振動の利用とその例と特徴とは? わかりやすく解説!

ふりこ時計

ふりこ時計は、ふりこの等時性を利用して、時間を測る機械です。
これを動かすエネルギーは帯のような鋼でつくったぜんまいに、たくわえられています。


ふりこの運動は、空気などの抵抗によって、しだいに弱まろうとします。
このとき、ぜんまいにたくわえられたエネルギーが少しずつふりこにあたえられて、振動が続くのです。

ぜんまいは、その弾力によって、たえずもどろうとしています。
この力に、いくつかの歯車によって、がんぎ車に伝わっていきます。
ぜんまいのもどる速さを調節するのが、アンクルです。

アンクルは、ふりこが一定の周期で左右にふれるたびにがんぎ車の溝にくいこみます。

そのため、ぜんまいは一定の速さでもどりこれにつながる歯車を一定の速さで回転させるのです。

歯車は、動力を伝えるほかに、回転数をかえるはたらきもします。
かみあった2つの歯車の回転数は、その歯数に反比例します。

たとえば、歯数の割合が、1対2の歯車を組み合わせると大きいほうの歯車の回転数は小さいほうの歯車の2分の1になります。

この考えから、時計の長針と短針をまわす仕組みを調べてみましょう。

時計の針は、長針が1回転するうちに、短針が12分の1回転しなければなりません。
それには、長針と短針をまわす歯車の歯数を、1対12の割合にすればよいわけです。

しかし、実際には1対12の割合の歯車を、いちどにかみあわせないでいくつかの歯車を使って、少しずつ回転数をかえ全体として1対12の割合になるように、工夫されています。

bandicam 2015-04-27 02-47-22-421-min

図は文字板の裏にあって、長針の12分の1の回転数で、短針をまわす仕組みです。
これを、日のうら装置と言います。

長針のついている三番車は、1時間に1回転します。
この軸は、中心割カナという、小さな歯車が固定されてして日のうら歯車という大きな歯車とかみあっています。

日のうらカナという小さな歯車は、大きな時針歯車とかみあっています。
時針歯車の軸には、短針がついていて、三番車の軸に、ゆるくはまっています。



ふりこ電気時計

電磁石を使って、ふりこをふらせる時計をふりこ電気時計と言います。

この時計は、ふりこの重りが、磁石になっています。
この磁石が、コイルの中を通れるようにし、コイルには乾電池から電流を通し磁石のはたらきをさせてあります。

ふりこ電気時計は、この2つの磁石の引力によってふりこをふらせるので、ふつうの柱時計のように、ねじをまく心要がありません。

しかし、1年ぐらいで、乾電池を取り換えなければなりません。

また、ふりこの周期にあわせて電流のスイッチが切れたり入ったりするので重りの磁石がコイルの磁石に吸い込まれたままにならないように工夫してあります。

腕時計・置時計

腕時計や、置時計も、針を動かす動力に、ぜんまいが使われていてがんぎ車・アンクル・歯車・指針などが組み合わされています。

ただ、腕時計や置時計には、ふりこのかわりに、テンプが使われています。
しかし、針を動かす仕組みは、ふりこ時計と同じです。

テンプは、図のように、大きな金属の輪と、細いひげぜんまいからできています。
このテンプを、少しまわしてはなすと、ひげぜんまいの力で、勢いよくもどります。

しかし、その勢いで、もとの位置を行き過ぎてしまいます。
そして、またもどり、また行き過ぎます。
こうして、左から右、右から左と、往復の回転迎動を繰り返します。

テンプも、ふりこと同じように、1往復する時間が決まっています。
ふりこの場合は、周期はふりこの長さで決まりましたが、テンプの周期はひげぜんまいの長さで決まります。

ひげぜんまいが長くなれば、テンプはゆっくり動き、短くなれば、速く動きます。

したがって、テンプは、ふりこがふれるのと、同じはたらきをしています。
テンプが一往復するたびに、がんぎ車が一歯ずつ動く仕組みは、ふりこ時計と同じです。

テンプの振動は、外から力を加えてやらなければしだいに弱まり、しまいに止まってしまいます。

がんぎ車やアンクルは、ぜんまいの力をテンプに伝えて振動を続けさせる役目をしています。

これも、ふりこ時計の場合と、全く同じです。腕時計の中に自動まき腕時計というのがあります。

これは、指先でねじをまくかわりに手を動かすことによって起こる振動を利用して、ねじが自然にまけるように工夫してあります。

自動まき腕時計の内部は、いつも、下にくる重りがありその重りを手の振動で動かし、このわずかの力を利用してねじをまくしくみになっています。




単振動・固有振動とは?自由振動と強制振動とは? 振動の共振とは?

単振動

ふりこの振動のような運動を単振動と言います。

下の図のように、つるまきばねに重りをつるし、Bまで引き伸ばしてはなすとOを中心としてAとBのあいだで振動します。

これも、単振動です。

このときは、重力と、つるまきばねの弾力とがはたらくので弾性振動とも言います。
腕時計のひげぜんまいは、図と形は違いますが、同じ単振動をします。

いろいろの楽器や、マイクロホン・スピー力ーなどの振動はすべて弾性振動ですが、ふりこや、つるまきばねにつるした重りの振動のようにかんたんな振動ではありません。


固有振動

鉄をU字形にし、そのあしに、木箱(共鳴箱)を取り付けたものを音叉と言います。

音叉を、木づもで軽く叩くと、きれいに澄んだ音がでます。
これは、音叉が振動をして、この振動が空気に伝えられ、音波になるからです。
音叉が振動していることは、その先を、少し水面にさしこんでみれば、わかります。

音叉の振動や、これを伝える空気の振動などで1秒間に振動する数を、その振動数と言います。

振動数に、その振動の周期をかけると1になるという関係かわりますから1を周期で割ると振動数がもとめられ、1を振動数で割ると周期をもとめることができます。

音叉は、その形や大きさ、材料にした鉄の性質などによって決まる一定の振動数をもっています。
これを、固有振動数と言います。

音叉だけでなく、すべての物体は、叩けば必ず音がでます。
その振動数は、その物体の形や弾性によって決まる、一定の大きさをもっています。
このように、物体が、固有振動数で振動することを、固有振動と言います。

自由振動と強制振動

ふりこや音叉の振動のように、はじめに外から加えられた力だけで物体が振動することを、自由振動と言います。

自由振動では、固有振動の振動数で振動し振動を続ける力がはたらかなければ、しだいに振動が止まってしまいます。

このような振動を減衰振動と言います。

ぶらんこに子どもをのせて、いちばん下にくるたびに少しずつ押してやると、しだいに大きく揺れていきます。

このように、ある物体が自由振動をしているとき、一定の周期をもった力をたえず外から加えると、振幅が大きくなります。
この力を強制力と言い、強制力によって起こる振動を、強制振動と言います。

ぶらんこが、いちばん下にくるたびに動く方向と反対向きの力を少しずつ加えると振幅がしだいに小さくなって、ついには止まってしまいます。

このように、強制力は振動を強めることも、弱めることもできます。



振動の共振

すべての物体は、それぞれ固有振動数をもっています。
この固有振動数に等しい強制力を加えると、その物体は、しだいに振動しはじめます。

このことを、共振または共鳴と言います。

図のように固有振動数の等しい音叉AとBを向い合せておき一方を叩いて振動させます。

しばらくして、叩いたほうの音叉を手で握り、その振動を止めて耳を傾けると叩かなかった音叉が、鳴り出しています。

そのわけは、つぎのように説明できます。

まず、Aの振動が空気に伝わり、音波ができます。
音波は、進行方向に圧力をもっていますからその圧力が強制力となって、Bをごくわずかずつ押し動かします。

この場合、Bの固有振動数は、強制力の振動数と等しいのでBの振動が音波のくるたびにさかんになって、鳴り出すのです。

また、つぎのような実験をしてみましょう。
下の写真のように、1本の糸を水平にはり、長さの同じふりこAとBをむすびつけます。

はじめ、AのふりこをふらせるとAの振動が弱まるにつれて、Bが大きくふれてきます。

Aの振動が止まると、Bの振動がもっとも大きくなりBの振動が弱まると、しだいにAの振動が強くなります。

そして、これが繰り替えされます。

これも、振動の共振です。
2つのふりこの長さが等しいので、固有振動数も等しくなります。

このため、一方のふりこの振動が水平にはった糸を伝わってもう1つのふりこを動かすのです。

電車が振動するときは、そのときの車体の振動数に等しい固有振動数をもつつりかわが共振して大きく揺れ動きます。

つり橋をわたるとき、足なみが橋の固有振動数とあうと橋は大きく揺れだします。
これも、共振の例です。

したがって、つり橋をわたるときは数人で足なみをみだしながら歩くほうが安全です。




ふりこの運動とは?ふりこの等時性とは? わかりやすく解説!

