硫酸アルミニウムとミョウバンの製法・性質・用途とは?

硫酸アルミニウムの製法

硫酸アルミニウムは、アルミニウムや水酸化アルミニウムに硫酸を作用させてつくります。
工業的には、アルミニウムの精練の中間製品である水酸化アルミニウムを原料として製造します。

硫酸アルミニウムの性質

純粋な硫酸アルミニウムは、白色の結晶で、水に溶けやすく水溶液は、加水分解して酸性をしめします。

水溶液から結品させた硫酸アルミニウムは、18水和物でこれを熱すると、結品水をなくして、白色の無水物の粉末になりさらに赤くなるまで熱すると、酸化アルミニウムになります。

ミョウバン

硫酸アルミニウムの水溶液に、硫酸カリウムを溶かし煮詰めてから冷やすと、カリウムミョウバンの結晶ができます。

この結晶が、ふつう、ミョウバンといわれているもので強く熱すると、結晶水がなくなって、白い粉末になります。

これを、焼きミョウバンといいます。

硫酸カリウムのかわりに、硫酸アンモニウムを使うとアンモニウムミョウバンの結晶ができます。

カリウムミョウバンとアンモニウムミョウバンは結晶の形が似ているのでアルミニウムミョウバン類ともいいます。

アルミニウムのかわりにクロムを使うと、クロムミョウバン類ができます。
この2種類は、結晶の形が似ているので、まとめてミョウバン類とよぶこともあります。



アルミニウム塩の用途

硫酸アルミニウムやアルミニウムミョウバンを水に溶かすと加水分解をおこして、目に見えないような細かい水酸化アルミニウムの沈殿ができます。

この沈殿は、ごみを吸いつける性質をもっているので水をすませるときに使います。

また、水酸化アルミニウムは、染料を吸いつける力をもっています。
この性質を利用して、染めにくい繊維の表面にアルミニウム塩をつけて、染めやすくしています。

このようなはたらきをする薬品を、染剤といいます。
媒染剤としては、硫酸アルミニウム・酢酸アルミニウム・アルミニウムミョウバン類などのアルミニウム塩が使われます。

紙のめをつめ、紙をなめらかにしてインキのにじむのをとめる薬品をサイズといいます。

水酸化アルミニウムは、このはたらきをするのでアルミニウム塩は、ほかのものとまぜてサイズとしても使われています。

複塩と錯塩

カリウムミョウバンは、カリウムイオン・アルミニウムイオン・硫酸イオン・水分子が1対1対2対12の割合で、規則正しくならんでできた結晶です。

この結晶を水に溶かすと、これらのイオンがばらばらになるのでカリウムイオン・アルミニウムイオン・硫酸イオンのそれぞれの性賢があらわれます。

つまり、硫酸カリウムと硫酸アルミニウムの性質をそのままもっているわけで
このような塩を複塩といいます。

いっぽう、シアン化カリウムとシアン化銀をまぜてできた銀シアン化カリウムは、もとの2つの塩と性質のまったく違った新しい塩です。

この塩は、カリウムイオンと銀シアンイオンとからできています。
この銀シアンイオンは、銀イオンにシアンイオン2個が強くむすびついたイオンで銀イオンとも、シアンイオンとも性質が違います。

このようなイオンを錯イオンといい、錯イオンをふくむ塩を錯塩といいます。



カリウム塩の製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

カリウム塩はナトリウム塩とならんで、化学工業の原料として、非常に重要な塩です。
カリウム塩には、炭酸カリウム・硝酸バリウム・塩化カリウムなど、いろいろな種類があります。

ここでは、これらのカリウム塩のうち、おもなものについて調べてみましょう。


カリウム塩の製法

カリウム塩のおもな原料は、天然にできる岩塩にふくまれている塩化カリウムです。

この塩化カリウムを原料として水酸化カリウムや炭酸カリウムがつくられ水酸化カリウムからは、さらにいろいろなカリウムがつくられます。

また、塩化カリウムと硝酸ナトリウムの複分解によって、硝酸カリウムがつくられ塩化カリウムの電気分解によって、塩素酸カリウムにや過塩素酸カリウムなどをつくることができます。

カリウム塩の性質

カリウム塩は水に溶けやすいものが多くきれいな結晶をつくる性質があります。
塩化カリウムは、透明な結晶で、ふつうの温度では、水に水の重さの3分の1の重さだけ溶けます。

また、化学的な性質は塩化ナトリウム(食塩)によく似ています。
硝酸カリウムは、白色の結晶で、水に溶ける量は温度によって非常に違い、水溶液は中性です。

高温に熱すると溶けて、亜硝酸カリウムになり酸素を発生します。

硝酸カリウムに木炭粉などをまぜたものは、ちょっとした衝撃でも
爆発する危険がありますが硝酸カリウムだけでは、その危険はありません。

塩素酸カリウムは、つやのある無色の結晶です。
水に溶けにくく分子中に酸素をわりあい多くふくんでいるので非常に強い酸化力があります。

そして、木炭・イオウ・リンなどとまぜたものは熱をくわえたり、衝撃を与えたりすると爆発します。

過塩素酸カリウムも、塩素酸カリウムに似た化学的性質をもっています。

カリウム塩の用途

カリウム塩は、カリ肥料として重要です。
植物にはカリウムがふくまれていますが、これを燃やすとカリ分は炭酸カリウムとなって、灰の中に残ります。

畑に灰をまくのは、この炭酸カリウムを肥料として利用するためです。

カリ肥料としてとくに大切なのは岩塩からとれる塩化カリウムです。
日本では、岩塩がとれないので、そのほとんどを輸入しています。

硝酸カリウムは硝石ともいい、粗製品は、カリ肥料として使われます。
木炭粉などを混ぜると激しく燃えるようになる性質を利用して黒色火薬の製造に使われます。

同じように、塩素酸カリウムはマッチの原料に過塩素酸カリウムは火薬の原料に使われています。

炭酸カリウムは、カリウム化合物を製造する原料として使われます。
そのほかカリガラスの製造やセッケンの製造に使われ、また写真の現像液の一部や医薬品として使われています。



