気体の混合物の分離とは? わかりやすく解説!

液体にして分離する方法

空気は、窒素・酸素、その他の気体の混合物ですが、これに圧力をかけて、冷やすと、液体空気が得られます。


液体空気の中にある液体窒素も液体酸素もそれぞれ違った沸点をもっていますからこれを放置しておくと、沸点の低いヘリウムやネオンが気体となって蒸発し続いて窒素・アルゴンが蒸発します。

残った液には、酸素が多く含まれますがこれが蒸発すると、クリプトンやキセノンなどの液体が残ります。

このような方法でそれぞれの気体を分離することができます。

また、アンモニアと水素や窒素の混合気体を冷やすとアンモニアは液体になり、他は気体のままでいるのでアンモニアを分離することができます。

このように気体混合物は、その全部を液体にしてから分留するか液化しやすい気体だけを液化して分離します。

吸収剤・吸着剤などで分離する方法

二酸化炭素と酸素の混合気体から酸素だけを分離するにはつぎのようにします。

混合気体を注射器に入れ、二酸化炭素をよく吸収する液(水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの濃い水溶液)を吸い込み栓をしてよく振ります。

すると、二酸化炭素は、それらの液に溶けるので気体の体積は小さくなり、酸素だけが残ります。



空気中の酸素の量を測定する

窒素の混合気体から、酸素を取り除くには、つぎのようにします。

酸素は、塩基性にしたピロガロールの水溶液(ピロガロールの5%水溶液と10%水酸化ナトリウム水溶液を1対1に混ぜたもの)に吸収されるのでまえのように注射器に入れて振ると、酸素は吸収され窒素だけが分離します。

この方法を用いると、空気中の酸素の量を測定することができます。
すなわち、注射器にとってはじめの空気の体積V1をはかっておき、つぎにピロガロールを入れて、これに吸収された酸素の体積2をはかればV2/V1 が空気中の酸素の割合となります。

また、つぎのような方法もあります。

繊維状の鉄(スチールウール)を試験管に入れ水の中に逆さまに立てておくと、空気中の酸素はスチールウールをさびさせるのに使われてしまいます。

そのため、使われた酸素の量(体積)だけ水が試験管の中に入りますからその体積から酸素の量を測定することができます。




溶液混合物の分離とは? 分留・抽出による分離とは?

分留による分離

水にアルコールが混合していたりメチルアルコールとエチルアルコールが混合していたりするような液体と液体が混合している場合はそれぞれの物質の沸点の差を利用して蒸留を繰り返して分離することができます。

この方法を、分別蒸留または分留といいます。


互いに交じり合うことのできる2種類の液体AとB(例えばメチルアルコールと水)の混合液を熱するとそれらの混合の割合によって沸点が変わってきます。

例えば、純粋な水の沸点は100℃ですがこれにメチルアルコールが20パーセント混合した液は100℃よりも低い温度、約82℃で沸騰します。

さらにメチルアルコールの量を多くしていくと混合物の沸点はだんだん低くなり

ついにメチルアルコールだけになるとメチルアルコールの沸点64.7℃で沸騰するようになります。

いろいろな割合に水とメチルアルコールを混合しその沸点をはかって線で結ぶと図のような沸点曲線ができます。

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水にメチルアルコールが20パーセント混合した溶液を熱すると82℃で沸騰します(図A)。

このとき発生する蒸気を冷やすとメチルアルコールを58パーセント含んだ混合液が得られます(図B)。

メチルアルコール58パーセントの混合液を熱すると約72℃で沸騰し(図C)そのとき発生する蒸気を冷やすと約84パーセントのメチルアルコール溶液が得られます(図D)。