ふりこの長さと周期

図のように、糸の先に重りをつけC点からつりさげて自然のままにしておくと重りは重力によって、C点の真下のO点で静止します。

このときのCOの方向が、鉛直方向、つまり重力の方向です。

重りを、A点まで手で動かしてはなすと、A→O→B→O→Aと糸の長さlを半径とした円周上を動いて、もとの位置にかえる運動を繰り返します。


この運動を振動と言い、このような仕掛けを、ふりこと言います。
私たちが、普段よく見かけるふりこは、柱時計のふりこです。

上の図で、OからAまでの距離、またはOからBまでの距離を振幅と言います。

OAとOBの距離は等しくなります。

AからBにいき、BからAにかえるまでの時間を、ふりこの周期と言います。

糸の長さをいろいろにかえて、糸の長さと周期の関係を調べてみると「ふりこの周期は糸の長さの平方根に比例し、重力の加速度の平方根に反比例する」ことがわかります。

この関係は、周期をT秒、糸の長さlセンチ、重力の加速度を、毎秒・毎秒gセンチとすると、つぎの式であらわされます。

πは、円周率(3.14)です。

したがって、糸の長さが長くなるほど周期は大きくなります。
また、赤道の近くとか、富士山の頂上とか重力の加速度の小さいところほど周期は大きくなることになります。

ふりこの重さと周期

糸の長さはかえないで、重りの重さだけをかえてストップウォッチで周期を測ってみるとふりこの周期は少しもかわらないことがわかります。

このことは、まえの周期の式に重りの質量が入っていないことからも、わかります。

重力の加速度の測定

ふりこの長さを一定にしておいて、その周期を測るとまえの式から、重力の加速度をもとめることができます。

重力の加速度は、緯度や重さによってかわるばかりでなく地下の岩石の質や、割れ目があるかないかによっても、かわります。

このことを利用して、日本の陸地や近海の各地で、重力の加速度を測り地下に地震の起こりそうな多くの割れ目があることを、知ることができました。

ふりこの等時性

ふりこの運動で、面白いことは、ふりこの振幅が、ある程度小さい範囲では「振幅が大きくても小さくても、周期が一定している」ということです。

これは、イタリアのガリレオが、1583年にピサの礼拝堂でつりランプの揺れるのを見て脈拍を時計がわりに使って発見したことでふりこの等時性と呼ばれています。

ふりこの等時性を利用して、ふりこ時計かはじめてつくったのはオランダのホイヘンスという学者で1673年のことです。

ふりこの周期は、その長さの平方根に比例しますからふりこの長さを長くすると、周期が大きくなります。

柱時計のふりこには、下のはしにねじがついています。
時計が遅れるときは、このねじで重りを上げ進むときは重りをさげて調節するようになっています。

ふりこにはたらく力

図を見てください。

ふりこが連動しているときにはたらく力は、重りの重さWと糸の張力、Tです。
WとTの合力Pは、Tと直角で、円の接線の方向を向いています。

このPの力は、中心Oに近づくほど小さくなりますがふりこがA点からO点にくるまでに加速度をあたえ続けているのでO点で、いちばん速さが大きくなります。

ふりこが、慣性によって、O点か通り越して左側にいくとPの力は運動の方向と反対方向なるので速さはしだいに小さくなっていきます。

そして、ついに速さがゼロになると中心Oにむかってまえと同じような運動をします。




向心力とは?遠心力とは? わかりやすく解説!

向心力

等速円運動では、速さはかわらないが方向が絶えずかわっているので方向をかえる加速度(法線加速度)が絶えずはたらいています。


円周上の接線と、その接点を通る半径とは垂直に交わっているので、この加速度は。円の中心にむかいます。

図で物体をPとすると、PAという矢印で、この加速度をあらわすことができます。

質量のある物体に、加速度があらわれるのはそこに、力がはたらいているからです。

このとき、力の方向と加速度の方向は同じですから物体にはたらく力も、中心を向いているはずです。
このように、等速円運動をする物体にはたらく力を向心力と言います。

小石に糸をつけて、手でふりまわし、円運動をさせると手に力が加わります。この力は、向心力の反作用です。

カーブと向心力

走っている人や、自転車に乗っている人がカーブを曲がるときの様子を見ると体をカーブの内側に傾けています。

カーブを曲がるということは円運動の一部にあたるので向心力を生みださなければなりません。

その向心力は、体を傾けることによって重力の水平方向の分力としてあらわれます。

電車や汽車のレールで、カーブしているところは外側のレールが、少し高くつくられています。
また、大きな速度で自動車がカーブするところも道路の面を内側に傾けてあります。

これも、向心力をつくるためです。

図で、自動車にはたらく重力(GC)を水平方向(GA)と道路に垂直の方向(GB)に分解してみます。

すると、GBは道路を押す力となりGAが向心力となって自動車に円運動させることがわかります。



遠心力

円運動をしている物体に、私たちが乗っているとします。
このとき、私たちの体は物体といっしょに円運動しているのに円運動をしていることは、少しもわかりません。

たとえば、地球上にいる人は地球の自転のために1日に1回という速度で地軸のまわりをまわっています。
しかし、円運動をしていることは、少しもわかりません。

また、等速運転をしている電車が半径が一定のカーブを走っているときは乗客も電車も、等速円運動をしています。

このときも、乗客は、電車に対して静止していて円運動をしていることがわかりません。

ところが、円運動をするには向心力が心要で、この力は円の中心にむかっています。
そこで、円運動をしている物体に乗っている人から考えると向心力の方向に体が動かないのが不思議です。

そこで、物体が中心の方向に動かないためには、向心力と同じ大きさで反対向きの力がはたらいていると考えなければ、これまでのことが理解できません。

このような力を、遠心力と言います。

地球上の物体の重さは、地球の万打引力と遠心力との合力であると言えます。

遠心分離機

小石に糸をつけてふりまわしたときに糸がきれたとすると向心力ははたらかなくなり、小石は円の接線方向に飛び去ります。

円筒の中に、土でにごった水を入れ、円筒の軸をモーターで回転させると土の細かい粒も、いっしょに円運動をはじめます。

ところが、これに向心力をあたえるものがないのでしだいに接線方向に動き出します。

そして、うずまき形の曲線を描いて中心から遠ざかりしまいには円筒の壁にくっついてしまいます。

このような方法で、比重の違う液体と液体や固体と液体を分離する機械を、遠心分離機と言います。




人工衛星と重力の関係とは? わかりやすく解説!

地球の引力は、高さが高くなるにしたがって、しだいに小さくなりますが非常に高いところでないと、ゼロにはなりません。

そこで、人工衛星や月ロケットを打ち上げるにはこの重力に打ち勝つ方法を考えなければなりません。


人工衛星の場合では、数百キロの高さまで打ち上げその軌道(運行の道筋)を地球の表面に平行に向かせたとき地球を中心とした、楕円運動をはじめます。

このときの向心力は、ちょうど、人工衛星にはたらく重力に等しいような速度でなければなりません。

人工衛星を打ち上げるロケットは、特殊燃料を燃やしてそれをうしろに吹き出し、その反動で進みます。

しかし、積み込まれている燃料には、かぎりがありますからこれが燃えきってしまうまでに、最大速度にします。

この最大速度が、毎秒7.9キロ以上にならないと楕円運動に必要な向心力が人工衛星にはたらく重力に等しくならないのです。

人工衛星が、回転の軌道にのると、地球の引力によってたえず方向がかえられ、ケプラーの第一法則にしたがって運動を続けます。

そのはじめの速度は、特殊燃料によってあたえられたのですが燃料がなくなってからは、そのときの速度で、慣性による等速運動をします。

月ロケットの場合は、人工衛星と少し違います。

月にも万有引力かわりますから、地球と月のあいだに2つの引力が等しくなる点(図のA点)があります。

月にロケットを着陸させるには、すくなくともこのA点か通らせるまで、地球の引力に逆らって運動させねばなりません。

それには、口ケットの最大速度を、毎秒11.2キロ以上にする必要があります。

月ロケットがA点を通ってからは月の引力によって月の面に向かって落ちていきます。

しかし、月の表面に平行な方向にロケット動きだし月の引力と運動による向心力が等しいと月を中心としてまわる人工衛星になります。

ロケットの誘導技術が発達し、A点を通ったロケットの操縦ができるようになりロケットを月に無事に着陸させ、さらに地球に帰ってくることもできるようになりました。




万有引力と重力とは?万有引力の法則とは? わかりやすく解説!

