溶液混合物の分離とは? 分留・抽出による分離とは?

分留による分離

水にアルコールが混合していたりメチルアルコールとエチルアルコールが混合していたりするような液体と液体が混合している場合はそれぞれの物質の沸点の差を利用して蒸留を繰り返して分離することができます。

この方法を、分別蒸留または分留といいます。


互いに交じり合うことのできる2種類の液体AとB(例えばメチルアルコールと水)の混合液を熱するとそれらの混合の割合によって沸点が変わってきます。

例えば、純粋な水の沸点は100℃ですがこれにメチルアルコールが20パーセント混合した液は100℃よりも低い温度、約82℃で沸騰します。

さらにメチルアルコールの量を多くしていくと混合物の沸点はだんだん低くなり

ついにメチルアルコールだけになるとメチルアルコールの沸点64.7℃で沸騰するようになります。

いろいろな割合に水とメチルアルコールを混合しその沸点をはかって線で結ぶと図のような沸点曲線ができます。

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水にメチルアルコールが20パーセント混合した溶液を熱すると82℃で沸騰します(図A)。

このとき発生する蒸気を冷やすとメチルアルコールを58パーセント含んだ混合液が得られます(図B)。

メチルアルコール58パーセントの混合液を熱すると約72℃で沸騰し(図C)そのとき発生する蒸気を冷やすと約84パーセントのメチルアルコール溶液が得られます(図D)。

混合溶液には、このような特別な性質があるのでこの性質を利用して、2つの液を分離するのです。

水とメチルアルコールの混合液を熱するとはじめに蒸気となって出る部分にはメチルアルコールが多く含まれています。

これを容器Iに取ります。最後のほうで出てくる液は、水を多く含んでいます。これを容器Ⅱに取ります。

Iの容器の液を再び蒸留してはじめに出てくる液Ⅲと、フラスコに残った液Ⅳとに分けます。
Ⅱの液も同じように、はじめに出る液Ⅴとフラスコに残る液Ⅵとに分けます。

Ⅲ液とⅤ液をいっしょにし、Ⅳ液とⅥ液をいっしょにしてそれらをまた蒸留し、前と同じことを繰り返すとメチルアルコールと水とを分離することができます。

抽出による分離

ある物質が液体に溶けているとき、その液体とは溶けあわず溶質だけを溶かす別の液体を加えて溶質だけを溶か出しあとで2つの液体を分離する方法があります。

例えば、コールタールから得られたベンゼンの中にはごく少量のチオフェンという化合物が含まれています。

チオフェンは、たいへんベンゼンによく似た性質の化合物で蒸留しても取り去ることができません。

そこで、チオフェンを含んだベンゼンを分液ろうとに入れ、これに濃い硫酸を加えてよく振るとチオフェンは硫酸に溶解します。

振るのを止めて静置するとチオフェンを溶かした硫酸は比重が大きいので下の層に、ベンゼンは上の層にわかれます。

したがって、分液ろうとのコックを開いて下の層の硫酸を流し出すと、ベンゼンと分離できます。




溶液混合物の分離・蒸留による分離とは? わかりやすく解説!

蒸留による分離

食塩水のように、液体の中に固体が溶けて混合物をつくっているような場合には、この液体を蒸発させて蒸気にし冷やして再び凝縮させると、純粋な液体が得られます。 


このような方法で、純粋な液体を分離する操作を、蒸留といいます。

蒸留は普通、下の図のようにして行います。
えだつきフラスコに約2分の1ぐらいの水(固体などを溶かした水)と2~3個の素焼きのかけら(これを沸騰石といいます)を入れ図のように組み立てて熱します。

水蒸気は、リービッヒコンデンサーで冷やされて蒸留水となり三角フラスコに溜まります。

このとき、水に気体が溶け込んでいるような場合は100℃になる前に気体は逃げ出してしまいます。

また、アルコールなど、揮発性の液体が混合しているような場合は次に説明する分留という方法で分離することができます。

アルコールに固体が溶解しているような場合にもこれを蒸留すると、純粋なアルコールが得られます。

アルコールが、少量の水を溶かしているような場合は生石灰や無水の硫酸銅を入れてよく振り水をこれらの物質に吸収させておいて蒸留すると水分のないアルコールが得られます。

