脂肪と油脂とは? 植物性脂肪・動物性脂肪とは?

ふつう、動植物体から、いろいろな方法でとりだされ水に溶けず有機溶剤にかなりよく溶けるような性質をもった成分を、脂肪といいます。


脂肪と油脂

せまい意味で、脂肪というのはバターや牛脂(ヘット)、豚脂(ラード)のように、常温で固体のものをさします。

そして、ゴマ油・魚油のように常温で液体のものを脂肪油、または油として、脂肪と区別しています。

しかし、この区別は土地や季節によってその境目がはっきりしないので、あまりこだわる心要はありません。
ふつう、この両方をあわせて脂肪といっていますが正しくは、油脂とよばれます。

ここでも、脂肪というのは油脂の意味で使うことにします。
脂肪は、とりだされる材料によっていろいろな名前がつけられますが大きく分けると、つぎの2つになります。

植物性脂肪

植物からとりだされる脂肪を、植物性脂肪といいます。
植物では、脂肪はおもに種子にたくわえられています。

植物性脂肪の多くは、ふつう常温で液体になっています。
しかし、うすい層にして、空気中にさらしておくと酸素を吸収して樹脂に似た固体に変化する性質をもつものもあります。

この性質の強さによって乾性油、不乾性油、半乾性油に分けられます。
また、まれに常温で固体になっている固体油もあります。

乾性油

アマニ油・エノ油・トウ油などは、乾性油の代表的なもので空気中にさらすと酸素によって酸化され、3~6日で固体にかわります。

不乾性油

ツバキ油・オリーブ油・ラッカセイ油・ヒマシ油などは乾性油のように酸化される性質をもたず、長く液体の状態をたもっています。

半乾性油 ゴマ油・ナタネ油・ぬか油・大豆油などは乾性油と不乾性油の中間の性質をもち、半乾性油といわれます。

しかし、大豆油などは半乾性油でも乾性油にちかく酸素によって酸化され、弱い皮まくをつくります。

固体油

植物性脂肪のなかで、固体油に入るものにはヤシ油・カカオ油・木口ウなどがあります。



植物性脂肪の取り出し方

植物性脂肪をとりだす方法には、圧搾法・抽出法などがあります。

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圧搾方は、大豆ー胡麻ーナタネー落花生などから油をとるときに用いられます。
これは、図のように、これらの種子を粉のように細かく砕いて水蒸気で蒸し圧搾器で押し絞って、油をとる方法です。

抽出法というのは、大豆やフタの実のようにふくまれている脂肪の量が少ない原料とか、ほかの方法で脂肪をとったかすから残っている脂肪をとりだすときなどに使われる方法です。

これは、エーテルーベンゼン・揮発油などの溶媒に細かく砕いた原料を入れる方法で、原料中の脂肪が溶媒に溶けたします。
そのあとで、蒸発しやすいこれらの溶媒を飛ばしてしまうとあとに脂肪が残るわけです。

動物性脂肪

動物では、脂肪はおもに、皮下脂肪貯蔵組織という部分ときには肝臓などにたくわえられています。

ふつう、陸産動物脂肪と海産動物脂肪の2つに分けられます。しかし、これらの性質は、かなり違っています。

陸産動物脂肪

おもに、ほ乳類の動物からとりだされます。
多くのものは、常温で固体です。また、空気中で酸化されにくい性質をもっています。

陸産動物脂肪には牛脂・豚脂・羊脂・バター・さなぎ油などがあります。

海産動物脂肪

常温では液体で、酸化されやすい脂肪です。
このままでは使いませんが、硬化油の原料として、多く用いられます。

海産動物脂肪は、魚油・肝油・海じゅう油に分けられます。

魚油には、イワシ油・ニシン油、肝油には、タラ肝油、サメ肝油、海じゅう油には鯨油などがあります。
肝油には、ビタミンAやDが多くふくまれています。

動物性脂肪のとりだし方

おもに用いられる方法は、いりとり法と、にとり法の2つです。
牛や豚のあぶら身を、なべで温めると、油が溶けてでてきます。

これはみなさんもよく台所で観察したことがあるでしょう。

いりとり法は、このように原料を熱して脂肪のまわりの組織を怖し脂肪を溶かし出す方法です。

いりとり法は、牛脂・豚脂などをとるときに使われます。
これにたいして、にとり法は、原料に水をくわえて煮だし水の上に浮いてくる脂肪をとる方法で、魚油をとるのに用いられます。



砂糖・グリコーゲン・セルロースの特徴とは? わかりやすく解説!

砂糖

サッカロース・しょ糖・かんしょ糖など、たくさんの呼び名があります。
やはり二糖類で、αぶどう糖とβ果糖から水一分子がとれて結合したものです。


砂糖にはフェーリング液を還元する性質がありませんが酸、またはサッカラーゼ(インベルターゼ)という酵素によって加水分解をうけると、還元性をしめすようになります。

また、砂糖を加水分解してえられるぶどう糖と果糖の混合物はニコルプリズムを通ってきた偏光を砂糖の場合と逆の方向に回転させるので転化糖といられます。

転化糖は、果糖をふくんでいるため砂糖より甘みが強くなります。

蜂蜜は、蜂のだ液にふくまれた酵素により砂糖が分解されて、一部が転化糖になっているものです。

砂糖は、いろいろな植物にふくまれていますがとくにテンサイ(サトウダイコン)の根やサトウキビの茎にたくさんふくまれているので、これから精製されます。

グリコーゲン

グリコーゲンは、でんぷんと同じように多糖類の炭水化物で、ぶどう糖がたくさん結合してできたものです。
グリコーゲンは、動物によってつくられ、植物ではほとんどつくられません。

でんぷんは、植物がつくったエネルギーの貯蔵庫ですがグリコーゲンは動物がつくるエネルギーのたくわえでおもに肝臓や筋肉に多く存在しています。

そこで、グリコーゲンは、動物性でんぷんともよばれることがあります。

グリコーゲンは、そのつくりがアミロペクチンとよく似ています。
しかし、分子のえだ分かれがもっと多く、ヨウ素でんぷん反応ではアミロペクチンが赤みをおびた青から紫色になるのにたいしグリコーゲンでは赤みがかったかっ色になります。



また、でんぷんと同じように、フェーリング液を還元しません。
動物体にたくわえられているグリコーゲンはエネルギーが心要になるとぶどう糖にまで壊され、血液で運ばれて、体中の細胞に入ります。

そこで、二酸化炭素と水にまで分解されるときにできるエネルギーが、利用されるのです。

また、酸素の供給が充分でないときには乳酸にまでしか分解がすすみません。
激しい運動をしたあとで、手足が痛くなるのはこうしてできた乳酸が筋肉中にたくさんたまるためなのです。

筋肉にたまった乳酸は時間が経つにつれて、またグリコーゲンにかわります。
食品のなかでは、動物の肝臓や貝類のカキなどが多量のグリコーゲンをふくんでいます。
食物100グラム中にふくまれるグリコーゲンの量は、つぎのとおりです。

肝臓では6グラム、牛肉1グラム。
たまごの黄身0.1グラム、カキ5.7グラム(2月)、0.49グラム(8月)などです。

セルロース

セルロースは、植物の細胞をとりまく壁をつくっている主成分で多糖類の一つです。衣料として使うワタは、ほとんど純粋なセルロースです。

セルロースは、水やうすい酸、うすい塩基には溶けませんが強い酸にあうと加水分解をうけ、ぶどう糖ができます。

セルロースは、私たもの体の中では消化できないので食品としては役立ちませんが牛や馬などの飼料として重要です。
この場合は、家畜の腸の中にいる微生物が食べた草のセルロースを分解して、ぶどう糖にかえるのです。

セルロースは、家畜の食物の他にパルプやレーヨンなどの原料として大切なものです。



ぶどう糖・乳糖・麦芽糖とは? わかりやすく解説!

