酸化・還元と電気分解とは? わかりやすく解説!

酸化と還元

今までは、酸化と還元について別々に考えてきましたがここで酸化・還元をまとめて考えてみましょう。

かんたんな例として、炭素が燃える場合を考えてみましょう。


炭素原子の原子価は0、二酸化炭素になったときは炭素の原子価は4です。
すなわち、炭素は原子価0から4に増えて酸化されたことになります。

酸素は、反応するまえは電気的に中性で原子価は0二酸化炭素になったときは 一2価にかわります。

つまり、酸素は0から-2価に原子価が減ったことになりこれはすなわち酸素が還元されたことにほかならないのです。

このように、酸化と還元はいつも同時に起こるものです。
一方が酸化されているときにはもう一方は必ず還元されています。

いろいろな酸化・還元反応について自分で考えてみてください。

酸化・還元とイオン

すでに述べたように酸化は原子の+電気が増えること、あるいは-電気が減ることであり、還元は+電気が減ることあるいは-電気が増えることです。

原子は原子核の周りに-電気をおびた電子という粒がとりまいている形をしています。

その電子が増えたり、減ったりすると原子は-電気をおびたり+電気をおびたりします。

原子が電気をおびた状態にあるものをイオンといいます。

こうして見ると、原子が+イオンになることは酸化であり-イオンになることは還元であるということができます。

また、反対に+イオンが原子になることは還元であり-イオンが原子になることは酸化です。



酸化・還元と電気分解

酸化・還元とイオンの関係を電気分解について考えてみましょう。

食塩の水溶液はナトリウムイオンと塩素イオンに分かれています。
これを電気分解すると、塩素イオンは陽極(プラス極)に引かれ
そこで電子を陽極にわたして塩素原子となり、これが2個で塩素分子になります。

つまり、塩素イオンは酸化されたわけです。
ナトリウムイオンは陰極(一極)に引かれますが
水が電離してできた水素イオンのほうが電子をもらいやすい性質をもっているので
電子をもらって水素原子となり、これが二個で水素分子になります。

つまり水素イオンは還元されたのです。
ナトリウムイオンは、食塩水の中に水酸イオンとともに残ります。

そのほかの電気分解のときにも
陽極や陰極で、必ず酸化・還元の反応が起こっているのです。

また、金属のメッキのときにも酸化・還元が起こっています。



イオンと電池とは? 乾電池の仕組みとは? わかりやすく解説!

ボルタの電池

イオンになりやすいが金属とイオンになりにくい金属をうすい酸の中につけたらどうなるでしょう。

10パーセントぐらいの希硫酸に銅板と亜鉛板とをさし入れただけでは亜鉛板の表面からさかんに水素がでるだけです。

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ところが、図のような装置を組み立ててスイッチを押してみると豆電球がつくことがわかります。

また、電流計をつないでみると2つの金属板のあいだに電流が流れていることがわかります。

亜鉛は水素よりイオンになりやすいので電子を残して、亜鉛イオンとなり希硫酸に溶けだします。
亜鉛板に残った電子は、針金を通って自由に動きます。

それで、希硫酸中の水素イオンは銅板から電子を奪って水素となります。

つまり、銅板と亜鉛板をむすぶ針金の中を電子が移動するわけです。
電流の方向は、電子の流れる方向と逆にするという約束がありますのでこの装置では、銅板が陽極、亜鉛板が陰極になります。

このように、イオンの化学変化を利用して電流を生じさせる装置を電池といいます。

希硫酸中に銅板と亜鉛板を入れただけのボルタの電池は銅板の表面に細かい水素の泡がたくさんついて水素イオンが電子とむすびつくのを妨げるため実用になりません。

実用的には、これらの点を改良した、いろいろな電池がつくられています。


乾電池

乾電池は真ん中に炭素棒の陽極があり外側に亜鉛のかんがあって、これが陰極になっています。

乾電池の電極間の電圧は1.5ボルトをしめします。
乾電池の炭素棒は、ボルタの電池の銅板にあたるものです。

亜鉛は亜鉛イオンになって少しずつ減ります。
つまり、電子が余分になった状態になりやすいのですから、陰極になるわけです。

乾電池の中のイオンの動きを考えてみましょう。

陰極においては、ボルタの電池の場合と同じように亜鉛が極に電子を残してイオンになります。

この亜鉛のイオンは、電解液として入っている塩化アンモニウムが電離してできたアンモニウムイオンと反応して化学反応式にあるように錯イオンをつくります。

電解液の中に、亜鉛イオンが増えると亜鉛(陰極)がしだいにイオンになりにくくなりますがこのように錯イオンができるために亜鉛イオンの濃度は増えず、亜鉛のイオン化がすすみます。