硫酸銅と硝酸銀の製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

硫酸銅には硫酸第一銅と硫酸第二銅とがありますがふつう硫酸銅といえば、硫酸第二銅の五水和物CuSO4・5H2Oをさします。


硫酸銅の製法

硫酸銅は、濃硫酸に銅くずを溶かしててつくりますが工業的には銅の精練のときの副産物として、たくさんつくられています。

硫酸銅の性質

硫酸銅五水和物は、水をふくんだ結晶で美しい青い色をしています。
この結晶をるつぼに入れて、静かに熱すると水を失って無色の粉末になります。

この粉末は水をふくまない硫酸銅の細かい結晶で空気中にほうっておくと空気中の水分を吸って再び青色の結晶にかわります。

この性質を利用して水をふくまない無水硫酸銅の粉末は水分があるかどうかを調べるのに使われています。

硫酸銅の用途

硫酸銅は、銅のめっき液に使うほか、農薬として使われます。

硫酸銅の水溶液に水酸化カルシウムをくわえると、細かい沈殿ができます。この沈殿をふくむ液をボルドー液といい。

作物の病気の予防や消毒に使われています。
ボルトー液は、銅イオンのもつ強い殺菌力を弱めて細菌には効くが作物には無害にしたものです。

このほかにも、銅塩を原料にした、いろいろな農薬があります。



塩の結晶や水溶液の色

塩の結晶や、その水溶液には、きれいな色がついたものがあります。
これらの色について、調べてみましょう。

結晶が水をふくんでいる場合に、その水を結晶水といいます。
結晶水をもった結晶の中では、金属の陽イオンはまわりに水分子をひきつけて錯イオン (そのイオンと水分子いくつかとの集まり)をつくっていることがあります。

水溶液の中でも、これと同じことがいえます。
塩や、その水溶液の色はこの錯イオンの色なのです。

この五水和物の結晶を熱すると、水分子が逃げて、銅イオンだけが残ります。

この銅イオンには色がありませんから、無水の硫酸銅にも色がありません。

このように、塩の結晶や、その水溶液の色は、その塩をつくっているイオンそのものの色ではなく、イオンと水分子がいくつか集まってできている、錯イオンのもっている色なのです。

硝酸銀の製法

銀を硝酸に溶かすと、下の式のように一酸化窒素をだして硝酸銀をふくむ溶液ができます。

この溶液を蒸発させると右の写真のような硝酸銀の結晶ができます。

硝酸銀の性質

硝酸銀の結晶は、色がなく、透き通っています。
しかし、日光にあてると硝酸銀が分解して銀の細かい粉ができ、黒くなります。

硝酸銀の水溶液に、塩化ナトリウムの水溶液をくわえると白い沈殿ができます。

これは、銀イオンと塩素イオンが反応して左の①式のように水に溶けにくい塩化銀ができたためです。

塩化銀は、アソモニア水には、左の②式のような錯イオンをつくって溶けます。

この2つの性質は、銀イオンや塩素イオンの検出に使われます。

硝酸銀の用途

硝酸銀は、写真のフイルムや印画紙の感光材料の製造にたくさん使われるほか、銀めっき液や、銀鏡の製造などに使われています。



アンモニウム塩の製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

アンモニアと酸から硫酸アンモニウム・硝酸アンモニウム・塩化アンモニウムなどの塩ができます。

これらをアンモニウム塩といいます。ここでは、この3つの塩を調べてみましょう。

アンモニウム塩の製法

硫酸・硝酸・塩酸に、アンモニアを作用させてその溶液を蒸発させると、それぞれ硫酸アンモニウム・硝酸アンモニウム・塩化アンモニウムができます。

アンモニウム塩の性質

どの塩も色がなく透き通って、水によく溶けます。
水溶液は、どれも弱い酸性をしめします。

これは、塩の加水分解によります。
アンモニウムの塩、たとえば硫酸アンモニウムの水溶液に濃い水酸化ナトリウム溶液を少しくわえて静かに熱すると、変化してアンモニアが発生します。

この反応は塩がアンモニウム塩であることを確かめるのに使われています。
水酸化ナトリウムのかわりに、水酸化カルシウムを使ってもこの反応はおこります。

アンモニウム塩の用途

硫酸アンモニウム・硝酸アンモニウム・塩化アンモニウムはそれぞれ、硫安・硝安・塩安ともよばれ、窒素肥料として使われています。

このほか、塩化アンモニウムは乾電池の液や染料の製造などに硝酸アンモニウムは火薬の製造に利用されています。



炭酸水素ナトリウムの製法・性質・用途とは? わかりやすく解説! わかりやすく解説!

炭酸水素ナトリウムの製法

炭酸水素ナトリウムには、アンモニアソーダ法で炭酸ナトリウムをつくる途中でできます。

また、炭酸ナトリウムの水溶液に二酸化炭素を飽和させても炭酸水素ナトリウムをつくることができます。
医薬用の炭酸水素ナトリウムは、この方法でつくります。


炭酸水素ナトリウムの性質

炭酸水素ナトリウムは白色の粉末で、水にはあまり溶けませんがその水溶液は、弱い塩基性をしめします。

炭酸水素ナトリウムは、たいていの酸に溶け二酸化炭素を発生して、その酸のナトリウム塩をつくります。

また、炭酸水素ナトリウムの水溶液を空気中にほうっておいたり結晶を強く熱したりすると、二酸化炭素と水をだして分解し炭酸ナトリウムになります。

この熱すると二酸化炭素をたす性質を利用して炭酸水素ナトリウムは、ふくらし粉としても使われます。

炭酸水素ナトリウムが、炭酸ナトリウムにくらべて塩基性が弱いのは炭酸ナトリウムより加水分解のしかたが弱く水酸イオンのできる割合が少ないためです。



炭酸水素ナトリウムの用途

炭酸水素ナトリウムは、酸との作用が炭酸ナトリウムに似ていて性質がいっそう穏やかなので、医薬品に使われます。

その穏やかな性質を利用して、胃液中の塩酸の中和に使われるのです。

そのほか、消火器・ラムネ・ベーキングパウダーなどをつくるのに利用されます。

ベーキングパウダー

パンなどを焼くとき、ふくらし粉として炭酸水素ナトリウムだけを使うことがあります。

このときは、下の①式のような熱分解でできる二酸化炭素がふくらます役目をします。

この場合、炭酸ナトリウムができるので、少し苦味が残ります。

それで、菓子などをつくるときにふくらし粉として使うベーキングパウダーでは炭酸水素ナトリウムに①式でできる炭酸ナトリウムを分解するための酸をくわえたものです。

ふつう、酸としては酒石酸などが使われます。
この場合は。①式につづいて②式の反応がおこり、炭酸ナトリウムは酒石酸ナトリウムのような苦味の少ない塩にかわるので味がたいへんよくなります。

また。この②式の反応でも二酸化炭素ができるのでふくらますはたらきも、2倍になるわけです。



炭酸ナトリウムの性質・用途とは? わかりやすく解説!

