いに見えないようにしておいても同じことが起こります。

あとから飛びこんだカエルは、最初に飛びこんだカエルの音を聞いて、その行動を起こしたのです。


カエルの学習

カエルが虫などのえさをとるときは、虫が動いていないと使えません。
カエルの目の前にトンボをピンでとめておくと、トンボが動くたびにカエルは舌でトンボを叩きます。

これを何回も繰り返しますが、それでもトンボがとれないと、もう、トンボが動いても舌で叩くことをやめてしまいます。

また、トンボを糸でむすんでカエルの目の前で動かすとカエルはすぐにそれを舌でとって、食べてしまいます。

つぎに、刺すハチを目の前につるしてやると、またすぐにとって食べようとします。

しかし、そのときハチがカエルの舌を刺すとカエルはあわててハチを吐き出します。

そのつぎに、同じハチを目の前につるしても、もうそれをとろうとはしません。

しかし、最初のように、ふたたびトンボをつるすと、やはり食べてしまいます。

カエルは、ハチに刺されたため、それを食べようとすると痛い目にあうことを学んだのです。




魚の行動とは? 魚の泳ぎかたとは? 魚の学習とは?

魚の泳ぎ方

多くの魚は、ひれや体を動かして泳ぎますが、速く泳ぐときには尾を左右に激しく動かして、水をうって進みます。

尾の動きとともに、体も曲げます。
背びれ・胸びれ・腹びれ・尻びれなどは、泳いでいるときに体が揺れるのをふせぐはたらきをします。

魚のなかには、カワハギのように背びれや尻びれを波のように動かして泳ぐものもありますが、はやくは泳げません。

金魚は、静かに泳いでいるときには、胸びれだけを動かしています。
また、ウナギは長い体の一部分を左に、一部分を右にというように波のように動かして水をうち、前進します。

卜ビウオは、大きな胸びれをもっていますが敵に襲われたりして危険なときには、水中を激しく泳いで水面に飛出し、胸びれを空中に広げて滑空します。


水中での姿勢

魚が水の中でとる姿勢は、いつも背を上にしていますが、これには体のつりあいをとる器官だけでなく目による視覚もいっしょにはたらいています。

目によって、光のくる方向がわかりますが魚は光のくる方向に背を向けるような行動をとります。

いま、魚に横から光をあてると、光にせをむけようとするはたらきと重力に対して背を上にしようとするはたらきとが重なり合うため魚はななめの姿勢をとります。

耳の中の三半規管を取り除いた、重力に対する反応をなくしてしまうと、魚は横からあてた光に反応して真横になってしまい真下からあてた光に対しては、逆さまの姿勢をとります。