万有引力

ニュートンは、運動の3つの法則を使って、いろいろの力の問題を説きましたがその中でいちばん有名なのは万有引力の発見です。

ニュートンよりまえに、ドイツにケプラーという学者がいて17世紀のはじめに惑星(水星・金屋・火星など)の運動について3つの法則を発見していました。

その法則とは、つぎのようなものです。


第一法則

水星や金星などの惑星は太陽を1つの焦点に持つような楕円の軌道を描いて運動している。

第二法則

上の図で、F1に太陽があるとして、同じ時間にAからB、またはCからDまで惑星が動いたとすれば、赤線で囲んである扇形の面積が等しくなるように運動する。

第三法則

楕円には、長いほうの半径aと短いほうの半径bがあるが惑星が軌道を1周する時間(周期)の2乗は長いほうの半径の3乗に比例する。

ニュートンは、自分の立てた運動の3つの法則をもとにしてケプラーの惑星の運動の三法則を調べ、もし、太陽と惑星のあいだにつぎのような万有引力があればケプラーの法則は計算から導き出せることを発見しました。

ニュートンの考えた万有引力とは「太陽と惑星の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例する」というものです。

これを万有引力の法則と言います。

ここで大切なことは、万有引力は質量と質量のあいだの引力で太陽と惑星とのあいだだけではなく地球上にあるすべての物体(万有)のあいだでもはたらいているということです。

磁石と磁石のあいだの磁気力、電気と電気のあいだの電気力にもこれとにたような関係があります。

このことは、18世紀の末に、フランスのクーロンという学者が万有引力の法則にヒントを得て発見しました。



重力

地球上のすべての物体は、地球の自転のために、円運動をしています。

円運動をしている物体には、それを円の中心にむかって引く力(向心力)とそれと同じ大きさで、向きが反対の力(遠心力)が、はたらいています。

重力というのは、この遠心力と物体が地球の中心に引かれる力(引力)との合力を言います。

私たちが、手で物を支えたり、ぶらさげたりすると重さを感じますがこの物体の重さとして感じるのが、重力と呼ばれるものです。

遠心力の大きさは、地球の引力とくらべると、ごく小さいものですが地球上でも赤道付近と、北極や南極のように緯度の違うところでくらべてみると、わずかながら差がでてきます。

これは、地球が自転をしているため、地球上の緯度で、地軸を自転軸として大きく円運動をするところと、全く円運動をしないところが出てくるためです。

したがって、全く円運動をしないところ(北極や南極付近)では、遠心力が生じないので重力が大きくなります。
逆に、大きく円運動をするところ(赤道)では、地球上で遠心力が一番大きいところなのでそれだけ重力は小さくなります。

そのため、重力の大きさは、赤道付近が小さく、北極や南極に近づくほど大きくなっています。

地球上で、場所によって重力が違うのはこのように地球の形や地球の自転の影響を受けているからです。

しかし、その違いはごくわずかなために地球の引力そのものを、重力と言うこともあります。

引力の大きさは、地球の中心からの距離の2乗に反比例しますから高いところへもっていくと、物体の重さは軽くなります。

たとえば、同じ物体の重さを東京と富士山の頂上とで測ると富士山の頂上のほうが、軽くなります。

さらに、地球からはなれて、月の引力と地球の引力とが同じところでは物体の重力がなくなり(無重力状態)すべての物体が空中に浮かんでしまいます。

重力の加速度は、ふりこを使って測ります。
その大きさは緯度45度の海面上で、約毎秒・毎秒980センチ(980cm/秒2)です。
赤道では978、極付近では、983ぐらいで、その差は約毎秒・毎秒5センチぐらいです。

月の世界での物体の重さは、月の引力によります。
月は地球にくらべると、質量は約82分の1、半径は約4分の1ですから、計算すると、月の世界での引力は、地球の約6分の1になります。

したがって、地球上の物体を月の世界へもっていくと、約6分の1の重さになります。




力と加速度の関係とは?力の単位とは? わかりやすく解説!

力と加速度

物体に力がはたらかない場合は、慣性の法則によって、静止を続けたり等速直線運動を続けようとしますが、それに力がはたらくとどうなるでしょう。

ニュートンは、いろいろの研究から「物体に力がはたらくと、力の方向に加速度が生じ加速度の大きさは、力に比例し、質量に反比例する」ということを発見しました。

これを、ニュートンの運動の第二法則と言います。

したがって、質量の違う2つの物体に、同じ加速度を生じさせるには質量の大きいものには大きな力が必要であり、質量の小さいものには小さい力でもよいということになります。


力とは何か、と質問されると、いろいろの答えが考えられます。

まず、相撲をとったり、荷物を手でさげたりするときの筋肉の感じから「物体を押したり、引いたりするはたらきが、力である」と言ってもよいでしょう。

また、少し進んで、慣性の法則から考えると「静止しているものを動かしたり、動いているものの速さや方向をかえるはたらきが、力である」と言ってもよいのです。

これは「物体の慣性に逆らう作用が力である」とも言えます。

さらに進んで、運動の第二法則を使うと「力とは、物体の質量と加速度を、かけたものである」とも言えます。

力の単位

力の単位には、ダインや、ニュートンを使います。
質量1グラムの物体に、毎秒・毎秒1センチ(1cm/秒2)の加速度を生じさせるはたらきをする力が1ダインで質量1キログラムの物体に毎秒・毎秒1メートルの加速度を生じさせるはたらきをする力が1ニュートンです。

ダインとニュートンとの関係は、ダインがCGS単位系、ニュートンがMKS単位系に属するもので、基本単位から導かれるものです。

近頃では、このニュートンという単位が広く使われるようになりました。

1ニュートンをダインにかえるには、つぎのようにすればよいのです。

つまり、10万ダインになります。




慣性の法則とは?質量と重さとは? わかりやすく解説!

慣性の法則

机の上に置いた本は、誰かが動かさないかぎり、いつまでも動きません。
このような物体の性質を慣性と言います。


動かない場合の慣性は、すぐわかりますが動いている物体が慣性をもっていることは、なかなかわかりませんでした。

しかし、動いている物体についても「これに力がはたらかないかぎり、いつまでも等速直線運動を続ける」と言う性質をもっていることがわかりました。

これは、イタリアのガリレオが発見した法則です。

机の上の本に、力を加えて滑らしても、摩擦力のために、すぐ止まります。
また、本のかわりに、ろうかでボールを転がしてみると遠くまで転がりますが、やはり最後には止まります。

これも、摩擦のためです。

ボールが遠くまでころがるのは、本を滑らすときの、滑り摩擦よりもボールを転がすときの転がり摩擦のほうが、ずっと小さいからです。

したがって、摩擦力や空気の抵抗のような、運動をさまたげる力がまったくはたらかない場合を考えてみると、ガリレオの法則通りになるのです。

ニュートンは力学のもとになる、3つの法則を立てたことで有名ですがその第一には、ガリレオの慣性の法則を取り入れました。

それは「物体に、外から力がはたらかないならば静止している物体は永久に静止し、動いている物体は永久に等速直線運動を続ける」というものです。

この法則は、ニュートンの運動の第一法則とも言います。
これを言い換えると「すべての物体は慣性をもつ」と言ってもよいわけです。

電車やバスが、急に走りだすと、のっている人は、うしろに倒れそうになります。
また、急に止まると、進行方向に倒れそうになります。

走っている電車やバスの中で、物を落とすと、落とした物はうしろに取り残されないで、車中の人から見ると、まっすぐ下に落ちます。

また、走っている電車の中で、まっすぐ上に飛び上がってももとのところへ落ちてきます。

これらは、いずれも、物体に慣性があるために起こることです。



質量と重さ

質量という言葉は、ニュートンが物体の慣性の大小をあらわすために用いた言葉です。

質量と重さとは、混同しやすいので、注意しなければなりません。

質量とは、物質がかわらないかぎりどんなところで測っても、その大きさはかわらないものです。

たとえば、地球上で測った質量もまた、月ではかった質量もどちらもかわりがありません。

ところが、重さは地球上の場所によってもまた、地球内部の密度の大きい物質の作用によってもかわってきます。

しかし、その差は、ごくわずかです。

これは、重さが物体にはたらく重力の大きさに左右されるからです。
つまり、重さは、外から物体に作用する力(重力)であってその力の大きさしだいで、異なる値をとるからです。

質量の単位には、グラム(g)やキログラム(㎏)などを用います。
そして、力の単位には、物体にはたらく重力の大きさであらわすこともあります。

たとえば質量1グラムの重さを1グラム重、1000グラム重を1キログラム重などと言います。




物体の重さと落ちる速さとの関係とは? わかりやすく解説!

