アンモニアの製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

アンモニア水の製法

アンモニア水をつくるには、アンモニアを水に溶かせばよいわけです。
アンモニアは、純粋な窒素と水素に、触媒を通して合成します。


市販の濃アンモニア水は約28パーセント、比重は0.9ぐらいです。
瓶のフタを開けると、アンモニアの刺激の強いにおいがします。

瓶の内側は、アンモニアの蒸気で高い圧力になっていますから
瓶を開けるときには、注意が必要です。

ふたを開けた瓶の口に、塩酸をつけたガラス棒を近づけると
塩化アンモニウムの白煙を生じます。

実験室ではこの濃いアンモニア水を、10倍の容積の水でうすめて使います。

アンモニア水には、アンモニウムイオンと水酸イオンが溶けていますが
アンモニア水は、電離がわりあい少ないので
塩基としては、弱い性質しかしめしません。

アンモニアは、金属の陽イオンとむすびついて
陽イオンを沈殿しにくくする性質があります。

たとえば、塩化銀は、水に溶けにくいため沈殿しますが
アンモニア水をくわえると、上の式のように塩化銀とアンモニアが反応して
銀アンモニア錯イオンができ、溶けてしまいます。

このようにイオンにほかの分子などが結びついてできているイオンを
錯イオンといいます。

アンモニアは塩基のアンモニア水として使われることは少なく
アンモニアガスとして使われ、重要な工業原料になっています。

アンモニアを酸で中和すると、酸の種類によって
硫酸アンモニウム(硫安)・硝酸アンモニウム(硝安)・塩化アンモニウム(塩安)などの塩ができます。

これらは窒素肥料として使われていますが
それぞれの成分を調べてみると
硫安塩安にくらべて硝安窒素のふくまれ方が多いので
窒素肥料としてすぐれていることがわかります。

また、アンモニアと空気から硝酸、アンモニアと二酸化炭素から
尿素をつくることができます。

尿素は窒素肥料として使われるほか、合成樹脂の原料としても重要です。
アンモニアはこのほかにも染色や氷の製造、冷凍用に使われています。



水酸化ナトリウムの性質・用途とは? わかりやすく解説!

水酸化ナトリウムの性質

水酸化ナトリウムは、白色のもろい固体で比重2.13、融点は318.4℃です。
水に非常によく溶けて、そのとき熱をだします。


水溶液は強い塩基性をしめしますがこれは、水に溶けた水酸化ナトリウムが水の中ではナトリウムイオンと水酸イオンとに、ほぼ完全に電離しているからです。

また水酸化ナトリウムは空気中の水分を吸ってべとべとになる性質があります(潮解性)。

さらに、空気中の二酸化炭素をよく吸い炭酸ナトリウムになる性質があります。

それで、固体の水酸化ナトリウムをつめた瓶に空気などの気体を通すとその気体にふくまれる水分や二酸化炭素を取り除くことができます。

水酸化ナトリウムの水溶液は、酸と中和反応をおこすほかアルミニウムや亜鉛などの金属を溶かして、水素を発生します。

このときの溶け方は、酸の場合とは少し違っています。

アルミニウムや亜鉛は、そのままイオンになってとけるのではなく上の式のようにそれぞれアルミン酸イオンや亜鉛酸イオンなどになって溶けるのです。



また水酸化ナトリウムは、たんぱく質を溶かします。
そのため、毛や毛糸につくとこれを傷めます。

また、皮膚につくとぬるぬるとした感じがするのも、このためです。

水酸化ナトリウムが毛や毛糸・皮ふなどについたときには酢酸など弱酸のうすい水溶液で洗うとよいでしょう。

油に水酸化ナトリウムを作用させるとふつうでは水に溶けない油が、水に溶けるようになります。

これは、水酸化ナトリウムの作用で油がセッケンにかわったためです。

このように、水酸化ナトリウムと油脂とからセッケンができる作用をケン化作用といいます。

水酸化ナトリウムの用途

水酸化ナトリウムは、非常に重要な工業薬品で水酸化ナトリウムを使わない化学工業はないといってもよいほどです。

レーヨン(人造絹糸)の製造に多量に使われるほか製紙・アルミニウムの製造、染料・セッケンの製造および石油精製に使われています。



濃い酸のはたらきとは? 王水とは? わかりやすく解説!