蒸留につにいての注意

①フラスコには、液体を2分の1より多く入れないようにする。
②フラスコを熱するときは、直接炎を当てず、金網をして熱する。

③温度計の球の部分はフラスコのえだの付け根のところにあるようにする。

これはコンデンサーに入る蒸気の温度が何度であるかを読むためであって球の部分がえだの位置より低かったり、高かったりすると温度計の示す温度と違う温度の蒸気がコンデンサーに入ることになる。

④沸点が、100℃より低い物質を熱するときは図のように、水浴(ウォーターバス)を使用する。

⑤フラスコの中には、必ず沸騰石を入れる。
これは、加熱によってフラスコの一部分が強熱され突然沸騰し、大きな泡ができて液体がコソデンサーに飛び込まないようにするためである。

なお、一度使った沸騰石は次の蒸留に使うことはできない。

必ず新しい沸騰石を使うようにする。

⑥えだつきフラスコやコンデンサーに使う栓は液体によって溶かされないものを使わなければならない。

有機溶剤を蒸留するときにゴム栓を使うとゴムが有機溶剤に溶けてしまい純粋な有機溶剤を得ることができない。

⑦コンデンサーに入れる水は、下の口から入れ上の口から出すようにする。




溶液混合物の分離・再結晶法とは? わかりやすく解説!

再結晶法

硝酸カリウムやホウ酸などは温度によって溶解度の変化が著しい物質です。 


これらの物質は、高温において飽和溶液をつくり、この溶液を冷やすと溶解度が減少するために、溶質が純粋な結晶として析出してきます。

このように、いちど溶解して冷やし結晶させる方法を再結晶法といいます。

再結晶すると、純粋に近い結晶を取り出すことができます。

例えば、80℃の水100グラムに5グラムのホウ酸を溶かした水溶液を20℃に冷やしたときについて考えてみましょう。

80℃の水100グラムに15グラムのホウ酸を溶かした水溶液は図のAGでしめされます。

これは、溶解度HGには達していません。

この水溶液の温度を下げて、60℃にすると飽和溶液ができます。

さらに水溶液の温度を下げて20℃にすると20℃におけるホウ酸の溶解度はDEですから今まで水溶液中に溶けていたホウ酸15グラムのうち10グラムは溶けきれなくて結晶となって析出するのです。

また、飽和溶液を熱して水を蒸発させると結晶が析出します。

これは、水の量が少なくなるので溶質の溶ける量が少なくなるからです。

食塩などのように溶解度が温度によってそれほどには変化しない物質は再結晶法より溶液を熱して水を少なくすることによって結晶を取り出す方法がよく用いられます。

再結晶によって、なぜ純粋な物質が得られるのでしょう。
不純物を含んだ硫酸銅の結晶を水に溶かすと硫酸銅も混合している不純物も水に溶解します。
(このとき、不純物が水に溶けないものであればその不純物はろ過によって取り除くことができます)
      
一般に、不純物の量は硫酸銅の結晶に比べて少量ですから高い温度にして硫酸銅の飽和溶液をつくっても不純物については薄い溶液なのです。

したがって、この水溶液を冷やしても析出する結晶は硫酸銅ばかりで不純物は溶液に溶けたまま残るのです。

実際には、結晶ができるとき溶液が包みこまれたり、結晶の表面に付着したりするので不純物の全てを取り除くことは難しく2回、3回と再結晶を繰り返すことによってより純粋なものになります。

溶液に他の液体を加えて結晶をつくる方法

水には溶けるが、アルコールには溶けない物質があります。

この物質を水に溶かした溶液にアルコールを加えると物質を溶かしていた水はアルコールに溶け込むので溶質の溶解度加減少し、溶質が結晶となって析出します。

例えば、硫酸第一鉄の濃い水溶液にアルコールを少しずつ加えていくと硫酸第一鉄が析出するので、この方法は硫酸第一鉄の製法に用いられれます。




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