溶液混合物の分離とは? 分留・抽出による分離とは?

分留による分離

水にアルコールが混合していたりメチルアルコールとエチルアルコールが混合していたりするような液体と液体が混合している場合はそれぞれの物質の沸点の差を利用して蒸留を繰り返して分離することができます。

この方法を、分別蒸留または分留といいます。


互いに交じり合うことのできる2種類の液体AとB(例えばメチルアルコールと水)の混合液を熱するとそれらの混合の割合によって沸点が変わってきます。

例えば、純粋な水の沸点は100℃ですがこれにメチルアルコールが20パーセント混合した液は100℃よりも低い温度、約82℃で沸騰します。

さらにメチルアルコールの量を多くしていくと混合物の沸点はだんだん低くなり

ついにメチルアルコールだけになるとメチルアルコールの沸点64.7℃で沸騰するようになります。

いろいろな割合に水とメチルアルコールを混合しその沸点をはかって線で結ぶと図のような沸点曲線ができます。

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水にメチルアルコールが20パーセント混合した溶液を熱すると82℃で沸騰します(図A)。

このとき発生する蒸気を冷やすとメチルアルコールを58パーセント含んだ混合液が得られます(図B)。

メチルアルコール58パーセントの混合液を熱すると約72℃で沸騰し(図C)そのとき発生する蒸気を冷やすと約84パーセントのメチルアルコール溶液が得られます(図D)。

混合溶液には、このような特別な性質があるのでこの性質を利用して、2つの液を分離するのです。

水とメチルアルコールの混合液を熱するとはじめに蒸気となって出る部分にはメチルアルコールが多く含まれています。

これを容器Iに取ります。最後のほうで出てくる液は、水を多く含んでいます。これを容器Ⅱに取ります。

Iの容器の液を再び蒸留してはじめに出てくる液Ⅲと、フラスコに残った液Ⅳとに分けます。
Ⅱの液も同じように、はじめに出る液Ⅴとフラスコに残る液Ⅵとに分けます。

Ⅲ液とⅤ液をいっしょにし、Ⅳ液とⅥ液をいっしょにしてそれらをまた蒸留し、前と同じことを繰り返すとメチルアルコールと水とを分離することができます。

抽出による分離

ある物質が液体に溶けているとき、その液体とは溶けあわず溶質だけを溶かす別の液体を加えて溶質だけを溶か出しあとで2つの液体を分離する方法があります。

例えば、コールタールから得られたベンゼンの中にはごく少量のチオフェンという化合物が含まれています。

チオフェンは、たいへんベンゼンによく似た性質の化合物で蒸留しても取り去ることができません。

そこで、チオフェンを含んだベンゼンを分液ろうとに入れ、これに濃い硫酸を加えてよく振るとチオフェンは硫酸に溶解します。

振るのを止めて静置するとチオフェンを溶かした硫酸は比重が大きいので下の層に、ベンゼンは上の層にわかれます。

したがって、分液ろうとのコックを開いて下の層の硫酸を流し出すと、ベンゼンと分離できます。




溶液混合物の分離・蒸留による分離とは? わかりやすく解説!

蒸留による分離

食塩水のように、液体の中に固体が溶けて混合物をつくっているような場合には、この液体を蒸発させて蒸気にし冷やして再び凝縮させると、純粋な液体が得られます。 


このような方法で、純粋な液体を分離する操作を、蒸留といいます。

蒸留は普通、下の図のようにして行います。
えだつきフラスコに約2分の1ぐらいの水(固体などを溶かした水)と2~3個の素焼きのかけら(これを沸騰石といいます)を入れ図のように組み立てて熱します。

水蒸気は、リービッヒコンデンサーで冷やされて蒸留水となり三角フラスコに溜まります。

このとき、水に気体が溶け込んでいるような場合は100℃になる前に気体は逃げ出してしまいます。

また、アルコールなど、揮発性の液体が混合しているような場合は次に説明する分留という方法で分離することができます。

アルコールに固体が溶解しているような場合にもこれを蒸留すると、純粋なアルコールが得られます。

アルコールが、少量の水を溶かしているような場合は生石灰や無水の硫酸銅を入れてよく振り水をこれらの物質に吸収させておいて蒸留すると水分のないアルコールが得られます。

蒸留につにいての注意

①フラスコには、液体を2分の1より多く入れないようにする。
②フラスコを熱するときは、直接炎を当てず、金網をして熱する。

③温度計の球の部分はフラスコのえだの付け根のところにあるようにする。

これはコンデンサーに入る蒸気の温度が何度であるかを読むためであって球の部分がえだの位置より低かったり、高かったりすると温度計の示す温度と違う温度の蒸気がコンデンサーに入ることになる。