炭酸ナトリウムの性質

アンモニアソーダ法でつくった炭酸ナトリウムは白色の粉末で水分の少ない細かい結晶になっています。


この炭酸ナトリウムは、ソーダ灰ともよばれます。

ソーダ灰を熱湯に溶かしてから、溶液をしだいに冷やすと大きい透明な結晶ができます。

これは分子中に水をふくむ、炭酸ナトリウム10水和物の結晶です。
炭酸ナトリウム10水和物は、洗濯ソーダともよばれ、洗濯に使われます。

ソーダ灰も洗濯ソーダも、水に溶かすと加水分解によって強い塩基性をしめし(水酸化ナトリウムよりは弱い)どちらも化学的には同じ性質をもっています。

洗濯ソーダを空気中におくと、結晶の表面に、だんだん白い粉ができます。
これは、洗濯ソーダの結晶の中の水が逃げて水分の少ない炭酸ナトリウムができたり(風解)空気中の二酸化炭素を吸って、炭酸水素ナトリウムができたりするためです。

白い粉末はこうしてできたソーダ灰や炭酸水素ナトリウムなどです。

炭酸ナトリウムの水溶液に、二酸化炭素を圧力をかけながら溶かすと炭酸水素ナトリウムが沈殿します。

この方法は、医薬用の純粋な炭酸水素ナトリウムを製造するのに使われます。

炭酸ナトリウムは、たいていの酸によく溶け二酸化炭素を発生して、その酸のナトリウム塩をつくります。

たとえば、酸が硫酸ならば硫酸ナトリウムが酸が塩酸ならば塩化ナトリウム、ができるわけです。

また、ふつうの炭酸塩は強く熱すると二酸化炭素を発生して分解しますが、炭酸ナトリウムは分解しません。

炭酸ナトリウムの用途

炭酸ナトリウムは、ガラスの原料として、ガラス製造に多量に使われています。

また、酸との作用は水酸化ナトリウムに似ていますが性質は水酸化ナトリウムよりも穏やかなので、取扱いに便利です。

そのため、化学工業の原料薬品としておおいに使われています。
また、調味料・セッケンなどの製造にはなくてはならない重要なものです。



炭酸ナトリウムの製法とは? わかりやすく解説!

塩の代表的なものは塩化ナトリウム(食塩)です。
塩化ナトリウムは海水中に無尽蔵といってもよいほどふくまれています。


それで塩化ナトリウムを原料としていろいろなナトリウム塩や薬品が製造されています。

そのうち、水酸化ナトリウム・炭酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウムはとくに重要でこの3つをソーダとよびこれらを製造する工業をソーダ工業とよんでいます。

ここでは、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムについてその製法や性質などを調べてみましょう。

炭酸ナトリウムの製法

炭酸ナトリウムの製法には、18世紀の終わり頃にフランスのルブランが考え出したルブラン法と19世紀の中頃にベルギーのソルベーが発明したアンモニアソーダ法とがあります。

ルブラン法は、歴史的に有名なだけで今では使われていません。
現在では、アンモニアソーダ法が重要な方法として使われています。

アンモニアソーダ法は、図のような装置で行われます。

まず、石灰炉に石灰石とコークスを入れコークスを燃やして石灰石を強く熱するとつぎの①式のように生石灰と二酸化炭素とができます。

でてきた二酸化炭素は、炉の上部からパイプで導き出してソルベー塔に送ります。
また、生石灰は炉の下部から取り出し水を加えて石灰乳をつくります。

いっぽう、アンモニア吸収塔に濃い食塩水を入れこれにアンモニア発生塔でつくったアンモニアガスを通し食塩水に充分吸収させて飽和させます。

このアンモニアを飽和した濃い食塩水をソルベー塔に入れます。



この中では上からアンモニアをふくんだ食塩水をおりてきて下から上がってきた二酸化炭素と反応して、まず②式のように、炭酸水素アンモニウムができます。

つぎに、この炭酸水素アンモニウムが食塩水と反応して③式のように、炭酸水素ナトリウムと塩化アソモニウムができます。

炭酸水素ナトリウムは、食塩水に非常に溶けにくいので、この反応でできた炭酸水素ナトリウムは、ほとんど全部が析出します。

これをろ過して分け、よくかわかして強く熱すると下の④式のように反応し、二酸化炭素を発生して炭酸ナトリウムになります。

このとき、ろ液の中には塩化アンモニウムや炭酸水素ナトリウム・食塩などがふくまれています。

これをアンモニア発生塔におくり石灰炉からくる石灰乳と反応させると、アンモニアが分離します。

このアンモニアをアンモニア吸収塔におくります。

また①式で、炭酸水素ナトリウムから炭酸ナトリウムをつくるときに発生する二酸化炭素は石灰炉からでる二酸化炭素といっしょにして、ソルベー塔におくります。

このようにアンモニアソーダ法では反応の途中でできた副産物を工程にもどして利用することができるので、非常に経済的です。

そのうえ、できた炭酸ナトリウムは、ほとんど純粋です。
上の図は、アンモニアソーダ法の工程をくわしくしめしたものです。

この図からもわかるように、種類の少ない原料から炭酸ナトリウムのほかにも、炭酸水素ナトリウム・水酸化ナトリウムのソーダ類、塩化アンモニウム・塩化カルシウムの塩類など、たくさんの製品ができます。

そのため、アンモニアソーダ法は化学工業にとって重要な方法です。



正塩・酸性塩・塩基性塩とは? わかりやすく解説!

酸と塩基が中和反応によって塩をつくることがわかりました。
また、塩は中和反応以外の方法でもできることがわかりました。

ここでは塩にはどのような種類があるかまた、おもな塩にはどのような性質があるかを調べましょう。


塩は、そのでき方によって、いくつかの種類に分けられます。

正塩

一塩基酸と一酸塩基とからは、ただ1つの塩しかできません。
たとえば、塩酸と水酸化ナトリウムからは下の①式のように、塩化ナトリウムだけしかできません。

多塩基酸や多酸塩基の場合は、いろいろな塩ができますが多塩基酸の水素全部が陽イオンでおきかわると下の②式のような塩ができます。

また、多酸塩基の水酸イオン全部が陰イオンでおきかわると③式のような塩ができます。

このようにしてできた塩化ナトリウム・硫酸ナトリウム・塩化カルシウムなどの塩は分子の中に水素や水酸基をふくんでいない塩です。

このような塩を正塩といいます。

正塩は、酸性塩や塩基性塩にたいして中性塩とよばれることもありますがリトマスにたいして必ず中性をしめすとはかぎりません。

それは、塩をつくる酸や塩基の強弱によって加水分解をおこすことがあるからです。



酸性塩

多塩基酸の水素の一部分が、陽イオンでおきかえられていてまだ陽イオンでおきかえることのできる水素がの素塩といいます。

たとえば、硫酸と水酸化ナトリウムの中和のとき水酸化ナトリウムを少量くわえた状態では下の①式のような硫酸の第一段の電離でできる水素イオンだけが中和されて②式のように、硫酸水素ナトリウムのような酸性塩ができます。

酸性塩の水溶液は、酸性をしめすとはかぎりません。
たとえば、炭酸水素ナトリウムの水溶液は塩基性をしめします。

塩基性塩

多酸塩基を中和するとき、多酸塩基の水酸基の一部分だけが陰イオンでおきかえられていてまだ、陰イオンでおきかえることのできる水酸基が残っているような塩ができることがあります。

このような塩を、塩基性塩といいます。
塩基性塩の水溶液も、必ず塩基性をしめすとはかぎりません。



酸性・塩基性の強さと酸・塩基の濃度とは? わかりやすく解説!