ぶどう糖

ぶどう糖は、単糖類のなかの六炭糖の一つで、グルコースともよばれています。

ぶどう糖には二コルプリズム(方解石でつくったプリズム)を通ってきた偏光を違った方向に曲げる二種類のぶどう糖のあることが知られています。

そのいっぽうをαぶどう糖、もうひとつのほうをβぶどう糖とよんで、区別することもあります。


ぶどう糖は、そのままの形でブドウやそのほかのいろいろな果実にふくまれています。
また、ほ乳動物の血液中には、0.1パーセントぐらいふくまれています。

ぶどう糖はこのような形のほかに、ぶどう糖どうしまたはぶどう糖と他の炭水化物が結合した形でも天然にたくさん存在しています。

たとえばでんぷんやグリコーゲンのような多糖類、つぎに説明する麦芽糖・乳糖・砂糖などの二糖類などです。

ぶどう糖をつくるには、でんぷんをうすい硫酸とともに熱し加水分解(水と反応して分解すること)します。

食品として売っているものは、このようにしてつくったものです。

充分に精製されていないものは黄かっ色をしています。
これには60パーセントぐらいのぶどう糖がふくまれています。

充分に精製されたものは、白色の結晶となります。
ぶどう糖は還元性をもち、フェーリング反応で酸化第一銅の沈殿を生じます。

ぶどう糖は栄養物として大切なものです。
たとえばふつうの状態で栄養物がとれないときや体が非常に弱っているとき、中毒したときなどはよくぶどう糖を注射することがあります。

また、ぶどう糖の甘みは砂糖ほど強くはありませんが砂糖とともに、お菓子をつくるときによく利用されます。



麦芽糖

麦芽糖は、マルトースともいわれ二糖類のなかまで、ぶどう糖二分子から、水一分子がとれて結合したものです。

麦芽糖も、ぶどう糖のように、α麦芽糖とβ麦芽糖がありどちらもフェーリング液を還元する性質があります。

麦芽糖は、でんぷんやグリコーゲンにアミラーゼという酵素をはたらかせるとできる物質です。
天然に存在している例としては、発芽している種子がありますが麦芽糖は少量しかふくまれていません。

麦芽糖は、うすい酸やマルターゼという酵素によって加水分解され二分子のぶどう糖になります。

乳糖

乳糖も二糖類の一種で、ラークトースともいいます。
単糖類のひとつであるβガラクトース一分子とぶどう糖一分子から水一分子がとれて結合しておりやはり、α・βの二種類の乳糖があります。

ぶどう糖が、αぶどう糖のときはα乳糖、βぶどう糖のときはβ乳糖ができます。

乳糖もまた、還元性をもっています。乳糖の甘みはほかの糖にくらべて弱く水にわりあい溶けにくい性質をもっています。

天然には乳の中に存在し、牛乳に4~6パーセント、人乳には5~8パーセントふくまれています。
また、チーズをつくるときの副産物として、とりだされます。

二種類の乳糖のうちで、β乳糖は、α乳糖よりも水に溶けやすく甘みもやや強く、さらに赤ちゃんの腸における吸収・消化もよいので食品としてすぐれています。




炭水化物とは? 単糖類・少糖類・多糖類とは? わかりやすく解説!

ぶどう糖の化学式C6H12O6を見ると
炭素原子6つと水の分子6つとが化合してできているように見えます。
これは、この化学式をC6(H2O)6と考えると、よくわかるでしょう。


このことから、ぶどう糖や、これからできあがっているでんぷんなどは有機化学の発達していなかったころに炭水化物または含水炭素と名づけられました。

これが、今日でも習慣になって、このようによばれていますが最近では糖質とよばれることが多くなってきています。

炭水化物を化学式であらわすと、いっぱんにCn(H2O)mとなります。
ここで、nは2か、またはそれ以上の数、mはnと同じか、あるいはそれ以下の数をしめします。

炭水化物の分け方

炭水化物は、分子のつくりをもとにして単糖類、およびこれらから水がとれて結合した少糖類・多糖類に分けて考えることができます。

単糖類

単糖類は、その分子の中の炭素の数によって、それぞれ名前がつけられています。
たとえば2個の炭素をもつものを二炭糖3個の炭素をもつものを三炭糖などとよんでいます。
天然には、七炭糖まで存在することが知られています。

これらのうちで、食品としてもっとも大切なものは六炭糖でぶどう糖や果糖などがふくまれています。

しかし、三炭糖・五炭糖などのなかにも天然に存在して重要なはたらきをもったものがあります。

少糖類

少糖類は、少数の単糖類からできているもので2個の単糖類からなるものを二糖類、3個の単糖類からなるものを三糖類というようにいいます。

二糖類のなかには、食品として重要な砂糖・麦芽糖・乳糖などがあります。

三糖類以上で少糖類とよばれている炭水化物にはとくに生活に直接関係しているものはあまりありません。

多糖類

多糖類は、たくさんの単糖類からなる炭水化物のことです。
でんぷんや、でんぷんが少し分解してできるデキストリン、肝臓や筋肉に多くふくまれているグリコーゲン、植物の繊維の成分であるセルロースなどは多糖類とよばれます。

炭水化物と食品
炭水化物は、私たちの食べる食品の多くのものにふくまれています。
とくに植物性の食品には、たくさんふくまれていて毎日食べる食品のうちの主要な部分をしめています。

炭水化物は、脂肪とともにエネルギーをつくりだすために重要であるほか私たちの体をつくる材料として、なくてはならない大切なものです。



でんぷんの性質とは? わかりやすく解説!

可溶性でんぷんとデキストリン

でんぷん粒を熱したり、あるいはうすい塩酸をはたらかせたりするとでんぷんは水に溶けやすい可溶性でんぷんになります。

可溶性でんぷんは、のりにしたり紙をすくときにまぜたり糸をつむいだりするときに利用されます。

可溶性でんぷんになると、でんぷんは少し壊れていますがこれがさらに壊されていくと、デキストリンとよばれるものになります。

デキストリンも、のりとして使われています。


でんぷんの糊化

でんぷん粒は、水をくわえただけでは、何の変化もおこしませんが
だんだんと温度を上げていくと、水を吸ってふくれはじめ
ある温度になるとふくれ方が急に激しくなり
ついにでんぷん粒が破れ、中からでんぷんがでてきます。

こうして、液はねばっこくなりのりができます。
このように、のりになることを糊化とい卜ます。

糊化温度

でんぷんからのりができるときの温度、正確には、でんぷん粒が急にふくれあがる温度を糊化温度といいます。

糊化温度は、どのでんぷんでも同じというわけではなく、そのでんぷんをふくむものによって、いろいろと違います。

糊化温度のいちばん低いのはトウモロコシのでんぷんで64~71℃いちばん高いのは、サツマイモのでんぷんで82~83℃です。

でんぷんの糖化

でんぷんに麦芽をはたらかせると、甘い水あめができます。
また、ごはんを口の中でよくかむと、だんだん甘みがついてきます。

これは、麦芽やだ液の中に、アミラーゼとよばれる酵素があってでんぷんを分解し、麦芽糖というものにかえるからです。

この反応を、でんぷんの糖化といいます。
できた麦芽糖は、砂糖によくにた物質で水によく溶け、甘みがあります。

アミラーゼは、このほかダイコン・ジャガイモなどいろいろな野菜にふくまれていますが、熱に弱いので料理のとき熱するとすぐ壊れてしまいます。

でんぷんにアミラーゼがはたらくとアミロースは完全に分解されて全部甘い麦芽糖にかわります。
ところが、アミロペクチンは、完全には分解しません。

これは、アミラーゼが、アミロペクチンのえだの分かれめに邪魔されてはたらきかけることができなくなるからです。

ヨウ素でんぷん反応

でんぷんにヨウ素をはたらかせると青くなることは19世紀のはじめからよく知られていました。

今でもこのヨウ素でんぷん反応はでんぷんを調べるときによく利用される大切な反応なのです。

ヨウ素でんぷん反応の液は、ヨウ化カリウムの20パーセント水溶液にヨウ素をくわえた、かっ色の液です。
この液の一滴をでんぷんの水溶液にくわえると、濃い青色から紫色になります。