物体の重さと落ちる速さ

空気中で物体を落とすと、重いものほど速く落ちます。

たとえば、石と木の葉をいっしょにもって、ぱっと指を開けば同時に落ちはじめますが石のほうが速く地面に届きます。


このような経験から、むかしは重い物ほど速く落ちると考えることが正しいとされていました。

ところが1604年に、イタリアのガリレオがこれは空気があるためであろうと考え、いろいろの実験をして物体の落ちる速さは、重さとは全く関係がないことを発見しました。

これを、つぎのような実験で、確かめてみましょう。

図のような長さ1メートルくらいのガラス管の中に金属片と鳥の羽根を入れたものを用意します。

この中に空気を入れたまま、急に逆さにすると、金属片はスーツと速く落ち、羽根は、ひらひらしながら、ゆっくり落ちます。

つぎに、上のコックのところから真空ポンプで空気を抜きとって同じ実験をしてみます。
すると、金属片も羽根も、同じ速さで落ちて、同時に底にたっします。

この実験から「軽い物ほど遅く落ちるのは、空気の抵抗があるためで真空中では物体の重さと関係なく、同じ速さで落ちる」ということがわかります。

それでは、物が落ちる速さは、どのようにかわっていくでしょう。

ガリレオは、まず、斜面の上においたたまが自然に落ちていく様子を調べ、自由落下の法則を発見しました。

これは、「物体が自然に落ちる速さは、時間に比例して速くなり落ちる距離は、時間の二乗に比例する」と言うものです。

上の写真は、ボールを自然に落としたときごく短いー定の時間ごとに光をあてて、落ちる様子をうつしたものです。

落ちるにしたがって速さが増し、落ちる距離が大きくなることが、よくわかります。



水平に投げた物体の運動

物体を水平方向に投げると、図のような放物線を描いて、次第に落ちていきます。
このことは、石やボールを投げるとき、いつも経験することです。

水平方向には、はじめに手で速度があたえられますが手をはなれてからは、まったく力がはたらきません。

ところが、鉛直方向には、物体の重さのために重力がはたらいて、しだいに速く落ちるようになります。

つまり水平に投げられた物体は、水平方向では等速運動をし鉛直方向では等加速度運動をすることになります。

そして、この2つの運動がいっしょになって、放物運動となるのです。

これをくわしく見ると、空気の抵抗のために、水平方向でも鉛直方向でも運動と反対向きの力がはたらくのですがおおよその研究では空気の抵抗を考えなくてもよいのです。

水平に投げた物体の運動では、物体が地面に落ちるまでの時間は物体がまっすぐ落ちて、地面に達するまでの時間と同じです。




接線加速度と法線加速度とは?加速度の合成と分解とは?

加速度

自転車にのって走りはじめると、速さが次第に速くなりブレーキをかけると次第に遅くなって、やがて止まります。

このように、速度がかわる運動のときは、そのかわる割合を決めないと運動の様子をはっきりあらわすことができません。

この速度のかわる割合を、加速度と言います。

速さのかわらない運動は、いちばんかんたんでこれを等速運動と言い、速さのかわる運動を不等速運動と言います。


速さをかえる加速度

もっともかんたんな不等速運動は、不等速直線運動です。

たとえば、1つの物体が直線上を運動しているとし、はじめの速度が毎秒10センチ、つぎの1秒間の速度が毎秒12センチ、つぎの1秒間が毎秒1間センチというようになったときは、1秒ごとに、毎秒2センチずつ速くなっています。

このとき、この物体には毎秒・毎秒2センチの加速度が加わっていると言います。

加速度といっても、速度が増すときだけをいうのではありません。

たとえば、はじめの速度が毎秒20センチ、つぎの1秒間の速度が毎秒17センチ
つぎの1秒間が毎秒14センチになっていたとすれば1秒ごとに毎秒3センチずつ速度が減っていることになります。

このようなときは、毎秒・毎秒3センチの負(マイナス)の速度が加わっていると言います。

つまり加速度とは、1秒間とか1分間とか1時間という単位の時間内に、速度が増えたり減ったりする割合をいうのです。

加速度をもとめるには、何秒かのちの速度から、はじめの速度をひいてそれを、かかった時間で割ればもとまります。

たとえば、はじめの速度が毎秒10センチで3秒後に毎秒16センチになったとすれば、(16-10)÷ 3 = 2

となって、このときの加速度は毎秒・毎秒2センチ(2cm/秒2、毎秒2cm/秒)
であると言います。

もし、1時間ごとに、毎時4キロメートルずつ速くなるときは毎時・毎時4キロメートルの加速度と言います。

このように、加速度の単位には時間の単位を2つ書いて距離の単位をつけ加えることになっています。

方向をかえる加速度

曲線運動では、速さはかわらなくても方向がかわるので加速度の考え方も、いくらか難しくなります。

たとえば、等速円運動では、1秒間に物体の動く距離、つまり速さはかわらないのですが、その方向が絶えずかわっています。

このときも、加速度が加わっていると言います。

等速円運動では、上の図のように、速度はいつも接線の方向を向き、加速度は、常に円の中心に向かっていて、運動の方向をかえる役目だけをします。

接線加速度と法線加速度

直線運動で言われる加速度は、速さだけをかえる加速度でこれを接線加速度と言います。
等速円運動のように動く方向だけをかえるはたらきの加速度は法線加速度と言います。

いっぱんの曲線運動では、接線加速度と法線加速度が2つともあらわれるので運動を考えることが複雑になります。

加速度の合成と分解

加速度も、速度と同じように大きさと方向をもっています。
したがって、平行四辺形法を使って、合成や分解をすることができます。

たとえば、いっぱんの曲線運動で接線加速度と法線加速度をあらわす矢印を二辺として平行四辺形をつくるとその対角線が、実際の物体にはたらいている加速度の大きさと方向をしめします。




落下運動とは?物の動きと速さとは? 直線運動・曲線運動とは?

速さと速度

人が道を歩いたり、自転車で走ったりするときとかまた、ヘリコプターと自動車とどちらがどのくらい速いかというようなときに速いか遅いかを含めるには、速さという言葉の意味を含めないとはっきりしたことがあらわせません。


そこで1時間とか1秒間に、どれだけの距離を動いたかで、その速さを含めています。

たとえば、人が1時間に4キロメートル歩いたとすればその速さは毎時4キロメートルと言いあらわします。

また、小銃のたまが、1秒間に600メートル飛んだとすればその速さは、毎秒600メートルであると言います。

このように速さは、一定の時間内に、物体の動いた距離であらわせばよいのです。
その単位には、距離と時間の単位をならべて、毎時何キロメートル、あるいは何キロメートル毎時(km/時)というように、あらわすことになっています。

100メートルを、12.5秒で走る人の速さは、毎秒 100/12.5 = 8なります。

この場合、はじめと中ほどと終わりのころとでは、速さが違うかもしれません。
したがって、毎秒8メートルという速さは、この人の平均の速さを意味しています。

同じ速さで動いても、東へ動くか、北へ動くか、その物体の動く方向によって位置のかわり方は、まったく違います。

たとえば、図で、一点Oから同じ速さで動きはじめても東へ迎えばA点にくるし、北へ迎えばB点にきます。

そこで、物体の速さとあわせて方向もつけ加えると物体の動きが非常にはっきりします。

このように、方向も合わせて速さをあらわすときは、速度と言います。
速度をあらわすときは、矢印を使います。

矢の長さで速さをあらわし、矢の向きでその方向をあらわせば、はっきりします。
速度の大きさの単位も、メートル毎秒(m/秒)と言うようにあらわします。



速度の合成と分解

流れの速い川を泳いでわたるときは川の流れと直角に泳いでいても少しずつ流されていきます。
このときは、泳ぐ速さと流れの速さとから、体の進む方向を決めることができます。

図のように、泳ぐ速度と流れの速度に比例する長さで矢印OAとOBを書き
これが二辺となるような平行四辺形を書きます。
その対角線OCをもとめると、これが泳いでいる人の進む方向と、速さになります。

たとえば、泳ぐ速さが毎分4メートル、流れの速さが毎分3メートルであれば紙の上にOAを4センチ、OBを3センチにして、平行四辺形を書いてみます。

OCをものさしで測ってみると、約5センチとなります。
したがって、体の進む速さは、毎分5メートル、その方向はOCとなるにわけです。

このように、平行四辺形を使って、2つの速度からこれが合わさったときの速度をもとめることを速度の合成と言います。

この方法は、力の合成の平行四辺形法とまったく同じで力や速度などのように、大きさと方向のある量には、すべてあてはまります。

また、まえの例のOAとOBとが、直角でなくて、どんな角度でも成り立ちます。

つぎに、OCがわかっていて、これをもとにして、泳ぐ速度OAと流れの速度OBをもとめることを速度の分解と言います。

1つの直線OCを対角線にもつ平行四辺形は、いくつもあります。
したがって、ある速度を分解するには、分解する2つの速度の方向がわかっているか、1つの速度の大きさと方向がわかっているときだけ、決まった答えがでます。

直線運動・曲線運動

まっすぐなレールの上を、電車や汽車が走るときのように動く方向が直線である運動を直線運動と言います。

このとき、速さが一定であれば、等速直線運動と言います。

これに対して。高く打ち上げた野球のボールのように曲がった道筋を通る運動を曲線運動と言います。

曲線運動では、速さが一定であっても方向がいつもかわりますから、速度は絶えずかわっています。




浮心と重心とは?浮力と船の安定とは? わかりやすく解説!