④沸点が、100℃より低い物質を熱するときは図のように、水浴(ウォーターバス)を使用する。

⑤フラスコの中には、必ず沸騰石を入れる。
これは、加熱によってフラスコの一部分が強熱され突然沸騰し、大きな泡ができて液体がコソデンサーに飛び込まないようにするためである。

なお、一度使った沸騰石は次の蒸留に使うことはできない。

必ず新しい沸騰石を使うようにする。

⑥えだつきフラスコやコンデンサーに使う栓は液体によって溶かされないものを使わなければならない。

有機溶剤を蒸留するときにゴム栓を使うとゴムが有機溶剤に溶けてしまい純粋な有機溶剤を得ることができない。

⑦コンデンサーに入れる水は、下の口から入れ上の口から出すようにする。




溶液混合物の分離・再結晶法とは? わかりやすく解説!

再結晶法

硝酸カリウムやホウ酸などは温度によって溶解度の変化が著しい物質です。 


これらの物質は、高温において飽和溶液をつくり、この溶液を冷やすと溶解度が減少するために、溶質が純粋な結晶として析出してきます。

このように、いちど溶解して冷やし結晶させる方法を再結晶法といいます。

再結晶すると、純粋に近い結晶を取り出すことができます。

例えば、80℃の水100グラムに5グラムのホウ酸を溶かした水溶液を20℃に冷やしたときについて考えてみましょう。

80℃の水100グラムに15グラムのホウ酸を溶かした水溶液は図のAGでしめされます。

これは、溶解度HGには達していません。

この水溶液の温度を下げて、60℃にすると飽和溶液ができます。

さらに水溶液の温度を下げて20℃にすると20℃におけるホウ酸の溶解度はDEですから今まで水溶液中に溶けていたホウ酸15グラムのうち10グラムは溶けきれなくて結晶となって析出するのです。

また、飽和溶液を熱して水を蒸発させると結晶が析出します。

これは、水の量が少なくなるので溶質の溶ける量が少なくなるからです。

食塩などのように溶解度が温度によってそれほどには変化しない物質は再結晶法より溶液を熱して水を少なくすることによって結晶を取り出す方法がよく用いられます。

再結晶によって、なぜ純粋な物質が得られるのでしょう。
不純物を含んだ硫酸銅の結晶を水に溶かすと硫酸銅も混合している不純物も水に溶解します。
(このとき、不純物が水に溶けないものであればその不純物はろ過によって取り除くことができます)
      
一般に、不純物の量は硫酸銅の結晶に比べて少量ですから高い温度にして硫酸銅の飽和溶液をつくっても不純物については薄い溶液なのです。

したがって、この水溶液を冷やしても析出する結晶は硫酸銅ばかりで不純物は溶液に溶けたまま残るのです。

実際には、結晶ができるとき溶液が包みこまれたり、結晶の表面に付着したりするので不純物の全てを取り除くことは難しく2回、3回と再結晶を繰り返すことによってより純粋なものになります。

溶液に他の液体を加えて結晶をつくる方法

水には溶けるが、アルコールには溶けない物質があります。

この物質を水に溶かした溶液にアルコールを加えると物質を溶かしていた水はアルコールに溶け込むので溶質の溶解度加減少し、溶質が結晶となって析出します。

例えば、硫酸第一鉄の濃い水溶液にアルコールを少しずつ加えていくと硫酸第一鉄が析出するので、この方法は硫酸第一鉄の製法に用いられれます。




混合物の分離とは? 分離の方法と種類とは?