このように着色したものを静かに温めていくと色は消えますが液を冷やすとまた色がつきます。

でんぷんには、アミロースとアミロペクチンの2つの成分かおりますがヨウ素でんぷん反応の色もそれぞれ違います。

アミロースは、この反応で青色になりますがアミロペクチンは、赤みをおびた青から紫色になります。
ヨウ素でんぷん反応は、でんぷんが分解されて麦芽糖になるともう見られなくなります。

それで、この反応を使ってでんぷんがどのくらい分解されたかを調べることができます。



実験

充分にかんで甘みのなくなったチューインガムをさらにかみでてくるだ液を集めます。
また、でんぷん1グラムを100立方センチの水とまぜて温めたでんぷん液をつくっておきます。

つぎに、何本かの試験管にでんぷん液1立方センチとだ液1立方センチをまぜ、体温くらいに温めておいて5分おきにヨウ素液を一滴ずつくわえていきます。

はじめは、ヨウ素液をくわえると、青い色になりますが時間が経つにつれて、反応の色がでなくなります。
これは、だ液によって、しだいにでんぷんが糖化されていくからです。

フェーリング液との反応

酒石酸カリウムナトリウムの塩基性溶液に硫酸銅を溶かしてつくった青色の溶液を、フェーリング液といいます。

試験管に、このフェーリング液を少しとってぶどう糖をくわえ、沸騰させると、それまで青かった液がたちまち赤くにごりはじめ、やがて赤い沈殿ができます。

これは、硫酸銅が、ぶどう糖で還元されて、赤い酸化第一銅にかわったからです。
フェーリング液を還元する性質は、ぶどう糖だけでなく、麦芽糖や乳糖も、もっています。

ところが、でんぷんには、この性質がありません。
また、でんぷんと同じように、ぶどう糖が結合してできたグリコーゲンにもありません。

そこで、でんぷんやグリコーゲンが分解されたかどうかを確かめるために
この反応が利用されます。

実験

まず、つぎのような2種類の溶液をつくります。
①結晶硫酸銅34.6グラムを500立方センチの蒸留水に溶かす。

②酒石酸カリウムナトリウム173グラムと水酸化ナトリウム50グラムを500立方センチの蒸留水に溶かす。

①と②の溶液を、それぞれ2立方センチずつとってよくまぜこれにだ液で消化したでんぷん液をくわえバーナーで熱します。

すると、赤い沈殿ができます。

これは、でんぷんの分解によって、麦芽糖ができた証拠です。
この麦芽糖が、フェーリング液を還元するのです。

だ液をくわえなかったでんぷん液は、反応しないことも確かめましょう。



でんぷんの作り・でき方・成分とは? わかりやすく解説!

サツマイモ・ジャガイモや、米・麦などがたくわえているでんぷんは植物が芽をだしたり生長したりするために使われるエネルギーの材料として、大切なはたらきをしています。

動物は、植物のつくったでんぷんを食べて消化・吸収し分解します。
そしてそのときでてくるエネルギーを利用して体温をたもったり、運動したり成長するために必要な物質をつくったりしています。


てんぷんのでき方

でんぷんは、緑色植物が太陽の光の助けを借りて水と二酸化炭素とから合成したものです。

このとき、同時に酸素もできます。

でんぷんができるときには植物体のなかで多くの酵素という物質がはたらき複雑な化学反応が進みます。
それで、まだ人間の力では水と二酸化炭素とからでんぷんをつくることには成功していません。

でんぷんがつくられるところは、ほとんど葉緑素をもった葉の部分ですがつくられたでんぷんは、根や地下茎・種子などの中にたくわえられます。

たとえば、サツマイモは根にジャガイモは地下茎にイネや麦は種子にでんぷんをたくわえます。

生物によって、でんぷんが分解されつくすと、また水と二酸化炭素になりますがこのとき、でんぷん1グラムにつき約4000カロリーの熱が発生します。

空気中にでた二酸化炭素は、また植物がでんぷんをつくるときに利用されます。

てんぷん粒

でんぷんが植物にたくわえられているときはでんぷん粒とよばれる粒の形をしています。

このでんぷん粒は、植物の種類によって形が違うため顕微鏡で調べるとどの植物のものか、かんたんに見分けがつきます。

でんぷん粒の大きさは、直径が0.002~0.15ミリとさまざまです。
そしてこの粒は、皮におおわれているので、水に浸しただけでは溶けません。

湯の中ではだんだんふくらみ、ついに皮が破れて中の物質が外へ出てきて溶けていきます。
くず湯をつくるのに湯を使うのは、このためです。

実験

ジャガイモの皮をむき、水で洗ってから、おろし金ですりおろします。
これを二重、三重に重ねたガーゼに包んで水の中でもむと赤黒くにごった汁がでます。
この汁を鉢に入れておくと、底にでんぷんが沈んでたまります。

つぎに、鉢を静かに傾けて上澄みを捨て、きれいな水を入れてかきまわします。
底にでんぷんが沈んだら、また水を捨てます。
これを何回か繰り返したあと乾かすと、きれいなでんぷんの粉がとれます。

顕微鏡で調べると、大小さまざまなでんぷんの粒がよくわかります。


食物中にふくまれるでんぷんの量

食物によって、でんぷんのふくまれる割合はいろいろと違います。
たとえば、つぎの食物100グラム中にふくまれるでんぷんの量は小麦では77グラム、米87グラム、大豆13グラム、バナナ9グラムです。

でんぷんの成分

でんぷんは、ぶどう糖C6H12O6がいくつもつながってできた分子量の非常に大きい化合物です。

ぶどう糖が結合するとき、一分子の水を放出するので化学式であらわすと[C6H10O5]nとなりますが、このnはぶどう糖がいくちもつながっていることをしめす数字です。

でんぷんをとった材料によって、この数字はいろいろと違いますがふつうは450から2200のあいだです。
つまりでんぷんは、ぶどう糖の分子が450から2200個ぐらいも結合してできあがっているということができます。

しかし、よく調べてみると、ぶどう糖のつながり方の違いからでんぷんには2つの成分のあることがわかります。

2つのうち1つは、アミロースとよばれぶどう糖がひものように、まっすぐにくっついているものです。

もう1つは、アミロペクチンとよばれぶどう糖が木のえだのようにつながったものです。
でんぷんに熱湯を注ぐとゼリーのようにどろっとなるのはアミロペクチンがあるためです。

でんぷんの中のアミロースとアミロペクチンの割合はでんぷんをふくむ植物の種類によって、ずいぶん違います。

たとえば、米のでんぷんはアミロペクチンが83パーセントですがもち米のでんぷんは、ほとんど全部がアミロペクチンです。

トウモロコシでは79パーセント、小麦では76パーセントジャガイモでは78パーセントがアミロペクチンです。



有機化合物と無機化合物とは? わかりやすく解説!

地球上には、いろいろな物質がありますがこれらの物質は、90種類あまりの元素からできています。

物質を形づくっているもっとも小さい粒を原子といいます。


同一の原子が結合してできたものを単体といいこれにたいして、2種以上の原子が結合したものを化合物といいます。

このような化合物のうちで、炭素原子が中心になってこれに他の原子が結合しているようなものをとくに有機化合物といい、炭素原子をふくまないものを無機化合物といっています。

たとえば、砂糖やアルコールは燃やすと炭ができたり二酸化炭素をだすことからわかるように炭素をふくんだ化合物ですから有機化合物です。

しかし、炭素をふくんでしても二酸化炭素・一酸化炭素・炭酸ナトリウム・二硫化炭素といったようなものはいっぱんに無機化合物として取り扱われています。

有機化合物は、その種類が非常にたくさんあります。
それは、炭素原子の性質として、炭素原子どうしまた酸素・水素・窒素・イオウ・リンその他のいろいろな原子と結合する力が強いことによるのです。



炭素の原子価は4ですが、これは1個の炭素原子が4つの手をだしてこれに他の原子が結合できることを意味しています。

むかし、有機化合物は、すべて動物や植物・微生物などの生き物によってはじめてつくられるものであると考えうれていました。
有機という言葉は、同時に生物という意味をも、もっているのです。

私たちの体をつくっているたんぱく質植物によってつくられるでんぷんなどをはじめ脂肪・ビタミンなどは、すべて有機化合物に入るものなのです。

ところが、1828年ドイツのウェーラーという化学者が尿素という尿の中に見いだされる有機化合物をシアン酸アンモニウムという無機化合物からつくりだすことに成功しました。

それ以来、もともと生物によってつくりだされた物の中からだけ見いだされたいろいろな有機化合物が、実験室で合成されるようになりました。

さらに、天然にも見いだされないような物もつくられるようになって有機化合物の複雑な性質が調べられ私たちの生活に役立つようになりました。

ビタミンやそのほかの医薬品・合成樹脂・合成繊維・香料・染料などはその一例です。



炭化水素の種類と性質とは? わかりやすく解説!