浮力と浮心

いま、左の図のように、木ぎれを水に浮かべた場合を考えてみましょう。

水に浮かんでいる木ぎれは重力のほかに、木ぎれが押しのけた水の重さに
等しい浮力を受けて、つりあっていることは、まえに説明しました。

このときの浮力は、どんなはたらき方をしているのでしょう。

物にはたらく重力は、その全部が重心に集まってはたらいていると考えたのと同じように浮力も、その力が1つの点に集まってはたらいていると考えることができます。

この点を、浮心と呼びます。

上の図のように、木ぎれが水に浮いているときには図の水面より下にある部分だけを取り出してこれを全部水で置き換えたときの重心の位置をもとめると、その点が浮心になるのです。


重心と浮心

重心の位置は、その物をどのように傾けても、かわりがありません。

ところが、浮心の位置は水中にはいっている部分の形がかわることによって、かわります。

たとえば、下の図のように、水に浮いている木ぎれを傾けてみましょう。

このときの浮心の位置は、斜線の部分と同じ形の水の重心の位置ですからまえとは違ったところに、ずれていることがわかります。

また、水の入った容器の場合には、容器を傾けると中の水も移動するので、重心の位置もかわることになります。

船の重心と浮力

船にも重心があって船全体の重さがその重心の位置にはたらいているものと考えることができます。

もし、船に荷物を積み込めば船全体の重さがかわるばかりでなく重心の位置もかわります。

また、船が傾いても、その重心の位置はかわりませんがもし、船が傾くことによって荷物が移動するようなことがあればこのときには重心の位置もかわります。

積み荷が一定で、その荷物も移動しないならば船がどんなに傾いても、その重心の位置はかわりません。

また、浮いている船の浮力は、いつでも船全体の重さと同じで浮心にはたらいています。

そして、浮心の位置は、まえの木ぎれの場合と同じように船の水中に入っている部分の形によってかわるので船が傾けば浮心の位置もかわってきます。



船の安定

船が傾いたとき、傾きをもとにもどすはたらきの強い船ほど安定な船と言えます。
船の安定は、重心の位置や浮心の位置によって決まりますがこの安定について考えてみましょう。

はじめに、船が水に浮かんでいるときには図のように重力と浮力とが同じ鉛直線上にある重心と浮心の位置にそれぞれはたらいて、つり合っています。

つぎに、船が傾いたときの場合を考えてみましょう。
このときの重心の位置は、まえと同じですが浮心の位置は、図のようにかわります。

そのため、重力と浮力とは同じ鉛直線の上にはありません。

このような2つの力を受けると船は図の矢印の方向にまわされるので、もとにもどります。

このときのもどりをよくするには、図のように重心の位置をできるだけ低く底に近くするのがよいのです。

いま、荷物を船の上甲板に積んだために重心の位置が上のほうにずれた場合を考えてみましょう。

船の傾きが小さいときには、この場合でも、もとにもどろうとする回転が見られます。

しかし、船の傾きが大きくなると、重力と浮力はちょうど両手でハンドルをまわすように、ますます傾きを大きくしてしまいます。

そのため、船は転覆するのです。

このことからも、船の重心の位置は、なるべく下のほうがよいことがわかります。

ですから重い荷物は、できるだけ船底に積むのがよいのです。

また、油を運ぶタンカーでは、船が傾くと中の油も移動するので、重心の位置がかわります。

そのために、船の安定が悪くなるので図のように船の内部を小さくしきって
油の移動を少なくするように工夫しています。

こうすると、船が傾いても、重心の位置の変化が小さくてすみます。

そのほか、風の力で走るヨットは船の大きさにくらべて、高くて、大きな帆をもっています。

そのため、ふつうのボートの上にこの帆をつけるとヨットの重心が高くなって倒れやすくなります。

そこで、重心を低くするとともに、船の横流れをふせぐために船の底にセンターボードという、重い鉄板などがとりつけてあります。




重心の位置とすわりの関係とは?物が倒れるわけとは?

やじろべえ

やじろべえは、1本の足で立っていて、揺り動かしてもなかなか倒れません。
そして、楽しそうに、ぶらぶらと体をゆすって踊ります。

このやじろべえの重心の位置を、まえに説明した方法でもとめてみるとちょうど1本足の真下にあることがわかります。

また、重りのついた両側の針金を曲げたり伸ばしたりすると重心の位置がかわります。
重心の位置をいろいろにかえて、そのときのやじろべえの様子を調べてみましょう。

重心の位置が、ちょうど1本足の先にあるときはやじろべえをどんな姿勢にしてもそのまま指の上に止まっていて踊ることはありません。

重心の位置を、1本足の先よりも高くするとこんどは指の上に立てようとしても、すぐ倒れてしまいます。

君らの位置が、支えている点より下にあるのはちょうど重りのついた糸を指でつりさげているのと同じです。

つまり、やじろべえが踊るのは、重りが触れると同じことなのです。


起き上がりこぼし

起き上がりこぼしは、倒しておいても手をはなすと、すぐまた起き上がってしまいます。

この中を割って調べてみると、底に重い物がつけてあります。
それで、起き上がりこぼしの重心は、図のように、低い位置にあります。

このだるまを、どのように倒してみても、その重心の位置はだるまと机が触れ合っている点の真上にくることはありません。

また、それより頭のほうにくることもありません。
ですから、いつでも図のように、もとにもどろうとする回転が起きるのです。

ここで、かんたんな起き上がりこぼしをつくって、いろいろ調べてみましょう。

まず、ボール紙を幅2センチ、長さ30センチくらいに切って直径9センチくらいの輪をつくります。
そして、輪の中心を通る、1本の竹ひごをさしこんでおきます。

つぎに、ゴム粘土を用意して、これを竹ひごのいろいろな位置にはりつけて
机の上で転がしてみましょう。

そしてゴム粘土をどの位置につけると起き上がりこぼしの起き上がり方がどうなるか、よく観察してみます。

①ゴム粘土が中心にあるとき

このときの全体の重心の位置は、だいたい中心のあたりです。
そのため、机の上を滑らかに転がります。

そして、どんな位置にでも止まるので、起き上がりこぼしにはなりません。

②ゴム粘土が中心よりはずれているとき

このときの重心の位置は、ゴム粘土の近くにかわります。
そのため机の上を転がそうとしても、滑らかには転がりません。

そして、いつでもゴム粘土が中心の真下にくる位置で止まります。
この位置から手で転がそうとすると、もどろうとする力が手に感じられます。

この場合、転がす角度が180度より小さいときには、いつももとの位置にもどります。
つまり、ゴム粘土をボール紙のそばにつければ起き上がりこぼしができるわけです。

物が倒れるわけ

図のように四角柱の木ぎれを机の上において、倒してみましょう。

そのまえに、この柱の重心の位置をもとめて真横から見たときのその位置に印をつけておきます。

そして、上のほうを指で押して、静かに木ぎれを傾けます。
傾きが小さいうちは、指をはなすと、木ぎれはもとにもどります。

しかし、傾きがある角度より大きくなると、木ぎれはもとにもどらないで倒れてしまいます。

このときの様子をよく調べると、木ぎれが倒れるのは傾いた木ぎれの重心の位置が机で支えられているふちの真上をこすからだということがわかります。

つまり、重心の位置から降ろした鉛直線が木ぎれの底を通っているうちは、木ぎれは倒れないでもとにもどります。

この角度より大きく傾くと木ぎれは図の矢印の方向に回転しようとするので、倒れてしまいます。

起き上がりこぼしが倒れないのは、重心が傾いたときの接触点の真上を越さないようになっているからです。



物のすわり

物を水平な面においたとき、起き方によって倒れやすいときと倒れにくいときがあります。

少しぐらい傾けてももとにもどる、倒れにくい物をすわりがよいとか安定であると言います。

反対に、指先で押しただけでも倒れるような物をすわりが悪いとか不安定であると言います。

また、円柱のような物は倒れるということがなく動かされた位置で静止するので中立のすわりと言います。

つぎに、物のすわりをよくするには、どんな工夫が必要か調べてみましょう。

まず、まえの正四角柱の底に、軽い正方形の板を図のようにはりつけると、倒れやすさがどうかわるか、調べてみます。

この場合、板は軽いので、はりつけたあとの全体の重心の位置はほとんどかわりません。

これを倒すためには、まえよりは、よほど大きく傾けなければなりません。
このことから、底の面積が広いほど、すわりがよくなることがわかります。

つぎに、短い正四角柱の木ぎれに、ボール紙でつくった同じ正四角柱をつないで、まえと同じ長さの正四角柱をつくります。

このときの重心の位置は、まえとは違って、木ぎれの側に偏ります。

この正四角柱を、下の図のように、木ぎれの側を下にして机においたときと上にしておいたときの、どちらが倒れやすいかくらべてみましょう。

実験の結果から、重心の位置が低いほど、倒れにくいことがわかります。

こんどは、同じ形の正四角柱でも、重い物と軽い物では、倒れる角度は同じでもその角度まで傾けていくのに必要な力の大きさが違います。

重い物ほど、倒すのに力がいるので、倒れにくいと考えてよいでしょう。

つまり、すわりをよくするには①底面積を広くする、②底を重くする、③全体を重くするの3つが必要になります。




物の重心とは?重心のもとめ方とは? わかりやすく解説!