物質は、常に純粋な形で存在しているとは限りません。
むしろ、混合物となっている場合のほうが多いものです。

そこで混合物から、必要とする物を純粋な形で取り出したり混合物が何種類の物質からできているかを調べることが必要になってきます。

これらの混合物から純粋な物質を分離するにはどんな方法があるかを調べてみましょう。


ふるいによる分離

粒の大きさの違う2種類の個体が混合しているような場合はふるいによってふるいわけます。

比重の違いによる分離

水よりも比重の大きなものと小さなものが混合しているような場合は混合物を水に入れてかきまわすと2つの物質が分離できます。

また、水の代わりに、濃い食塩水の中に入れて浮くものと沈むものとに分離する方法もあります。

さらに、金属の選鉱などのように水の泡の表面に物質をつけて浮かばせる方法もあります。

ろ過による分離

水などの液体の中に、砂や粘土などの溶けない物質が混合している場合があります。

このような場合は混じっている粒の大きさによって布を使って分離したり、ろ紙を使ってろ過したりさらにもっと目の小さいろ過装置を使ったりして分離することができます。

①ろ紙によるろ過の方法

②吸引ろ過による方法

普通のろ過では大変ろ過しにくいものろ過の速度をできるだけ早くしたいときなどに用いられます。

③保温した状態でろ過する方法

常温では、すぐ固体となってしまうような物質をろ過する場合に利用されます。
普通、保温ろうとを使いますが下の図のような方法でも、保温ろ過することができます。

抽出による分離

固体の混合物に、溶媒を加えて溶媒にとける成分だけを溶かし出しろ過して分離する方法があります。

落花生や大豆を小さく砕いて試験管に入れます。
これにエーテルを加えて栓をし(コルク栓をビニル布で包んでで使う)よく振ります。

すると、落花生や大豆に含まれていた脂肪はエーテルに溶けますから溶媒の部分だけを、時計皿に移し、風通しのよいところに置くとエーテルは蒸発し、あとに脂肪が残ります。

このような方法を、抽出といい、これを、自動的に行うにはソックスレーの抽出器というものを使うと便利です。

フラスコの中に、エーテルなどの溶媒を入れ円筒ろ紙の中には、大豆などを細かく砕いたものを入れます。

フラスコを、ウォーターバスで温めると蒸気になったエーテルは図のAの管を通って冷却器に行きます。

ここで蒸気は冷やされ、液体となって円筒ろ紙の中に落ちます。

このとき、エーテルは脂肪を溶かしサイホンの高さ(図のB)まで溜まると自動的にフラスコの中に流れこむようになっています。

このことが、何回もくり返されると脂肪は、大部分がフラスコの中に移りますからエーテルを蒸留して、脂肪を分離することができます。




混合物の重さと体積の変化とは? わかりやすく解説!

混合したときの重さの変化

水に食塩を溶かしたとき、物質の重さや体積はどうなるでしょうか。
ビーカーに50グラムの水をはかりとりこれに食塩15グラムをはかって溶かし完全に溶け終わってから混合溶液の重さを測定してみます。


この場合、混合物の重さは水の重さと食塩の重さとの和になることがわかります。

砂糖を水に溶かした場合についても調べてみましょう。
水をビーカーにはかりとり、これに、重さをはかった砂糖を溶かします。

そうすると、混合液の重さは砂糖と水の重さの和になっています。
このことは、気体と気体との混合物についてもいうことができます。

このように、混合物の重さは混合する前の物質の重さの和になるものであって混合したときに重くなるとか、軽くなるとかいうことはおこりません。

これを、重量には加法性がある、といいます。

混合したときの体積の変化】

体積についてはどうでしょうか。

図のように、100立方センチの水と100立方センチのエチルアルコールを混合すると200立方センチにはならず、約185立方センチになります。

水に食塩や砂糖を溶かした場合の体積はどうなるでしょう。
大形の試験管に水と氷砂糖を入れ、ガラス管を通したゴム栓をします。

水面の位置を記録しておき氷砂糖が完全に溶解したあと水面がどうなるかを観察します。

食塩や氷砂糖が溶けたあとはガラス管の水位が低くなっていることがわかります。

このことから、食塩や氷砂糖が溶解した場合は溶解する前の固体と液体の体積の和より混合溶液の体積が小さくなっていることがわかります。

塩酸と水酸化ナトリウムの水溶液を混ぜ合わせるときを調べてみましょう。

40立方センチの塩酸(約20パーセントのもの)をメスシリンダーにはかりとり別のメスシリンダーに、水酸化ナトリウムの水溶液(約20パーセント)を40立方センチはかりとります。

塩酸の中に水酸化ナトリウムの水溶液を静かに注ぐと熱が出ます。

溶液の温度が冷えるまでしばらくまって体積がいくらになったかを測定します。

2つの液を混合したにもかかわらず混合溶液の体積は80立方センチよりも増加しています。

以上の例からわかるように違った種類の固体や液体を混合したときの体積はもとの体積の和になりません。

多くなる場合も、少なくなる場合もあり体積には加法性がないということになります。



測定と誤差

私たちが、ものさしを用いて、ある長さの金属を測定したとします。
1センチの目もりのものさしで測定すれば○○メートル○○センチまでは正しく測定できてもミリまではわかりません。

ミリメートルの目もりのものさしならばミリメートルの単位までは測定できますがそれより詳しくはわかりません。

普通の顕微鏡を使いさらに、電子顕微鏡を使うともっと詳しく測定できますがそれより詳しくは、はかれません。

こうしてみると、金属の本当の長さは永久に測定することができないことになります。

センチの目もりのものさしではミリメートルのけたは目分量でしか読み取れないしミリメートルの目もりのものさしでもミリメートルより小さい単位は読みとれません。

このとき、目分量で読みとった値は、誤差を含む、といいます。
誤差のあらわし方は次の通りです。

  25.7 cm ± 0.1cm……①
  25.78 ㎝ ± 0.01cm……②

 は誤差をあらわしています。
この測定では、①よりも②のほうが精度が10倍高いということができます。

メスシリンダーで体積を測定する場合もa図のようなメスシリンダーで測定したときはb図のメスシリンダーで測定したときより、精度は10分の1になります。

また、重さをはかるための上皿天秤は100グラムまではかれるもので±0.1グラムの誤差を含んでいます。
      
このように、測定の値にはいつも誤差が含まれています。
絶対に正しい測定というのはできません。

私たちは、測定するとき、誤差がいつもついているということを知っておくことが必要です。

誤差といっても、誤った測定によって得られた値では決してありません。




混合物の沸点と融点とは? わかりやすく解説!