酸性・塩基性の強さと、酸・塩基の濃度とは、ぜんぜん別のことです。ここでは酸性・塩基性の強さと、酸・塩基の濃度ということについて、くわしく調べてみましょう。


酸・塩基の濃度

酸・塩基の濃度は、溶液中に溶けている酸・塩基の量によって決まります。したがって、溶液の中に、たくさんの酸がふくまれていればその溶液は濃い酸ということになります。

塩基の場合も、まったく同じです。

つまり、酸・塩基の濃度という場合はふつうの溶液の濃度と同じようにして決められるわけです。

酸性・塩基性の強さ

酸が酸性をしめすのは、酸そのものによるのではなくて酸が電離してできる水素イオンのはたらきによるのです。

したがって、酸性の強さは、水素イオンの濃度によってきまります。
ですから、わずかし電離しない酸の濃い溶液がよく電離する酸のうすい溶液よりも酸性が弱いことがあります。

たとえば、濃い酢酸のほうが、うすい塩酸より酸性か弱いことがあるのです。

また、塩基性は、塩基そのものがしめす性質ではなくて塩基が電離してできる水酸イオンがしめす性質です。

したがって、塩基の強さは塩基が電離してできる水酸イオンの濃度によって決まります。

ですから、塩基の濃い溶液でも、わずかしか電離しないものはよく電離するうすい塩基よりも塩基性か弱いことがあります。

たとえば濃いアンモニア水のほうがうすい水酸化ナトリウムの水溶液よりも
塩基性か弱いということがありうるわけです。

このように、酸性の強さは、酸の濃度ではなく水素イオンの濃度によって決まり塩基性の強さは、塩基の濃度ではなく水酸イオンの濃度によってきまります。

いっぽう、水素イオンの濃度と水酸イオンの濃度の間には決まった関係があって、水素イオンの濃度だけで酸の強さも塩基の強さもあらわすことができます。

そのため、酸性や塩基性の強さをしめすのに水素イオン濃度や水素イオン濃度指数pHが使われるのです。


中和と酸・塩基の濃度

酸や塩基の濃度は、中和のときに大切です。
中和は水素イオンと水酸イオンとから、水ができる反応ですから水素イオンや水酸イオンの濃度が大切なように思われます。

しかし、電離しにくい酸で、水素イオンの濃度が小さくても中和によって水素イオンが使われると酸が電離をおこして、つぎからつぎに水素イオンをつくりだします。

同じように、電離しにくい塩基で水酸イオンの濃度が小さくても中和によって水酸イオンが使われると塩基が電離をおこして水酸イオンをつくりだします。

したがって、中和のときに大切なのは水素イオンや水酸イオンをつくりだすもの。いいかえれば、酸や塩基がどれだけあるかということなのです。

そのため、中和のように酸や塩基がどれだけそれぞれの相手を変化させることができるかということを考えるときには酸と塩基そのものの分量や濃度が大切になってくるわけです。

酸・塩基の濃度や強さのはかリ方

酸や塩基の濃度は、中和滴定法によってはかることができます。

酸や塩基の強さは水素イオンの濃度をはかって決めるのであって中和滴定法ではかるわけにはいきません。

そこで、pH試験紙やそのほかのpH測定器を使ってpHとして測定しています。

酸や塩基の強さが、中和滴定法で決められないように酸や塩基の濃度は、水素イオンの濃度を測定しても含めることができません。

このように、酸・塩基の濃度ということと、水素イオンの濃度とは、たいへんに意味が違います。

つまり、濃い酸や塩基がそのまま強い酸や塩基ということにはならないわけです。

酸・塩基の濃度と強さを、間違えないように注意しましょう。



塩の加水分解とは? わかりやすく解説!

塩の加水分解

塩化ナトリウムのように、強酸と強塩基とからできて卜る塩の水溶液はリトマスにたいして中性をしめします。


しかし、塩化アンモニウムのように強酸と弱塩基とからできている塩の水溶液はリトマスにたいして酸性をしめします。

また、酢酸ナトリウムのように弱酸と強塩基とからできている塩の水溶液はリトマスにたいして塩基性をしめします。

たとえば、塩化アンモニウムを純粋な水に溶かした場合を考えてみます。

純粋な水は、ごくわずかですが、上の①式のように電離しています。
しかし、水素イオンと水酸イオンの数が同じなので、中性をしめします。

この水に塩化アンモニウムを溶かすとすぐ電離して②式のようにアンモニウムイオンをつくります。

このアンモニウムイオンは、水が電離してできた水酸イオンとむすびついて
アンモニア水をつくります。
あとには、塩素イオンと水素イオンが残ります。

このため、液の中には水酸イオンが少なくなります。
そうすると、水が電離して水素イオンと水酸イオンをだしますがこれがくりかえされると液の中の水素イオンの割合が多くなります。

つまり、液全体を考えるととうぜん液は酸性をしめすことになります。

酢酸ナトリウムが塩基性をしめすことも、同じように説明できます。
塩が水と作用して、塩基性や酸性をしめすようになることを塩の加水分解といいます。

強酸と強塩基との塩は加水分解せず中性をしめし強酸と弱塩基との塩が加水分解すると酸性をしめします。

また、弱酸と強塩基との塩が加水分解すると塩基性をしめし弱酸と弱塩基との塩が加水分解すると多くの場合中性をしめします。



塩のいろいろなでき方とは? わかりやすく解説!