濃い酸のはたらき

うすい酸のはたらきを調べたときと同じようにして濃硫酸や濃塩酸のはたらきを調べてみましょう。 


濃硫酸と濃塩酸は、どちらも取扱いには、充分注意しましょう。

亜鉛・鉄・スズ・銅を濃い酸に入れた場合いの結果をまとめるとつぎのようになります。

① 亜鉛・鉄・スズは、水素を発生して濃塩酸に溶けます。
スズは、濃硫酸にほとんど溶けません。

② 銅は、濃塩酸には溶けませんが、濃硫酸にはゆっくり溶けます。
亜鉛・鉄も溶けます。

このとき発生する気体には、刺激臭があります。
それは、この気体に二酸化硫黄がふくまれているからです。

濃硫酸との反応は、温度が低いとはっきりしませんが加熱するとよくわかります。

いっぽう、銅は、濃塩酸には溶けませんが濃硫酸には、二酸化硫黄を発生して溶けます。

濃塩酸の場合の反応は、希塩酸のときとまったく同じですが、濃硫酸の場合に、反応のしかたが少し違います。

まえに述べたように、硫酸は強い酸化力をもっています。
その性質は希硫酸ではあまりあらわれませんが濃硫酸では強くあらわれてきます。

たとえば、銅を濃硫酸に入れると銅の表面はすぐに酸化されて、図の①式のように酸化第二銅になります。

このとき、硫酸自身も変化して、二酸化硫黄を発生します。

こうしてできた酸化第二銅は、すぐに酸が電離してできている水素イオンと作用して、②式のように第二銅イオンとなって水に溶けます。

硝酸も.硫酸と同じように、非常に酸化力が強いのでもともと酸に溶けない銅や銀などの金属を酸化銅や酸化銀などの酸化物にかえて溶かしてしまう性質をもっています。


王水

銅や銀は、濃硝酸を使って酸化物にして溶かすことができますが金や白金は、硝酸の酸化力では酸化することができません。

ところが、濃硝酸と濃塩酸を1対3の割合でまぜた液を使うと金や白金も溶かすことができます。

この混合液を王水といいます。
王水の中には、硝酸と塩酸が化合して塩化ニトロシルという、非常に酸化力の強い化合物ができこれが、金や白金を塩化物にかえるはたらきをしてこの塩化物が塩酸に溶けるのです。

金属酸化物への酸のはたらき

濃い酸のはたらきで調べたように、イオン化傾向が小さくてそのままでは酸に溶けない金属でも、酸化剤で酸化物にかえると溶けるようになります。

つまり、金属の酸化物は、金属そのものよりも水素イオンと反応しやすいわけです。

この金属の酸化物と酸の反応について、もう少しくわしく調べてみましょう。

酸化第二銅に硫酸が作用する場合を考えてみます。
酸化第二銅は.硫酸が電離してできた水素イオンと反応して、上の①式のように、第二銅イオンになります。

硫酸は完全に電離して、水素イオンと硫酸水素イオンになりさらに硫酸水素イオンの一部は水素イオンと硫酸イオンとに電離しています。

酸化第二銅と硫酸との反応をまとめると②式のようにあらわすことができます。

この溶液をに詰めると、銅イオンと硫酸イオンとがむすびついて、硫酸銅の結晶ができます。

酸化第二銅は、塩基ではありませんが、この変化は酸と塩基の中和反応によくにています。

それで、中和反応でできる物質を塩というように硫酸銅を銅の硫酸塩といいます。

このように、金属の酸化物を酸に溶かすと金属とその酸の塩ができます。



弱酸と強酸とは? 一塩基酸と多塩基酸とは? わかりやすく解説!