純物質と混合物

前の章でも述べたように、純粋な物質の沸点や融点を測定してみると常に一定の値をしめすものです。 

これに対して、2種以上の物質を混ぜた混合物は一定の沸点も融点もしめしません。

そこで、一定の沸点と融点を持つ物質を純粋な物質(純物質)といい一定の沸点や融点を持たない物質を混合物ということに決めます。


混合物の沸点

水やアルコールは、その体積の大小に関わらず同じ温度で沸騰することはすでに学びました。

それでは、水とエチルアルコールを混ぜ合わせたものの沸騰する温度すなわち沸点はあるのでしょうか。

水1に対してエチルアルコール1体積の割合に混合したものをフラスコに入れ1~3個の沸騰石を入れ、温度計を入れて熱してみましょう。

そして、時間と温度との関係をグラフに書いてみます。

水やアルコールを別々に熱したときのグラフに比べ一定の沸点をしめさないことがはっきりわかります。

水に溶けているアルコールが全部蒸発してしまうとはじめて100℃の沸点をしめすようになります。

次に、水に食塩を混合した場合の沸点について、調べてみましょう。

20グラムの水に、2グラムぐらいの食塩を溶かした液を大形の試験管に入れ沸騰石を加え、温度計を入れて熱してみましょう。

そして、やはり温度と時間の関係をグラフに書いてみます。

食塩水は、100℃ぐらいから沸騰をはじめますがその温度はだんだん高くなって、106℃ぐらいになるまで上昇を続けます。

食塩水の底のほうに食塩の結晶がでるまで温度は上昇を続け結晶が出ると、はじめて一定の温度になります。

この2つの例からもわかるように2つの物質を混合した場合は一定の沸点をしめさないものです。

これに対し純粋な物質は、一定の沸点をもっています。



混合物の融点

ナフタリソやパラジクロルベンゼンは、一定の融点をもっています。
今、ナフタリンとパラジクロルベンゼンの2物質を混合してその混合物の融点を調べてみましょう。

ナフタリンとパラジクロルベンゼン2グラムの割合で混合し前回と同じ方法で融点を測定します。

グラフを見てわかるように、この混合物は一定の融点を示せません。

純粋な水は、0℃で氷になります。すなわち、氷の融点は0℃です。

水に食塩を溶かした場合や水に砂糖を溶かした場合の融点はどうなるでしょうか。

水の融点を測定したのと同じ方法で、食塩水の融点を測定してみましょう。
水20立方センチに食塩5グラムを溶かし、これを大形試験管に入れて温度計を入れ、寒剤の中に入れて冷やします。

温度と時間との関係をグラフにします。

このグラフから、食塩水は一定の融点をしめさないことがわかります。
      .
水に他の物質が溶解したときは、0℃より低い温度で氷ができます。
混合する物質が多くなるにつれて、氷のできる温度はいっそう低くなります。

海の水がなかなか凍らないのや漬物の汁が冬に水が凍るような寒いところでも凍らないのはこのためなのです。

また、純粋な酢酸は16.6℃の融点をもっています。
これに、水を加えると、16.6℃になっても凝固しません。

この水を含んだ酢酸が凍る温度は、加えた水の量によってまちまちです。
これも、混合物が一定の融点をしめさない例の一つです。

このように、純粋な物質はそれが純粋でありさえずれば、どの試料を測定してもいつも一定の融点をしめすのに対し混合物はその混合の割合により融点が異なりグラフに書いた場合も、純粋な物質とは違う温度の下がり方をしたり融点がはっきりしなかったりします。




電気抵抗と熱伝導とは? 炎色反応とは?