混合溶液には、このような特別な性質があるのでこの性質を利用して、2つの液を分離するのです。

水とメチルアルコールの混合液を熱するとはじめに蒸気となって出る部分にはメチルアルコールが多く含まれています。

これを容器Iに取ります。最後のほうで出てくる液は、水を多く含んでいます。これを容器Ⅱに取ります。

Iの容器の液を再び蒸留してはじめに出てくる液Ⅲと、フラスコに残った液Ⅳとに分けます。
Ⅱの液も同じように、はじめに出る液Ⅴとフラスコに残る液Ⅵとに分けます。

Ⅲ液とⅤ液をいっしょにし、Ⅳ液とⅥ液をいっしょにしてそれらをまた蒸留し、前と同じことを繰り返すとメチルアルコールと水とを分離することができます。

抽出による分離

ある物質が液体に溶けているとき、その液体とは溶けあわず溶質だけを溶かす別の液体を加えて溶質だけを溶か出しあとで2つの液体を分離する方法があります。

例えば、コールタールから得られたベンゼンの中にはごく少量のチオフェンという化合物が含まれています。

チオフェンは、たいへんベンゼンによく似た性質の化合物で蒸留しても取り去ることができません。

そこで、チオフェンを含んだベンゼンを分液ろうとに入れ、これに濃い硫酸を加えてよく振るとチオフェンは硫酸に溶解します。

振るのを止めて静置するとチオフェンを溶かした硫酸は比重が大きいので下の層に、ベンゼンは上の層にわかれます。

したがって、分液ろうとのコックを開いて下の層の硫酸を流し出すと、ベンゼンと分離できます。




溶液混合物の分離・蒸留による分離とは? わかりやすく解説!

蒸留による分離

食塩水のように、液体の中に固体が溶けて混合物をつくっているような場合には、この液体を蒸発させて蒸気にし冷やして再び凝縮させると、純粋な液体が得られます。 


このような方法で、純粋な液体を分離する操作を、蒸留といいます。

蒸留は普通、下の図のようにして行います。
えだつきフラスコに約2分の1ぐらいの水(固体などを溶かした水)と2~3個の素焼きのかけら(これを沸騰石といいます)を入れ図のように組み立てて熱します。

水蒸気は、リービッヒコンデンサーで冷やされて蒸留水となり三角フラスコに溜まります。

このとき、水に気体が溶け込んでいるような場合は100℃になる前に気体は逃げ出してしまいます。

また、アルコールなど、揮発性の液体が混合しているような場合は次に説明する分留という方法で分離することができます。

アルコールに固体が溶解しているような場合にもこれを蒸留すると、純粋なアルコールが得られます。

アルコールが、少量の水を溶かしているような場合は生石灰や無水の硫酸銅を入れてよく振り水をこれらの物質に吸収させておいて蒸留すると水分のないアルコールが得られます。

蒸留につにいての注意

①フラスコには、液体を2分の1より多く入れないようにする。
②フラスコを熱するときは、直接炎を当てず、金網をして熱する。

③温度計の球の部分はフラスコのえだの付け根のところにあるようにする。

これはコンデンサーに入る蒸気の温度が何度であるかを読むためであって球の部分がえだの位置より低かったり、高かったりすると温度計の示す温度と違う温度の蒸気がコンデンサーに入ることになる。

④沸点が、100℃より低い物質を熱するときは図のように、水浴(ウォーターバス)を使用する。

⑤フラスコの中には、必ず沸騰石を入れる。
これは、加熱によってフラスコの一部分が強熱され突然沸騰し、大きな泡ができて液体がコソデンサーに飛び込まないようにするためである。

なお、一度使った沸騰石は次の蒸留に使うことはできない。

必ず新しい沸騰石を使うようにする。

⑥えだつきフラスコやコンデンサーに使う栓は液体によって溶かされないものを使わなければならない。

有機溶剤を蒸留するときにゴム栓を使うとゴムが有機溶剤に溶けてしまい純粋な有機溶剤を得ることができない。

⑦コンデンサーに入れる水は、下の口から入れ上の口から出すようにする。




溶液混合物の分離・再結晶法とは? わかりやすく解説!

再結晶法

硝酸カリウムやホウ酸などは温度によって溶解度の変化が著しい物質です。 


これらの物質は、高温において飽和溶液をつくり、この溶液を冷やすと溶解度が減少するために、溶質が純粋な結晶として析出してきます。

このように、いちど溶解して冷やし結晶させる方法を再結晶法といいます。

再結晶すると、純粋に近い結晶を取り出すことができます。

例えば、80℃の水100グラムに5グラムのホウ酸を溶かした水溶液を20℃に冷やしたときについて考えてみましょう。

80℃の水100グラムに15グラムのホウ酸を溶かした水溶液は図のAGでしめされます。

これは、溶解度HGには達していません。

この水溶液の温度を下げて、60℃にすると飽和溶液ができます。

さらに水溶液の温度を下げて20℃にすると20℃におけるホウ酸の溶解度はDEですから今まで水溶液中に溶けていたホウ酸15グラムのうち10グラムは溶けきれなくて結晶となって析出するのです。