また、陽極の炭素のところではやはり、水素イオンが電子を受け取って水素が発生しますが電解液にふくまれる二酸化マンガンと反応して水ができます。

ですから、ボルタの電池のときのように生じた水素ガスが電極の接触を妨げたり、水素が電離して電池の電圧を低くするようなこと(これを分極作用といいます)が起こりません。

乾電池のときに使われる二酸化マンガンなどの酸化剤は分極作用をなくすためのものですから消極剤、または減極剤などとよばれます。




鉛蓄電池のしくみとは? わかりやすく解説!

鉛蓄電池

乾電池は電圧が下がってしまうと、もう使えません。
しかし、鉛蓄雷池はある程度電圧が下がると外から電気を送り込むことによって、くりかえし使うことができます。 


鉛蓄電池のしくみは、陽極は二酸化鉛、陰極は鉛の板でできていてそれを互い違いにならべ、互いに触れ合わないいようにあいだにガラス繊維のマッ卜が差し込んであります。

そして、これらのものが希硫酸中につけられています。

鉛蓄電池のイオンの反応は複雑ですが陽イオンと陰イオンの反応であることに違いはありません。

電池から電気を取り出して使うことを放電といいます。
また、反対に、電池に電気を送り込んで再び放電することができるようにすることを充電といいます。

まず、放電のときについて考えてみると陰極においては、鉛が陰極に電子を残して鉛イオンとなりますがすぐに硫酸イオンと反応して溶けにくい硫酸鉛になり、陰極の表面に残ります。

このため、乾電池のときと同じように電解液の中に鉛イオンが増えることはなくイオン化はさまたげられません。



陽極においては、液中の水素イオンが陽極から電子を受け取って水素になりますが陽極の二酸化鉛に酸化されて水になります。

このとき、陽極の二酸化鉛は一酸化鉛になりますが、硫酸と反応して、やはり硫酸鉛になります。

この陽極の反応をまとめると上の化学反応式のようになります。

このようにして放電をつづけると陰極も陽極もしだいに、硫酸鉛になり、電池の起電力は下がってきます。

鉛蓄電池の陰極(鉛)と陽極(二酸化鉛)の一つの組みあわせの起電力は約2ボルトです。

これが1.8ボルトぐらいに下がったら電池に電気を送りこんでやると
放電の場合と全く反対向きの反応が起こり陰極は鉛に、陽極は二酸化鉛にもどります。

これが充電です。

なお、放電のとき、反応式を見てもわかるように硫酸液中の硫酸イオンや水素イオンが使われ、硫酸が減ってきます。

そのため、液の比重が小さくなるので比重をはかれば、電池がどのくらい使われたかがわかります。




イオン化傾向とは? 電気を使わないでメッキする方法とは?

電気を使うメッキのことはわかりましたが電気を使わないでメッキする方法があります。 

それには、金属イオンの性質をよく理解しなければなりません。
これから、金属イオンの性質と、その利用法などについて、考えることにしましょう。


電気分解によらないメッキ

3パーセントぐらいの硫酸銅の水溶液に、よくみがいた鉄くぎをつるしてしばらくそのままにしておくと、鉄くぎの表面が赤みを帯び金属の銅がくっついたことがわかります。

また、2パーセントの硝酸銀の水溶液によくみがいた銅線をつるしておくと、銅の表面に銀が析出します。

これらのことは、次のように考えるとうまく説明することができます。

硫酸銀の水溶液には、銀イオンがふくまれています。
これに銅を入れると、銅は電子を失って銅イオンとなって溶けだし溶液中の銀イオンは電子を受け取り、金属の表面につくのです。

その証拠には、長くおいた駅の色を見るとうすく銅イオンの青い色がついています。
したがって、銀よりも銅が、銅よりも鉄がイオンになりやすいことになります。

金属と水や酸

ナトリウムを水に入れると水素を発生して水酸化ナトリウムの水溶液ができますが、このことも同じように考えてよいのです。

水には水が電離して生じた水素イオンがわずかながらあります。
これにナトリウムを入れるとナトリウムのほうがイオンになりやすいためナトリウムイオンとなって溶け込み水素イオンは電子を受け取って水素原子となり、さらに、水素分子となって水素の気体を生じるわけです。