重心

手に持っているものをはなすと、そのものは必ず地面に落ちます。

このように、地球上にあるすべての物は地球から力を受けて地球の中心の方向にひかれています。


この力を、私たちは重力と呼んでいます。
この重力の大きさがその物の重さと呼ばれているものです。

また、物の重さは、グラムという単位で測ることができます。
たとえば、重さが100グラムの物といえば、重力が100グラムの大きさでその物をひいていることになります。

その重力は、図のように、物を細かく同じ大きさにわけて考えてみるとどの部分にも、同じ大きさではたらいています。

そして、どの力も地球の中心の方向に向かっています。
これらの力を全部加え合わせた大きさが、100グラムの力なのです。

ところが、このようにたくさんの平行な力はいつでも全部1つの点に集めて考えることができます。

つまり、1つの点に100グラムの力がはたらいているのと、同じことなのです。
この力のはたらく点を、私たちは、その物の重心と呼んでいます。

このことは、つぎの実験からも確かめることができます。

まず、図のような円板について考えてみましょう。
この場合、円板のどの部分にも、重力がはたらいていることは、まえと同じです。

しかも、それらの重力は全部1つの点に集まってはたらいていると考えることができるならば、この円板をその1つの点て支えることができるはずです。

そして、そのときの力は、その円板の重さと同じはずです。

そこで円板を中心近くのいろいろな点で支えてみましょう。
何回か試しているうちに確かに円板は、1つの点で支えられることが確かめられます。

したがって、その点が円板の重心でだいたい円板の中心に一致していることがわかります。

円板の場合には、その中心が、およその重心であることは見当もつきますが不規則な形の板である場合には何回か試してみて支えられる点を探しださなければなりません。

重心のもとめ方

重心をもとめるには支えられる1つの点を探すやり方のほかにつぎのような方法があります。

鉛直線の交点からもとめる方法

重心の位置がわかっている図のようなうすい板を図のA点につけた糸でつりさげると、いつでもA点の真下に重心がきます。

つまり、板の重心は、A点からおろした鉛直線の上にあることがわかります。

この結果を利用すると、いろいろな板の重心をもとめることができます。

たとえば、図のような形の板の重心をもとめてみましょう。

まず、板のふちに1つの点をとります。その点に、重りのついた1本の糸の途中をとめます。

そして、糸のはしをもって、これらをつるすと図のように、糸は1本の鉛直線になります。

したがって、板の重心は、この線の上のどこかにあるはずです。
そこで、糸にそって、板の上にえんぴつで1つの点を印その点と糸をとめた点とをむすぶ線をひいておきます。

つぎに、別な位置に、もう1つの点を選び、まえと同じ実験を繰り返して鉛直線を板に書きこめば、この直線も、また重心の上を通っているはずです。

したがって、この板の重心は、2つの直線の交点であることがわかります。

また、三角形の板の重心は、図のような作図によっても、もとめることができます。

この場合、三角形の重心は頂点Aと底辺BCの中心をむすぶ直線の上の、どこかにあるはずです。

また、頂点Bと底辺CAの中心をむすぶ直線の上にもあるはずですからこれらの中線が交わる点Gが、この三角形の板の重心になります。

棒状の物の重心をもとめる方法

長い棒のような物の重心をかんたんにもとめるにはえんぴつを2本用意して、その棒を、2本のえんぴつで水平に支えます。

そして、静かに2本のえんぴつを水平のまま、互いに近づけます。
えんぴつが次第に近づいて最後に2つがくっついてしまっても棒は水平のまま上にのっています。

したがって、その棒の重心はくっついた2本のえんぴつの中間にあることがわかります。




ダムの種類と特徴とは?重カダム・アーチダム・バットレスダムとは?

ダム

川の水をせき止めて水を溜めたり、流れてくる土砂を沈めるための大仕掛けなせきをダムと言います。

発電用ダムはダムによってできた貯水池の水を水力発電に使うためにつくられたものです。

大雨によって、いちどにたくさんの水が谷川に流れこんだときこの水をいちじ貯水池にたくわえて、下流の洪水をふせぐためのダムが洪水調節用ダムです。

このようなダムは、ダムの一部に穴があけてあり水が自然に少しずつ流れでるようにしてあります。

上流の谷川は流れが急なので、川底や岸を削って、山崩れを起こすことがあります。
また、石や土砂を押し流して下流を浅くします。

そこで、ダムをつくって、流れをゆるやかにし石や土砂をダムの上流側に沈ませると、これらの害をふせぐことができます。

このためにつくられたダムを砂防ダムと言います。

ダムには、このほか、上水道用・灌漑用など、いろいろの目的のものがありますが、いくつかの目的を合わせもつ大規模のダムを多目的ダムと言います。

ダムが洪水のときに壊れたりすると下流一帯は大水となり、たいへんな被害を受けます。
このため、ダムをつくるときには、上流側からの水圧に耐えるように丈夫につくらなければなりません。

ダムは、そのつくり方によって、つぎのようにわけることができます。


重カダム

ダムの上流側には、ダムを押し倒そうとする水圧がはたらきダムの底面と岩盤とのあいだに水が染み込むと、さらに上向きの力もはたらきます。

この力は、上流側ほど強いので、ダムを下流側に傾けようとします。

上流側に積もった土砂も、ダムを押します。
ことに、地震のときには、水といっしょに、大きな力でダムにあたります。

これらの力で、ダムが倒れたり、滑ったりしないためにはダム自体が重いことダムの底面が広いこと、ダムの底面と岩盤とのあいだの摩擦力が大きいことなどが大切になります。

コンクリートで、このような条件を備えるようにつくったダムを重カダムと言います。

アーチダム

上流側にまるみをつけたコンクリートのダムを、アーチダムと言います。
このダムはダムのまるみによって水圧を支え、この力を両岸に伝えます。
これが、重カダムと違うところです。

アーチダムは、水圧を両岸と基礎で支えるので重カダムのように、厚くつくらなくてもすみます。

このため、コンクリ-卜の量も少なくてすみます。
しかし、基礎の岩盤や両岸が、硬い岩でできているところでないと、つくれません。



バットレスダム

ダムの上流面を傾けた、うすいコンクリートの壁でつくりこの壁を、それに垂直ないくつかの壁(バットレス)で支えたダ厶です。

このダ厶は、水圧をななめ下に向けさせてあるためにダム自体の重さは小さくても、押し流されにくくなっています。

コンクリートは少なくてすみますが、構造が複雑で地震に弱いため小規模のものしかつくれません。

アースダム

土砂の地盤の上に、土をもり上げてつくり、上流側の裏面にコンクリートや石をはったダ厶です。

これも土の重さで、水圧に耐えています。

アースダムは壊れやすいので、あまり高いものはつくれません。

ロックフィルダム

大きな石を積み上げてつくったダムで、上流側の面は水もれをふせぐためにコンクリートがはってあります。

これは、適当な岩盤がないときやセメントなどの材料を運ぶのが不便な場合に、よくつくられます。

しかし、水がダムを乗り越えると、壊れやすいという欠点があります。




木造建築の強さとは?鉄筋コンクリートとは? わかりやすく解説!

建物

建物には、木造・コンクリートブロックづくり鉄筋コンクリートづくりなどの種類があります。

木造の建物は、火事、地震・大風などに弱く、腐りやすいのが欠点です。

コンクリートブロックを、セメントでつないでいくコンクリートブロックづくりは火事に強くても地震に弱いので鉄筋を合わせて使い、強さをおこないます。

鉄筋コンクリー卜や、鉄骨鉄筋コンクリートでつくった建物は火事にも、地震にも強いのが特色です。


木造建築の強さ

木造の家を建てるには、まず、丈夫な基礎をつくります。

これは、土地を掘って、小石や砂利をいれてつき固めその上にコンクリートを流しこんだものです。

基礎の上の面は、水準器を使って、水平にします。
その上に土台の角材をのせ、植え込みボルトで円定します。

床をはるには、まず、ねだと言う角材を厚さが幅より大きいように間隔をおいてならべ、その中間部を、つかという小さな柱で支えます。

このねだと直角に交わるように板をならべて、釘でとめればよいわけです。

ねだの間隔をほどよくしないと、床板がたわんできます。
ねだや板は、厚さが厚いほど、物をのせたときのたわみが少なく内部の応力も小さいので、折れにくくなります。

はりにする角材も幅より厚さの厚いほうが丈夫です。
また、柱はおもに圧縮の力を受けるので、あまり細長いと、曲がって折れます。
ことに、二階建て以上の場合には、柱の太さをとくに太くしなければなりません。

木造建築は、どのつぎめも滑節と考えてよく、つぎめで角度をかえることができます。
しかし、滑節でも三角形に組み合わせると、トラスになって強くなります。

屋根の柱と、はりのあいだに取り付ける方づえ柱と柱とのあいだにななめにとりつけるすじかいはりや土台の角に取り付けるひうちなどは、三角形の組み合わせによって地震や大風などによって、家が潰されるのをふせいでいます。

壁も、建物を強くします。
壁の中にすじかいをつけると、さらに丈夫になります。

木材は、ほぞや、つぎてによってつなぎますが、これだけでは弱いのでつぎめのところを、金具でしめつけて、強さを補うこともできます。



鉄筋コンクリート

コンクリートは、圧縮には強いが引っ張りに弱い材料です。
そこで、コンクリートの中に引っ張りに強い鋼棒(鉄筋)を埋め込むことが考えられました。

これが、鉄筋コンクリートです。

鋼は、火にあうと弱くなって曲がりますがコンクリートは火に強いので、中の鉄筋を保護します。

また、鉄筋が錆びるのもふせいでいます。

鉄骨鉄筋コンクリート

組み立て柱や、組み立てばりで組んだ鉄骨のまわりをさらに鉄筋コンクリートで固めたものが、鉄骨鉄筋コンクリートです。

このつくりは、柱やはりのつなぎめの角度がかわらないラーメンになっていて、たいへん丈夫です。

そのうえ、火事にも強いので、ふつう、6階以上の高いビルディングに使われています。




橋の構造と種類、特徴と性質とは?トラス橋・アーチ橋とは?