塩酸に水酸化ナトリウムの水溶液をくわえて中和させると塩として、塩化ナトリウム(食塩)ができることがわかりました。

この塩のでき方について、もう少しくわしく調べてみます。


中和によってできる塩

酸の水素イオンと塩基の水酸イオンがむすびついて中和反応をおこすときに酸の陰イオンと塩基の陽イオンとから塩ができます。

したがって、中和する酸と塩基の種類によってできる塩の種類は違ってきます。

塩酸と水酸化ナトリウムから塩化ナトリウムができるほか硝酸と水酸化カリウムから硝酸カリウムが硫酸と水酸化ナトリウムから硫酸水素ナトリウムや硫酸ナトリウムができます。

これらの塩は、中和のときに残された陽イオンと陰イオンが組みあわさってできるのです。

したがって、塩とは、酸の水素イオンをほかの陽イオンでおきかえた物質、または塩基の水酸イオンをほかの陰イオンでおきかえた物質ということもできます。

塩のいろいろなでき方

私たちの身の周りには、たくさんの塩がみられます。
たとえば、海水中には塩化ナトリウムをはじめ塩化マグネシウム・硫酸マグネシウムなどの塩がふくまれています。

中和のときの塩は残された陽イオンと陰イオンのむすびつきによってできることがわかりました。

ところが、中和でできた物質ではなくて成分や性質が塩とよくにた物がたくさんあります。

このような物質も、広い意味で塩とよんでいます。
この広い意味での塩について、でき方を調べてみましょう。

酸性酸化物と塩基性酸化物

二駿化炭素を水に溶かすと、炭酸ができます。
また、三酸化イオウを水に溶かすと、硫酸ができます。
同じように、酸化物の中には水に溶けて酸になる物がいろいろあります。

このような、水に溶けると酸になる酸化物を、無水酸といいます。

いっぽう、酸化ナトリウムを水に溶かすと水酸化ナトリウムができ酸化カルシウムを水に溶かすと水酸化カルシウムができます。

このような、水に溶けると塩基になる酸化物を、無水塩基といいます。

酸や塩基のかわりに、これらの無水酸や無水塩基を使っても、塩ができます。

たとえば、左の式のように、酸と無水塩基、無水酸と塩基無水酸と無水塩基からも、それぞれ塩ができます。

酸化物のなかには、水に溶けにくいため酸にはならないけれど、②、③式の三酸化イオウと同じはたらきをもっものがあります。

このような酸化物と三酸化イオウのような無水酸を、まとめて酸性酸化物といいます。

酸性酸化物には、三酸化イオウのほかに、二酸化炭素のに・五酸化リン・二酸化ケイ素などがあります。

同じように、①、③式の酸化ナトリウムのようなはたらきをする酸化物や無水塩基を、塩基性酸化物といいます。

これには、酸化ナトリウムのほかに酸化カルシウム・酸化第一鉄・酸化マグネシウムなどがあります。

また、酸化物の中には、酸性酸化物としてはたらいたり塩基性酸化物としてはたらいたりする物質があります。

このような酸化物を、とくに両性酸化物といいます。
酸化アルミニウムはこの例で上の式①は酸性酸化物としてはたらいた例、②式は塩基性酸化物としてはたらいた例です。

このような物には、酸化アルミニウムとのほかに酸化亜鉛・酸化第二鉄などがあります。

このように、塩は、いろいろな酸化物の組みあわせとしてもえられます。

ほとんどの岩石やガラス・セメソトなどはこのような酸化物の組みあわせでできた塩です。


酸と金属

酸は、金属にたいしてもはたらいて反応します。
この場合は、金属の陽イオンと酸の陰イオンが残ります。

たとえば、亜鉛と塩酸の場合には溶液中に、亜鉛イオンと塩素イオンとが残り、銅と硫酸の場合には銅イオンと硫酸イオンが残ります。

これは、酸の水素イオンに、金属の陽イオンがおきかわったということつまり塩ができたことです。

このように、酸と金属からも、いろいろな塩ができます。

塩基と金属

アルミニウムや亜鉛は、水酸化ナトリウムの水溶液に水素を発生してとけます。

このときできるアルミン酸イオンや亜鉛酸イオンはナトリウムイオンといっしょになってアルミン酸ナトリウムや亜鉛酸ナトリウムなどの塩をつくります。

このように、塩基と金属とからも、いろいろな塩ができます。

塩の複分解

複分解は、塩と塩とから新しい塩ができる反応です。
つまり、塩と塩とからも塩ができるのです。

たとえば、上の式のように、炭酸水素アンモニウムと塩化ナトリウムとから、ナトリウムとアンモニウムが入れかわる複分解がおきて、炭酸水素ナトリウムと塩化アンモニウムができます。

この反応は、アンモニアソーダ法によって、炭酸水素ナトリウムをつくるときに使われています。



中和と指示薬・中和滴定法とは? わかりやすく解説!

中和と指示薬

水酸化ナトリウムの水溶液に、塩酸を少しずっくわえていったときに当量の中和がおこったかどうかを調べには指示薬を使います。

このような中和の進み方を調べるときに使う指示薬を中和指示薬といいます。

たとえば、中和指示薬にリトマスを使った場合当量の中和がおこったときには
リトマスの酸性の色(赤)と塩基性の色(青)との中間の色(紫)をしめします。


中和滴定法

酸や塩基の濃度がわからないときには濃度の決まった塩基や酸を使って濃度を調べることができます。

たとえば、酸の濃度がわからないときこの酸をある分量だけとり、これを濃度の決まった塩基で中和指示薬を使って当量の中和をおこせます。

当量の中和がおこったら、塩基を加えるのを止めそれまでに加えた塩基の量を調べます。

このようにして、とった酸の量と、使った塩基の濃度と量から酸の濃度をもとめることができます。

この方法を、中和滴定法といいます。

中和滴定法で中和を調べるときに塩酸と水酸化ナトリウムのように強酸と強塩基の場合には中和指示薬として、リトマス・フェノールフタレイン・メチルオレンジのどれを使ってもかまいません。

しかし、塩酸とアンモニア水のように強酸とか弱塩基の場合や、酢酸と水酸化ナトリウムのように弱酸と強塩塩基の場合は、使える中和指示薬の種類がきまってくるので注意しなければなりません。

たとえば、弱塩基を強酸で中和する場合にはメチルオレンジのように、変色域がpHから7のあいだの指示薬が使われます。

また、弱酸を強塩基で滴定する場合は変色域がpH7~11ぐらいの指示薬を使います。

弱塩基や弱酸を使って、中和滴定をすると中和する点がわかりにくいので、あまり行いません。

中和滴定法では、指示薬を選ぶのが非常に大切でこれを間違えると滴定の結果が違ってくることがあります。

充分注意して、適当な指示薬を選ぶようにしましょう。




中和とは? 中和のしかたとは? わかりやすく解説!