電気抵抗と熱伝導

長さ、太さが等しく、種類の違う金属線に豆電球をつけ電気を通して豆電球の明るさをくらべてみます。


金属線として、銅線・鉄線・ニクロム線を使うと銅線につないだ豆電球は明るくつきますが鉄線の場合はそれよりもやや暗くさらにニクロム線にいたってはもっと豆電球は暗くなります。

これは物質によって、電気の流れにたいして邪魔する性質(これを電気抵抗といいます)が違うことを意味しています。

つまり、電気抵抗も物質の違いをあらわすことができる特性であるということができます。

豆電球のかわりに、それぞれの線に電流計をつないで流れる電流を測定するともっと正確に電気抵抗の違いを調べることでができます。

同じ長さで、同じ太さの銅と鉄の棒の一端を熱してみます。
これらの棒のはしをさわっていると銅はすぐに熱くなりますが、鉄はなかなか熱くなりません。

熱が伝わることを熱伝導といいます。

熱伝導の程度も物質によって違っていることが銅と鉄とを比較した場合にもわかります。

熱伝導のしかたは、熱伝導率であらわし物質はそれぞれ特有の熱伝導率をしめします。

炎色反応

塩化ナトリウムや炭酸ナトリウム・水酸化ナトリウムなどのナトリウムの化合物の水溶液を白金線(またはニクロム線)につけてガスバーナーの炎の中に入れて熱すると炎は黄色に染まります。

これは、これらの化合物の中に共通にあるナトリウム原子が、高温に熱せられたときに発する色です。

このように、金属の化合物を炎の中に入れて高温に熱すると化合物の中の金属原子が光をだします。

この光の色は、金属の種類によって特有のものです。これを炎色反応といいます。

炎色反応をしめしやすいのは、アルカリ金属・アルカリ土類金属のほか数種の金属で、これらの物質は、ごく微量でもまた単体でも化合物でも同じように反応をしめします。

このため、炎色反応によって化合物の中の金属原子を調べることができます。




溶解度とは? 結晶の形とは? わかりやすく解説!

溶解度

食塩と砂糖と同じ量の水に溶かしてみると溶ける量は物質によって違いがあることがわかります。 


硫酸銅やホウ酸・ミョウバンなどのいろいろな物質はその物質特有の溶解度をもっています。

白色の粉末が2種類あり、見た目には区別がつかないぐらいよく似ているときこの2種類の物質を水に溶かしてみると一方はたいへんよく溶解し、他方はあまり溶解しなかったとしたらこの2種類の物質は違う物質であることがはっきりするでしょう。

ナフタリンとパラジクロルベンゼンは、融点の違いによって違った物質であることを知ることができました。

この2つの物質を水に入れてよく振ってみると両方とも水に溶けない物質であることがわかります。

物質の溶解度はたんに水にたいする溶解度だけでなく他の液体にたいする溶解度も物質を区別する特性であり物質固有の性質なのです。

結晶のかたち

食塩水を浅い皿の上にうつし、日のあたるところに出しておくと水はしだいに蒸発し、中から同じ形をしたたくさんの結晶があらわれます。

この結晶は食塩を使えば誰がやってもどこでやっても同じ形のものしかできません。

食塩を使って、丸い形の結晶や三角形の結晶、長方形の結晶をつくることができません。

ミョウバンの溶液をビーカーに入れて放置しておくとこれも同じ形をした結晶ができ、そのどれ一つとってみても他のものと結晶の形が違うものは見られません。

ホウ酸や硫酸銅の水溶液を冷やしたときも冷えるにつれてホウ酸ならばホウ酸の結晶、硫酸銅なら硫酸銅の結晶といつも同じ形のものが析出します。

これらのことは結晶の形は、気まぐれにできているのではなくその物質に特有の決まった形があることをしめしています。

つまり、結晶の形も物質の特性であるということができます。




気体の膨張率とは? シャルルの法則とは?

気体の膨張

空気や窒素・酸素などの気体も、温度を高くすると体積が膨張します。
下の図のような装置で、空気の膨張を測定し体積と温度との関係をグラフにすることができます。 

空気のかわりに、二酸化炭素・窒素・酸素などの気体を入れ空気のときと同じようにして膨張する割合をグラフに記入してみましょう。

そうすると膨張する気体の量は上がった温度に比例しますが膨張する割合はどの気体も同じであることがわかります。

これは、固体や液体の膨張率が物質によって特有の値であるのに反して気体の膨張率は、物質の特性とはならないことをしめしています。

気体の体積と温度

いっぱんに、気体は圧力が一定ならば、温度が1℃上がるごとにその気体の0℃のときの体積の273分の1だけ増えるのです。

つまり、気体の体積は、圧力が一定ならば絶対温度(物理や化学の計算に使われる温度で摂氏の温度に273をくわえたもの に正比例してかわるという関係があるのです。

これをシャルルの法則といいます。

ですから、体積が0℃のときの2倍になるのは273℃ということになります。

またこの法則でいくと、温度を、零下273℃にすると体積が0になってしまうはずですが、どんな気体でも零下273℃にならないうちに液体か固体になってしまうので体積が0になることはありません。