酸・塩基について、いろいろなことを調べてきましたが酸にはどのような種類があり、また、それぞれどのような性質があるか調べてみましょう。


弱酸と強酸

炭酸のように、一部分しか電離をおこさない酸は水素イオンを少ししかつくらないために酸性か弱く弱酸とよばれます。

弱酸には、炭酸のほか、酢酸などがあります。
いっぽう、塩酸のように、ほとんど全部が電離をおこす酸は水素イオンをたくさんつくるために酸性が強く、強酸とよばれます。

強酸には、塩酸のほかに、硝酸・硫酸などがあります。

一塩基酸と多塩基酸

硫酸の電離は、塩酸の場合と違って、つぎのように二段階でおこります。

このうち第一段の電離は、ほとんど完全に進みますが第二段の電離は、一部分しかおこりません。

塩酸のように、一段で電離をおこす酸を一塩基酸というのにたいして硫酸のように、段階的に電離をおこす酸を多塩基酸といいます。

また、多塩基酸のうち硫酸のように二段階に分かれて電離する酸を二塩基酸リン酸のように三段階に分かれて電離する酸を三塩基酸としいます。

酸化性の酸

硝酸や硫酸には、酸としてのふつうのはたらきのほかに強い酸化があります。

これは、酸の中にふくまれる酸素のはたらきで、このようなはたらきをもつ酸をとくに酸化性の酸といいます。



酸と塩基の関係とは? 水素イオン濃度と水酸イオン濃度の関係とは?

純水の電離

純粋な水も、ごくわずかですが水素イオンと水酸イオンとに電離しています。


この場合、水1分子から水素イオンと水酸イオンが1つずつできるので水素イオンと水酸イオンの数は等しくなります。

このことを、水素イオンの濃度と水酸イオンの濃度が等しいといいます。

水素イオンの濃度と水酸イオンの濃度とが等しいときには酸性と塩基性が、互いに打ち消しあうのでどちらの性質もあらわれません。

ところが、純粋な水に酸を加えると酸の電離によって、水素イオンが増えるので水素イオンの濃度が水酸イオンの濃度より大きくなります。

そのため、溶液は酸性をしめすようになります。
また、純粋な水に塩基を加えると逆に、水酸イオンの濃度が水素イオンの濃度より大きくなって溶液は塩基性をしめすようになります。



水素イオン濃度と水酸イオン濃度の関係

水素イオン濃度と水酸イオン濃度とのあいだにはいっぽうが増えるるといっぽうは減るという関係があります。

そして、その関係は、いっぽうが倍になるといっぽうは半分になるという、規則正しいものです。

つまり、水素イオン濃度と水酸イオン濃度をかけあわせたものはいつも一定になるわけです。

このことは、水素イオン濃度を「H+]、水酸イオン濃度をOH]であらわすと上の式のようになります。

この式からもわかるように、水素イオン濃度が決まるとひとりでに水酸イオン濃度も決まっててしまい
どちらかいっぽうの濃度だけをかえることはできません。

つまり、酸性・塩基性の強さは、水素イオン濃度だけであらわすことができます。



塩基と塩基性とは? 塩基の電離や性質とは? わかりやすく解説!

アンモニアの水溶液

アンモニアは、20℃での水に、水の700倍ぐらいの体積が溶けます。

アンモニアの水溶液に、青色リトマス紙と赤色リトマス紙を入れると二酸化炭素の水溶液の場合と違って赤色リトマス紙は青くなりますが青色リトマス紙は色がかわりません。


一方、乾いたアンモニアの気体の中に青色リトマス紙と赤色リトマス紙を入れてみるとどちらも色がかわりません。

しかし、この場合でも、リトマス紙が水分を吸っていたりアンモニアがよく乾いていないで、水分をふくんでいたりするとアンモニアの水溶液のときと同じように赤色リトマス紙の色が青くかわります。

これは、アンモニアの気体がアンモニアやリトマス紙にふくまれる水分といっしょになってアンモニアの水溶液と同じはたらきをするからです。

アンモニアは水に溶けると、水と反応して、下の式のように、アンモニア水ができるのです。

この実験で乾いたアンモニア(水酸化ナトリウムか水酸化カリウムを詰めた瓶の中を通す)には、乾いたリトマス紙の色をかえるはたらきがなく水に溶けてアンモニア水になると、赤色リトマス紙の色を青色にかえるはたらきをもつようになることがわかりました。