これまで、いろいろな酸や塩基についてその性質や用途を調べてきましたがここでは、酸と塩基がおこす中和反応や中和によってできる塩についてもっとくわしく調べてみましょう。


塩酸と水酸化ナトリウムの中和

うすい塩酸とうすい水酸化ナトリウム水溶液でつぎのような実験をしてみましょう。

実験

まずビーカーにうすい塩酸を10立方センチぐらい入れこれにうすい水酸化ナトリウム水溶液を少しずつくわえていきます。

水酸化ナトリウム水溶液を少し入れるたびに、青色リトマス紙を使ってこの液が酸性か塩基性かを調べます。

この液は、水酸化ナトリウム水溶液をくわえるにしたがってだんだん酸性が弱くなり、ついには、青色リトマス紙では、色がかわらなくなり赤色リトマス紙が青くかわるようになります。

今度は、うすい塩酸を少しずつくわえながら赤色リトマス紙で試します。
赤色リトマス紙を使っても、青色リトマス紙を使っても紙の色がかわらなくなったら液が酸性でも塩基性でもなくなったわけです。

この実験で、塩酸と水酸化ナトリウムの順序を加えても結果は同じです。

このように、酸と塩基が作用しあってお互いの性質を打消しあうような反応を中和反応といいます。

中和反応は、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の場合だけでなくいろいろな酸と塩基のあいだでもおこります。



中和の仕方

中和について考えるまえに、もういちど酸と塩基の性質を思いだしてみましょう。

酸とは、水素イオンをつくりだす物質であり酸性とは、水素イオンがもっている性質です。

塩基とは、電離によって水酸イオンをつくりだす物質であり塩基性とは、水酸イオンのもっている性質です。

塩酸は、水とはたらきあって、左の①式のように、完全に電離して水素イオンと塩素イオンに分かれています。

また、水酸化ナトリウムも、水の中ではほぼ完全に電離して②式のようにナトリウムイオンと水酸イオンとに分かれています。

そして、塩酸に水酸化ナトリウム水溶液をくわえていると塩酸が電離してできている水素イオンと水酸化ナトリウムが電離してできている水酸イオンがむすびついて上の式のように水ができます。

ですから塩酸の中の水素イオンは水酸化ナトリウム水溶液によってできた水酸イオンの数だけ減り溶液の酸性は、だんだん弱められていきます。

もし水酸化ナトリウムの溶液をさらにくわえていくと水素イオンよりも水酸イオンの数のほうが多くなって水素イオンの性質はうちけされ、水酸イオンの性質だけか残ります。

そのため、溶液は塩基性をしめすようになります。

水酸化ナトリウムの溶液に、塩酸を入れていく場合にも水酸イオンと水素イオンの反応によって水ができます。

水酸化ナトリウム水溶液の水酸イオンは塩酸の水素イオンの数だけ減って、塩基性は弱められついには、水素イオンの数のほうが多くなって酸性をしめすようになります。

したがって中和ということは、つぎのようにいいあらわすこともできます。

中和とは、酸と塩基がはたらきあい水素イオンと水酸イオンがむすびついて水にかわるために、お互いの性質を打消しあうことです。

つまり、中和は、酸と塩基とが、直接はたらきあうのではなく酸が電離してできた水素イオンと塩基が電離してできた水酸イオンが反応して水になる変化なのです。

このとき、水素イオソの相手だった酸の陰イオン(塩酸の場合には塩素イオン)と水酸イオソの相手だった塩基の陽イオン(水酸化ナトリウムの場合にはナトリウムイオン)は、そのままなんの変化もせずに、水溶液中に残ります。

つまり、中和が進むにつれて、この溶液は塩化ナトリウム(食塩)の水溶液と同じ成分になっていくわけです。

ですから、塩酸と水酸化ナトリウムの水溶液とを塩素イオンとナトリウムイオンとがちょうど同じ数だけ残るようにまぜあわせると塩化ナトリウムの水溶液になってしまいます。

このように混ぜ合わせることを塩酸と水酸化ナトリウムを当量に使って中和したといいできた塩化ナトリウムを塩といいます。



アンモニアの製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

アンモニア水の製法

アンモニア水をつくるには、アンモニアを水に溶かせばよいわけです。
アンモニアは、純粋な窒素と水素に、触媒を通して合成します。


市販の濃アンモニア水は約28パーセント、比重は0.9ぐらいです。
瓶のフタを開けると、アンモニアの刺激の強いにおいがします。

瓶の内側は、アンモニアの蒸気で高い圧力になっていますから
瓶を開けるときには、注意が必要です。

ふたを開けた瓶の口に、塩酸をつけたガラス棒を近づけると
塩化アンモニウムの白煙を生じます。

実験室ではこの濃いアンモニア水を、10倍の容積の水でうすめて使います。

アンモニア水には、アンモニウムイオンと水酸イオンが溶けていますが
アンモニア水は、電離がわりあい少ないので
塩基としては、弱い性質しかしめしません。

アンモニアは、金属の陽イオンとむすびついて
陽イオンを沈殿しにくくする性質があります。

たとえば、塩化銀は、水に溶けにくいため沈殿しますが
アンモニア水をくわえると、上の式のように塩化銀とアンモニアが反応して
銀アンモニア錯イオンができ、溶けてしまいます。

このようにイオンにほかの分子などが結びついてできているイオンを
錯イオンといいます。

アンモニアは塩基のアンモニア水として使われることは少なく
アンモニアガスとして使われ、重要な工業原料になっています。

アンモニアを酸で中和すると、酸の種類によって
硫酸アンモニウム(硫安)・硝酸アンモニウム(硝安)・塩化アンモニウム(塩安)などの塩ができます。

これらは窒素肥料として使われていますが
それぞれの成分を調べてみると
硫安塩安にくらべて硝安窒素のふくまれ方が多いので
窒素肥料としてすぐれていることがわかります。

また、アンモニアと空気から硝酸、アンモニアと二酸化炭素から
尿素をつくることができます。

尿素は窒素肥料として使われるほか、合成樹脂の原料としても重要です。
アンモニアはこのほかにも染色や氷の製造、冷凍用に使われています。



水酸化カルシウムの製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

水酸化カルシウムの製法

水酸化カルシウムは、石灰石を原料としてつくります。
石灰石は天然に産出する炭酸カルシウムで、これを焼くと二酸化炭素にをだしてつぎの①式のように酸化カルシウムになります。


生石灰ともよばれる白色のかたまりです。

酸化カルシウムの固まりに水をかけると熱をだしてこなごなにくずれ上の②式のように変化して水酸化カルシウムができます。

この変化を消化といい、水酸化カルシウムを消石灰ともいいます。

水酸化カルシウムの性質

水酸化カルシウムは、水に溶ける量が非常に少なくふつうの温度では、約0.2パーセントしか溶けません。

そのため、塩基性が非常に弱いのです。

水酸化カルシウムを水に溶かした溶液を石灰水といいます。
石灰水に、さらに水酸化カルシウムをまぜると白くにごって、牛乳状になります。

これを石灰乳といいます。石灰水は塩基性が弱く酸の中和などの化学反応に使われることがあります。



石灰水に、二酸化炭素を通すと、だんだん白くにごってきます。
これは、水酸化カルシウムと二酸化炭素が作用して、つぎの①式のように、水に溶けない炭酸カルシウムの細かい結晶ができたからです。