橋は、そこに使われている材料で区別すると、木や石でできている橋、鉄橋、鉄筋コンクリートの橋などに、おけることができます。

木の橋は、値段が安くできますが、くさりやすいのであまり長く使うことができません。

石は圧縮の力に強いけれども、引っ張りの力に弱いので石で橋をつくるときはアーチ橋にします。鉄橋は、形鋼や使ってくれます。

鉄筋コンクリート橋はアーチ橋としても、けた橋としてもつくられますがその欠点は重すぎることです。

橋を構造の上からわけるとけた橋・トラス橋・アーチ橋・ラーメン橋・つり橋・可動橋などにわけられます。


けた橋

橋台や橋脚のあいだに何本かのけたをわたしその上を通れるようにした橋を、けた橋と言います。

ふつう、支間が10メートル以内のときに、木のけた橋がつくられます。

支間が30メートル以内では鉄筋コンクリート橋、50メートル以内では鋼橋としてつくられます。

鋼橋は、鋼板と山形鋼をびょうで組み合わせてI形の断面にしたものや、鋼版を溶接したものなどを、けたとして用います。

けた僑のうち、径間ごとに1つのけたをわたしたものを、単純けた橋と言います。

いくつかの径間に、1つのけたをわたしたものにはゲルバーけた橋と、連続けた橋があります。

ゲルバーけた橋は、けたをつなぐために途中にヒンジ(回転できる連結装置)を設けたものです。
この方法は、けた橋だけでなくトラス橋にも取り入れられています。

トラス橋

三角形の骨組を、いくつもつないでいって橋台や橋脚のあいだにわたしたものをトラス橋と言います。

トラス橋では、橋の重さや、橋の上を通る人や車の重さのために上げん材は圧縮の力を受け、下げん材は、引っ張りの力を受けます。

また、垂直の柱は、引っ張りの力を受けます。

ななめ材は引っ張りの力を受けることも、圧縮の力を受けることもあります。
トラス橋の各部は、けた橋と違って、曲げの力をあまり受けません。

トラス橋の床の下には、縦げたと横げたが組み合わせてあって、床を支えています。

トラス橋には、上げん材と下げん材が、平行なものもありますが支間が60メートル以上のものでは上げん材または下げん材を弓なりに曲げてあります。

ラーメン橋

けたと橋脚とが硬くつながれていて、一体となっている橋をラーメン橋と言います。
これは、鋼または鉄筋コンクリートでつくります。

東京のお茶の水橋は、門形のつくりのかたのところに、小さい腕をつけこの腕と両岸のあいだに、ふつうのけた橋をかけたものです。

高架鉄道橋にも、ラーメン橋があります。

ラーメン橋の各部分は引っ張り、または圧縮のほかに曲げの力も受けます。



アーチ橋

これは、虹のようにそりかえっている橋で、東京の聖橋や山口県の錦帯橋などが、これにあたります。

アーチ橋の大きなものでは、長崎県の大村湾にかけられている西海橋(316メートル)が有名です。

アーチ橋は、おもに圧縮の力を受けますから石やコンクリートでつくることもできます。

また、アーチ橋の支承には、ななめの方向に力がはたらくのでこの力を垂直に受けるように支承を傾けたものがあります。

つリ橋

橋の径間が長くなると、つり橋が使われます。

これは、両岸に設けた塔に、太い鋼のケーブルをかけわたしこのケーブルから、橋の床をつりさげたものです。

ケーブルの両端は、両岸の岩盤にしっかりと円定してあります。

つり橋のうちで、橋の床をケーブルからつりさげただけのものを無補剛つり橋と言います。
しかしこれは、人や車が通ると、橋全体がゆがんでしまいます。

そこで、橋の床にトラスをつけて、形がゆがまないようにしたものがあります。これを補剛つり橋と言います。

有名なアメリカのゴールデンゲート橋は中央の径間が1280メートルもある補剛つり橋です。
九州の洞海湾をまたぐ若戸大橋も橋の長さ680メートル、中央の径間が367メートルある、補剛つり橋です。

可動橋

ふつうの橋をかけたのでは橋の下を船が通るとき、つかえて通れないことがあります。
このようなところでは船が通るときだけ橋げたの一部を動かして、船を通しています。
このような橋を可動橋と言います。

可動橋のうちでも、橋げたの一部をはね上げるものエレベータ仕掛けで上にあげるもの、橋脚の上で水平にまわすものなどの種類があります。




材料の組み合わせによる強さの違いとは?トラスとラーメンとは?

組み合わせによる強さ

木平鋼の棒を組み合わせて、家や橋や塔などをつくりますがその組み合わせ方によって、強さが違ってきます。

形鋼の場合は、まえの組み合わせばりの例のように各部分の力のかかり方によって、いろいろな組み方ができるので便利です。

つぎに、棒を組み合わせた場合、その組み合わせ方によって強さがどのように違うか、調べてみましょう。


実験1

つぎの①図のように、マッチの軸木を四角形にならべ四すみを輪ゴムでしばります。
これとは別に、②図のように、軸木を三角形に組んでやはり輪ゴムでしばります。

これを指で引っ張ったときどちらか形がかわりやすいかくらべてみましょう。
①のほうは、すぐ点線のようにひし形になりますが②のほうは、なかなか形をかえません。

このように、棒を三角形に組むと、たいへん丈夫になります。
そのため、三角形の組み方は、建物や橋などに、広く利用されています。

棒と棒をつないで組み立てた構造物を骨組と言い、そのつなぎめを、節点と言います。

また、骨組の棒が、つなぎめで自由に回転できるときはこのつなぎめを滑節と呼びます。
また、ピンでつながれているとも言います。

滑節では、棒と棒とのあいだの角度は、自由にかえられます。
木造や鉄骨の建物の骨組は、ふつう、滑節と見なされています。

トラス

すべてのつなぎめが滑節であるような骨組をトラス(沿節骨組)と言います。

棒が、三角形の網目のように滑節でつながれている骨組は、代表的なトラスです。

トラス橋の両側の骨組は、これにあたります。

実験2

まえの実験でつくった、①図のような四角形の枠につぎの図のように、軸木ABをゴムひもで縛り付け四角形の枠を引っ張ってごらんなさい。

こんどは、四角形の枠が、丈夫になっています。
これは、ABCという、丈夫な三角形の枠ができたからです。

木造建築で、柱と柱のあいだに、すじかいという、ななめの棒を入れたり、はりと柱のあいだに、方づえという棒を入れたりするのはこれと同じ理由からです。



実験3

マッチの軸木を、輪ゴムで組んで、三角形ABCをつくります。
これを、下の図のように机の上に立て、Aのはしを上から押してみます。

このとき、つなぎめの動きを観察して、軸木の各部分に
どのような力がはたらくか、調べてみましょう。

A点の輪ゴムは、下のほうに動いて
AB・ACの軸木を、下にめりこませようとします。
これは、AB・ACに、圧縮の力がはたらいていることをしめします。

B点の輪ゴムは左へ、C点の輪ゴムは右へ、ずるずると滑ろうとします。
このことから、BCの軸木には、引っ張りの力がはたらいていることがわかります。

ですから、BCの棒を丈夫な糸や針金とかえても
このような外力にたえることができます。

棒をピンでつないだ、トラスでは、それぞれの棒は
おもに引っ張りの力、または圧縮の力のみを受けます。

棒の組み合わせに、外力をかけた場合に、外力の加わり方によって
それぞれの棒に生じる応力の性質や、大きさが違ってきます。
そのため、それぞれの棒は断面の形や太さなどを、適当に選ばなければなりません。