魚の移住

多くの魚は、川や海のだいたい決まった場所に住んでいますが住む場所を川と海とに定期的にかえる魚もいます。

サケやウナギがこの例です。

ウナギは海の深いところで生まれ、大きくなりながら陸地にむかい海流にのってゆっくり漂ってきます。

浅い海につくと、海水が海岸からひくときには海底か砂の中にじっとしていて潮が満ちてくると海面に出て海水にのって海岸まで運ばれるようにします。

これを繰り返して、海岸の川口につくと活発におよいで川を遡り上流にいって住みます。

ウナギは、川口についたとき、川に溶けているなにかのにおいで川を遡る行動を起こすと考えられています。

川や湖で成長したウナギは、たまごを生むために、まえにのぼってきた道を逆にたどって川を下ります。

秋の暗い夜に下りはじめますが、水の温度や光の強さなどによって川を下る行動をおこすと考えられています。



トゲウオの争い

トゲウオは、春になるとおすの体に色が出てきてきれいになり、ことに腹が赤くなります。
めすは、この時期にたまごを生みます。

めすは、おすにおわれて巣の中に入ります。
おすがめすの尻のあたりを口でつつきますと、めすは巣の中にたまごを生みます。

棒を使ってめすをつついてみると、やはりたまごを生みます。
したがって、めすはただつつかれた刺激によってたまごを生むということがわかります。

このころ、おすはほかのおすと互いに争いを繰り返します。

そこで、形がトゲウオにそっくりで色をつけていない模型をつくり、おすに見せると、これに対して、おすは争う反応をしめしません。

別の模型をつくり、こんどは腹の部分を赤くしておくと形はあまり似ていなくても、おすはこの模型にむかってきて争う行動をとります。

これによって、トゲウオのおすは、腹の赤い色でおすを見分けお互いに争うということがわかります。

魚の学習

池にいる魚にえさをやるとき手をボンボン叩いただけで魚がよってくることがあります。

魚をめくらにしておき、これにえさをやるときに、まず音を出して、そのあとにえさをやるようにします。

これを何回も繰り返していると、めくらの魚は音を聞いただけで集まってくるようになります。

フナでは9~15回で、この反応ができあがります。




昆虫の行動とは?ミツバチの学習とは? わかりやすく解説!

昆虫の行動

昆虫の仲間は、無脊椎動物のなかでは感覚器官がもっともよく発達していて複雑な行動をするものの1つです。


アリの行動

えさを獲りにでかけたアリは、正確に巣にかえることができます。
この行動は、非常に複雑なしくみによって起こるものですが、おもに臭覚と視覚を使っています。

ジガバチの学習

ジガバチが巣の中に入っているときに、巣の穴の入り口のまわりにまつかさや石ころを一つなぎの輸にしておきます。

ジガバチは巣から飛び立つとき、巣のまわりをまわって、まるくおかれたまつかさや石ころの輪を見て飛び去っていきます。

いま、ハチが飛び去ったあとに、その輪をずらして巣の外につくっておくとジガバチはその輪の中心にかえってきて、そこにはない巣を探します。

ジガバチは、まるくおかれたまつかさや石ころの輪によって自分の巣を覚えていたことになります。

巣にかえる行動は、本能が強くはたらいているといわれますが、その中には、ジガバチの例のように学習によって行動することもふくまれています。



ミツバチの行動

ミツバチの社会生活のなかで、はたらきバチは巣をつくったり花粉や蜜を集めてきたりしています。

いま、1ぴきのハチが花のありかを見つけてかえると、そのあと、数十あるいは数百匹のハチがその花のある場所に飛んでいきます。

最初に花を見つけたはたらきバチが巣に帰ったときの様子をよく観察したところ、そのハチが前ページのようなダンスをして仲間たちに巣から花までの距離や方向を知らせていることがわかりました。

ダンスの形や、尻・腹のふりかたとその速さなどによって花のある場所を正しく知らせているのです。

また、ミツバチは4つの色を見分けることができます。
私たちの感じている色で言うと黄・青~緑・青~紫と、私たちが感じることのできない紫外線です。

このことは、青緑色のときには砂糖水があり黄色のときには砂糖水がないというような方法で条件反射的に実験してわかったことです。

さらにミツバチは、少なくとも2種類の図形を区別するように訓練することができます。

上の図の、上列の図をそれぞれ区別することは難しいことですが上列の1つと、下列のどれとでも、かんたんに区別できるようになります。




原生動物の行動とは?ミミズ・貝・タコの行動と学習とは?

ゾウリムシの行動

ゾウリムシは、体の表面にはえている小さなせん毛を、つぎつぎと順序よく動かして水をおしやり、水中を泳ぎます。

せん毛の運動は非常にはやく、1秒間に10~20回も繰り返しますが体全体の進みかたは、1時間で5メートルぐらいです。

ゾウリムシは、からだの一部分に強く触れると、くるくるまわりながら、向きをかえて逃げていきます。

しかし、アメーバでは、強くふれるとそのままその場所にとどまったきりになるのでゾウリムシはアメーバよりも進んだ運動のしくみをもっていると言えます。


ラッパムシの行動

ラッパムシの上にカーミンの細かい粒を落とすと、それを避けるように体を傾けます。

さらに傾いたほうに、カーミンを続けて落とすと、せん毛を動かしてそのカーミンを吹き飛ばそうとしますが、うまくいかないと、ついには体を包んでいる殻の中にひっこんでしまいます。