この反応は、二酸化炭素の検出に使われています。

水酸化カルシウムがすべて炭酸カルシウムにかわっても二酸化炭素を通し続けると、炭酸カルシウムが溶けて再びすんだ溶液になります。

これは余分な二酸化炭素が水に溶けて、炭酸ができ②式のように炭酸カルシウムに作用して、水に溶けやすい炭酸水素カルシウムをつくるからです。

水酸化カルシウムの用途

水酸化カルシウムは、固体のままでも、空気中の二酸化炭素を吸って固くなる性質かわります。

その性質を利用して、しっくい・モルタルなどに使われています。
水酸化カルシウムは、塩基としては非常に値段が安いので工業原料として使われるほか皮をなめすときや消毒用、肥料にまぜて使うなど広い用途があります。



水酸化ナトリウムの性質・用途とは? わかりやすく解説!

水酸化ナトリウムの性質

水酸化ナトリウムは、白色のもろい固体で比重2.13、融点は318.4℃です。
水に非常によく溶けて、そのとき熱をだします。


水溶液は強い塩基性をしめしますがこれは、水に溶けた水酸化ナトリウムが水の中ではナトリウムイオンと水酸イオンとに、ほぼ完全に電離しているからです。

また水酸化ナトリウムは空気中の水分を吸ってべとべとになる性質があります(潮解性)。

さらに、空気中の二酸化炭素をよく吸い炭酸ナトリウムになる性質があります。

それで、固体の水酸化ナトリウムをつめた瓶に空気などの気体を通すとその気体にふくまれる水分や二酸化炭素を取り除くことができます。

水酸化ナトリウムの水溶液は、酸と中和反応をおこすほかアルミニウムや亜鉛などの金属を溶かして、水素を発生します。

このときの溶け方は、酸の場合とは少し違っています。

アルミニウムや亜鉛は、そのままイオンになってとけるのではなく上の式のようにそれぞれアルミン酸イオンや亜鉛酸イオンなどになって溶けるのです。



また水酸化ナトリウムは、たんぱく質を溶かします。
そのため、毛や毛糸につくとこれを傷めます。

また、皮膚につくとぬるぬるとした感じがするのも、このためです。

水酸化ナトリウムが毛や毛糸・皮ふなどについたときには酢酸など弱酸のうすい水溶液で洗うとよいでしょう。

油に水酸化ナトリウムを作用させるとふつうでは水に溶けない油が、水に溶けるようになります。

これは、水酸化ナトリウムの作用で油がセッケンにかわったためです。

このように、水酸化ナトリウムと油脂とからセッケンができる作用をケン化作用といいます。

水酸化ナトリウムの用途

水酸化ナトリウムは、非常に重要な工業薬品で水酸化ナトリウムを使わない化学工業はないといってもよいほどです。

レーヨン(人造絹糸)の製造に多量に使われるほか製紙・アルミニウムの製造、染料・セッケンの製造および石油精製に使われています。



水酸化ナトリウムの製法・作り方とは? わかりやすく解説!

水酸化ナトリウムの工業的製法

水酸化ナトリウムは、工業的には、食塩(塩化ナトリウム)を原料としてつくります。

その方法には、食塩水を電気分解し直接水酸化ナトリウムにかえる電解法と食塩から炭酸ナトリウムをつくってそれを水酸化ナトリムにかえるアンモニアソーダ法とがあります。

電解法は、さらに隔膜法と水銀法とに分けられます。


隔膜法

隔膜法は図のような電界そうを使っておこないます。
濃い食塩水を上から流しこむと、食塩水は電気分解を受けながら底に張った石綿の隔膜を通り抜けて下に落ちます。

黒鉛の陽極からは、塩素ガスが発生し隔膜の下にはった穴のある鉄板の陰極からは水素ガスが発生します。

鉄板の穴を通り抜けた食塩水は、水酸化ナトリウムをふくむようになります。

この液をに詰めると、食塩が結晶になってでてきますからそれをろ過して取り除き、残りの液を冷やすと水酸化ナトリウムの固まりができます。

水銀法

水銀法では、下の図のように、電解槽に隔膜はなく底に水銀がうすく流れていて、これが陰極になっています。
そのほかは、隔膜法とよく似ていて黒鉛の陽極からは塩素が発生します。

いっぽう、水銀の陰極ではナトリウムイオンが放電してナトリウム原子となり、水銀に溶け込みます。

これをナトリウムアマルガムといいます。

ナトリウムアマルガムは、横から流れだし別の水槽(解こう塔)に導かれそこで、ナトリウムと水が反応して水素を発生し水酸化ナトリウムができます。

ナトリウムをはなした水銀は、また電解槽に導かれて使われ解こう塔にできた水酸化ナトリウムをふくんだ水は取り出して煮詰められ、水酸化ナトリウムがつくられます。

隔膜法でつくられた水酸化ナトリウムは、食塩がまざって不純になりますが
水銀法でつくられたものは非常に純粋な水酸化ナトリウムです。

また、隔膜法でも水銀法でも水素と塩素が気体としてえられますがこれからは、塩酸がつくられます。

水酸化ナトリウムの実験室的製法

実験室では、アンモニアソーダ法と同じように炭酸ナトリウムから水酸化ナトリウムをつくります。

炭酸ナトリウム・水酸化カルシウム・水をまぜると炭酸カルシウムの白い沈殿ができます。

この沈殿を取り除いて液を煮詰めると、水酸化ナトリウムができます。
この方法でも、水銀法と同じように純粋な水酸化ナトリウムをつくることができます。

複分解

炭酸ナトリウムに水酸化カルシウムが作用するときの反応式をよく見るとナトリウムとカルシウムとが入れかわっていることがわかります。

このような反応を、複分解といいます。



弱塩基と強塩基とは? 一酸塩基と多酸塩基とは?