脚立は、両あしを開いて立て、その上にのぼって、仕事をするのに使います。

この場合、図のように、太い針金ABをかけると
両あしが開かないのは、ABが、張力に耐えているからです。

たな板ABをつるとき、Bのところを釘づけするだけでは弱いので
ACのような支え棒を入れると、重い物をのせることができます。

この場合、ACは圧縮の力に耐えるだけの、太い棒を用います。
また、ADのように針金でつることもできます。

ラーメン

トラスとは反対に、棒と棒とのつなぎめが、すべて硬くつないである骨組もあります。

これは、骨組が変形しても、つなぎめのところで棒と棒との用度が、全くかわりません。

このようなつなぎめを、剛節と言い。
剛節でつながれている骨組を、ラーメン(剛節骨組)と言います。

鉄筋コンクリートや、鉄骨鉄筋コンクリートの柱とはりのつなぎめは剛節と見なされます。

下の①図のようなトラスに、左から押す力が加わると点線のような形になり、はりABにも、柱AD・BCにも、曲げの力が加わりません。

②図のラーメンでは、左から力を加えるとつなぎめのAやBのところの角度がまったくかわらないので点線のように変形します。

この場合は、柱がA’D、B’Cのように曲がるだけでなくはりABも、点線A’B’のように曲がります。

ラーメンでは、骨組の一部に加わった曲げの力が、ほかの部分にもわけられるため、骨組の一部にだけ、大きな力が集まることがありません。

このためラーメンもトラスとともに橋やそのほかの構造物の骨組として、使われています。




形鋼とは?材質と強さと性質とは? わかりやすく解説!

形鋼

図は角棒を曲げたとき、内部にはたらく応力の分布をわかりやすくあらわしたものです。

棒の上面では、左右の方向に引っ張りあう力がいちばん大きく下にいくにしたがって小さくなり、中間の断面にそってゼロになっています。

それより下では左右に押しあう圧縮の力にかわりいちばん下の面で、その力がいちばん大きくなっています。


このように、棒を曲げたときは、棒の軸に沿って上半分は伸び、下半分は縮んでいます。
この境目の面は、伸びも縮みもしないため、中立面と呼んでいます。

中立面の付近は、ほとんど力がはたらいていないのでこの近くの材料を節約しても、棒の強さには、影響がないはずです。

実際に、このような工夫をして、断面の形を決めたものに建築物や橋などの構造物に使われている、I形の鋼材があります。

これは、材料を節約していながら、曲げに対して、非常に丈夫です。
レールも、これに近い形をしていて、列車の重みによく耐えています。

建築物や構造物に使われる鋼材には、断面がI形をしたもののほかL形(山形鋼)や、U形(溝形鋼)・T形・H形をしたものなどがつくられています。

このような鋼材は、形鋼と呼ばれています。

形鋼は、それだけを、はり(けた)や柱として用いるばかりでなく山形鋼と鋼板とを組み合わせて、組み立てばりや組み立て柱として使っています。

形鋼のほか、断面が円・正方形・八角形をしたものなどがあります。
これらは、棒鋼と呼ばれ、建築物や構造物を組み立てるのに使われています。



丸棒と円筒

同じ量の材料を使った、丸棒と円筒とをくらべてみると中のつまった丸棒よりは、中が空になった円筒のほうが曲がりにくくまた、折れにくいことがわかります。

これは、円筒のほうが中立面の付近の材料を、ほとんど取り去って引っ張りや圧縮の力がはたらく、まわりの部分に集めてあるからです。

洋服ダンスの中の横棒や、椅子などによくパイプが使われているのは、このためです。
また、竹の竿が木の棒にくらべて軽く曲げに強いのも同じような理由からです。

釣竿には先ほど小さく、ねもとほど大きい曲げモーメントがはたらきます。
それで、先がしだいに細くなっている竹が使われます。

材質と強さ

棒は、断面の形によって、曲げの力に対するたわみや、応力が違いますが、材料が木材か金属か、鋼か鋳鉄かアルミニウムかによりまた応力の種類によっても、強さが違います。

同じ木材でも、スギにくらべると、ヒノキやラワンのほうが
曲げたときの破壊に対する強さが強く、カシはさらに強くなります。

水分をふくんだ木材は、乾燥した木材より、強さが劣ります。
また、繊維に平行な方向では引っ張りに強いが
繊維に垂直の方向では、弱くなります。

金属材料では、金属の成分の種類や割合によって強さが著しく違ってきます。
また、どれほど加工したか、どのような熱処理をしたかなどによっても強さが違ってきます。




梁の強さとは?梁にはたらく力とは? わかりやすく解説!

柱と梁

鋼や木材などで棒がつくられますが建築物や構造物で棒が縦におかれて圧縮応力を受けるように使われるとそれは柱と呼ばれます。

棒が、おもに横におかれて、曲げの応力やずれの応力(せん断応力)を受けるように使われるとはり、または、けたと呼ばれます。

これらの棒の断面の形には、円形や長方形をしたものやI形・L形・U形をしたものなどがあります。


梁にはたらく力

板ばねの実験で、下じきを使いましたがこれがもし細長ければ、はりと見なせます。

片方だけを固定したはりを、かたもちばりと言います。
また、両はしに支点をおいて支えたはりを、両端支持ばりと言います。

片持ち梁に、図のように重りをのせたときは固定したはしに近いほど、大きな曲げのはたらきを受けます。

両端を支えたはりで、中央に重りをのせたときは中央に近いほど、曲げのはたらきは大きくなります。

このように、材料を曲げようとする力のはたらきを曲げモーメントと言います。

それぞれのはりの下に書いた図形ははりの各点にはたらく、曲げモーメントの大きさをあらわしたものです。

はりには、このほかに、ずれの応力がはたらきます。
図で、はりのある断面Sを考えますとその右側はPのように動こうとし、片側はQのように動こうとします。

このため、Sの面の両側では、上下にこすり合うようなずれの変形を起こそうとします。

このように、はりには、各種の応力がはたらくので建物や橋などに使うには両方の変形について破壊に対する強さの大きいことが必要なわけです。



断面の形と材料の強さ

同じ材質のはりでも、断面の形によって、その強さが違います。
そこで、模型飛行機に使うヒノキの角棒やスギばしを使って、その実験をしてみましょう。

実験1

辺の長さが、5ミリと2ミリの長方形の断面をもつ角棒をせまい面を下にして、2つの台のあいだにわたします。
台の間隔は、30センチから80センチのあいだに選びます。

角棒の中央に、10円銅貨(約4.5グラム)を、1枚・2枚……とのせていきものさしで、中央部が何ミリ下がっていったかを測ります。

つぎに、広い面を下にして、まえと同じように中央部のたわみを測ってみます。
すると、せまい面を下にしたときよりも、たわみが大きくあらわれます。

この実験から、同じ材料を使っても、せまい面を下にしたときと広い面を下にしたときとで、曲がり方が違ってくることがわかります。

はりとして使う場合には、力が加わったときに曲がり方をできるだけ小さくするように工夫しなければなりません。

実験2

こんどは、材料の強さについて、実験してみましょう。

まえと同じヒノキの角棒を、長さ10センチに切ります。
自動上皿測りの皿に、うすいマッチ箱か、丈夫な洗濯ばさみを立ててこの角棒を折る支点とします。

まず、角棒の中央部を、せまい面を下にして支点にあて両はしをもって強く下に押し付けます。
そして、角棒が折れる寸前のはりの目もりを呼んでおきます。

つぎに、同じ角材を、まえと同じ長さに切り、広い面を下にして同じような実験をしてみます。
このときは、まえよりずっと小さい力で折れます。

木材は金属と違って、材質がいちようでないうえに破壊にむらが多いので、実験のたびに、かなり違った結果がでます。
そこで、この実験はなるべく数多くやって、その平均をとるようにします。

つぎの実験結果は、それぞれ10回やって、その平均をとったものです。

断面が5ミリと2ミリの長方形で、長さ10センチのヒノキの角棒ではせまい面を下にすると、だいたい2.2キログラム重の力で折れました。

広い面を下にしたときは、1.2キログラム重で折れました。

断面の形が、一辺が2ミリの正方形の角棒でやってみますと0.6キログラム重の力で折れました。

棒の強さ

このような実験から角棒は、同じ厚さなら、幅の広いほうが折れにくく同じ幅なら、上下に厚いようにおいて曲げたほうが折れにくいことがわかります。

家をつくるとき、はりや、床板を支える横木(ねだ)を上下に厚いように使うのは、このためです。

中央の支点のところで折れたのはここで、曲げモーメントがいちばん大きくなるからです。

木の枝は、つけねほど太く、先にいくほど細くなっています。
これをかたもちばりと考えると、つけねに近いほど枝の重みによる曲げモーメントが大きくなります。

したがって、木の枝は、それに伝えるのに都合のよい形をしていることがわかります。

木のぼりをしたとき、枝の先のほうにつかまると折れやすいのでなるべくつけねの近くに体重をかけます。

つけねにはたらく曲げモーメントの大きさはつけねからの距離に体積をかけたものになりますからつけねに近いほど、体重による曲げモーメントが小さくなるわけです。




モバイルバージョンを終了