巣の役割り
ひとくちに動物の巣といっても、いろいろと性質の違ったものがあります。
私たちの家のように動物が長いあいだ、または一生を、そこで寝起きして暮らす巣もあります。
また、雨つゆをしのぐだけの一時的な隠れ家もあります。
また、子を育てるための巣もあるでしょう。
いずれにしても、だとは、風・雨・雪など動物にとって都合の悪いものや敵から、自分の身をまもり、あるいはたまごや子をまもるために動物がつくったものを言うのです。
いろいろな動物がつくる巣は、その役割りから見て、だいたい、住まいとしての巣、一時的な隠れ家としての巣、育児用の巣の3つにわけることができます。
よく、クモがつくった網を「クモの巣」と言いますが、あれは、えさを捕まえるためのものですから巣ではありません。
クモの網と言うべきです。
アリジゴクの穴も同じように巣ではありません。
しかし、昆虫が、幼虫から成虫になるときにつくるまゆ、たとえば、カイコやヤママユガのまゆやダイミョウセセリの幼虫がヤマノイモの葉をつづり合わせてつくる隠れ家は身をまもるためのものですから巣の一種と言えましょう。
住まいとしての巣
ハチやアリのような昆虫にも住まいとしての巣をつくるものがあります。
ほかの動物で、このような性質の巣をつくるのは獣ではネズミ類・モグラ類・アナグマ・ビーバーなどが知られています。
モグラの巣
モグラの巣は、土の中に掘ったトンネルです。
中央の深いところに、球形の部屋があり、ここには枯れ草がいっぱい入れてあります。
これが、モグラの寝室で、ここでお産もします。
この部屋から、2、3本の太いトンネルが出ていて、それからいくつもの細いえだ道がわかれ、しだいに地面に近づき、ついには、地面のすぐ下を走っています。
地面近くのトンネルは、えさにするミミズや甲虫の幼虫などを探すところです。
寝室のまわりには、細い道がぐるぐると走っていますが、これは、たぶん逃げ道でしょう。
この巣穴は、ずいぶん広いものですが、ここにモグラはたった1匹で暮らしているのです。
ほかのモグラが入ってくるとたいへん怒って激しく戦い、追い出してしまいます。
畑や草原に住んでいるハタネズミやヤチネズミなどもモグラに似た巣をつくります。
ビーバーの巣
獣の巣のなかで、いちばん大仕掛けなのはカナダなどに住むビーバーの巣でしょう。
ビーバーは、川岸に水中からトンネルを掘り、寝室をつくります。
ところが、このままでは、冬になって水が少なくなるとトンネルの入り口がむきだしになってしまいます。
そこで川にダムをつくって、水が減らないようにするのです。
川岸にはえているハンノキやカワヤナギなどの木をかじって切り倒し、それを川に運び、石を重りにして、流れないようにします。
数匹が力を合わせて工事をするので、大きいダムになると長さが180メートル、厚さが6メートル、高さが3メートルほどのものがあります。
アナグマの巣
アナグマは、ふつう、山の斜面にトンネルを掘って住んでいます。
トンネルには、いくつかのえだ道があり、奥に数個の寝室があります。
アナグマは数匹いっしょに、ここに住みます。
キツネやタヌキは、穴を掘るのがあまりうまくないので、たいてい、自然にできた穴に住みます。
しかし、キツネはアナグマの巣を横取りすることがあります。
アナグマのいないときに、巣の中に入って小便をして汚すと、きれい好きなアナグマは、臭くて我慢ができずに、そこから逃げ出し、別な巣をつくります。
するとキツネは、空き家になったアナグマの巣を横取りして、そこに住みついてしまうのです。
チンパンジーやゴリラの巣
チンパンジーやゴリラなどは、夜、小枝を折って、木の上に積み重ね、
ちょうど、ガラスの巣のようにして眠ります。
ゴリラは毎晩同じところには寝ないで、毎日別の巣をつくるそうです。
また、大きいおすは、重すぎて木にのぼれないので木の根もとに巣をつくり、幹によりかかって眠ります。
リスの巣
リスは鳥に似て、上手に巣をつくります。
そのなかでも、北アメリカのキツネリスの巣は、木の枝の上に球形、または、長円形に枯れ枝を組み合わせてつくったものです。
見たところ、あまりよい巣ではなさそうですが、よく調べてみると、どうしてそうではありません。
枯れ枝でできた外側の囲みの中には、立派な壁があります。
これは、大きな葉を集め、それがまだ、湿っているうちに押し固めたものなので、激しい風や雨も中までは通りません。
巣の中には、やわらかい木の皮を細かく裂いたものや木の葉が敷いてあって寝室になっています。
入り口は横に開いていますが、通ったあとは、ふさがるようになっているので、ここから風が入る恐れもありません。
ですから巣の中はとてもあたたかく、どんな吹雪の夜でも少しも寒くありません。
春になるとリスはここで子を生みますが夏には、別に涼しい巣をつくります。
イエネズミの巣
イエネズミには、おもに天井裏に住むクマネズミ、台所の流しや下水に住むドブネズミ、小さなハツカネズミの3種があります。
クマネズミは、天井のすみに紙や布・わらなどを集めて、さらのような巣をつくります。
しかし、夏になると、たいてい、家から外へ出て、畑などに住みます。
ドブネズミは、ふつう下水やみぞに横穴を掘って、巣にします。
しかし、1年中、そこに住むわけではなさそうです。
ハツカネズミは畑にも住みますがタンスのうしろや物置などに紙などで巣をつくることもあります。