アンモニア水のよに、赤色リトマス紙の色を青色にかえる物質を塩基またはアルカリといいます。

また、塩基のもっている性質を塩基性といいます。



塩基の電離

アンモニアが水に溶けると、アンモニア水ができ塩基のはたらきをしますがアンモニア水そのものが塩基のはたらきをしめしているのではありません。

アンモニア水の一部は、左の①式のように変化しアンモニウムイオンと水酸イオンとに分かれています。

同じように、水酸化ナトリウムが水に溶けるとそのほとんどが上の②式のようにナトリウムイオンと水酸イオンとに分かれます。

このように、塩基がアンモニウムイオンやナトリウムイオンのような陽イオンと陰イオンである水酸イオンとに分かれることを、塩基の電離といいます。

塩基のはたらきをするのはアンモニア水や水酸化ナトリウムのものではなくてこれらが電離してできる水酸イオンなのです。

電離してできる陽イオンは、塩基のはたらきには直接関係しません。

したがって、塩基と塩基性ということを水酸イオンを使っていいあらわすと塩基というのは、電離によって水酸イオンをだす物質のことで塩基性とは、水酸イオンのもつ性質であるということができます。

塩基とアルカリ

水溶液の中で電離して、水酸イオンをだす物質を塩基といいましたが、アルカリともいいます。

アルカリというのは、塩基のなかでもよく水に溶け強い塩基性(アルカリ性)をしめす物質をさします。

ふつう、ナトリウム・カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物やカルシウム・バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物例えば水酸化ナトリウムや水酸化バリウムなどを、アルカリといっています。

突然には、アルカリ・アルカリ性というかわりに塩基・塩基性という言葉を使います。

塩基の性質

塩基は、水酸イオンをだす物質です。
ですから、いろいろな塩基は水酸イオンの性質を共通にもっているわけです。
つまり塩基に共通した性質は、水酸イオンの性質ということになります。

水酸イオンのおもな性質は、つぎのとおりです。

① 塩化鉄・硫酸銅のような重金属の塩の水溶液から
よく水酸化物をつくります。

これは、水酸イオンが、金属の陽イオンと反応して水に溶けにくい水酸化物をつくるからです。

② リトマスのような指示薬に、塩基性特有の色をつけます。

③ 酸と中和反応をおこします。



酸と酸性とは? 酸の性質とは? わかりやすく解説!

アサガオの花やシソの葉からしぼりとった色水に酢やナツミカンの汁を入れると色が赤くなります。

一方、この色水に、灰じるのうわずみ液を入れると色が青くなります。

また、酢のかわりに塩酸を灰じるのかわりに水酸化ナトリウムの水溶液を使っても、同じ実験ができます。
酢や塩酸は酸とよばれ、水酸化ナトリウムは塩基とよばれます。

酢や塩酸と、灰じるや水酸化ナトリウムの水溶液とでは花の色水のかえ方が違います。

この酸や塩基は、どのような性質をもっているか調べてみましょう。


二酸化炭素の水溶液

二酸化炭素は、15℃の水に、水と同じくらいの体積が溶けこみます。

二酸化炭素の水溶液に、青色リトマス紙と赤色リトマス紙を入れると青色リトマス紙は赤くなりますが赤色リトマス紙は色がかわりません。

一方、乾いた二酸化炭素の気体の中に青色リトマス紙と赤色リトマス紙を入れてみるとどちらも色がかわりません。

しかし、この場合でも、リトマス紙が水分を吸っていたり二酸化炭素がよく乾いていないで水分をふくんでいたりすると二酸化炭素の水溶液のときと同じよう青色リトマス紙の色が赤くかわります。

これは、二酸化炭素の気体が二酸化炭素やリトマス紙にふくまれる水分といっしょになって二酸化炭素の水溶液と同じはたらきをするからです。

二酸化炭素は、水に溶けると、水と反応して図の式のように炭酸ができるのです。

この実験によって、乾いた二酸化炭素(濃硫酸を通す)は乾いたリトマス紙(塩化カルシウムデシケーターに入れる)の色をかえるはたらきがなく、水に溶けて炭酸になること青色リトマス紙の色を赤色にかえるはたらきをもつことがわかりました。