石油や天然ガスの成分は、そのほとんどが炭化水素です。
いろいろな炭化水素は炭素原子のむすびつき方によって、種類も性質も違います。


炭化水素の種類

天然のもの、人工のものすべてをあわせて炭化水素を分類するとつぎのようになります。

天然ガスの成分になる炭化水素は、ほとんどパラフィン系炭化水素ですが石油の成分としては、パラフィン系・ナフテン系のほかに芳香族もふくまれます。

鎖式炭化水素と環式炭化水素の大きな違いは、鎖式炭化水素分子の炭素原子がくさりのようにつながっているのにたいして、環式炭化水素の分子は炭素原子側のようにつながっていることです。

パラフィン系炭化水素

パラフィン系炭化水素の分子は、水素原子の数が炭素原子の数の2倍より2個多い割合でつくられています。

たとえば、メタン分子は炭素1原子と水素4原子からエタン分子は炭素2原子と水素6原子からできています。

パラフィン系炭化水素のうち、分子にふくまれる炭素原子の少ないものは気体やや多くなると液体、炭素原子の数が15以上になると固体になります。

また、パラフィン系炭化水素は、水にはまったく溶けずアルコールには少し溶けるものと、よく溶けるものとがあります。

ほかの物質と化合しにくいのが特徴です。

炭素原子数が四で、しかも分子式が同じでありながら構造式の違うブタンとイソブタンがあります。

このように分子式が同じで構造式が違うものを異性体とよびます。

異性体は、炭素原子が四個以上のパラフィン系炭化水素には必ずあり分子の構造が違うために性質も違ってきます。

たとえば、正オクタンとイソオクタンは異性体ですがガソリンの成分としては、はるかにイソオクタンのほうがすぐれています。

オレフィン系炭化水素

モノオレフィン系炭化水素の分子は、炭素原子が同じ数のパラフィン系炭化水素分子とくらべると、水素原子が2個少ないのが特徴です。

たとえばモノオレフィソ系のエチレンの水素の数はパラフィン系のエタンより2個少なくなっています。

これは、分子中の炭素原子の結合の手が一か所、2本でむすびあっているためにおこることでこのようなむすびつき方を、二重結合といいます。

モノオレフィン系炭化水素のおもなものはエチレン・プロピレン・ブチレンなどです。

モノオレフィン系炭化水素は、水には溶けませんがアルコールには溶けます。
また、二重結合をもっているので、その部分が他の物質とむすびつきやすく付加反応や重合反応をおこしやすいのです。

ジオレフィン系炭化水素は、分子内に二重結合を2つもっていて性質はモノオレフィン系炭化水素によくにています。



アセチレン系炭化水素

アセチレン系炭化水素はオレフィン系炭化水素にくらべると分子内の水素原子の数が、さらに2個少なくなっています。

たとえば、炭素原子2個のアセチレン系炭化水素アセチレンは三重結合をもっていて、その構造式はH-C≡C-Hです。
水素原子の数がエチレンよりも少ないのはこのためです。

この三重結合は二重結合よりさらに不安定なのでアセチレンは他の物質と反応して化合物をつくりやすい性質があります。

ナフテン系炭化水素

ナフテン系炭化水素は、炭素原子数が同じである場合には分子式はモノオレフィン系炭化水素と同じですが、構造式が違います。

ナフテン系炭化水素には二重結合がなく、炭素原子が輪のようにつながっています。

性質は安定で、パラフィン系に似ています。

芳香族炭化水素

芳香族炭化水素は、ベンゼン核をもっているのが特徴です。
ベンゼン核は、左にしめしたように炭素原子6個が輪のようにつながり、1つおきに二重結合をもったものです。

この二重結合は、オレフィン系と違って、非常に安定です。

多環式芳香族炭化水素は、ベンゼン核が1個(単環式)ではなく2個以上あるものをいいます。



天然ガスの種類・成分・用途とは? わかりやすく解説!

天然ガスとは、天然に地中からでるガスのことです。

広い意味では、二酸化炭素のような燃えないガスや二酸化硫黄・硫化水素のようなガスも天然ガスにふくまれますがふつうは、メタンのような、燃える炭化水素が主成分になっているガスのことを天然ガスといっています。


天然ガスの種類

天然ガスには、油田ガス・炭田ガス・共水性天然ガス・構造性天然ガスなどの種類があります。

油田ガスは、原油といっしょに油層の中にたまっているもの炭田ガスは、石炭の層に溶けこんだり、吸いつけられたりしているものです。

また、共水性天然ガスは海水の10分の1くらいの濃さの塩水に溶けて地層にふくまれているものです。

構造性天然ガスは、これらのガスと違って天然ガスだけが地層の中にふくまれているものです。

これらの天然ガスをとりだすためには石油をくみだす油井と同じようなガス井をほって吹きださせたりポンプでくみだしたりして集めます。

天然ガスの成分

天然ガスの成分は石油と同じように、いろいろな種類の炭化水素です。
しかし、石油の主成分が、ふつうの温度では液体になるような大きな分子の炭化水素であるのにたいし天然ガスの主成分は、ふつうの温度では気体になるような、小さな分子の炭化水素です。

天然ガスには、炭素原子1つの炭化水素メタンだけしかふくまないものとメタンのほかに、エタン・プロパン・ブタンなどをふくむものとがあります。

メタンだけの天然ガスを乾性ガスといいプロパンやブタンをふくむものを湿性ガスといいます。
これは、プロパンやブタンは、冷やしたり、圧力をかけたりすると液体になるからです。

日本の天然ガスは、秋田県や新潟県の油田からでる油田ガスが湿性であるほかは
ほとんどすべて乾性ガスです。
とくに新潟県・千葉県では、共水性の乾性ガスが、非常に多くとれています。

世界の天然ガス生産高の、65パーセン卜をしめるアメリカ合衆国では油田からでる、湿性の油田ガスが、そのほとんどをしめています。



乾性ガス

天然ガスの成分は、炭化水素ですから、燃料として利用されます。
ところが、メタンは、プロパンやブタンと違って、非常に液体になりにくいのでパイプでひいて使ったり、高い圧力に耐えるボンベにつめて運びそれからとりだして使ったりしています。

たとえば、アメリカ合衆国や西ドイツでは天然ガスのとれる地域から都市までパイプをひいて天然ガスを都市ガスとして使う方法を、以前からおこなっています。

日本でも、新潟県の天然ガスをパイプで東京におくりほかのガスにまぜて東京付近の家庭に供給することになり1963年11月から、はじめられています。

このほかメタンはホルムアルデヒド・アセチレンなどの原料として使われこれらの薬品からたくさんの化学製品がつくられています。

湿性ガス

湿性ガスにふくまれる、プロパンやブタンは、たやすく液化されるので液化石油ガスと同じように利用されています。

かんたんに液化しないメタンやエタンなどは、乾性ガスのメタンと同じように利用されます。



コールタール・コークス・人造石油とは? わかりやすく解説!