これは、もともともっていた行動が経験によってかえられた例です。

ミミズの行動

ミミズは、銅が細長く、たくさんの節からできていて、その体の一部分を伸ばし、ほかの部分を縮めるといった運動を繰り返して体を移動させます。

ミミズは、ものに触れたことの感覚や、光に対する感覚がかなり発達し、それらによって行動の変化をしめします。

ミミズをT字形の通路に入れ、左にいくと電気のショックを受け右にいくと湿った土があるようにします。

ミミズは、最初のうちは何回も左や右にでたらめにいきますが何百回も繰り返すと、しまいには湿った土のある右のほうにだけ、いくようになります。

ミミズは、訓練によって学習したことになります。



貝の行動

二枚貝は、ふつう砂や泥の中に住んでいて貝殻のあいだから足を出して砂や泥の中にさしこみ、この足を使って体を動かします。

ホタテガイは、2枚の貝殻を激しく閉じたり拾いたりして水をうしろに押しやり、その勢いで移動します。

また、巻貝の仲間は、足の裏側に前からうしろに伝わる伸び縮みの波を起こして体を前進させます。

これらの仲間は、よく発達した三種の神経細胞のかたまり(脳・足神経節・腹神経節)をもっていて味やにおいの感覚、触れた感覚、温度の感覚、つりあいの感覚などをもっています。

また、多くのものは光に敏感に反応し、光が遮られて影になると反射的に体を貝殻の中にひっこめる行動をします。

タコの学習

タコは、8本の触手(足)を用いて泳ぎ、また、ろうとから水を噴出させることによって、はやい動きを見せますが非常に発達した目を使って、いろいろの行動をします。

タコは動いているえさによく飛びかかります。
食べられないえさを動かして、何回も実験を繰り返してみると、はじめのころは飛びかかってきますが、しまいにはなんの反応もしめさなくなります。

また、電流を通じた白い円板の上にタコが好んで食べるカニをのせて、タコに見せます。

すると、タコはカニを捕ろうとして飛びつきますが、その板にふれてビリッとくるため慌てて逃げます。

これを繰り返すと、しまいには白い円板についているカニを見せても近づきません。

しかし、カニだけを見せると、やはり飛びついてきて食べます。

タコは、白い円板がショックをあたえるものであることを学んだわけです。




走性・本能・学習とは?動物の行動とは? わかりやすく解説!

動物の行動のいろいろ

動物が刺激によって起こす複雑な反応を行動と言い行動には動物が生まれながらにしてもっているものと生まれてから成長するにつれて条件反射や学習などによって身につけるようになったものとがあります。


走性

「飛んで火に入る夏の虫」と言われるようにガが電灯目がけて進んでいくとかまた、アリが太陽と一定の方向をとって巣にかえる行動などのように動物が外からの刺激に反応して、ある決まった方向に単純な行動をするのを走性と言います。

下等な動物では、このような走性による行動が多くおこなわれます。

刺激のもとは、光・土・水・熱・流水などで、走性は、それらに応じて、走光性・走地性・走水性・走熱性・走流性などと区別します。

そして、刺激の方向に向かう行動を正の反応、刺激から遠ざかる行動を負の反応といって区別します。

本能

生まれながらにもっている複雑な行動を、ふつう本能と言います。

本能は、動物の種類とか、おす・めすの違いによって特別にその動物に備わっているものです。

いっぱんに本能は成長するにつれて変化するものが多く下等な動物や高等な動物の子どもなどは、ほとんど本能によって行動しているものと考えられています。



学習

過去の経験により、動物の行動がかえられていって新しい型の行動ができあがっていくことを学習と言い、これにはいろいろな型があります。

たとえば、アヒルのひなが、はじめて見たり聞いたりした大きなものについていくような「すりこみ」ウマなどによく見られるように激しい音に最初は驚いた行動をとっても、音が繰り返されると反応しなくなるような「なれ」

また、イヌの条件反射の実験でよく知られているような「条件づけ」、あるいは、ネズミを、食物がそのうしろにある明るい戸と食物のない暗い戸の前において繰り返し反応させ食物をえる正しい反応を選ばせる「試行錯誤」

それに、チンパンジーが手の届かないところにあるバナナをそばにある棒でとるような「知恵推理」などがあります。

下等な動物から高等動物へとかわるにしたがいまた、高等動物でも成長するにつれて神経のしくみが発達してきますが、それとともに、走性や本能による行動は少なくなり図のように学習による行動がおこなわれる割合が大きくなってきます。

知能は、ことに高等な獣だけによく発達しています。
たとえば、イヌに追われたニワトリは、一目散に逃げるだけですがネコは木やへいのほうに逃げて、そこにのぼります。

ネコは状況を判断し、それに応じた行動をとったわけです。




動物の刺激に対する反応と運動のしくみとは? わかりやすく解説!