炭酸のように、青色リトマス紙の色を赤色にかえる物質を酸といいます。
また、酸のもっている性質を酸性といいます。

酸の電離

二酸化炭素が水に溶けた炭酸は、酸のはたらきをしますが炭酸そのものが酸のはたらきをするのではありません。

炭酸の一部に水とはたらきあって、左の①式のように変化しヒドロニウムイオンH3O+と炭酸水素イオンHCO3とに分かれています。

同じように、塩化水素が水に溶けると塩酸という酸になりますが塩酸では、そのすべてが水とはたらきあって上の②式のように、ヒドフニウムイオンと塩素イオンとに分かれています。

このように、酸が、ヒドロニウムイオンと炭酸水素イオンや塩素イオンのような陰イオンとに分かれることを酸の電離といいます。

酸のはたらきをするのは、炭酸や塩酸そのものでけなくて、これらが電離してできるヒドロニウムイオンH3O+なのです。

電離によってできる陰イオンは、酸のはたらきには直接関係しません。



水素イオン

酸の電離によってできるヒドロニウムイオンは酸からでる水素イオンが水の分子とむすびついてできたものです。

つまり、酸からでる水素イオンは、水中ではそのままで入れなくて必ず水の分子とむすびつき、ヒドロニウムイオンになっているのです。

しかし、ふつうは、ヒドロニウムイオンを水中の水素イオンという意味でたんに、水素イオンといっています。

ですから、ここでも、とくにヒドロニウムイオンと水素イオンH+を区別しないで、両方とも、水素イオンH+と書きあらわすことにします。

したがって.いま述べた意味での水素イオンを使って酸と酸性をいいあらわすと酸というのは電離によって水素イオンH+をつくりだす物質のことであり酸性とは、水素イオンH+のもっている性質であるということができるのです。

酸の性質

酸は、水素イオンH+をつくりだす物質ですからいろいろな酸は、水素イオンの性質を共通にもっているわけです。

つまり、酸に共通な性質は、水素イオンの性質ということになります。
水素イオンのおもな性質は、つぎのとおりです。

① 酸味をもっています。
これは、水素イオンの刺激による味です。

② 亜鉛・スズなどの金属とはたらきあって水素を発生します。
これは、これらの金属原子が、酸の中の水素イオンに電子をあたえ水素ガスにするからです。

金属は、イオンになって、水に溶けるのです。

③ リトマスのような指示薬に、酸性に特有な色をつけます。

④ 塩基と中和反応をおこします。



イオンと電池とは? 乾電池の仕組みとは? わかりやすく解説!

ボルタの電池

イオンになりやすいが金属とイオンになりにくい金属をうすい酸の中につけたらどうなるでしょう。

10パーセントぐらいの希硫酸に銅板と亜鉛板とをさし入れただけでは亜鉛板の表面からさかんに水素がでるだけです。

ところが、図のような装置を組み立ててスイッチを押してみると豆電球がつくことがわかります。

また、電流計をつないでみると2つの金属板のあいだに電流が流れていることがわかります。

亜鉛は水素よりイオンになりやすいので電子を残して、亜鉛イオンとなり希硫酸に溶けだします。
亜鉛板に残った電子は、針金を通って自由に動きます。

それで、希硫酸中の水素イオンは銅板から電子を奪って水素となります。

つまり、銅板と亜鉛板をむすぶ針金の中を電子が移動するわけです。
電流の方向は、電子の流れる方向と逆にするという約束がありますのでこの装置では、銅板が陽極、亜鉛板が陰極になります。

このように、イオンの化学変化を利用して電流を生じさせる装置を電池といいます。

希硫酸中に銅板と亜鉛板を入れただけのボルタの電池は銅板の表面に細かい水素の泡がたくさんついて水素イオンが電子とむすびつくのを妨げるため実用になりません。

実用的には、これらの点を改良した、いろいろな電池がつくられています。


乾電池

乾電池は真ん中に炭素棒の陽極があり外側に亜鉛のかんがあって、これが陰極になっています。

乾電池の電極間の電圧は1.5ボルトをしめします。
乾電池の炭素棒は、ボルタの電池の銅板にあたるものです。

亜鉛は亜鉛イオンになって少しずつ減ります。
つまり、電子が余分になった状態になりやすいのですから、陰極になるわけです。

乾電池の中のイオンの動きを考えてみましょう。

陰極においては、ボルタの電池の場合と同じように亜鉛が極に電子を残してイオンになります。

この亜鉛のイオンは、電解液として入っている塩化アンモニウムが電離してできたアンモニウムイオンと反応して化学反応式にあるように錯イオンをつくります。

電解液の中に、亜鉛イオンが増えると亜鉛(陰極)がしだいにイオンになりにくくなりますがこのように錯イオンができるために亜鉛イオンの濃度は増えず、亜鉛のイオン化がすすみます。

