鉄の性質
鉄の性質は、ふくまれている不純物の種類と量によって、いろいろと違ってきます。
とくに、鉄にふくまれる炭素は、その量によって鉄の性質をいろいろとかえるはたらきをします。
ここでは、純粋な鉄について、その性質を調べてみましょう。
純粋な鉄は白色のつやをもち、展性・延性のある金属です。
また、強磁性があり、左の表のような物理的性質をもっています。
鉄は、希塩酸や希硫酸にはよく溶け、水素を発生して塩をつくります。
いっぽう、鉄と硝酸の反応は非常に複雑で、希硝酸には溶けますが水素を発生せず、二酸化窒素などの窒素の酸化物を発生します。
また、濃硝酸に鉄を浸すと、非常に安定した鉄となりほかの物質と化合しにくくなります。
このような状態を不動態といい、不動態になった鉄はもう希硝酸の中に入れてもとけません。
鉄は、酸素とよく化合するほか塩素・イオウ・リン・炭素・ケイ素などとも直接化合します。
軟鋼と銑鉄
溶鉱炉からとりだした銑鉄を、酸化鉄といっしょに反射炉に入れて熱すると硫黄・リン・炭素などの不純物が酸化されて、取り除かれます。
こうしてできた鉄を軟鋼といい、ふつう使われている鉄のなかではもっとも炭素をふくむ量の少ない鉄です。
したがって、性質は、非常に純鉄に近いものです。
軟鋼は、融点が高く溶けにくいので、鋳物にすることはできませんが熱すると柔らかくなるので、叩いていろいろな形にすることができます。
また、軟鋼は展性・延性が大きいので針金・鎖・農器具などをつくるのに使われます。
しかし、最近では、鋼を使ってそういう物をつくることが多くなり軟鋼の使用量は次第に減ってきました。
これにたいして、銑鉄はもっとも不純物を多くふくむ鉄ですから性質も純粋な鉄とにかなり違います。
不純物の中でも、鉄の性質を加えるはたらきの強いものは炭素でいっぱんに炭素をふくむ量が多い鉄ほど、かたくてもろくなります。
また、鉄の融点は、ある一定の限度までは、炭素をふくむほど低くなります。
銑鉄はかたくてもろいために叩いたり引きのばしたりして加工することはできませんが1100~1200℃ぐらいの、わりあい低い温度で溶けますから鋳物をつくるのに適しています。
また溶けた銑鉄は、かたまるときに、少し膨張します。この性質も、鋳物をつくるときに役に立ちます。
しかし、銑鉄は、そのままで加工品をつくるよりもむしろ、鋼の原料として、非常に重要なのです。
鉄のさび
鉄を塩水の中につけておいたり、水がついたままほうっておいたりすると表面に赤かっ色をしたものができます。
これは、ふつう赤さびといわれるさびで、純鉄よりも不純物をふくむ鉄のほうが早くさびます。
また、湿り気が多いといっそう早くさびます。
このさびは、鉄が空気中の酸素平水蒸気と作用してできたものですがこの反応はただの酸化ではなく、非常に複雑な変化です。
したがって、さびの成分もただの酸化鉄だけではありません。
さびには、酸化第二鉄をはじめとして塩基性炭酸第一鉄や塩基性炭酸第二鉄などのような化合物がふくまれています。
このような化合物ができるためには、炭酸が必要です。
つまり、赤さびができるときには、空気中の酸素のほかに水蒸気や二酸化炭素も関係しているわけです。
赤さびは、空気や水分を通しやすいので長い間ほうっておくとしだいに鉄の内部までさびていきしまいには、すっかり腐ってしまいます。
いっぽう空気中で鉄を強く熱すると表面が黒色にかわります。
これは、鉄が酸化して、黒色の四三酸化鉄ができたためで、黒さびとよばれます。
黒さびは、目が細かいので、これが表面にできるとかえって鉄を赤さびから守るようになります。
また、赤熱した鉄に、水蒸気を通しても鉄は酸化されて、四三酸化鉄となります。
このような方法で、鉄の表面に四三酸化鉄をつくって鉄のさびどめにすることがあります。