刺激に対する反応

動物の体は、いろいろな刺激を受け取るのに都合のよいしくみになっている感覚器官をもっています。

それらの感覚器官を通して体の内外に起こるいろいろなものの変化の様子を知ることができるようになっています。

そして、いろいろな動物の感覚器官は、たとえば、自分の食物を探して食べたり自分を食べてしまう強い動物から逃げたりするときのために都合のよいように発達してきたものが多いのです。


刺激の伝わりかた

体の内外の変化は、まず、感覚器官によって受けとられますが受けとられた刺激は、そこから神経を通って脳などの中枢神経に伝えられます。

神経は、何百、何千もの目に見えないような細い線維が集まってできていて、体の外から入ってきた刺激を間違いのないように脳などの中枢神経に伝えたり、また、脳からの命令(信号)を筋肉などに伝える役目をしています。

ですから、この神経が傷つけられたり、切れたりすると刺激は脳などの中枢神経まで正しく伝わらなかったり、あるいは全く伝わらなかったりします。

刺激の伝わる速さは、1秒間に数センチメートルといった遅いものから数十メートルといった速いものまで動物によっていろいろ違いがあります。

しかし、神経はあまり長くないので遅いものでも実際に感覚器官から脳などの中枢神経に伝わる時間は何分の1秒といった時間しかかかりません。

神経に刺激が伝わるといっても光や音などがそのまま脳などの中枢神経まで入ってくるわけではありません。

感覚器官の中で信号にかえられ、それが神経を伝わるようになっているのです。

脳には、いろいろな感覚器官につらなっている神経が入っていますが、それぞれの感覚器官につながっている神経は、それぞれ脳に入るところが決まっています。

つまり、目から入った刺激、耳から入った刺激というように別々な刺激は別々な信号になって、いったん脳の別々なところで受け止められ、脳のその場所を刺激してはじめて、ものが見えたり、音が聞こえたりすることができるようになっています。

ですから脳がなければ、光や音やそのほかの体の外に起こっている、いろいろなことを、知ることができません。

このように、感覚器官と、これから脳につらなっている神経と脳の3つの部分が1つにつながってはたらいて光・音・味・においなどを感じることができるのです。

こうした感覚によって動物はえさを見つけたり敵を見つけたりすることができるわけですが見つけたえさを食べたり敵から逃げたりするためには、体を動かす運動をしなければなりません。



運動のしくみ

運動にはいろいろなものがあり、動物によってもさまざまです。
しかし、おもなものは、骨格についている筋肉が縮んだり伸びたりすることによっておこなわれます。

これらの筋肉は、神経によって刺激されて縮んだり、伸びたりするしくみになっています。
この神経は、脳からの信号を筋肉に伝えるはたらきをするのです。

筋肉は、体のいたるところにあって脳からは、それらの全部の筋肉に信号がとどくように神経が伸びています。

運動しているときには脳は、これらのたくさんの筋肉を上手に動かすように、いつも信号を送っています。

脳から筋肉に行く信号をいろいろにかえることによって、私たちの体もいろいろな運動をすることができるのです。

えさを探したり、敵から逃げたりする行動は、このように、まず最初に感覚器官に刺激が入り、その刺激は信号にかえられて神経を通り、脳に伝えられます。

脳はその信号を受け取って外界のことを知ります。
そしてそれに応じた運動をするために別の神経を通していろいろな筋肉に信号を送ります。

筋肉は、その信号を受けて運動をする、という順序でおこなわれるのです。

刺激による動物の体のいろいろな変化を反応と言いますが、いままでのことをかんたんにして考えると動物体が感覚器官に入る刺激によって運動という反応を起こしたとみることができます。




ハマグリ・タカラガイ・イカ・ミズクラゲの体のつくり、しくみとは?

