水を電気分解すると水素と酸素ができました。また、水素が酸素と結びつくと水ができます。
このことから、水は水素と酸素とからできていることがわかります。
ここでは、水素と酸素について調べてみましょう。
工業的製法と実験室的製法」
水素・酸素などの気体や硫酸・水酸化ナトリウムなどの薬品をつくるとき工場
と実験室とでは、つくる方法が違う場合があります。
工業的には、設備や原料を考えてできるだけ安くしかも大量につくる必要がありますが実験室では簡単な装置で手軽につくる必要があるからです。
そこで、工業で使う方法を工業的製法、実験室で使う方法を実験室的製法といって区別します。
水素の工業的製法
水素の工業的製法には、水性ガスから分ける方法水の電気分解による方法、天然ガスを分解する方法などがあります。
水性ガスから分ける方法
熱したたコークスに水蒸気を通すと、コークスの炭素によって水蒸気が分解され水素と一酸化炭素の混ざった水性ガスができます。
この水性ガスと水蒸気を500℃ぐらいで作用させると一酸化炭素がすべて二酸化炭素に変わります。
これに高い圧力をかけて水で洗うと水素が得られます。
天然ガスを分解する方法
石油を分解したガスや深い井戸から噴き出す天然ガスの主成分はメタンガスです。
メタンガスと水蒸気とを混ぜて、800℃ぐらいに熱しこれを二ッケルという金属に触れさせるとメタンガスが分解して水素ができます。
この分解した水素には不純物が混じっているので取り除き、精製します。
水素の実験室的製法
鉄・亜鉛・アルミニウムなどの金属に希硫酸や塩酸を注ぐと水素ができますが
ふつう亜鉛に希硫酸を注いでつくっています。
試験管に希硫酸を入れ、それに亜鉛の粒を2、3個入れると水素が泡になって盛んに出ます。
この場合、亜鉛があまり新しすぎると水素の発生がよくありませんから古い亜鉛を混ぜて使います。
水素の性質
水素には、右の表のような物理的性質があります。
そして、空気と同じように色も匂いもない気体ですべての物質の中で最も軽いものです。
実際の重さは、1リットル約0.1グラムで空気のほぼ14分の1にしかすぎません。
水素は非常によく燃えます。
水素をいっぱい入れた瓶を逆さまにして瓶の口から火のついたロウソクを入れると中に入ったロウソクの火は消えますが瓶の口では、水素がほとんど色のない炎を出して燃えます。
このことから、水素はよく燃えるが他の物を燃やす働きはないことがわかります。
水素と空気が混ざった物に火をつけると爆発しますが爆発するのは、混ざる空気の量が水素の体積の3分の1から25倍までの範囲です。
3分の1以下では水素が燃えるだけですし、25倍以上では燃えも爆発もしません。
【実験】
水素の爆発は、次のような実験で確かめることができます。
図のように、水素の発生装置から水素をとります。
試験管に水素が半分ぐらいたまったとき引き上げると水素と空気の混ざった気体ができます。
この試験管を逆さまにしたままアルコールランプの炎を近づけるとポンと音をたてます。
これが水素の爆発です。
この実験は、水素の量が多くなるほど爆発が大きくなりますから決して、大量の水素を使って実験してはいけません。
水素がもえてできる物
水素が燃えると、水ができます。
このことは、図のような装置で実験すると確かめることができます。
ビーカーについた水滴は、水素が燃えてできた水蒸気が冷えたものです。
この実験で発生装置に空気が残っていると爆発する危険があります。
それで、図のように防爆管をつけておきます。
防爆管の中には、細い銅線がつめてありここで熱を吸収し発生装置の温度が上がって爆発することを防いでいます。
また、塩化カルシウム管には、水分をよく吸収する塩化カルシウムの粒が入っていて水素に水分が混じって出てくるのを防いでいます。
水素の用途
水素は、酸水素炎吹管という装置で酸素と混ぜて火をつけると非常に高い温度を出して燃えます。
この炎を酸水素炎といい、炎の先は2500℃もの高い温度になります。
また、酸素アセチレン炎に水素を高速で吹き付け2万℃以上の高温をえることもできます。
また、水素は、すべての物質の中で最も軽く空気に対しても1立方メートルあたり1.2キログラムも軽いのです。
それで、気球や風船などにつめる物として使われます。
この気球は、気象観測用や広告用(アドバルーン)として利用されています。
しかし、水素のいちばん大切な用途は薬品の原料として使われることです。
化学調味料や合成樹脂の製造に必要な塩酸、肥料やレーヨンの製造に必要なアンモニアはいずれも、水素がその重要な原料となっています。
そのほか、魚油や鯨油を石鹸やロウソクの原料にかえたり人造バターにしたりするときにも、水素が使われます。
酸素
酸素は、水を電気分解してもえられますが空気中にもたくさん含まれています。
工業的には、この空気の中から約5分の1を占めている酸素を取り出して利用しています。