【実験】

①フラスコにガラス管をつけた栓をします。
このフラスコを温めてから、管の先を水にちょっとつけると、水滴が吸い込まれます。

つぎに、このフラスコを左の図のようにスタンドにとりつけ手の平で温めたり、冷やしたりしてみましょう。

フラスコを温めると、管の水滴が下がり手の平を遠ざけて中の空気を冷やすと、水滴があがってきます。

これは、中の空気の体積が温度によって大きくなったり小さくなったりするからです。

②フラスコを100℃ぐらいの湯につけとてからこれを逆さまにし10℃ぐらいに冷やします。

すると、フラスコの中に4分の1ほど水が入ってきます。
これは、中の空気が90℃だけ冷えたため体積が4分の1ほど減ったことをしめします。

体の体積と温度・圧カ

ある決まった気体の体積が大きくなるのは温度が上がったときか、圧力が小さくなったときです。

また、体積が小さくなるのは、温度が下がったときか圧力が大きくなったときです。

では、体積をかえると、温度や圧力はどうなるでしょう。

たいていの場合、気体は圧力をかけて体積を小さくすると温度があがります。

自転車の空気入れの先をふさいでおいて急にピストンを押し下げると、空気入れの下のほうがかなり厚くなります。

これは空気を圧縮して熱が出たためです。

まえの場合と反対に、気体を温めないか温まる暇のないくらい早く膨張させればその気体の温度は下がります。

夏など、強い日光で温めれた地表の空気が何千メートルも上昇していくうらに、膨張して温度が下がります。

それで、その空気にふくまれていた水蒸気が水滴になって雲になることがあります。

入道雲はこのようにしてできた雲です。




固体の膨張率・液体の膨張率とは?わかりやすく解説!

固体の膨張率

ふつうの物質は、温度が高くなると体積が増えます。このことを膨張といいます。
 

それでは、膨張のしかたは、物質によってどのように違うのでしょうか。

中空のパイプの一端を固定し、他のはしがのび縮みしたときにそののび方が拡大されるような装置をつくります。

一端の固定されている側からゴム管により水蒸気を送りパイプを加熟するようにします。

水蒸気は、フラスコの水を加熟することによってつくることができます。
管の他のはしにあけた穴から、水蒸気が逃げるようにしておきます。

銅・アルミニウム・鉄・ガラス・黄銅などのパイプを用いてこの実験な行ってみましょう。

水蒸気で熱せられたパイプの膨張する割合が物質によって違うことがわります。

パイプの長さ、太さ(直径)、パイプの厚みパイプを通る水蒸気の温度などの条件を実験する物質全部についてほぼ等しくて実験結果をくらべることが大切です。

注意して、何度も実験してみると膨張する割合は物質の種類によって違うが同じ種類の物質ではだいたい等しいことがわかります。

この場合、パイプの太さも膨張により変化しますが長さの変化にたいして、非常に少ない変化ですので太さの変化は考えなくてもよいのです。

このように長さの膨張だけを問題にするとき線膨張という言葉を使います。

正確には、温度が1℃上がるときにのびる長さのもとの長さにたいする割合で膨張の程度をあらわします。

これを線膨張率といいます。

線膨張率は物質により特有の値すなわち、物質の特性をあらわす数値です。

線膨張率をはかれば、その物質が何であるかをある程度推定することができるのです。



液体の膨張率

図のような容器に水を満たし、液の温度が測定できるように温度計を入れます。
この装置を水槽の中に入れ、水槽の中に60℃ぐらいの湯を入れます。

温度が5℃上がるごとに、ガラス管の液面が上がった高さを測定し
温度と液面の高さとの関係をグラフにします。

水のかわりに、エチルアルコールを入れて水と同じ方法で実験し、液面が上がった高さとアルコールの温度とり関係をグフフに書きます。

グラフを見てわかるように、水とエチルアルコールとでは膨張のしかたが、違っていることがわかります。

液体も固体と同じように温度が高くなると膨張しますがこの場合は体積が膨張します。

体積が膨張する割合を体膨張率といいます。

体膨張率は、物質の種類によって違い液体の体膨張率は、液体によって一定の値をとります。




微量物質の融点のはかリ方とは?ガラスの毛細管の作り方とは?