弱塩基と強塩基

酸に弱酸と強酸があるように、塩基にも弱塩基と強塩基とがあります。 

アンモニア水のように、一部分しか電離をおこさない塩基は水酸イオンを少ししかつくらないために塩基性が弱く弱塩基とよばれます。

水酸化ナトリウムのように、ほとんど全部が電離する塩基は水酸イオンをたくさんつくるために塩基性が強く、強塩基とよばれます。

強塩基には、水酸化ナトリウムのほか水酸化カリウム・水酸化バリウムなどがあります。

水酸化カルシウムは水に溶けにくいのでその水溶液は弱い塩基性しかしめしません。

一酸塩基と多酸塩基

塩基は、化学式の中にふくまれる水酸基の数によって酸と同じように一酸塩基と多酸塩基に分けられます。

また、多酸塩基は、水酸基の数によって二酸塩基、三酸塩基に分けられます。

二酸塩基は水酸基が1つのもので水酸化ナトリウム・水酸化カリウムなどがあります。

多酸塩基は、水酸基を2つ以上もつもので水酸化バリウム・水酸化カルシウムのは二酸塩基です。



濃い酸のはたらきとは? 王水とは? わかりやすく解説!

濃い酸のはたらき

うすい酸のはたらきを調べたときと同じようにして濃硫酸や濃塩酸のはたらきを調べてみましょう。 


濃硫酸と濃塩酸は、どちらも取扱いには、充分注意しましょう。

亜鉛・鉄・スズ・銅を濃い酸に入れた場合いの結果をまとめるとつぎのようになります。

① 亜鉛・鉄・スズは、水素を発生して濃塩酸に溶けます。
スズは、濃硫酸にほとんど溶けません。

② 銅は、濃塩酸には溶けませんが、濃硫酸にはゆっくり溶けます。
亜鉛・鉄も溶けます。

このとき発生する気体には、刺激臭があります。
それは、この気体に二酸化硫黄がふくまれているからです。

濃硫酸との反応は、温度が低いとはっきりしませんが加熱するとよくわかります。

いっぽう、銅は、濃塩酸には溶けませんが濃硫酸には、二酸化硫黄を発生して溶けます。

濃塩酸の場合の反応は、希塩酸のときとまったく同じですが、濃硫酸の場合に、反応のしかたが少し違います。

まえに述べたように、硫酸は強い酸化力をもっています。
その性質は希硫酸ではあまりあらわれませんが濃硫酸では強くあらわれてきます。

たとえば、銅を濃硫酸に入れると銅の表面はすぐに酸化されて、図の①式のように酸化第二銅になります。

このとき、硫酸自身も変化して、二酸化硫黄を発生します。

こうしてできた酸化第二銅は、すぐに酸が電離してできている水素イオンと作用して、②式のように第二銅イオンとなって水に溶けます。

硝酸も.硫酸と同じように、非常に酸化力が強いのでもともと酸に溶けない銅や銀などの金属を酸化銅や酸化銀などの酸化物にかえて溶かしてしまう性質をもっています。


王水

銅や銀は、濃硝酸を使って酸化物にして溶かすことができますが金や白金は、硝酸の酸化力では酸化することができません。

ところが、濃硝酸と濃塩酸を1対3の割合でまぜた液を使うと金や白金も溶かすことができます。

この混合液を王水といいます。
王水の中には、硝酸と塩酸が化合して塩化ニトロシルという、非常に酸化力の強い化合物ができこれが、金や白金を塩化物にかえるはたらきをしてこの塩化物が塩酸に溶けるのです。

金属酸化物への酸のはたらき

濃い酸のはたらきで調べたように、イオン化傾向が小さくてそのままでは酸に溶けない金属でも、酸化剤で酸化物にかえると溶けるようになります。

つまり、金属の酸化物は、金属そのものよりも水素イオンと反応しやすいわけです。

この金属の酸化物と酸の反応について、もう少しくわしく調べてみましょう。

酸化第二銅に硫酸が作用する場合を考えてみます。
酸化第二銅は.硫酸が電離してできた水素イオンと反応して、上の①式のように、第二銅イオンになります。

硫酸は完全に電離して、水素イオンと硫酸水素イオンになりさらに硫酸水素イオンの一部は水素イオンと硫酸イオンとに電離しています。

酸化第二銅と硫酸との反応をまとめると②式のようにあらわすことができます。

この溶液をに詰めると、銅イオンと硫酸イオンとがむすびついて、硫酸銅の結晶ができます。

酸化第二銅は、塩基ではありませんが、この変化は酸と塩基の中和反応によくにています。

それで、中和反応でできる物質を塩というように硫酸銅を銅の硫酸塩といいます。

このように、金属の酸化物を酸に溶かすと金属とその酸の塩ができます。



薄い酸のはたらきとは? イオン化列とは? わかりやすく解説!

これまで、いろいろな酸についてその製法や性質・用途などについて調べてきましたが、これらの酸は金属にたいして、いろいろなはたらきをします。 


薄い酸のはたらき

薄い酸が、金属にたいして、どのようなはたらきをするか調べてみましょう。

実験

亜鉛・鉄・スズ・銅のくずを用意します。
銅のくずは、塩酸で洗って、きれいにさびを落としておきます。

つぎに8本の試験管を用意し4本の試験管には希塩酸を5立方センチずつ残りの4本の試験管には、希硫酸を5立方センチずつ入れます。

そして、まえに用意した金属をそれぞれ希塩酸と希硫酸両方の試験管に入れそれぞれの金属が酸とどのように反応するかを観察します。

この実験の結果をまとめると、つぎのようになります。

① 亜鉛・鉄は、水素を発生して、どちらの酸にも溶けます。
② 銅とスズはどちらの酸にも溶けません。



このように、酸には、亜鉛・鉄などを溶かすはたらきがあります。
しかし、銅やスズが溶けないことからもわかるようにどの金属でも同じように溶かすわけではありません。

亜鉛・鉄などが酸に溶けるのは酸が電離してできる水素イオンのはたらきによります。
ですから、どの酸も同じようなはたらきをするのです。

つまり、水素イオンは金属に作用して、金属を陽イオンにかえ水に溶けるようにするはたらきをします。

この反応は、亜鉛を例にすると、図の式のようにあらわされます。

また、酸に溶ける金属ならどの酸を使っても反応は同じになるはずです。

このように、亜鉛が酸に溶けやすいのは亜鉛が水素よりイオンになりやすいということです。

逆に、銅が酸に溶けにくいのは銅が水素よりイオンになりにくいからです。

イオンになりやすい金属をイオン化傾向が大きいといい、イオンになりにくい金属をイオン化傾向が小さいといいます。

ふつうの金属をイオン化傾向の大きい順にならべると前ページの表のようになります。

これをイオン化列といいます。

この表で、鉛と銅のあいだに、水素が入っています。
つまり、鉛よりイオン化傾向の大きい金属は酸に溶け、銅よりイオン化傾向の小さい金属は、酸に溶けないわけです。(スズは、熱すると酸に溶けます)



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