コールタール

コールタールは、黒色でねばり気のある油状のもので、特有の臭気があります。
水よりも少し重く、比重は1.1~1.2℃ぐらいです。

コールタールは、むかしは木材の腐るのをふせぐ塗料、鉄のさびどめの塗料などとして一部分が利用されるだけで大部分はあまって、始末の悪いものとして捨てられていました。

しかし、蒸留して細かく分ける(分留)と貴重な化学薬品がとれることがわかってきて、コールタール工業が発達しました。

ところが、最近になって石油化学工業が非常に発展してきてこれまでコールタールからつくられていた化学薬品のほとんどを石油からもつくるようになりました。

コールタールは、化学薬品の原料としては石油よりも不経済なのでますます石油が利用されるようになりました。

しかし、世界中にある石油の量は石炭ほど多くありません。
ですから、たくさんある石炭を原料とする石炭化学工業もやがてさかんになるでしょう。


コークス

製鉄用コークスは強粘結炭をおもな原料とする硬いコークスで鉄鉱石や石灰石とともに溶鉱炉に入れられ銑鉄をつくるのに使われます。

それで、製鉄業の発展とともに、生産量は増えています。
コークスはこのほか、力ーバイドや水性ガスの製造に使われたり燃料として利用されたりします。

ガス化

石炭を発生炉ガス・水性ガスなどにかえることをガス化といいます。

発生炉ガス

発生炉ガスは、耐火レンガ製の発生炉の中に石炭またはコークスを入れて赤熱し、水蒸気をまぜた空気をおくってつくります。

発生炉ガスのおもな成分は一酸化炭素と窒素で、発熱量はわりあいに低く1立方メートルあたり1000~1700カロリーぐらいで、工業用燃料として使われます。

水性ガス

水性ガスは水素と一酸化炭素がおもな成分で窒素は少ししかふくまれていません。
高温に熱した石炭やコークスに水蒸気をとおすか粉炭に水蒸気と酸素を同時におくりこんでつくります。

しかし、水性ガスは、石炭を原料とするだけでなく石油や天然ガスを原料としてもつくられるようになりました。

しかも、そのほうが経済的なのでコークスや石炭を原料にすることは非常に少なくなりました。



人造石油

第二次世界大戦中に、ドイツや日本など石油資源の少ない国では石炭から石油をつくりだすことが考えられました。

そして非常な努力の結果つくりだされたのが人造石油です。
しかし、人造石油の値段は天然石油よりはるかに高いので戦争が終わると製造が中止されました。

人造石油をつくるには、3つの方法があります。
その1は石油直接液化法といわれるもので、細かく砕いた石炭を重油とまぜこれに触媒と水素をくわえて高温・高圧で反応させて、石油をつくります。

その2は石油合成法といわれるもので石炭をガス化して水素と二酸化炭素にかえ触媒といっしょに200℃、1~50気圧ぐらいで反応させて石油をつくります。

その3は、石炭の低温乾留でできる低温タールに水素をくわえ高温・高圧にして石油にします。

これらの方法は人造石油の製造に使われるだけでなくいろいろな化学薬品の製造にも利用されますが現在では石油から製造するほうが安くできるので、この方法は実用化されていません。

しかし何十年か後に、石油の生産量が減ったり採油に手数がかかったりして石油の値段が高くなったときに石油よりはるかにたくさんある石炭を原料とするこれらの方法がもういちど見なおされるでしょう。



石炭の用途とは? 石炭ガスとは? わかりやすく解説!

石炭は、石油とともに古くから燃料として使われてきました。
現在は、電力や石油・天然ガスなどの利用がさかんになってきたために燃料としての石炭の重要性は少なくなりました。

しかし、石炭は、燃料としてだけでなく石油・天然ガスとともに、化学工業の原料として、現在でも使われています。


石炭の乾留

石炭を細かく砕いて試験管に入れ、ガラス管のついた栓をした装置をつくりガスバーナーで熱します。

はじめは無色の気体がでますが、しばらくして黄色い煙がではじめます。
この煙に火をつけると勢いよく燃えます。

さらに熱し続けると、煙の色が黄色からうすい紫色にかわります。
この煙もよく燃えます。さらに熱し続けて煙のでが悪くなったらバーナーの火を消します。

試験管を観察すると、底に黒灰色の硬いかたまりが残り試験管の入口には黒くてねばり気のある液状の物がたまっています。

このとき、はじめにでてきた無色の気体は水蒸気や二酸化炭素です。
黄色い煙はタールの蒸気をふくんだ石炭ガス、うす紫色の煙は水素をたくさんふくむ石炭ガスです。

また、試験管に残った固体はコークス、液体はタールです。

このように石炭を蒸し焼きにすることを石炭の乾留といいます。
石炭を乾留すると、石炭ガスを発生して、コークスとタールができます。

石炭の乾留は、温度が300℃ぐらいからはじまります。
分解の進み方は温度が上がるにつれて激しくなり500℃ぐらいでガスやタールがもっともよく発生し、600℃になるとタールはでつくしてしまいます。

しかし、コークスの中には、まだガスになる成分が分解せずに残っているので600℃以上に温度が上がっても、ガスはでます。
そして1000℃ぐらいで、ガスはほとんどでつくしてしまいます。

乾留のうち、600℃ぐらいで乾留するのを低温乾留といい1000℃ぐらいで乾留するのを高温乾留といいます。

高温乾留は古くからおこなわれている重要な方法で現在でも、都市ガスエ業・コールタールエ業・製鉄業などでさかんに使われています。

高温乾留では、弱粘結炭か強粘結炭を原料とします。
高温乾留でできるガスは、石炭ガスまたはコークス炉ガスとよばれます。

タールはコールクールとよばれ、低温乾留の場合よりとれる量は少ないのですが高温のために成分の炭化水素が変化して、ベンゼン系炭化水素を多くふくんでいます。

乾留をおこなうには、ふつう、耐火レンガでつくった容器の中に石炭を入れ外側から熱します。高温乾留を、大規模におこなう装置としてはコークス炉が使われています。



石炭ガス

石炭ガスの成分は、水素40~50パーセント、メタン30~40パーセント、一酸化炭素7~10パーセント、重炭化水素(エタンやエチレン)3~7パーセントでそのほか二酸化炭素や窒素・酸素なども、少しですがふくまれています。

現在、製鉄会社では、石炭ガスを平炉・コークス炉などの燃料として使っています。
また都市ガスエ業では、石炭ガスを都市ガスの主成分として利用しています。

むかしは、都市ガスとして石炭ガスをそのまま使っていましたが最近では、石炭ガスのほかに、発生炉ガス・増熱水性ガス・油ガス・LPガス(液化石油ガス)・天然ガスなども利用されるようになりました。

そのため、都市ガスの成分としては、石炭ガスの割合は減ってきましたがそれでも40パーセント以上をしめています。

石炭ガスは水素を多くふくむので、合成化学工業の原料として利用されます。
最近では、製鉄工場であまった石炭ガスを原料として利用する化学工業がいくつもできました。



合成繊維の性質とは? わかりやすく解説!

合成繊維は、繊維をつくっている長い分子を合成したものです。
レーヨン(再生繊維)やアセテート(半合成繊維)の原料はセルロースのようにすでに天然の長い分子としてできあかっているものでこれをいちど溶かして、繊維の形にしたり、あるいは性質をかえるために酢酸をくっつけたりしたものです。

ところが、合成繊維は、石油・天然ガスなどから繊維を形づくるものを合成しておき、それを一列につないで天然のセルロースのように、長い分子にしたものです。


合成繊維の性質

引っぱりの強さが非常に大きく水にぬれても、その強さはほとんどかわりません。
洗濯もたやすく、ワイシャツなどは、夜洗っておけばつぎの日の朝には乾いていてアイロンをかける必要もありません。

また繊維として大切な折り曲げに耐える強さ(屈曲強度)摩擦に耐える強さ(摩擦強度)も、非常にすぐれています。

このほかに、燃えにくいとか酸・塩基に強いとか多くのすぐれた性質をもっています。

熱にたいして弱いという欠点をもってはいますが科学の進歩とともに、この点も改良されるでしょう。

ナイロン

カロザーズによって発明された繊維でベンゼンや石炭酸からつくったアジピン酸・ヘキサメチレンジアミンを原料にしてつくられます。

分子のむすびつき方により、6ナイロンや66ナイロンなどいろいろな種類がありますが現在日本で工業化されているのは6ナイロンが多いようです。

高い温度に熱して溶かしたものを細い穴を通して冷たい空気の中に引っ張り出し糸にします。

ナイロン糸は婦人用のくつ下にナイロンをちぢらせたウーリーナイロンは男子用のくつ下に使われます。

そのほか、レインコート・雨傘の布地、自動車のタイヤコード漁網などがつくられています。



ビニロン

日本で発明された合成繊維です。
アセチレンと水を原料にしてポリビニルアルコールをつくりこれをボウ硝の溶液の中におしだして糸にし(湿式紡糸)さらに、ホルマリンで処理して繊維にします。

学生服・作業衣・漁網・ロープなどに使われています。

アクリロニトリル系繊維

アメリカでつくられているオーロンが有名で日本ではエクスラン・ボンネル・カシミロン・ペスロン・カネカロンなどの商品名で売られています。

セーターや下着類としても多量に使われています。

ポリエステル繊維

日本では、テトロンが代表的なもので原料はエチレングリコールとテレフタル酸です。
木綿などとまぜてワイシャツ・婦人服などに使用されています。

これらのほか、ビニリデン・ポリエチレン繊維ポリプロピレン繊維などがあります。



アセタール樹脂・ポリカーボネート・繊維素合成樹脂の性質と用途とは?