亜鉛はナトリウムイオンになりにくいため亜鉛に水を入れただけでは、水素がほとんどでません。

しかし、塩酸や硫酸のような酸だと、水素イオンが液中にたくさんあります。
亜鉛は水素より少しばかりイオンになりやすいので酸の中に浸すと、たくさんある水素イオンとの作用によって、水素を生じるわけです。

銅や銀の金属は、水の中はもちろん塩酸や硫酸の中に浸しても水素を発生しません。

このことは、銅や銀が水素イオンよりもイオンになりにくいためであると考えれげよいことになります。



イオン化列

イタリアのボルタは、多くの金属についてこのようなイオンになりやすさを研究し、1800年にその成果を発表しました。

下の表は、主な金属について、イオンになりやすいものから順に左から右にならべたものです。

これは、イオン化列とよばれています。

金属イオンになりやすいかどうかを水素を基準にして、0としてあらわした数値もこのなかにしめしておきました。

+の記号のついたものが水素よりイオンになりやすく-の記号のついたものがイオンになりにくいわけです。

この表で、+の数値の大きい金属は電気分解で金属メッキをするのがたいへんむずかしくなります。






イオンとメッキとは? 電気メッキとは? わかりやすく解説!

電気メッキ

金属は陽イオンになりやすい性質をもっていますから金属の陽イオンをふくむ溶液を電気分解すると、陰極の表面に金属のメッキをすることができないでしょうか。 

つぎのような実験をしてみましょう。


実験

①ビーカーに200立方センチの水をとりこれにつぎの薬品を順に入れ前に加えたものがよく溶けてからつぎを加えるようにしてメッキ液をつくります。

硫酸二ッケル30グラム・塩化アンモニウム3グラム・ホウ酸3グラム。

②二ッケル板を陽極にし、よくみがいてきれいにした銅板を陰極にして図のような装置を組み立て銅板の上に二ッケルメッキを行います。

このとき、陽極になった二ッケル板の表面では二ッケルが二ッケルイオンになって液に溶けこみます。

また、陰極の表面ではニッケルイオンがくっつき電極から電子をもらって金属になります。



メッキ液に加える塩化アンモニウムやホウ酸はニッケルメッキをきれいに出来上がらせる役目をもっています。

二ッケルにかぎらず、金属のイオンの陽電気をとりされば金属になるわけですからこのしくみを利用して、他の金属もメッキできます。

この実験では、ニッケルを陽極に使いましたが他のもの(炭素など)を陽極にしても陰極板にメッキすることができます。

しかし、この場合、メッキ液の中の二ッケルイオンが次第に少なくなりますからやがてメッキすることができなくなります。

たいていのメッキにおいては、このようなことがないように陽極にメッキする金属をつかいますがクロムメッキなどは陽極にクロムを用いないで、鉛や鉛の合金を使用します。




イオンとは? イオンのつくりと表し方とは? わかりやすく解説!

陽イオンと陰イオン

塩化第二銅の水溶液を電気分解するとき銅は陰極の表面につくのですから溶液中の銅は、陰極に引きつけられるような溶け方をしていると考えられます。 


それには、銅が十の電気を帯びて溶けているのにたいして塩素は一の電気を帯て溶けていると考えれば電気分解か起こる仕組みを無理なく説明づけることができます。

塩化第二銅が水に溶けたときには+の電気を帯びた銅の原子と、-の電気を帯びた塩素の原子とになっています。

ところが、水溶液に浸された電極のうち陰極のほうには-の電気がきていますから+の電気を帯びた銅の原子が引きつけられ電極の表面につきます。

ここで+と-の電気がいっしょになるために電気を帯びていない銅の原子になるわけです。

一の電気を帯びた塩素の原子は陽極に引きつけられ電気を失って塩素原子になりますが
塩素原子が2個むすびついて1個の塩素分子をつくります。

塩素分子はかなり水に溶けますが気体になって空気中に出ていくものもあります。

ここで、最初に考えたような電気を帯びた原子のことをイオンといいます。
そして+の電気を帯びた原子を陽イオン-の電気を帯びた原子を陰イオンといいます。

イオンのつくリ

原子のつくりは前に調べましたがイオンのつくりは原子のつくりとどう違うのでしょう。

原子は、+電気をもった陽子と電気をもたない中性子とがつまった原子核と
その周りを取り囲む電子とでできていました。

しかも、陽子の数と電子の数とは同じでした。
陽子がもっている十電気の量と電子がもっている一電気の量とは同じですから
原子ではそれらが互いに打消しあって電気的に+も-もしめさない中性になっています。