また、陽極の炭素のところではやはり、水素イオンが電子を受け取って水素が発生しますが電解液にふくまれる二酸化マンガンと反応して水ができます。

ですから、ボルタの電池のときのように生じた水素ガスが電極の接触を妨げたり、水素が電離して電池の電圧を低くするようなこと(これを分極作用といいます)が起こりません。

乾電池のときに使われる二酸化マンガンなどの酸化剤は分極作用をなくすためのものですから消極剤、または減極剤などとよばれます。




イオン化傾向とは? 電気を使わないでメッキする方法とは?

電気を使うメッキのことはわかりましたが電気を使わないでメッキする方法があります。 

それには、金属イオンの性質をよく理解しなければなりません。
これから、金属イオンの性質と、その利用法などについて、考えることにしましょう。


電気分解によらないメッキ

3パーセントぐらいの硫酸銅の水溶液に、よくみがいた鉄くぎをつるしてしばらくそのままにしておくと、鉄くぎの表面が赤みを帯び金属の銅がくっついたことがわかります。

また、2パーセントの硝酸銀の水溶液によくみがいた銅線をつるしておくと、銅の表面に銀が析出します。

これらのことは、次のように考えるとうまく説明することができます。

硫酸銀の水溶液には、銀イオンがふくまれています。
これに銅を入れると、銅は電子を失って銅イオンとなって溶けだし溶液中の銀イオンは電子を受け取り、金属の表面につくのです。

その証拠には、長くおいた駅の色を見るとうすく銅イオンの青い色がついています。
したがって、銀よりも銅が、銅よりも鉄がイオンになりやすいことになります。

金属と水や酸

ナトリウムを水に入れると水素を発生して水酸化ナトリウムの水溶液ができますが、このことも同じように考えてよいのです。

水には水が電離して生じた水素イオンがわずかながらあります。
これにナトリウムを入れるとナトリウムのほうがイオンになりやすいためナトリウムイオンとなって溶け込み水素イオンは電子を受け取って水素原子となり、さらに、水素分子となって水素の気体を生じるわけです。

亜鉛はナトリウムイオンになりにくいため亜鉛に水を入れただけでは、水素がほとんどでません。

しかし、塩酸や硫酸のような酸だと、水素イオンが液中にたくさんあります。
亜鉛は水素より少しばかりイオンになりやすいので酸の中に浸すと、たくさんある水素イオンとの作用によって、水素を生じるわけです。

銅や銀の金属は、水の中はもちろん塩酸や硫酸の中に浸しても水素を発生しません。

このことは、銅や銀が水素イオンよりもイオンになりにくいためであると考えれげよいことになります。



イオン化列

イタリアのボルタは、多くの金属についてこのようなイオンになりやすさを研究し、1800年にその成果を発表しました。

下の表は、主な金属について、イオンになりやすいものから順に左から右にならべたものです。

これは、イオン化列とよばれています。

金属イオンになりやすいかどうかを水素を基準にして、0としてあらわした数値もこのなかにしめしておきました。

+の記号のついたものが水素よりイオンになりやすく-の記号のついたものがイオンになりにくいわけです。

この表で、+の数値の大きい金属は電気分解で金属メッキをするのがたいへんむずかしくなります。






食塩水の電気分解とは? わかりやすく解説!