また、飽和溶液を熱して水を蒸発させると結晶が析出します。

これは、水の量が少なくなるので溶質の溶ける量が少なくなるからです。

食塩などのように溶解度が温度によってそれほどには変化しない物質は再結晶法より溶液を熱して水を少なくすることによって結晶を取り出す方法がよく用いられます。

再結晶によって、なぜ純粋な物質が得られるのでしょう。
不純物を含んだ硫酸銅の結晶を水に溶かすと硫酸銅も混合している不純物も水に溶解します。
(このとき、不純物が水に溶けないものであればその不純物はろ過によって取り除くことができます)
      
一般に、不純物の量は硫酸銅の結晶に比べて少量ですから高い温度にして硫酸銅の飽和溶液をつくっても不純物については薄い溶液なのです。

したがって、この水溶液を冷やしても析出する結晶は硫酸銅ばかりで不純物は溶液に溶けたまま残るのです。

実際には、結晶ができるとき溶液が包みこまれたり、結晶の表面に付着したりするので不純物の全てを取り除くことは難しく2回、3回と再結晶を繰り返すことによってより純粋なものになります。

溶液に他の液体を加えて結晶をつくる方法

水には溶けるが、アルコールには溶けない物質があります。

この物質を水に溶かした溶液にアルコールを加えると物質を溶かしていた水はアルコールに溶け込むので溶質の溶解度加減少し、溶質が結晶となって析出します。

例えば、硫酸第一鉄の濃い水溶液にアルコールを少しずつ加えていくと硫酸第一鉄が析出するので、この方法は硫酸第一鉄の製法に用いられれます。




混合物の分離とは? 分離の方法と種類とは?

物質は、常に純粋な形で存在しているとは限りません。
むしろ、混合物となっている場合のほうが多いものです。

そこで混合物から、必要とする物を純粋な形で取り出したり混合物が何種類の物質からできているかを調べることが必要になってきます。

これらの混合物から純粋な物質を分離するにはどんな方法があるかを調べてみましょう。


ふるいによる分離

粒の大きさの違う2種類の個体が混合しているような場合はふるいによってふるいわけます。

比重の違いによる分離

水よりも比重の大きなものと小さなものが混合しているような場合は混合物を水に入れてかきまわすと2つの物質が分離できます。

また、水の代わりに、濃い食塩水の中に入れて浮くものと沈むものとに分離する方法もあります。

さらに、金属の選鉱などのように水の泡の表面に物質をつけて浮かばせる方法もあります。

ろ過による分離

水などの液体の中に、砂や粘土などの溶けない物質が混合している場合があります。

このような場合は混じっている粒の大きさによって布を使って分離したり、ろ紙を使ってろ過したりさらにもっと目の小さいろ過装置を使ったりして分離することができます。

①ろ紙によるろ過の方法

②吸引ろ過による方法

普通のろ過では大変ろ過しにくいものろ過の速度をできるだけ早くしたいときなどに用いられます。

③保温した状態でろ過する方法

常温では、すぐ固体となってしまうような物質をろ過する場合に利用されます。
普通、保温ろうとを使いますが下の図のような方法でも、保温ろ過することができます。

抽出による分離

固体の混合物に、溶媒を加えて溶媒にとける成分だけを溶かし出しろ過して分離する方法があります。

落花生や大豆を小さく砕いて試験管に入れます。
これにエーテルを加えて栓をし(コルク栓をビニル布で包んでで使う)よく振ります。

すると、落花生や大豆に含まれていた脂肪はエーテルに溶けますから溶媒の部分だけを、時計皿に移し、風通しのよいところに置くとエーテルは蒸発し、あとに脂肪が残ります。

このような方法を、抽出といい、これを、自動的に行うにはソックスレーの抽出器というものを使うと便利です。

フラスコの中に、エーテルなどの溶媒を入れ円筒ろ紙の中には、大豆などを細かく砕いたものを入れます。

フラスコを、ウォーターバスで温めると蒸気になったエーテルは図のAの管を通って冷却器に行きます。

ここで蒸気は冷やされ、液体となって円筒ろ紙の中に落ちます。

このとき、エーテルは脂肪を溶かしサイホンの高さ(図のB)まで溜まると自動的にフラスコの中に流れこむようになっています。

このことが、何回もくり返されると脂肪は、大部分がフラスコの中に移りますからエーテルを蒸留して、脂肪を分離することができます。




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