アセタール樹脂

充分精製したホルムアルデヒドを重合させてつくったもので見かけはポリアミドによく似ています。

性質と用途

性質もポリアミドに似ていますが、いろいろな点でさらにすぐれており金属のかわりになる合成樹脂としていちばん注目されています。

歯車、ベアリング、いろいろな機械部品、薬品瓶などがつくられていますがそのうちにもっと値段が安くなるといわれていますので、使い道はさらに広くなるでしょう。


ポリカーボネート

ビスフェノールとホスゲンとからつくられ、やや黄色みがかった合成樹脂です。

性質と用途

叩いても踏みつけても割れない非常に丈夫な合成樹脂です。
熱にも強く、長いあいだ日光にてらされても強さがかわりません。

この樹脂も金属のかわりに使うことのできる材料でたとえば保安帽・歯車・機械部品・熱湯消毒のできるほ乳瓶・医療用器具・薬品瓶などに使われます。

繊維素合成樹脂

天然高分子である繊維素に、硝酸をはたらかせるとセルロイドの原料になる硝酸繊維素ができますがこれはたいへんよく燃えるので、火事の危険があります。

硝酸のかわりに、酢酸や、ラク酸をはたらかせると安全な酢酸繊維素やラク酸繊維素ができます。

これに可塑剤をまぜると、繊維素合成樹脂になります。

性質と用途

繊維素合成樹脂は、丈夫で割れにくく、美しい見かけをもっています。
セルロイドは加工しやすく、眼鏡の枠や、くしなどの雑貨がつくられ酢酸繊維素を原料としたものは、難燃セルロイドといわれ写真や映画のフィルムとかねじまわしの柄、おもちゃなどに使われます。



新しい合成樹脂

合成樹脂に関係する学問や工業は、すばらしい勢いで進歩しています。
最近も、つぎつぎと新しい合成樹脂が生みだされています。

その中から、工業的に使い道の多いものを、いくつかとりあげて説明しましょう。

アイオノマー

ポリニチレンの仲間ですが、完全に透明で破れにくいフィルムをつくることがで、包装材料として期待されています。

ポリフェニレンオキシド

200℃以上の温度で長時間使っても、性質がかわらず薬品にも強いのでステンレス鋼のかわりに使われるようになるかもしれません。

ポリスルホン

割れにくく熱にも強いので、やはり金属のかわりになるでしょう。

ポリイミド・ポリアミドイミド・ポリペンゾイミダソール

宇宙開発のためにつくられた耐熱性合成樹脂でいずれも、300℃以上の温度に耐えられますのでロケットやミサイルの重要な電気部品に使われています。



メタクリル樹脂・ポリエチレン・ポリプロピレン・フッ素樹脂・ポリアミドの性質と用途とは?

メタクリル樹脂

アセトンと青酸からつくられる樹脂です。
石油化学製品から直接つくる方法も考えられています。

性質と用途

合成樹脂の中で最も光線を通しやすく、また丈夫で割れにくく日光にてらされても性質がかわりません。

ですから、ヘリコプターの風防ガラス、看板の材料、照明器具、光学レンズなど使い道の広い樹脂です。
美しい真珠光沢のあるボタンもこれでつくられますしコンタクトレンズや入れ歯の材料にも使われます。


ポリエチレン

ポリエチレンは、石油の分解ガスからとれるエチレンを重合させてつくりますがこの重合法には、高圧法・中圧法・低圧法の3つがありつくりかたによって、できるポリエチレンの性質も少し違ってきます。

性質と用途

ポリエチレンは、可塑剤をくわえなくても、柔らかい製品がえられるのが特徴ですが高圧法のものより、中・低圧法のもののほうが硬くて丈夫で溶ける温度も高くなります。
水や薬品に強く、電気を通さないのは、すべてのポリエチレンに共通した性質です。

ポリエチレンのいちばん大きな用途は食料品や雑貨などを包む袋や温床などに使うフィルムです。

また、軽くて壊れにくい性質を利用してごみ箱・バケツ・たらい、ジュースやビールの運搬箱、水筒、薬品瓶などたくさんの種類の製品がつくられています。

ポリエチレンは、安くて使いやすい合成樹脂ですから我が国では、合成樹脂の中で、いちばん多く製造されています。

ポリプロピレン」

石油からとれるプロピレンガスを原料としポリエチレンの低圧法によくにた方法でつくられます。

性質と用途

およその性質は、ポリエチレンとよく似ていますので、使い道も似ています。
しかし、ポリエチレンよりもさらに耐熱性がよく丈夫で見かけも美しいものがつくられます。

最近は、荷造り用の丈夫なひも、またこれを編んでつくった袋や敷物などにも
たくさんのポリプロピレンが使われています。



フッ素樹脂

フッ素原子が結合したエチレンやプロピレンを重合させてつくった樹脂で、みかけばポリエチレンによく似ています。

性質と用途

あらゆる薬品におかされず、低温から高温まで性質かかわらず電気を通さず、まったく水を吸わないというすばらしい性質をもっていますが残念なことに、値段が高く成形しにくいという欠点があります。

使い道としては、電気の高度絶縁材料として宇宙科学の発展に大きな役目を果たしているほか化学工場のパイプやタンクの内ばり、機器のパッキングなどにまた家庭用品には、この樹脂をぬりつけた「油のいらないフライパン」などがあります。

ポリアミド

石炭または石油と空気と水を原料にして合成されますが原料の種類によって、いろいろな性質のポリアミドをつくることができます。

合成繊維ナイロンは、ポリアミドの一種です。

性質と用途

ポリアミドは、丈夫で摩擦に強いのがいちばんの特徴で繊維にして丈夫な靴下や織物がつくられていることは、みなさんも知っているでしょう。

また、滑りやすい性質を利用して油のいらない歯車・戸車・かっ車などがつくられていて金属材料のかわりに使える合成樹脂の1つです。



塩化ビニル樹脂・酢酸ビニル樹脂・スチレン樹脂の性質と用途とは?