ナフタリンやパラジクロルベンゼンなどの固体の物質の融点を測定するにはつぎのようにすると便利です。 


この方法によると、融点をはかる物質の量が微量で済むのでその点でも便利です。

ガラスの毛細管の中に物質を少量入れて温度計とともにこれを加熱します。

温度が上がって物質が融解して透明になったときの温度をはかり、これを融点とします。

また、融解していいて、透明であったものをゆっくり冷やしてかたまらせ不透明になったときの温度を測定する方法もあります。

ガラスの毛細管をつくるには内径8ミリメートルぐらいのガラス管の一部を加熱して引きのばし内径1ミリメートルぐらいで厚さのうすい毛細管をつくります。

この毛細管を長さ7~8センチに切り一方のばしを炎で熱してとじると融点測定用の毛細管ができます。

この毛細管に融点をはかる物質を入れるには乳鉢か、素焼きの板で粉末にした物質の中に毛細管のひらいたほうをさしみます。

すると、管の中に少量の物質が入りますから管を逆さまにし、閉じたほうを下にして机の上で軽く叩き物質を管の底のほうへ落とすようにします。

この方法をくり返し毛細管の底から約5ミリメートルぐらいの高さになるような物質を入れます。

融点をはかるときは、温度計の球部に少量の水をつけこれに毛細管をつけ、そのままビーカーの液の中に入れます。

熱するときは、できるだけゆっくり温度が上昇するようにします。




物質の融点とは? 水・ナフタリン・パラジクロルベンゼンとの違いとは?

水を試験管に入れ、氷と食塩をまぜあわせたもの(これを寒剤という)の中に入れて冷やしてみます。 


このとき、水の中に温度計をさしこんでおいて冷えてゆく温度と時間との関係をグラフにしてみましょう。

水は、その量が多くても少なくても、氷になる温度は0℃であり全部の水が氷になるまで0℃の温度は一定のままでかわりません。

家庭にある防虫剤で、ナフタリンという薬があります。

これを試験管にいれてから100℃ぐらいの湯を入れたビーカーの中につけておきます。

しばらくすると、固体であったナフタリンは溶けて液体のナフタリンにかわってしまいます。

液体になったナフタリンの中に温度計を入れて試験管をビーカーの湯に入れたままで放置し温度と時間との関係をグラフにしてみましょう。

100℃近い温度であった液体のナフタリンはビーカーの湯の温度が低くなるにつれて、温度が下がりやがて80℃ぐらいになると、液体のナフタリンの中に小さな固体ができてくるのが見えます。

ナフタリンの温度は、このときから、80℃より低い温度にならずそのかわり、どんどん多くの固体が生じます。

ナフタリンが全部固体にかわるあいだ80℃の温度はかわらず、そのまま一定です。

全部のナフタリンが固体になると固体のナフタリンの温度はしだいに下がります。

これは、まえの実験で、水が氷になる温度が0℃で全部の水が氷になるまで0℃であったことと同じ現象です。

家庭で、ナフタリンよりも、もっとよく使われる防虫剤にパラジクロルベンゼンというのがあります。

これは、ナフタリンとは違う種類の物質です。



パラジクロルベンゼンを小さく砕いて試験管に入れて100℃ぐらいの湯を入とれたビーカーの中に入れ、溶かして液体にします。

これをナフタリンのときと同じようにして冷やし温度と時間との関係をグフフに書いてみます。

約52℃になると、液体のパラジクロルベンゼンの中に小さな固体があらわれだんだん量が多くなります。

そのときから温度は変化せず、52℃のままです。

そして、液体が全部固体にかわったところでふたたび温度は下がりはじめます。

水・ナフタリン・パラジクロルベンゼンが液体の状態から固体の状態になるときは物質によって温度が決まっていることがわかりました。

この温度は、水の量やナフタリンの多い、少ないによるものではなく量に無関係に、その物質によって決まっている温度です。

このように、液体から固体になる温度は物質により決まっておりこの温度を凝固点または融点といいます。

鉛やスズをるつぼの中に入れて熱すると溶けて液体の鉛や、液体のスズができます。

この中に温度計をさしこんで、ゆっくり冷やしてやるとやはり一定の温度になったときにかたまることがわかります。

すなわち、鉛の融点は327.5℃、スズの融点は231.9・℃であってこの温度は常に一定です。

このように、沸点や融点は物質によって決まっている値で物質の特性をしめす一つの要素です。

ですから、沸点や融点を測定することによってその物質が何であるかを推定することができる場合が多いのです。




物質の沸点とは? 水とアルコールの違いとは?

水を試験管に入れ、その中に素焼きのかけらを2~3粒入れ温度計を入れて熱してみましょう。 


三角フラスコにも水を入れ、温度計を入れ熱します。

丸底フラスコは試験管や三角フラスコよりも多量の水が入ります。
これにも、素焼きのかけらを入れ、温度計をさしこんで熱してみましよう。

そして、熱してからの温度の上がり具合と時間との関係を調べグラフに書いてみます。

つまり、水の量の多い少ないによって水の沸き立つ温度に違いがあるかどうかを調べてみるのです。

試験管に入れた水は、量が少ないので短時間で温度が上昇しやがて100℃近くで沸騰します。

三角フラスコの水は、試験管の水の量よりやや多いので時間はかかりますが、やはり100℃近くで沸騰します。

丸底フラスコに入れた水は、量が多いのでなかなか沸き立ちませんが、やがて100℃になって沸騰しはじめます。

このことから、水は体積には関係なくほぼ100℃近くで沸騰することがわかります。

アルコールには、エチルアルコールやメチルアルコールなどがありますが、注射をするときの消毒用とかお酒の中にあるアルコールはエチルアルコールでメチルアルコールというのは、人の体にはたいへん有毒な物質です。