ハマグリの体のつくり

二枚貝には、左右の貝殻を結びつけている、靭帯があります。
また、そこに小さな歯があって2枚の貝殻が、うまくかみあわさるようになっています。

貝殻に、メスを静かに差し込み、貝柱をきり貝を開くと貝の体を左右からつつんでいる外とう膜が見られます。

貝柱は、貝殻を開閉する筋肉の束で、前とうしろに1つずつあります。
外とう膜の内側には、二対のえらがあります。

足は、体の前側にあり、その根本には、消化管などが入っています。
うしろの貝柱の下には上側に水を吐き出す出水管、下に水を吸い込む入水管があります。

消化器は、しんべん・口・胃・消化腺・腸・肛門などからできていて、心臓は、胃のうしろ側にあります。


タカラガイの体のつくり

口のうしろには長円形をしたのどがあり、これには歯舌があります。
口に続いて、細い食道があり、食道につながった太い部分が胃です。

胃に続いて、細い腸があり、この腸は折れ曲がって前のほうに向かい、やがて直腸となって肛門までつながっています。

また、食道のうしろ側には、だ液腺があって、のどに開いています。
消化腺は、腸のまわりにあります。

外とう膜の内側には、一対のえらがあり、これで呼吸をします。
心臓は、えらの根本のところについています。

消化管の終わる部分の直腸とならんで腎臓があり、肛門の近くに開いています。

食道のうしろ側に脳があり、ここから内臓神経節・足神経節などへ神経が出ています。



イカの体のつくり

イカの胴の先にはひれがあり、頭には、大きな目と水を吐き出すろうとと足のつけねに、カラストンビをもった口があります。

胴の背中側に甲があります。
ヤリイカの甲は透き通り、コウイカの甲は石灰質が多いので白色をしています。

腹側を縦に切り開くと、ろうとのすぐうしろには大きな茶かっ色の肝臓があり、肝臓の上には直腸がはしっています。

この直腸に、胃ともう腸がつながっていて食道は肝臓の背中側を通っています。

墨ぶくろは直腸のうしろにあり、羽根のような形をしたえらが肝臓の左右に見られます。

えらの根本には、まるいえら心臓があり、左右のえらのあわさったところに本当の心臓があります。

ミズクラゲの体のつくり

ミズクラゲの口は、十字形をしていて垂れ下がった4本の口腕のあいだにあります。

口から口道・胃こうと続き胃こうは四方に広がっていて、そこから放射管を出しています。

また、放射管は、環状管につながっています。

肛門はなくて食物のかすは口から吐き出されます。
このような消化管を、こう腸と言います。

胃こうの壁に、ばてい形をした生殖腺があります。
生殖腺の内側にそって胃糸と呼ばれる多数の糸のようなものが、はえています。

この胃糸の中には、取り込んだ生きたえさを殺すとげがあります。

かさのふちには8つのへこみがありますが、ここにはつりあいを保つしくみや、においを嗅ぐしくみなどを備えた感覚器があります。




蚊・トンボ・ザリガニ・ミミズの体のつくり、しくみとは?

蚊の体のつくり

カの口は細長い管になっていますが、これは、上下のくちびる・舌・大あご・小あごのかわったものです。

のどに続いて食道のう・えさぶくろ・胃・腸・直腸などがあります。

胃と腸のさかいめのところに、ひものようなマルピーギ管があります。

腹部の背中側の中央を、血管が、縦にはしっています。

腹部や胸部にある、小さな気門は、空気を取り込むところです。
取り入れられた空気は、体の横をはしる、大きな一対の気管に入り、そこから枝わかれした気管を通って、体全体に送られます。