塩化ビニル樹脂

アセチレンと塩酸を反応させてできる塩化ビニルを重合したもので、もっとも安いプラスチックの1つです。

くわえる可塑剤(合成樹脂を柔らかくする薬品)の量により、性質や見かけがかわります。


性質と用途

可塑剤をいれたものを、軟質塩化ビニル樹脂、いれないものを硬質塩化ビニル樹脂とよびます。

軟質塩化ビニル樹脂からは、フィルム、ふろしき、テーブルかけホース、電線のおおいなどがつくられ、硬質塩化ビニル樹脂は丈夫で薬品にも強いので、水道や工場用のパイプ、波板、雨どい透明な瓶、容器などがつくられます。

塩化ビニリデン樹脂

塩化ビュル樹脂に、塩素がさらに結合した形の樹脂です。

性質と用途

油や薬品に強く、燃えにくく水蒸気などの気体を通しにくい性質をもっています。
また、低温でも柔らかいので、ほとんど繊維やフィルムとして使われています。

緑色の防虫網、美しい色のテントや日やけ、ビーチパラソルなどはこの繊維を織ってつくります。
また、フィルムは、冷蔵庫に食べ物などを入れるときに家庭でも使いますし、ソーセージなどの包装にも使われています。

酢酸ビニル樹脂

アセチレンと酢酸から合成される酢酸ビュルを重合させてつくります。
夏の温度(30℃くらい)で柔らかくなってしまいますのでこれで形のある品物をつくることはできません。

性質と用途

日本でつくられているチューインガムのほとんどは酢酸ビュル樹脂に砂糖や香料をねりこんだものです。
この樹脂の、ほかの大切な使い道は、接着剤や塗料です。

学校の工作で使う接着剤は、でんぷんのり以外はほとんど酢酸ビニル樹脂が主原料です。
しかし、日本でつくられる酢酸ビニル樹脂の大部分はつぎに説明するポリビニルアルコールの原料になっています。



ポリビニルアルコール

酢酸ビニル樹脂をメチルアルコールに溶かし水酸化ナトリウムをはたらかせてつくります。

性質と用途

温水に溶けるという、合成樹脂の中では珍しい性質をもっていますので、水溶性接着剤などにも使われます。

油には強いので、食品や機械部品の包装材料に使われていますが大部分は合成繊維ビニロンの製造原料にむけられます。

スチレン樹脂

ベンゼンとエチレンから合成されるスチレンを重合させてつくります。
スチロール樹脂ともいいます。

性質と用途

無色透明で、成形しやすく薬品に強く電気を通さないなどの性質をもっていますが、ややもろいのが欠点です。

合成ゴムやアクリロニトリルを共重合させて性質を改良した耐衝撃性スチレン樹脂、すなわちAS樹脂・ABS樹脂などもつくられています。

スチレン樹脂は、テレビやラジオの前部の文字板、いろいろな台所用品、おもちゃ、文房具、アイスクリームなどの食品カップなどに使われます。

また、この樹脂をスポンジのように膨らませたものは割れ物の包装材料や断熱材などの用途があります。
ABS樹脂に、丈夫で割れにくいので今まで金属が使われていたもののかわりに美しいめっきをつけた成形品にして使われています。



ポリエステル樹脂・エポキシ樹脂・ウレタン樹脂・ケイ素樹脂の性質と用途とは?

ポリエステル樹脂

フタル酸とマレイン酸をまぜ、これにエチレングリコールをくわえて縮合させ
できた樹脂をスチレンに溶かすのが代表的なつくり方です。

原料の種類、組みあわせをかえるといろいろ性質のかわったポリエステル樹脂になります。(ポリエステル繊維とは別のものです)

この樹脂に、重合触媒や促進剤などを少しくわえると熱や圧力をあまりくわえなくても成形できます。

性質と用途

ポリエ不テル樹脂は、化学薬品や熱にかなり強くとくにガラス繊維といっしょに成形すると強化ポリエステルとよばれる丈夫な製品になります。

住宅や工場で使われる、半透明の波板・薬品タンク、ボートやヨッ卜航空機の部品、保安帽など、いろいろなところに使われています。


エポキシ樹脂

エポキシ樹脂は、エピクロルヒドリンとビスフェノールとからつくられるものが代表的です。
これを固めるには、硬化剤(アミンまたは酸無水物)をまぜなければなりません。

性質と用途

エボキシ樹脂は、何にでもよくつくので、万能接着剤として有名です。
とくに軽金属にたいして、すぐれた接着力をしめすので航空機の組み立てなどにも使われています。

接着性がよいばかりでなく、電気を通さず、薬品にも耐えるので電子機器をはじめ、いろいろの工業で、大切な使い道があります。

ウレタン樹脂

座布団やマットレスのクッションなどによく使われているスポンジはウレタン樹脂からつくったものです。
これは、ジイソシアネートとポリエーテルまたはポリエステルとを反応させてつくります。

ゴム状のものや、塗料などに使う液状樹脂もつくられています。

性質と用途

ウレタン樹脂は、ゴムのような弾性があるので、クッション用スポンジに適した材料です。
また、すり減りにくいのでタイヤに使うのに具合がよいのですが今はまだ値段が高いのでそれほど広く使われていません。

しかし、木工品の塗料や、ケミカルシューズの接着剤としては重要なものです。


ケイ素樹脂

ケイ素と塩化メチルなどからつくられるケイ素樹脂(シリコーンともいう)は分子の本体が無機化合物なので、ほかの合成樹脂よりも高い温度によく耐えます。

油状からゴム状まで、いろいろありますが電気を通さず、水をはじき泡を消すなどのおもしろい性質をもっています。

性質と用途

ケイ素樹脂のいちばん大きな特徴は、高温(250℃)から低温(零下65℃)まで柔らかさや強さなどの性質がかわらないことです。

使い道は、電気の絶縁材料が第一でこれを利用したモーターは、非常に小型になり水に浸かっても平気です。

そのほか、防水剤・潤滑油・パッキングなど非常に広い用途がありますが、値段の高い樹脂です。



フェノール樹脂・ユリア樹脂・メラミン樹脂の性質と用途とは?

現在、製造されているおもな合成樹脂は30種類ぐらい(細かく分けると100種類以上)もありそれぞれすぐれた性質をもっているので、その用途は近年どんどん増えています。

1967年に日本でつくれた合成樹脂の量を合計すると267万5000トンになりこれは世界で2番目の生産量で、各種の化学工業製品の中では一番です。

なお、合成樹脂の原料は石油化学工業によってつくられるものが多くなりました。


フェノール樹脂

フェノール樹脂は、もっとも古くから使われだした合成樹脂ですがいろいろな合成樹脂がつくられるようになった現在でも、いろいろな用途に使われています。

フェノール樹脂は、フェノール(石炭酸)とホルマリンを酸や塩基を触媒として縮合させてつくります。
酸を触媒としたものは、木粉や硬化剤をくわえて熱ロールでねり細かく砕いて成形材料にします。

塩基を触媒としたときは、できた樹脂液を紙や布に染みこませて積層素材にします。

積層素材は何枚も重ねて金属板のあいだにはさみ熱と圧力をくわえて硬化させると板状の製品ができあがります。

成形材料は、金型で熱と圧力をかけて仕上げます。

性質と用途

フェノール樹脂は、丈夫で酸や油におかされず熱に強く、電気を通しにくい特徴があります。
欠点は、塩基に弱く明るい色をつけにくいことです。

電気絶縁材として、電気・通信機器にたくさん使われますが軽くて丈夫で、さびないということで歯車・軸受・ハンドルなどの機械部品、酸に強い器具や事務用品食器にもつくられています。

そのほか、塗科や接着剤としても大切な樹脂です。


ユリア樹脂

ユリア(尿素)とホルマリンを縮合させるとユリア樹脂ができます。原料のユリアは肥料としても使われるたいへん安い工業原料ですから、

ユリア樹脂は安価な樹脂の1つです。

ユリア樹脂に、パルプの粉をまぜて成形材料をつくりますがこれを金型に入れ、成形機で加熱・加圧すれば製品ができます。

性質と用途

性質は、フェノール樹脂に似ていますが、水・熱に耐える性質や長もちという点では劣るので成形品は、工業的なものには、あまり利用されません。

しかし、樹脂は、無色透明で、鮮やかな色を自由につけられつやもよいので化粧品・医薬品の容器や瓶のキャップ、電気器具の部品、コップや子ども用食器、ボタンなどの雑貨類に使われます。

そのほか、樹脂液は合板の接着剤としてまた織物にしわがよりにくくする処理剤として用いられています。

メラミン樹脂

メラミンとホルマリンとがらつくられ見かけはユリア樹脂とよく似ていますが、いろいろな点ですぐれています。

性質と用途

ユリア樹脂と同じように、無色透明ですから自由に色をつけられるほか、熱や水にたいして、はるかに強く煙草の火ぐらいではすぐにはこげません。

また、表面が硬いので傷がつきにくいのですが、値段は少し高くなります。

最近、机や家具などの表面に木目や美しい模様をつけた化粧板がたくさん使われていますがこれはフェノール樹脂を染みこませた紙を重ねその上に、メラミン樹脂を染みこませた模様紙をおいて成形したものでデコラというのは、この商品名の1つです。

メラミン樹脂の成形品は、電気器具の部品にも使われ陶器と見間違えるような食器類もつくられています。

そのほか、塗料原料としても大切で自動車・電気冷蔵庫・電気洗濯器などの美しいつやや硬さは、この樹脂のおかげです。

また、接着剤・繊維処理剤としても高級品として使われています。



合成樹脂のつくりとは? 合成樹脂の性質とは? わかりやすく解説!