エチルアルコールを、水が沸騰する温度を調べたときと同じように量をかえて沸騰する温度を調べてみましょう。



ただし、アルコールを熱するときは、直接金網の上で熱するのではなく湯の中で熱するようにします。

これは、あまり熱しすぎるとアルコールの蒸気が多量に出てこれに引火して危険なことがあるからです。

この場合は水浴(ウォーターバス)という器具を使うのがふつうですがないときには、缶詰の空き缶に湯を入れたりビーカーに湯(または水)を入れ、それを下から熱するのもよい方法です。

エチルアルコールの場合も、水と同じようにその量に関係なく、約78℃で沸騰します。

メチルアルコールについてもエチルアルコールとまったく同じ方法で調べてみるとやはり量の多い少ないに関係なく、約64℃で沸騰します。

このようにして、いろいろな液体について調べてみると液体が沸騰する温度は、液の量には関係なく液体の種類によって決まっています。

物質はこのように、その物質に特有な沸騰温度をもっています。

この温度を沸点といいます。
物質の沸点は、物質の特性をあらわすものとして大切なものです。

しかし、注意しなければならないことは物質の沸点は、気体の密度や体積と同じように大気の圧力に影響されることです。

といっても普段、圧力(大気圧)の変化は小さいので沸点はそれほど違いません。

ふつう、一気圧における沸点としてあらわします。




気体の重さと体積とは? わかりやすく解説!

空気を注射器に入れて、注射器の先を閉じ、
ピストンを押したり引いたりすると空気は縮んだり、広がったりします。


これは、気体が液体や固体とは著しく異なるところです。
物質の状態を考えるとき、温度と圧力と体積は大切な要素です。

固体や液体の重さと体積を考えるときは、圧力の影響があまりないのでまったく触れませんでしたが、気体について調べるときは圧力を考えなければなりません。

気体の体積と圧力

瓶の中に液体や固体を入れるとき、ある決まった量だけ入れるとそれ以上は入りません。

しかし、空気のような気体では、かなりの量を詰め込むことができます。
それを確かめるために圧力計をつけた瓶の中に空気をふきこんでみましょう。

すると、空気が多く入るにつれて瓶の中の圧力が高くなることがわかるでしょう。

これは、気体の体積と圧力との間にある決まった関係があるからなのです。

それは、ある決まった量の気体の体積が2分の1になれば圧力はもとの2倍になり
体積が3分の1になれば、圧力は3倍になるということなのです。

また、反対に体積が2倍になると、圧力は2分の1になります。

つまり、温度が一定のとき、決まった量の気体の体積は圧力に反比例してかわるのです。

この関係は、空気ばかりでなく、どの気体にもあてはまります。

この関係をボイルの法則といいます。

注射器の内側を水でぬらし、先を指でおさえてピストンを押していくとだんだんピストンを押し返す力が増していきます。

これは、筒の中の空気の体積が縮めば縮むほど、その空気の圧力が大きくなくなるからです。



気体の重さと体積

気体の重さをはかるには、外から力を加えない状態にして体積をはかり、その体積で何グラムの重さがあるかを測定しなければなりません。

空気の重さは、はかることができます。

スプレーの空き缶の重さをはかっておき、これにポンプで空気を押し込んで、再び重さをはかります。

空気を押し込んだときのスプレーの重さからはじめのスプレーの重さを引けば、押し込んだだ空気の重さがわかります。

つぎに、押し込んだ空気を水で満たした水槽の中に逆さまに立てたメスシリンダーの中にはかりとれば何立方センチの空気を押し込んだかがわかります。

その体積で、空気の重さを割れば1立方センチあたりの空気の重さをもとめることができるわけです。

空気ばかりでなく、酸素や水素、二酸化炭素などの気体も空気と同じ方法でその重さをもとめることができます。

気体も、固体や液体と同じように1立方センチあたりの重さ、または1000立方センチあたりの重さはその気体の種類によって決まっています。

このように、物質の種類によってその物質1立方センチあたりの重さが決まっていることはたいへん重要なことなのです。

1立方センチあたりの重さを密度といいます。

まえに述べたような、物質の色・におい・味などは物質の特性としては、曖昧なものですが物質の密度は、物質の特性の代表的なものの一つです。

密度をはかれば、その物質は何であるかとはっきりわからないまでもある程度の検討をつけることはできます。




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