頭部には、神経節の集まった脳があり、ここからでた神経は腹の終わりまででついています。
腹部には、6つの神経節が見られます。


トンボ体のつくり

トンボの消化管は上くちびる・大あご・小あご・下くちびるからできた口にはじまります。
食道をすぎると、前腸があります。

前腸は、養分を吸い取る中腸につながり、排出器のマルピーギ管が、これにつながっています。

マルピーギ管は後腸に開いていて、そのあとは、肛門となっています。

神経は、脳から出ていて、単眼・複眼に、直接つながるいっぽう体の各節の神経節につながり、神経は第八腹節で終わっています。

背脈管は循環器で血液は、ここで前方に押し出され、体中に送られます。
筋肉は、胸部の大部分の隙間をうずめています。

また、呼吸作用をする気管は、まえに述べた残りの体の隙間をしめています。



ザリガニ体のつくり

ザリガニの体は、頭胸部の背中側を、硬い大きな背甲が包んでいます。

腹は、7つの節からできていて七節めには、肛門と扇形をした尾がついています。

背甲が両がわに垂れ下がったところを切り取ると背甲と体の壁とのあいだのえら室に、ぎっしりとえらのあるのが見られます。

消化管は、体の中央を縦にはしっています。
胃の左右の黄かっ色のものは、消化液のでる消化腺です。

胃を縦に切り開くと、いろいろな骨片や、大きな歯が見られます。
心臓は背甲のすぐ下にあって、ここから前へ5本うしろヘ1本の動脈が出ています。

胃のすぐ前には一対の排出器があります。
また、第一のひげのねもとの、三角形の小さい穴の中に、耳があります。

ミミズ体のつくり

ミミズの体はまんなかに、短い毛のはえた多くの節からできています。
頭から第14~16節のところの、太い節は環帯と呼ばれます。
背中を切り開くと、まず、節を区切っている膜が見られます。

体の中央をはしる管は、消化管です。
これは、のど、食道、そのう、大きな胃(砂のう)太い腸などからできています。

消化管の上側と下側には、それぞれ、太い血管がはしっています。
そして血管は、第11、12、13節のところで、一対ずつの横枝が出て背と腹の太い血管をつないでいます。

この部分は生きているとき脈をうっているので、心臓と呼ばれます。

脳は、のどの上側にあり、ここから2本の神経が出ています。
この神経は、腹側であわさり、腹神経となっています。




ヒトデ・ウニ・バッタとミツバチの体のつくり、しくみとは?