食塩水の電気分解

食塩は塩化ナトリウムという電解質でできていますが
この濃い水溶液を電気分解してみましょう。



実際に実験してみると
陽極から塩素が、陰極から水素が発生することがわかります。

そして、陰極に近い水は水酸化ナトリウムの水溶液となっています。

このときの反応は、つぎのように説明されます。

① 水に溶けた食塩は、ナトリウムイオンと塩素イオンとに電離しています。

② 塩素イオンは陰イオンですから陽極に引かれ電極にくっついて、塩素原子になります。

そして、塩素原子が2個で塩素分子をつくり、水に溶けたり、気体になったりします。

③ ナトリウムイオンは陽イオンですから陰極に引かれますが陰極の材料によって様子が違います。

(A) 陰極が黒鉛や鉄でできていると水のわずかな電離でできた水素イオンが陰極にくっついて水素原子となりこれから水素分子となります。

一方、液の中には、ナトリウムイオンと水酸イオンとが残るわけですから水分を蒸発させると、水酸化ナトリウムが残ります。

(B) 陰極が水銀だと、ナトリウムイオンは一の電気と結びついて、ナトリウム原子となって水銀に溶けます。
この水銀に水を通すと、ナトリウムが反応して水酸化ナトリウムと水素になります。



ここでできた水酸化ナトリウムは強電解質ですから水に溶けている間は、ナトリウムイオンと水酸イオンとに電離していますが液を蒸発させると水酸化ナトリウムの固体としてえられます。

なお、食塩水の電気分解においては陰極にできた水酸化ナトリウムと陽極にできた塩素とが反応して塩素酸ナトリウムNaclO3ができることがあります。

これを防ぐために、食塩の工業的電気分解には陰極と陽極を隔膜で分ける隔膜法や陰極に水銀を用いる水銀法などが用いられるわけです。

食塩水は、工業的に塩化マグネシウム・硫酸マグネシウム・硫酸カルシウムなどの製造原料として大切なものですがいちばん重要な用途は、電気分解することにより塩素・水素・水酸化ナトリウム・ナトリウムなどをつくることです。

このような工業を、ソーダエ業といいます。

水酸化ナトリウムや水素の性質についてはほかのところで詳しく説明してありますからここでは、塩素とナトリウムについて調べてみましょう。






電解質と非電解質とは? わかりやすく解説!

電解質

陽イオンや陰イオンがどのような仕組みになっているかは今までの説明でわかったことと思います。 


ところでみなさんは+電気と-電気が引きあってくっつこうとすることは知っているでしょう。

陽イオンと陰イオンもそれぞれ+電気と-電気をもっているのですからお互いに引きあってくっつきます。

例えば、+電気をもっているナトリウムイオンと-電気をもっている塩素イオンとは水溶液でないときは、お互いにくっついて、塩化ナトリウムという化合物になります。

このようにしてできている化合物は塩化ナトリウムのほかに塩化第二銅や硫酸アンモニウムなど、たくさんあります。

このような化合物は、水に溶かすと水のはたらきによってまた陽イオンと陰イオンとに分かれてしまいます。

ある物質が水に溶けてその成分の陽イオンと陰イオンとに分かれることを電離といいます。

電離するような物質の水溶液は電流をよく導き電流によって電気分解される性質があるので水に溶けて電離する物質のことを電解質といいます。



非電解質

電解質の水溶液がよく電気を導くのにたいして砂糖の水溶液は電気を導きません。

純粋な水もほとんど電気を導きませんがそれは、これらの液の中にイオンがないから電気を導かないのです。

つまり、砂糖も水も電離しにくいわけです。

水に溶けてもイオンを生じない物質は電気を通しませんし電気分解されることもありません。

それで、このような性質をもった物質を非電解質といいます。

このように、その水溶液が電流を通すか、通さないかによって物質を電解質と非電解質とに分けることができますが物質の種類によっては、どちらともつかない中くらいに電離するものもあります。

例えば、酢酸の水溶液が電気を導く程度は塩化ナトリウムの水溶液に比べると悪いですが砂糖の水溶液よりは、電気をよく導ききます。

これは、酢酸の水溶液中で酢酸は完全には電離せずほんの少ししか電離していないためです。
このような電解質を弱電解質といいます。

これにたいして、塩化ナトリウムのように水に溶けて、完全に電離してしまうような電解質のことをとくに、強電解質といいます。

また、水の分子も極めてわずかですが電離しています。
つまり、水分子1千万個について1個のわりで電離しています。

この程度では電気を導くことはほとんどできません。

しかし、水のこのわずかの電離によってできた水素イオンが電気分解のときなどには大切なはたらきをしています。




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