合成樹脂は、縮合(縮重合)とか重合(付加重合)といわれる化学反応によってつくられます。

分子には、ほかの分子と化学的に結合できる手を何本かもっているものがいろいろあります。


合成樹脂、つまり高分子物質をつくるにはこの手を2本以上もった分子を原料としなければなりません。

下の図は、分子の結合する有様を模型でしめしたものです。
結合する手が2本以上ですから、分子どうしが互いに手をつないでいけば、高分子物質ができあがります。

このように手をつなぐときに、図(a)の(イ)のようにただつながっていく場合(付加重合)と(ロ)のように手の先についている原子が離れると同時につながっていく場合(縮重合)とがあります。

そしてこのとき、手離された原子どうしが1つの分子(水・二酸化炭素・アンモニアなど)になって放出されます。

手が3本以上ある分子の場合には、図の(b)のように上下にもつながり、網目のようなつくりになります。

そしてこの網目は平面的ではなく運動場のジャングルジムのように立体的なしくみの巨大分子になるのです。



熱可塑性と熱硬化性

合成樹脂は、その特徴によって大きく2種類に分けられます。
その1つは、チョコレートのように熱をくわえると柔らかくなりついには溶けますが冷やすと、またもとの固体になる樹脂でこれを、熱可塑性樹脂といいます。

この樹脂は、図(a)の(イ)または(ロ)のように2本の手で長く糸のようにつながった分子からできています。

もう1つは、卵のように加熱すると固まりいちど固まると、さらに熱をくわえても柔らかくならない樹脂でこれを熱硬化性樹脂といいます。

図(b)のように網目状の分子からできているのがこれですがこのような網目の結合が完成する途中では、加熱すると柔らかくなりますのでこの時期に成形します。

合成樹脂の特徴

合成樹脂には、いろいろな種類があり、それぞれ特徴がありますが一般的につぎのような性質をもっています。

  • ①軽くて、丈夫である
  • ②電気を通しにくい
  • ③酸や塩基などに強いものが多く、さびたり、腐ったりしない
  • ④能率よく成形できる
  • ⑤透明、または半透明なものが多く、明るい色をつけられるので、見かけの美しいものがつくれる
  • ⑥原料がわりあい豊富で、しかも安い




天然樹脂・合成樹脂とプラスチックとは? 高分子物質とは? わかりやすく解説!

天然樹脂と合成樹脂

松の木の幹に傷をつけると、その部分から黄色い水あめのようなねばねはした液がにじみでてきます。
これが松脂ですが、ほかの樹木も同じようなものをだします。

これらは、みな樹脂とよばれますが、これらの樹脂は天然にできたものですから
天然樹脂といわれています。

この天然樹脂にたいして、いろいろな化学薬品を原料として化学反応でつくられる、天然樹脂のような見かけと性質をもったものを合成樹脂とよんでいます。


合成樹脂とプラスチック

最近は、合成樹脂というかわりに、プラスチックという言葉がよく使われます。
合成樹脂がはじめてつくられたころは、天然樹脂に似たものがその後いろいろな種類の合成樹脂がつくりだされその中には、松脂などと見かけも性質も違ったものが、たくさんあります。

そのため、最近は、合成樹脂のことを「プラスチック」という名前でもよぶようになってきました。
しかし、今までの習慣で合成樹脂という言葉も広く使われていますからプラスチックとは、合成樹脂でつくったものの総称であると考えてよいでしょう。

プラスチックという言葉のもとの意味は「あるものに熱や力をくわえると、自由に形をかえることができそのあとは、もとの形にもどらない性質」のことです。

このような性質は粘土などももっていますが合成樹脂にとっていちばん大切な性質なのです。
合成樹脂の製品をつくるときには、この性質を利用して熱や圧力をくわえ目的の形のものに作り上げるわけです。

これを成形といいます。

合成樹脂が、このような便利な性質をもっているのはこれがいずれも高分子物質であるからなのです。



高分子物質

ほとんどの有機化合物(炭素を中心とした化合物)は、分子からできています。
分子は、たいそう小さいものですから、直接に目で見たり重さをはかったりすることはできませんが、物質の性質は分子の大きさによって、大きくかわってきます。

ですから、分子の大きさをくらべることは大切なことです。

ふつう、分子の重さ(分子量という数)が、このために使われます。
分子量というのは、炭素12の原子の重さを12としてほかのいろいろの分子の重さを、これとくらべた値です。

たとえば、水の分子量は18、エチルアルコールは46、砂糖は342です。
たいていの有機化合物は、分子量が500以下ですが中には何千、何万、いや何百万という大きな分子量をもったものもあります。

このような分子量の大きい物質を、高分子物質といい分子量の小さなもの(低分子物質)とはまったく違った性質をしめします。

つまり、分子量が大きくなると、分子が糸のように長くなりこの長い分子が互いに絡まりあって高分子物質に特有の性質をしまします。

でんぷんやたんぱく質は、天然産の高分子物質のよい例ですが合成樹脂や合成繊維は、高分子になることのできる分子量の小さい化合物を単位原料としてつくったものですから、合成高分子物質ともよばれています。



石油化学工業とは? わかりやすく解説!

原油からガソリンそのほかの燃料や機械油をつくるのが石油工業(または石油精製工業)です。
これにたいして、石油や天然ガスの成分から、いろいろな化学製品をつくりだす工業を石油化学工業と名づけ、その製品を、石油化学製品といいます。


石油化学工業は、石油工業からでる副産物を利用しようとしてはじめられましたがしだいに発達して、肥料・合成樹脂・合成ゴム・合成繊維・合成洗剤などほとんどすべての化学製品がつくりだせるようになりました。

石炭やカーバイド、さらに農産物・水産物などからつくられていた化学製品でも石油を原料にしたほうが安く、そのうえ多量につくれるようなものはだんだん石油からつくられるようになりました。

石油化学工業は、アメリカでは1920年ころからはじめられ1950年ころから急に発達しました。原料はおもに天然ガスです。

日本では1955年ころからはじめられましたが発達のスピードが早く、当時、生産高は世界2、3番めになっています。

原料はおもにナフサです。
石油化学製品を分けてしめすと、およそつぎのようになります。

・石油や天然ガスから水素をつくり、それから合成するもの

アンモニア・硫酸アンモニウム・ユリア樹脂・メチルアルコール・ホルムアルデヒド。

・メタンからの合成品

青酸・アセチレン・クロロホルム・四塩化炭素。

・エチレンからの合成品

ポリエチレン・塩化ビニル・エチレンオキシド・グリコール・アセトアルデヒド・エチルアルコール・酢酸・四エチル鉛・スチレン。

・プロピレンからの合成品

ポリプロピレン・塩化アリル・アリルアルコール・アセトン・グリセリン・プロピレングリコール・アクリロニトリル・合成洗剤・合成ゴム。

・ブチレンからの合成品

メチルエチルケトン・ブチルアルコール・ポリブテン・ブチルゴム。

・ブタジエンからの合成品

合成ゴム(SBR・NR・ステレオゴムなど)・ナイロン原料。

・イソブチレン・イソアミレンなどからイソプレンをへての合成品

合成ゴム

・石油芳香族からの合成品

(ベンゼン系)フェノール・スチレン・ナイロン原料、染料や火薬の原料、DDT、BHC、合成洗剤など。(トルエン系)火薬・安息香酸・テトロン原料・クレゾールなど。

(キシレン系)無水フクル酸・イソフタル酸・テレフタル酸・テトロン原料・エチルベンゼンなど。

・その他

ナフタリンーパラフィンロウからのたんぱく質飼料・硫黄・硫酸など。



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