ヒトデの体のつくり

消化器官のひとつである口は、腹側の中央にあります。

口に続く食道は、細くて短く、これに続く胃は大きくて腹のほうについているふん門胃と背のほうについているゆう門胃とにわけられます。

ふん門胃は、5つの方向にまるくふくれだした部分でその上側についているのがゆう門胃です。

ゆう門胃から腕に向かって、ゆう門もうのうというふくろが出ていて、ここから、獣のすい液に似た液を出します。

ゆう門胃の背中側に、腸があり、これにも、腸もうのうというふくろがついています。

水管は、ゆう門もうのうを取り除くと、その腹側に、びんのう列と、放射水管との2つが見られます。

そのほかの体のつくりは、ウニとよく似ています。


ウニの体のつくり

ウニの口は、多くの骨片が集まって、かごのようになっているので、とくにアリストテレスの提灯と言います。

口は体の下側についていて、上方にむかって食道が続き、胃はからの内側をひとまわりしています。

大腸は、胃とは逆まわりに、ひとまわりし、直腸・肛門と続いています。

消化管の外側をふちどるように、縦に2本ついているのが胃腸血管です。

ウニには、水を吸い入れるのに使う水管があり、これには環状水管と放射水管とがあります。
また管足のもとには、びんのような形のふくろ(びんのう)があります。

神経は、口の近くで食道を取り囲む環状神経と、これから各管足にむかって、放射状に出ているふく神経との、2つの部分からできています。



バックとミツバチの体のつくり

バックの体は、大きくわけて頭部・胸部・腹部の3つの部分からできています。

頭には、一対の長い触角と、一対の複眼があります。
額には、ルビー色をした3つの単眼が光っています。

口は、上くちびる・大あご・小あご・下くちびるなどからできています。
胸部には、三対の足と、二対のはねがついています。

腹は、11の節からできていて第一の節の左右には一対のまるい耳があります。

このほか、たいていの節には一対ずつ、気門と呼ばれる小さな穴があります。

背中側から内部のつくりをみると消化管は前から順に、食道・そのう・胃・小腸・結腸・直腸となっていて、そのうと胃には6つのもうのうがついています。

胃と腸のあいだに見られるたくさんの細い管は、マルピーギ管と言われ、昆虫だけに見られるもので、排出作用をします。

そのうの腹側にある、白い不透明な粒々は、つばをつくるところで、だ液腺と言います。

気門をつなぐ管や背中側に見られる管は気管と言われ呼吸するしくみです。
これは細かく、枝わかれして、体中に行き渡っています。

脳は頭の中にあります。

これからは、2本の神経が出て、のどの下側でつながり大きな神経のかたまりとなって、腹神経となって出ています。

背中を縦にはしる8つのふくらみが心臓です。

つぎに、ミツバチの体を見ると、とくに羽根が二対とも膜のようにうすく、口はものを噛むことも密を吸うこともできるようになっていて産卵管が毒針にかわっています。




ネズミ・ニワトリ・カエル・フナの体のつくりとしくみとは?

ネズミの体のつくり

ネズミには、胆のうや気のうがありません。
腹を切り開くと横隔膜で腹の中が2つの部分にわけられているのがわかります。

横隔膜のすぐ下に、大きな暗赤色をした、肝臓があります。

すい臓は、胃の背中よりの左側にあり黄かっ色で平たく、舌のような形をしています。

腎臓は、ソラマメ形で、ここから尿を運ぶ管が出ていて膀胱につながっています。

また、消化管のうち、もう腸の大きいのが目立ちます。

脳は、背中側からは、しゅう葉・大脳・小脳・延髄が見られ腹側からは、脳下垂体がよくわかります。

この脳からは、背骨の中を通っている、脊髄が出ています。
脊髄からは、前足やうしろ足へいく、太い神経が枝わかれしています。


ニワトリ

胸には、外側に大胸筋、内側に小胸筋があります。
どちらの筋肉も、竜骨突起や胸骨などについていて、翼になっています。

気のうは、透き通って、うすい膜でできたふくろで五対あり、気管支につながっています。

消化管としては、のど・食道・そのう・砂のう・十二指腸・小腸・盲腸・大腸・排出孔などが見られます。

鳥の仲間は、もう腸がたいへん大きく大腸が獣たちよりも、ずっと短くなっています。

心臓は、ネズミの場合と同じように二心房二心室からできていて心臓のまわりに肺と肝臓があります。

肝臓には、緑色をした、胆のうがついています。
すい臓は、十二指腸の折れ曲がったあいだに見られます。



カエル

まず、カエルを麻酔してから、目・しゅん膜・前足とうしろ足の指数・みずかき・肛門・口の中などを観察します。

つぎに、腹を切り開いて、内部のつくりをみると暗赤かっ色の大きな肝臓があります。
これを裏返すと、青緑色の胆のうがあります。

カエルの消化管は、口・食道・肝臓の下にある胃・十二指腸・小腸・大腸・直腸・肛門と続きます。

すい臓は、十二指腸のそばに見られます。また、小腸のそばには、赤い脾臓があります。

つぎに心臓の左右の背中側を探すと、もも色をした、泡のような肺があります。

心臓は背骨の両わきの壁についていて、暗紅色で細長い形をしています。
脳や神経はホルマリンで固定してから観察するとわかりやすくなります。

フナ

フナのうろこを、顕微鏡でのぞくと、木の年輪のようなしまが見えます。
このしまは魚の年令を調べるよい手がかりになります。

また、背・胸・腹・尻・尾には、ひれがあります。
このひれは尾びれ以外のものでは、硬いとげと、やわらかい筋とからできています。

多くの魚には、浮きぶくろがあります。

フナの浮きぶくろは銀白色をしていて、まん中より少し前側に、深いくびれがあります。

そして、細い管で食道とつながっています。

消化器官として、のど・食道・胃・腸などが見られます。
肝臓は、深紅色で、枝わかれして、腸のあいだに広がり、暗緑色をした、胆のうがついています。

浮きぶくろの背中側には、赤かっ色の腎臓が見られます。




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