ところが、原子から電子をいくつか取り去ると原子から-電気の量が減るので+電気があまり原子は十電気を帯びた状態になります。

これが陽イオンです。



また、原子に他から電子が加わると-電気の量が増えるので原子は、-電気を帯びた状態になります。

これが陰イオンです。

いろいろな元素の原子のどれが陽イオンになりやすいか陰イオンになりやすいかということはその原子にふくまれている電子の数によって決まります。

いいいかえれば、元素の種類によって決まるわけです。

一般に金属元素の原子は陽イオンになりやすく非金属元素の原子は陰イオンになりやすくなっています。

また、1個の原子から電子がとれたり電子が加わったりして陽イオンや陰イオンができるだけではありません。

いくつかの原子がむすびついた原子の集団から電子がとれたり電子が加わったりして原子の集団全体として1個の陽イオンや陰イオンとなるときもあります。

例えば、硫酸の水溶液にはイオウ原子1個と酸素原子4個とからできた原子の集団に2個の電子が加わった硫酸イオンとよばれる陰イオンがふくまれています。

イオンのあらわし方

原子1個は元素記号であらわし、分子1個は分子式であらわされます。

また、いろいろな物質は化学式であらわされています。
イオンをあらわすのには元素記号と+や-の電気の量をあらわす記号とが使われています。

1個の原子が1個のイオンになった場合は、その元素記号で種類をあらわし
陽イオンの場合は元素記号の右肩に+の記号陰イオンの場合は-の記号をつけます。

そして、何個の電子が離れたり加わったりしたかによって+や-の記号にその数をあらわす数字をつけます。

また+や-の記号をその数だけならべる書き方もあります。

これをイオン式といいます。

例えば、第二銅イオンの場合は原子から2個の電子が離れて+電気を帯びるのですから銅の元素記号Cuにの右肩に+をつけます。

Cu2+または、Cu++のとなるわけです。

イオンに関係する電子の数1が1個のときは+や-に数字をつけないことになっています。




原子のつくり、原子核とは? わかりやすく解説!

原子のつくリ

原子はこのように小さいものですから、原子が考えだされたころにはただ、丸くて固い玉のようなものだと想像するだけでした。


その後、研究が進むにつれて原子のつくりもはっきりしてきました。

1913年に、デンマークの物理学者のボーアは「原子は、重くて小さい原子核の周りを電子がとりまいているものだ」ということを明らかにしました。

原子核とは、原子の中心にあって原子の直径の10万分の1ほどの大きさのもので陽電気をもった部分です。

また、電子は、陰電気をもちその1個の重さは水素原子の1837分の1です。

原子の中にふくまれる電子の数は元素の種類によって決まっています。

原子が結びついたり離れりして化学変化がおこるときには電子が非常に大切なはたらきをしています。

原子核は原子の中心にあって形は玉のようなものと考えられます。

しかし、電子はちょうど太陽の周りをまわる地球のように丸いということもできますし原子核をとりまいている雲のようなものということもできます。

わかりにくい形でしょうがこのわかりにくいのが、電子の形の特徴なのです。
    
今、水素の原子核を東京にある直径1メートルのアドバルーンとするなら水素の原子は、ピンポン玉ぐらいの電子が茅ヶ崎・青梅などを結ぶ円周上をまわっている形であるということができます。



原子核

原子核には、その原子がもつ電子の数と同じ数の陽子とよばれる粒といくつかの中性子とがしっかり結びついて含まれています。

陽子と中性子とは、重さは同じですが陽子が陽電気をもっているのに対し中性子は電気をもっていません。

陽子や中性子の重さは1グラムの1兆分の1を、さらに1兆分の1にしたぐらいで電子の重さの1836倍にあたります。

原子核にふくまれる陽子の数を原子番号といいます。

原子番号は、原子核がどの元素のものかを決めるのに大切な数です。
つまり、元素にはすべて原子番号がつけてありどの原子核も、陽子の数がわかればどの元素に属するかがわかるのです。

例えば、陽子8つをふくむ原子核は原子番号8の酸素の原子核です。

また逆に、水素の原子番号は1ですから水素の原子核にふくまれる陽子の数は1だということもわかります。

電気を帯びていない原子では原子核にふくまれる陽子の数と原子核をまわっている電子の数とが等しくて原子全体としては、陽電気と陰電気とが消し合っていることになっています。

陽子の数と電子の数が等しくないときはその原子全体が電気を帯びることになります。

これがイオンです。






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